赤い顔で睨まれた、の後
「そうだな、チョコならまだ……」
口の中の温度に柔らかくなったチョコレートを舌先にのせながら
俺は海老塚の首筋に噛み付いた。
「ぎゃあ!けだもの!」
突然のことに海老塚が押し返そうと強張らせた抵抗する腕を抑えて
チョコレートを押し付けるようにして舌で肌をなぞる。
と、カカオバターの香りが彼女の白い首筋に色をつけた。
「ほんと、美味しそうだな、このチョコ」
と意地悪く笑ってみせれば、海老塚は耳まで真っ赤に染めて
「坊主のくせに煩悩まみれ」
と悔し紛れに悪態をつく。それがまた、可愛い。
その唇をもう一度重ねて塞いでやれば、言葉とは裏腹に
絡めとるように海老塚の熱い舌に歯列をわられ口内をなぞられて
俺は急に照れてしまいそうになる。
こんなに海老塚が頑張ってくれる事なんてはじめてなのだ。
お互いの味がもう濃厚なチョコレート。
まごうことなきバレンタイン。
あそこにチョコを塗ってチョコバナナ、なんてバカな考えがよぎったが
絶対に嫌われてしまうだろうから想像の中だけにして
それでも、口でお願いしますと言ってみよう、と
キスをしながら煩悩を確実にふやしつつ俺は思っていた。