――酷なことを、仰いなさる――  
 幾本もの蝋燭が静かに揺れる中、向かい合った尼僧が言った。搾り出すような尼僧  
の声に、女はさらり、と手にした榊でふと、顔を隠した。  
 深い、沈黙が落ちた。床板には女二人の、細やかな影が映し出される。影はくっき  
りと、二人の姿を映し出したが、僅かに女の肌が震えている様までは、映し出せずに  
いた。  
 
 ややあって、どうして。と、尼僧が言った。何故、そのようなことを自分に言うの  
かと、尼僧は向かい合った女に問うた。  
 「――我が逃げたら、どうするというのです。法力が高い。数多くの妖魔を倒した。  
――それでも、それでも我は人間。時に、死ぬことを恐れる心に、襲われることだって、  
ある。だのに、どうして、どうして。かような話を、我に――」  
 
 御主と同じじゃ。と、尼僧の言葉に、女は珍しくも、眉を寄せ、今にも涙を落とし  
そうな眼で、ひっそりと紡いだ言葉に、尼僧は暫く呆然として、女を見上げ――静か  
にひとつ、頷いた。  
 
『 葛 篭 緒 』  
 
 目が覚めたら、そこは薄暗い部屋の一室だった。さっと身を起こそうとすると、身  
体に激痛が走るのを感じた。コン! という無様な悲鳴が、己の口から漏れた。唇を  
噛締め、はいつくばるようにして、辺りを見回す。少し離れた箇所には灯台が置かれ、  
そこには布団が敷かれているのが目に入った。  
 
 どうやら、誰かの寝所らしい。さらに、己を見れば部屋の隅に置かれ、柔らかな毛  
布で包まれていた。  
 竜神と争い、管ギツネを失い、息が途切れ途切れになりながら、陸へと上がったも  
のの、大雨に打たれ、傷つき、冷え行く身体を癒すために、屋根のある場所までどう  
にか歩いたところまでは記憶がある。  
 
 ――さては、そこで誰かに拾われたか。誰とは知らぬが、この、妖魔王を拾うとは  
愚かなことだが、今はその愚かさに、感謝をするべきだな――  
 
 まずは、ここで身体を癒して――そう、思ったところで食べ物の香りが流れ、ひく  
ん、と鼻を動かす。戸の方へと顔を動かすと、からり、と戸が開いた。  
 
 「ああ、起き上がれたか。それは良かった」  
 
 戸を開け、食べ物を運んで来たのは、一人の尼僧だった。年のころは20代後半。瞳  
には聡明そうな色を湛えている。身なりは肌を覆い隠すように、ゆったりとした衣で  
身を包んでいるが、女の線の細さや、豊かな胸の膨らみが目を引いた。  
 
 もう眠るためか、平生見る尼の格好ではないのに、尼僧と気付いたのは女の身体に  
染み込んだ仏香と、短く切られた髪からだった。  
 ぐぅ、と、唸り声を上げて後ずさりをする。先刻感謝をしたものを呪いたく思った。  
弱っていたこの身からも、否、弱った身だからこそ、女の持つ法力の程が分かった。  
力を取り戻していれば兎も角、脆弱なこの身では、女の力は脅威だった。警戒をして  
いると、何を思ったのか、女は首を傾げ、少し離れたところに器を置くと、困ったよ  
うに笑った。  
 
 「……あれだけ傷ついておったのだ。警戒されても無理は無いが、我はお主を毛皮  
にしたり、食らったりする気は持っておらぬ。食べ物はここに置いておく、気が向い  
たら、食うが良い」  
 
 そう言うと、女はさっさと自分を残して布団に入った。どうやら、自分を単なる狐  
だと思っているらしい。傷つき、妖気が薄くなっているのが幸いした。  
 女が寝息を立て始めると、狐はのそりと毛布から這い出て、ぺしゃ、ぺしゃ。と皿  
に盛られた食物を食らった。生憎陸の肉ではない、魚の肉だったが、食べ易いように  
と磨り潰し、骨をとってあるそれは、すんなりと喉に通った。全てを食らい終え、再  
度、寝床に戻る。  
 
 法力を持つ女のもとにいるなど、お断りだが、体力がつくまで、それまでの辛抱だ  
――と、妖魔王であった一匹の狐は、野の狐と同様に、丸くなって床についた。  
 
 衣擦れの、音がした。細く開いた戸からは、薄明かりが差し込んでいる。冷やかな  
空気が髭に触れ、ふるり、と狐はその身を震わせた。ぱたん、ぱたん。という音に、  
何かと思って首を向けると、女が衣を替えている姿が目に入った。  
 女は自分が起きたことに気付かぬのか、からり、と押入れから葛篭を引き出すと、  
そこから長々としたサラシを取り出した。はさり、と帯を解き、身を覆っていた衣を  
落す。たわわな胸と、細くくびれた腰。下肢にある黒い繁みは、女の髪の如く、慎ま  
しい。大腿部は程よく、ふくらみをもっている。  
 
 こくん。と、喉が鳴った。  
 ――その胸に舌を這わせ、赤い心の臓を取り出だしたら。その平らかな腹を引き裂  
き、腸を食い破れば。大腿部の筋に、歯を立てたら――  
 
 ――それはどれだけ、美味いだろうと、狐は舌をなめずった。  
 
 女は、背後の狐がそのようなことを考えているとは思いもせずに、サラシを口に咥  
えると、片手で胸を持ち上げ、もう片手でゆっくりと、乳房にサラシを回していった。  
 豊かな乳房にサラシが巻かれて行く工程は、なかなかどうして、卑猥なものだった。  
 
 締め付けられる度に、女の肉は布から溢れ、赤い頂きが顔を出す。女も悪戦苦闘し  
ながら、手というより、腕全体を使って、サラシを胸へと巻いて行く。全てどうにか  
巻き終えて、ふぅ、と女が吐いた溜息は、何とも艶かしいものだった。  
 そうして裾の長い、尼装束へと身を包み、脱いだ夜着を整える。そこでようやく、  
女は狐が起きて、己を見ていたことにはっと気付き、頬を紅潮させた。  
 
 「お、起きておったのか!?」  
 獣に見られただけだというのに、女は男から見られたかのように、恥らった。無様  
なところを見せてしまったな。と、俯きながら、呟く。  
 
 「……醜いだろう? 私は。  
 こうも、ぶよぶよと身が膨らんで……。男と結ばれ、子を残す気も無いと言うのに、  
身はこんなにも、女であろうとしている。  
 ……浅ましい、ことだ」  
 
 何も塗っていないというのに、紅色の唇が、きゅっと、一文字に結ばれた。しばら  
くそうして沈黙していたが、顔を上げると、からからと雨戸を開き、光を室内へと入  
れた。眩しさに、狐は目を細めた。早朝の持つ冷気が、傷に響き、抗議をするかのよ  
うに、キャン! と鳴いた。  
 
 「ああ、済まない。お前は夜行のものだったな。風も冷たかろう。直ぐに閉めよう」  
 そう言い、女は愛しそうに陽の光を眺めた後、狐のためにと戸を閉めた。  
 
 女の人望あるさまは、直ぐに知ることとなった。女の元には、幾人もの人々が助け  
を求めてやってくる。女は老若男女、貴賎を問わず、それに応える。逐一丁寧に話を  
聞き、僅かな食事と、休息を取り、必要であれば経を唱える。  
 女が経文を唱えている間、自分は女の寝所に籠る。声はそこまでは届かず、傷にも  
触れなかった。  
 
 やがて、狐が動き回れるようになると、女を訪ねて来る者たちの話に、狐は耳を傾  
け、情報収集に専念するようになった。その頃には、ぎりぎりまで此処に留まり、力  
が快復したところを見計らって女を喰らい、女に成り代わる計画を進めていた。――  
彼女の元にヒミコの使いが訪ねて来ることから、女がどれほどの地位にあり、あの  
「ヒミコ」と懇意であることを知った時は、己の運の良さを、思うようになっていた。  
 
 自分が快復して行くと、女もそれに応じて食物を変えた。贅沢を言えば肉が――そ  
れも人肉が食べたいところだったか、女にとっては自分は単なる獣なのだから、仕方  
ない。  
 少しずつ、山野の茸や、魚の身がそのまま与えられるようになり、女は自分を野に  
帰すつもりに見えた。だが、その割にはどうも、自分を見て、話し掛けることが多い  
ように、思えた。  
 
 ――これが、人の子のくだらぬ「愛着」とでもいうものか――  
 そう思いながらも、女の話には益となる情報が含まれているかも知れぬと、狐は女  
が話し掛けた時、その場を退かずに、話を聞いた。  
 とある晩に聞いた話は、何とも奇妙なものだった。  
 
 いつものように女は夜着に着替え、葛篭へとサラシを仕舞おうとしていた時のこと  
だ。この頃には自分も生来の通りに夜に、動き回るようになっており、外に出ようと  
したところで、  
 「狐や」  
 と、女は葛篭を手に、自分に向かい話し掛けた。  
 
 「――この、葛篭の中には、何が入っておると思うか?」  
 狐は心のうちで眉を寄せた。中には普段、サラシを仕舞っている。だが、そのサラ  
シは女の膝上にある。ならば、サラシは空だ。何も無い。  
 何も、無いと思っておるな。と、女は目を細め、どこか悲しそうにして、笑った。  
 
 「そう。確かに、この中は空だ。何も入っておらぬ。だが、同時に入っているもの  
がある。それは、無だ。そうして、『期待――きぼう』だ」  
 女は言い、そっと、葛篭を撫ぜた。  
 
 「――否、『こころ』とでも言おうか――。  
 人はこれを見て、何も入っておらぬと思うだろう。だが、同時に『入っているので  
はないか』と思うのだよ。中は何も入っておらぬれど、その中には、人のこころが、  
入っておる。期待と、不安と、失望と、希望と――。  
 見えぬ、ということは同時に想像力を掻きたて、多くの想いを人にもたせる。中を  
知っている者であれば、どうであろうな。知っておるからと、それ以上は思わぬだろ  
うか。どうであろうか。  
 ――狐よ、今、私はな、お前を前にして、『お前がどう思うであろうか』と思ったぞ」  
 
 私は葛篭ではなく、葛篭を見つめるお前を思った。女はそう言うと、くしゃり、と  
珍しくも顔を歪ませて笑うと、かさり、と葛篭を開けた。  
 葛篭の中は、女の言った通り、何も入っておらず、女はその中に真っ白なさらしを、  
静かに入れた。暗いつづらの中に入れられた白布が、まるで一条の綱のように、目に  
映った。  
 
 女はその晩、初めて、狐のことを抱いて寝た。狐も抵抗しなかった。女がどうして  
そんな気持ちになったのか。全くもって分からなかった。  
 狐は、女の抹香臭さに顰めながらも、さらしが解かれた、豊かなその胸に抱かれた。  
とくりとくり、と、ひどく懐かしい感覚がした。ふいに睡魔が襲って来たが、どうに  
か、堪えた。ふいに胸を突く感覚があったが、それが何かは分からなかった。分かっ  
てはいけない予感があった。女の心地良さそうな寝息がしたところで、布団から出て、  
しどけなく眠る女の身を、眺めた。  
 その肌に、乳房に歯を立てたい衝動を、今は駄目だとぐっと堪え、狐は獲物を狩る  
ため、夜の中を駆けて行った。  
 
 女が寺を空ける日が増えた。どうやら西安京の主、ヒミコの元に足を運んでいるら  
しい。女が寺の門を出入りする回数を考えると、どうにも謎が多かった。恐らく、女  
王と会うための特別な手段を持っているのだと気がついた。身体の傷は癒えた。あと  
は、妖力を高めれば良いだけだ。そのためには、人肉を――それも、法力か、霊力か  
の高い人間の――を喰らえば良いだけだ。  
 幸いにも、獲物はすぐ、近くにいる。  
 狐は静かに、女を喰らう時を待った。  
 そうしてついにその日が、訪れた。  
 
 月さえもない、深い宵のことである。深夜に響く、ぼぉん、という鐘の音に、尼は  
何かと寺を出た。撞いた人影も見えず、はて? と首を傾げながらも、辺りを見回す  
と、鐘の下に蹲っている女の姿が目に映った。紙燭を手に、慌てて駆け寄り、どうさ  
れたか、と声を掛ける。  
 
 「かような夜更けに、おんな子ひとりで……如何されたか?」  
 銀杏のような黄の衣に身を包んだ女は、顔を伏せながら、胸が苦しゅうなって……  
と、ちらりと尼の顔を見上げた。目の下にぽつりと、黒子があることに気がついた。  
 それは。と、尼は女にそっと腕をかす。  
 
 「兎も角、かような場では身に悪い。寂れた寺ではあるが、どうぞあちらで。お手を」  
 はい。と、女は微かに頷き、尼の手を借り、立ち上がろうとする。拍子に、「っ!」  
と胸を強く抑え、尼へと縋りついた。  
 
 「も、申し訳ありませぬ……ツヅラオさま」  
 「――否、気にすることはありませぬ。我も非力ゆえ、身を持ち上げられぬことを  
お許し下され。さ、あちらへ」  
 女の背を支え、ツヅラオは寺へと向かった。  
 
 ひとまず本殿へと通すと、ツヅラオは女に気を落ちつかせるために一杯の白湯を差  
し出した。女はそれを受け取り、静かに口付けた。つやつやと、湯を受けた唇が輝き、  
僅かにこぼれた湯が、女の唇を伝い、ぽた、と女の衣に染みを作った。  
 自分とは対照的に、随分と色香のあるひとだなと、ツヅラオは思った。  
 
 「お加減は如何か?」  
 「ええ、お陰様で随分――かような面倒まで見て頂き、恐縮ではあるのですが、こ  
ちらで一夜だけ、泊めていただけぬものでしょうか? 夜道を行くのは、さすがに  
――この本殿に居させていただくだけで、よろしいですから」  
 
 それは構いませんが、とツヅラオは僅かに首を傾げ、問い掛けた。  
 「何ゆえ、妙齢な娘御があのような場に?」  
 「――探しものを、しておりましたの」  
 「探しもの?」  
 「ええ。それがないと、わたくし身が、優れないのです――」  
 それは、また。と、ツヅラオが言った。  
 
 「困ったことですね。して、それはどのような。薬か何か、ですか?」  
 「いえ、笛で御座います。昔よりも我が身に馴染み、最早血肉とも言って良い笛な  
のです。どうやら海に落としてしまったらしく、打ち上げられてはおらぬかと探した  
のですが、見つからず。  
 ――御存知、ありませぬか?  
 ツヅラオ様は法力の持ち主とも仰います。そのお力で、探し出すことは出来ませぬか?」  
 「……期待は嬉しいが、我が力は、そういうためのものではない、のだ」  
 
 そこを何とぞ! と、女はツヅラオの胸に身を寄せ、願った。そっと、頼るものが  
他に無いかとでもいうように、縋りつく。  
 「ツヅラオさまは、かの女王、ヒミコさまともご懇意と聞きます。ヒミコ様のお力  
でも、ご無理でしょうか?」  
 
 「あの御方の御力は、そうしたものに用いるものではない! 広く万人を見つめる  
ものであり、個々にあるためのものではないのだ!」  
 あら? と、女は僅かに、顔を上げた。きゅ、と、唇を吊り上げ、笑み作る。  
 
 「個々の幸いなくして、何が万(よろず)の幸いなのでしょうね。それにしても、  
ツヅラオ様は本当に、ヒミコ様を慕ってらっしゃる。妬けてしまいますわね……」  
 何を、と、ツヅラオは胸の中でしだれかかる、女に言った。  
 
 「あの方も、我も女だ。そのような……」  
 「だから、何だと言うのです?」  
 くつ。と、女は笑った。  
 
 「女であれば、女に劣情を抱かぬとでも? ――まさか!  
 女であろうと、男であろうと、その対象となってしまう、憐れなものは居るのです  
よ。 ――ツヅラオさま」  
 言い、女はツヅラオの唇に掠めるような口付けを落とした。やめよ! と、ツヅラ  
オは女を突き飛ばし、距離を取る。ふふ、ふ。と、後ずさりをするツヅラオに、女は  
ゆらり、と立ち上がった。  
 
 「――妖魔の、類か」  
 「ええ、類ですわ。ツヅラオ様。貴女のよくよく、知っている者です」  
 蝋燭の火がゆらゆらと揺れる。映し出されるツヅラオの影、そうして――  
 ――女の影は、そこにはなく。九本の尾を持った、狐の姿が照らしだされた――  
 
 「狐か!」  
 言いざまにツヅラオはさっと符を取り出し、呪(じゅ)を唱え女に放った。金色に  
輝く符が矢となり、女に辿りつこうとした手前で、女はくるりとその身を揺らし、同  
時に紫紺の風が巻き起こり、煽られた符は光を失い、くたり、と床に落ちた。  
 
 クカカカカカカカカ! と、風と共に声が響いた。女の身には、ヒトには有らざる  
狐の尾と、耳とがあり、その身からは符の力を奪ったと同じ紫紺の禍々しい気が立ち  
上っている。  
 
 じり、と、ツヅラオは一歩、下がった。  
 女は口角を吊り上げ、獲物をいたぶる目で、尼僧を見つめる。ぱた、と、ツヅラオ  
の滑らかな頬から、汗が伝い、床板へと落ちた。同時に、背を向け、逃げ出す。  
 
 「逃ゲラレルト思ウカ! 逃ガスト思ウカ!」  
 
 不愉快な嗤い声を背に、ツヅラオは逃げた。本堂にある、仏のためにと供えられた  
蝋燭が、女の禍風(まがかぜ)からか、しゅ、しゅ、と音を立てて消されて行く。明  
かりが徐々に減らされ、人を見守る、微笑を湛えた仏の像が、闇に紛れ、消えてゆく。  
不確かな足元に、ツヅラオはやや、たたらを踏んだ。  
 
 「あッ!」  
 と声を上げ、闇に慣れぬ眼を凝らし、自分が追い詰められたことを知る。くる、く  
るるるる。という、けものの鳴き声に、さっと、向き直る。  
 向いた先には、紫紺を纏った、九つの尾を持つ、狐がいた。  
 あまりの禍々しい気色に色を失い、思わず震える。己の命が奪われる恐怖に身を竦  
めていると、ふわり、と、ひとつの尾が、ツヅラオの頬を撫ぜた。  
 
 「ひッツ!」  
 ――折角ダ、礼ヲ、返シテヤロウ――  
 そう、声が響くと、頬を撫ぜていた狐の尾はそっと、ツヅラオの胸へと下りた。肌  
に触れるくすぐったさを感じ、身をよじる。逃がすまいと、狐の残った尾が、ツヅラ  
オの手足を縛めた。大腿部への感触に、また、短い悲鳴が洩れた。  
 
 「即説呪日 羯諦 羯諦 波羅羯諦 波羅僧羯諦!」  
 じゅう、と、何かが焼ける音が響いた。胸元にかけられた数珠が金色に輝き、闇に  
封じられていた本堂を、一瞬ながらも光で照らした。ツヅラオはたっと戸を開いて外  
へと駆け出し、月明かりのある庭を駆け、本堂裏にある、古井戸へと向かった。つる  
べ紐を手にし、するすると、下へと降りる。  
 ――ナルホド、其処デアッタカ――  
 と、声がした瞬間。爛々と光る狐の目がツヅラオの視界に迫り、何かがツヅラオを、  
突き飛ばした。  
 
 
*つづく*  
 

楽天モバイル[UNLIMITが今なら1円] ECナビでポインと Yahoo 楽天 LINEがデータ消費ゼロで月額500円〜!


無料ホームページ 無料のクレジットカード 海外格安航空券 解約手数料0円【あしたでんき】 海外旅行保険が無料! 海外ホテル