この間の大会の時だったよ。
自分の試合が始まるまで、
偵察がてら他の試合を見ておこうと思ったんだ。
辺りを見ると奥の方の試合会場で石塚サンと姉さんがを見つけたから、
俺もそっちの方へ向かったんだ。
2人が俺に気づいたかどうかはわからないよ。
試合に集中してたみたいだし、俺が近づいても
振り向くことはなかったからね。
それで、試合を見てたらさ。
試合の途中辺りから2人が
何か落ち着きなくなってきて……
姉さんは試合中だってのにしきりに石塚サンの方を気にしていて、
石塚サンも姉さんの方は見ないけど何かおかしかった。
それでちょっと下に目線を落としたら、石塚サンの手が
隣にいる姉さんのお尻に当たってたんだよ。
いや、当たってるというよりは触っていた。
時折掌が小さく回るんだ。お尻を撫で回すカンジに…。
もうそこからは試合の内容なんてまるで覚えていない。
試合の応援や歓声で会場はかなりうるさかったんだけど、
俺の耳は2人の発する音だけに集中してしまっていたんだ。
姉さんが「ちょっと石塚クン」って言ったのは聞きとれた。
困ったような恥ずかしそうな声だった。
そうしたら石塚サン「だ、だめかな」って。
ダメに決まってるでしょうが石塚サン!試合中ですよ!
姉さんの後に続いて俺もそう言おうと思ったさ。
その時点で俺、姉さんは絶対拒絶すると確信してたんだよ。
普段から悪ふざけとかあまり寛容な方じゃないし、
さらに今俺達がいるのは試合会場だ。
柔道に関してはことさらシビアな姉さんだからね。
でも姉さん、「もう…」って言ったきり黙ってしまったんだ。
一瞬耳を疑ったよ。
姉さんは石塚サンの行動を許容したんだ…。
そこからはもう2人から目が離れなかったよ。
石塚サンの手がお尻を弄る度に、
姉さんが硬直したり肩をちょっと上げたりと
小刻みにリアクションするのがイヤらしかった…。
石塚サンの指がちょうど姉さんのお尻の谷間に
入り込みそうなところに当たっていて、
今にもその奥へ入ってしまいそうな、だけどその先には
中々進まず、それをとてももどかしく感じてしまっている自分がいた。
その奥に侵入した時、姉さんはどんな反応を見せるんだろう――
そんなことを思ってしまっていたんだ…。
試合時間も終わりそうな頃には、石塚サンの手に弄られ続けた
姉さんのお尻は、汗か何かで柔道着がピタリと吸い付き
丸いラインを浮かび上がらせていた。
俺にとっては『女性』ではなく『姉』だった
袴田今日子という存在が、
石塚サンによって『女』にされてしまっていた。
俺にはわからないやり取りが2人の間があったのか、
試合をしてる訳でもないのに姉さん達の息は荒くなっていた。
俺は見てはいけないものを見てしまったような後ろめたさを感じて
気づかれないうちにその場から去ることにしたんだ…。
あの日から俺の中で姉さんの存在が以前と変化してしまった。
2人でいると何か気恥ずかしくて顔を見れず、
いざ顔を合わすとあの情景が脳裏に甦ってきてしまうんだ。
耳を真っ赤にして石塚サンにいいようにされるのを
じっと受け入れる姉さんの姿が――
あの綺麗なヒップラインが忘れられない。
あの恥ずかしそうに身をよじる姉さんを…
と、今ちょうど姉さんが帰宅したみたいだ。
顔をあわせるとまた妙な雰囲気になりそうだから出かけようか…。
今日も暖かかったし、汗を流しにすぐに浴室へ行くはず。
浴室のドアが閉まる音がした。
さぁ今のうちに出かけよう……どこかで時間を潰していれば、
いやちょっと待ってくれ、その考えはおかしい、相手は姉さんだ
小さい頃から一緒に住んでる姉だ、何も感じる訳がない
姉相手にそんなことを考える弟なんてありえない
でも足が止ま