「レオナール卿」  
やつれた人々の中から、女の声がする。  
バルマムッサへ移動するーーさせられるボロきれのような人間の集団の中から、女が一人やってくる。汚れたワンピースに若々しい身体を隠して。ガルガスタン人兵士に囲まれている男のところへ。  
憔悴した顔に平服をまとった男、それでも騎士の雰囲気を失わない男が、彼女のほうを見る。  
「アロセール、どうした」  
「お話がございます」  
騎士は相手の目を見て思考を巡らす。女と騎士の目から目へ、なにかが流れる。  
「おい、女。その男に近づくな。それ以上近づいたらお前も逮捕するぞ」  
「婚約者だ。自治区へ移動する」騎士の声は静かに響く。「話をさせてほしい」  
「そうか。・・・よかろう、許可する」ガルガスタン軍の兵長が頷いた。「ただし、10分だけだ」  
「ありがとう」  
「ただし、おかしな真似をしたら女も巻き添えだ。いいな、レオナール卿」  
「承知した」  
兵士に監視されながら、ふたりはアルモリカ城へ入る。  
ガルガスタン軍の兵士の1人が自国訛りで「豚どもめ」とつぶやくのが聞こえた。  
 
アルモリカ城の入り口付近の一室。装飾は剥ぎ取られ、生活の気配は消えている。表からは足を引きずって歩く人間たちの足音が聞こえてくる。  
騎士が壊れた扉を閉める。閂はもうかからない。  
「危険なことを」  
女が騎士に抱きつく。「あなた」  
騎士は女を抱き締める。女は鍛えられた腕でしっかりと騎士を捕まえて、うめくように男の名前を呼ぶ。熱い声で。  
「・・・そんなに心配することはない。また会えるさ」  
「嘘」女は震えていた。「私にはわかってる。あなたは処刑されるんだわ」  
「私はやらねばならぬことをやっただけだ」  
「私を捨てるのも、そのうちだというの」  
騎士は女の髪に両手を差し込んで、その美しい顔を上に向かせる。額が触れ合い、それから唇が重なる。  
「・・・生き延びるんだ、アロセール」  
女は泣いておらず、騎士の目を見つめている。  
「兄が怪我をしていなければ、あなたと共に戦えたのに。一緒に・・・死ねたのに」  
「そうでなくてよかった」騎士の声はやはり静かに響く。「さあ、もう行きなさい。疑われる」  
「あと、5分あるわ」  
 
女が騎士の胸に手を置く。騎士の手は女の腰に滑り落ちる。  
ふたりは部屋のテーブルに移動し、女が仰向けに背中を乗せる。  
「聞かれるぞ」  
「構わないわ」  
騎士が女の首筋に顔を埋める。女の下腹には、硬いものがしっかりと当たっていた。  
「愛してる」  
「ああ、あなた」女が騎士の首を抱いた。  
女はストッキングをはいていなかったので、スカートの下に入った騎士の手は太腿に吸いつけられる。かすかに香水の匂いがする。女は張りのある乳房を上下させている。男の胸がそれをおしつぶす。  
騎士の手が女の下着を丁寧に引き下ろしていく。  
「はやく私の中に」女が騎士の髪をかき回す。「はやく」  
騎士は帯を解いて女の太腿を引き寄せる。女の尻がテーブルの端まで引き寄せられる。騎士の腰がぐっと前に動いて女の腰にぴったりと合わさって、女の太腿がその腰をぎゅっと挟み込む。  
「ああ・・・レオナール、レオナール」  
騎士のものは熱い岩のような硬さで、女は白い喉を反らしてその感触を確かめている。ふたりは息を荒らげながら裸の腰をぶつけ合う。騎士の手が女の胸に伸びる。布一枚の下に直接こりっとした女の感触がある。騎士はそれごと肉のかたまりを手のひらに包んで、乱暴にこね回す。  
「う・・・あ・・・」女の声は熱く潤み始めている。「もっと、もっと強く。跡が残るぐらい」  
騎士は女のワンピースを思い切りたくし上げ、胸まで一気に露にする。腰を動かしながら身体を曲げ、揺れ動く乳房に歯を立てる。  
「ああ、そう、そうよ、あなたの跡を残して。私の身体にあなたを」  
騎士は汗で汚れた身体を美しい女の肌に押しつけて、若い弾力に満ちた肢体のすべてを味わうように嬲り始める。女は苦痛と快楽に喘ぎながら、男の首にしっかりと手を回している。  
「ううっ・・・」男がうめく。  
女はすかさず足を男の腰に絡めて、必死でしがみつく。「だめ、そのまま」  
男は動きを止めようとする。女は腰を自分から動かして、男を激しく導こうとする。  
「いけない・・・君はまだ若い」男はうめく。「離してくれ。・・・他の男を」  
「だめ。絶対にだめ。このまま、ふたりで」  
 
アルモリカで最高の弓使いと言われた女が、淫らに喘ぎながら水音がするほど腰をくねらせる。男は息を止めていたが、一声喘ぎを洩らしたかと思うと狂ったように女の身体にしがみつき、押し倒して腰で弓使いを攻め始める。  
「あ、ああ・・・!」  
弓使いの身体がギュッと締まってのけ反り、男がその身体を折れるほど抱き締めながら熱い息を吐き出す。迸る熱いものが男根から胎内へ流れ込む。爪が男の背中に傷をつける。テーブルの上に熱い液がゆっくりこぼれ落ち、ふたりの匂いが部屋の中に満ちていく。  
男の顔が喘ぐ美貌に近づき、濡れた唇に吸いついて、舌を絡めていく。  
 
「時間だ」兵長の声がする。「出てこい、レオナール卿」  
「わかった、いま行く」  
男は服を直し、弓使いのワンピースを戻してやる。火照った身体を抱き起こして最後のキスをする。  
弓使いは汚れた人々の群れの中に飲み込まれていく。男はそちらを見ながら、腕を取られて牢獄へと歩み去る。  
弓使いは泣いていなかった。  
 

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