【諸注意】  
・お菊X擬人化アマタソ  
・時は完全無視。  
・お菊が微妙にヘタレで、アマタソに片想い前提発情期。  
 
未熟故表現が露骨で不快に感じる人も居ると思いますので、そうなったらどうか流して下さい。よしなに。  
 
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突如背後から聞こえた悲痛な声に、オキクルミは慌てた。  
 
今オキクルミはウエペケレから広場に構えていた家屋に戻る途中。  
それにアマテラスとイッスンの二匹が何故か同行を申し出てきて、特に断る理由もなかったので好きにさせた。  
移動手段は人型よりも獣型の方が早さも上がる為、半ばアマテラスと競争する形で駆けていたのだが、  
その間に取ったほんの少しの休憩の時に、背後から例の悲痛な声が聞こえて、オキクルミは慌てて後ろを振り返る。  
「アマテラス?!」  
「おいおい!何やってンだアマ公?!」  
同時に声を上げたイッスンは今、アマテラスの頭の上ではなく、珍しくオキクルミの頭の上に乗っていて、  
その所為で好奇心旺盛なアマテラスを止める者が直ぐ傍に居なくなってしまっていたのが、今回の悲劇を招いてしまったようだ。  
視界に入るアマテラスは口を開き出ている舌が、凍った池の氷に引っ付いてしまっている。  
氷を舐めるだなんて、元々カムイに住んでいる自分達では想像するだにしない行為だが、  
温かい気候のナカツクニから来たアマテラスにすれば、やってみたい行為の一つだったのかもしれない。  
「引っ付いてら!溶かせ水!水水ッ!!」  
イッスンの呆れながらも心配している声が響く。  
確かに触れている氷を溶かすには水の方が安全だが、生憎その水が凍り付いて今アマテラスの舌を束縛している。  
「水?!そんな物全て凍り付いてしまっているぞ…ッ」  
アマテラスの行った行為への驚きと困惑、そしてイッスンの急かす声に背を押され、冷静に思考が働かない。  
そんな時、神の囁きのようなモノが聞こえた気がした。  
獣ならよくする、怪我をした時によくするアレ。  
「な、なななな、何やってンだ!!しかもドサクサに紛れてテメッ…!!」」  
分かっていた筈なのに実行してしまった愚かな自分に、イッスンの容赦ない言葉が突き刺さる。  
幾ら冷静さを欠かせていたとはいえ、己の唾液で氷を溶かそうとするなんて…。  
そんな中悲痛に声を上げるアマテラスの声に胸が痛み、そして同時にオキクルミは正気に戻った。  
「――?!!」  
己の直ぐ目の前にアマテラスの顔があって、おまけにお互いの舌と舌が触れ合っているではないか。  
それに気が付いた途端、顔に熱が集まり始め、身体が熱くなる。  
しかし救出する筈だった自分も今や、アマテラス同様氷に舌が引っ付いてしまっている…何てお笑い種なのだろう…。  
「お前も取れなくなった!?だーッ!!お前等揃って阿呆だーッ!!おいアマ公!紅蓮だ紅蓮!炎でこの池の氷溶かすンだよ!!」  
そんなイッスンの声に呼応するように、オキクルミは自分を包み込む周りの空気が、一気に熱くなるのを感じた。  
 
あれから暫くして無事広場の家屋に辿り着いた三匹…否オキクルミが人型に戻った為正確には一人と二匹だが、  
火を灯し部屋を暖め暖を取り始めた。  
「全く…何考えてンだ。頭足りねぇにも程があるってンだィ!」  
ピョンピョン跳ねながら小言を言うコロポックルに息を吹きかけ、吹き飛ばしたい気持ちを抑えながら、  
オキクルミは壷の中に閉まっておいた二枚貝殻を取り出す。  
「こら動くな。薬が塗れん」  
貝の中には薬草から作ったオイナ独自の万能薬を入れてあり、大抵の傷ならこの薬を塗れば治る。  
だから先に自分の面をずらし舌を出し塗って見せて安心させ、目の前に座らせたアマテラスの口を開かせ舌に塗ろうとすれども、  
少なからず抵抗の色を示す。  
「口内の傷は治癒が早いといっても、塗らずに置いておくよりはいい」  
それに薬は少々苦いかもしれないが、我慢しろと言葉を付け足した。  
オキクルミはアマテラスの言葉は分からないが、アマテラスにはオキクルミの言葉が理解出来ているようで、  
時折反応するようにタイミングよく耳が動く。  
其れが理解出来たという合図なのか、それともアマテラスの生理的行動なのか、現段階では後者としてしか捉えられず、  
後に其れが重要な事になる等想像も付かずに、オキクルミはアマテラスの舌に薬を塗った。  
 
やがて日が暮れて夕餉を済ませた後、オキクルミは外に出た。  
夕暮れから吹雪き始めた所為か普段以上に冷え込むので、外に纏めて置いた薪を家屋内に持ち運ぶ為である。  
中に入れば左手の床に敷いてある敷物の上に、身体を丸めているアマテラスと、  
直ぐ隣の切り株の上に、何時の間にか椀を運び、その中で眠っているらしいイッスンに向かって小さく溜息を零す。  
そしてオキクルミは己の視線を、ゆっくりアマテラスの方に向け、それを慌てて逸らした。  
頭の中に昼間の行為と映像が流れ、また顔が赤くなる。  
(あ、あれは事故だ!馬鹿馬鹿しい…オレは何をッ…)  
心の中で自分を激しく叱咤し、面を深く被り直すと、アマテラスを起こさないように向かい側から回り込み、  
普段の定位置に静かに腰を下ろした。  
それでも時折弱い自分が顔を覗かせ、チラリと横目でアマテラスを見れば直ぐに逸らすの繰り返し。  
このままではいけないと勢いをつけて背を向け、深呼吸をして心を落ち着かせる。  
だがもう遅い。  
自分がアマテラスに対して特別な感情を抱いているのは、認めたくないものの、気付いてしまっている自分が居る…。  
しかしそれをあんな形で表してしまうのは、不埒としか言いようがなく、  
思わず叫びたくなる衝動を抑え、悶える身体を押さえつけた。  
「…何か用か?」  
不意に背後に感じた視線が、背中に突き刺さる。  
自分の事に夢中になって、異様な光景を見られていたのかもしれないと思うと、穴が有ったら入りたいとはこの事かと少々…。  
その視線の主のアマテラスはゆっくりオキクルミに歩み寄り、その周りを一周してから、彼の膝上に両前足を置いた。  
「ど…如何した?」  
アマテラスは自分の問いに答えるように、今度は腕に頭を摺り寄せてくる。  
「何だ…おい、こ…痛ッ!」  
不可解な行動に戸惑い思わず身体を後ろに倒すと、背後の柱に頭をぶつけ、その衝撃に一瞬目を閉じてしまう。  
昼間から何かと失態続きな所為もあって、らしくないと自分を更に叱咤し、  
同時にアマテラスのペースに巻き込まれてはいけないと、心に誓い目を開いた。  
「いい加減にし……」  
次の瞬間言葉を失う。  
先程まで目の前に居た白い狼の姿は無く、今自分の膝元に居るのは、雪の様に白い髪を持つ少女だった。  
「………」  
固まってしまった体の中、唯一動く瞼を数度瞬きさせた。  
纏っている衣も白という全てに置いて純白な少女の、白い肌に反する見覚えのある隈取が、頭にある獣耳が、  
オキクルミの中に生まれている其れを確信付けてくれる。  
「オレの言葉が分かるなら、首を、縦に、振れ。お前は…アマテラス…か?」  
すると静かに首を縦に振られ、オキクルミは頭を抱えた。  
「何故そんな姿……にッ?!!!!!」  
アマテラスは嬉しそうに微笑みながら、オキクルミの面を力尽くで引き剥がし頬をひと舐めしてきて、  
その思いも寄らない行為に驚いて、オキクルミはまた体が硬直する。  
暫くしてコレでもかと顔中が赤くなるのを理解する。  
慌てて面を取り返そうとするも、既に遠方へ放り投げられており、アマテラスを退かさない限り手が届きそうもない。  
かといって女を強引に退かす事に躊躇し…身体に感じる重みと感触の生々しさに、顔は更に熱くなって行く。  
こういったやり取りは大の苦手であり、出来れば避けてしまいたい。  
相手がアマテラスなら尚更だ。  
 
心臓が激しく鼓動し、擡げる下心にオキクルミは眉を寄せた。  
「アマテラス…退いてくれ」  
下手に出て願うもアマテラスは一向に退く気配を見せず、寧ろ更に身体を密着させてくる。  
「いい加減にしろッ!」  
こっちの気も知らないで擦り寄ってくるアマテラスに苛立ち、強引に押しのける。  
そんな半ば八つ当たりにも等しい行為に自己嫌悪を抱えながら、  
先程までアマテラスが座っていた敷物の上に移動し、胡坐をかいて座りなおせば、途端背後から悲哀に等しい声が上がる。  
それでも無視を決め込んでいるとアマテラスは裸足の二足でゆっくり近付いて、  
オキクルミの膝の上に、先の仕返しをするかのように強引にのし上がり、ちゃっかりと腰を下ろした。  
その行動にオキクルミは己の膝に柔らかな尻の肉感を感じ、益々動揺してしまう。  
「お、おい……何でここに座るんだ」  
改めて彼女の腰に手を回せば、折れてしまいそうな程細い身体だと妙に感心すらしてしまう。  
「離れろ…さもないと…戯れの域を越えるぞ」  
その言葉にアマテラスはオキクルミの手を取ると、まるで肘掛の様に自分の腕と重ねてきた。  
互いの指と指が絡ませ、遊び始める。  
指と腕は驚く程白く細く、自分の胸に背中を預けて楽しげにしているアマテラスの頭が揺れる度に、  
柔らかい白髪が肩から流れ、花の甘い匂いがオイナ族の鋭い嗅覚を刺激してくる。  
「…お前は一体何がしたいんだ…」  
こんな時イッスンが居れば通訳してくれるのにと、救いを求めるように視線を向ければ、  
彼の寝ていたお椀が何時の間にか逆向きになっており、多分彼はその逆さまになったお椀の中に閉じ込められているのだろう。  
しかも丁寧にその上には別の切り株が乗せられている。  
(出られん事も無いだろうが…一体何故?)  
「………」  
そんな事を考えているうちに、下からとてつもなく熱い視線が向けられているのを感じる。  
その真っ直ぐな瞳は己の中の邪な気持ちに気付いているのか…どうだろう。  
それにしてもやけに嬉しそうに微笑むアマテラスの笑みに、己の理性の壁が壊れかかるが、  
それを何とか建て直し、首を横に激しく振る。  
(…コレはオレに対する試練か…クトネシリカよッ!!)  
オキクルミはそんな心の叫びを上げながら、また頭を抱えるのだった…。  
 

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