序章(?)「僕に彼女を汚せと言うのか」  
 
「いい加減に話すんだ。ニバスはどこにいる!?」  
 
ヴォルテールは壁に拳を叩きつけ、語気強く目の前の美女に詰問した。  
美女の名はモルドバ、アルモリカ監督官ニバスの腹心であり、  
クリザローの町で解放軍を足止めしていた指揮官である。  
だが、ヴォルテールがいくら迫ろうともモルドバは言葉一つ発しない。  
 
「私も騎士の端くれ、女性に手荒な真似はしたくない。  
素直にニバスの居場所を言えば待遇の改善も具申してやれる。あなたのためでもあると思うが?」  
 
だがモルドバは黙秘したままである。  
 
「屍術師ニバスは神をも恐れぬ魔術を操り魂の尊厳を汚す。  
奴にとっては部下など使い捨ての駒、現にあなたも見捨てられた。  
なぜそこまでしてかような邪悪な徒に忠義を尽くすんだ」  
 
だが、ニバスのこととなるとモルドバは激しい怒りの眼をヴォルテールに向ける。  
 
「ニバス様を侮辱するなッ!! あの方は貴様などの理解の届かぬ所にいるのだ!!」  
「うっ……」  
 
結局、ヴォルテールは引き下がった。  
 
「難儀していますね」  
「ああ……、世話をかけるねフェリシア」  
 
僧侶フェリシアがヴォルテールに差し入れを持ってくる。  
そのとき、フェリシアがモルドバに激しい敵意の視線を投げかけたことをヴォルテールは見逃さなかった。  
やはり、実父のように慕っていたプレザンス神父の死が堪えているのだろう。  
彼女にしてみればモルドバは親の仇のような存在だ。  
 
「なぜ、こういった道具を使わないのですか?」  
 
フェリシアは尋問室につき物の「道具」を見ながら冷ややかに言う。  
 
「き、騎士道精神に反する」  
「しかし、ニバスの居場所を知ることは急務なのでは?」  
「う……」  
「それに、ヴォルテール様ご自身の評価にも影響が出るのではないでしょうか」  
 
ヴォルテールは代々騎士を輩出した名門に生まれたが、正直言ってうだつが上がらない。  
クリザローで生き残ったのも前線に回されなかっただけで、  
彼よりも実力十分な戦士達がクリザローの戦いで命を落としている。プレザンス神父もその一人だ。  
その甘いマスクから女性からの人気はそれなりに高いが、男性からは外面だけの軟弱者と言うのが彼の評価である。  
それだけに、少しでも点数稼ぎをしようとモルドバの尋問を買って出たが、成果は芳しくなかった。  
 
「い、いや、やっぱり乱暴は良くない。うん」  
(不甲斐ない男ね……)  
 
フェリシアはため息をつくとモルドバに近付いていった。  
 
「ま、待ちたまえフェリシア。聖職の身であるあなたにそんな事をさせるわけには……!!」  
「あら、何もこの方を痛めつけようという訳ではありませんわ」  
 
フェリシアはそう言ってクスクス笑うと、懐から短刀を取り出し、モルドバの囚人服を切り裂いた。  
 
「な、何をする!!」  
 
驚いたモルドバは抗議の声をあげるが、縛られた身では何も出来ない。  
フェリシアはそのまま服をモルドバから剥ぎ取る。  
ヴォルテールはフェリシアを止めようとしたが出来なかった。モルドバの美しい肌に見惚れていたからだ。  
 
「痛めつけるのが嫌なら……、こういうアプローチはどうですか? うふふ」  
 
微笑むフェリシアと羞恥に震えるモルドバ、ヴォルテールはモルドバのたわわな乳房から目が離せないでいた……。  
 
「ふ、ふああぁぁっ!  
(ふん、男なんてみんなこんなものね)  
 
フェリシアは絡み合うヴォルテールとモルドバを冷ややかに見ながら一人ごちた。  
ヴォルテールは息を荒げてモルドバを地面に組み敷くと、その胸に吸いつき、手で女の秘所を弄っている。  
 
「あ、ひ、やあ、そ、そこはぁッ!だ、駄目ぇッ!!」  
(いい気味だわ。神父を殺した報いよ)  
 
孤児だったフェリシアを愛情豊かに育ててくれたプレザンス神父。  
その命を奪った憎い女がヴォルテールのような「程度の低い」男に陵辱されるのは何とも愉快である。  
 
「あ、あぐぅうっ……、ニバスさまぁ……」  
 
ヴォルテールの肉棒がモルドバを貫く。彼なりに優しく扱ったつもりだが、  
それでもモルドバは激痛でうめく。  
秘所から流れた血は彼女の純潔が汚されたことを意味した。  
 
(処女だったんだ……意外ね。それにしても痛そう……。やっぱり初めてって痛いんだ……)  
「あ、ああっ!! や、優しく、優しくしてぇ……」  
 
涙を流して懇願するモルドバ。ヴォルテールはその声にぎこちなく頷くと、ゆっくりと腰を上下させる。  
その度に悲鳴が尋問室に響き渡り、その度にヴォルテールは謝罪の言葉を呟く。  
だが、声が外に漏れることは無い。ここは尋問室、悲鳴など「あって当たり前」の場所であり、  
精神衛生上のために防音措置は万全なのだ。  
 
(う、うわぁ……、す、すご……)  
 
フェリシアは知らぬうちにこの光景に見入っていた。  
気付かぬうちに手を自分の女性自身に当ててこすり付けている。  
ジワリと濡れるのを指先を通して感じるが、二人に夢中のフェリシアは気付かない。  
 
「ああ、あぁぁん!に、にばすさまぁ……」  
 
モルドバはその虚ろな眼でニバスを見ているのだろうか、その声は切ない。  
ヴォルテールの方は出来るだけ彼女を傷付けないように、その素肌を愛撫する。  
荒い息遣いで脇をたどり、背に手を回し、胸をまさぐり、乳首を掴む。  
幾度か彼女の性感帯を刺激したのか、その度に喘ぐモルドバ。  
そして絶え間なく続けられていた腰の動きがゆっくりと加速されていく。  
モルドバの喘ぎにはだんだんと痛ましさだけでなく艶も混じるようになっていった。  
 
(初めてって、痛いだけって話、聞いた、けど……。  
ひょ、ひょっとして、あ、あいつって、け、経験、豊……富?)  
 
この短い時間で、フェリシアの頭から復讐の二文字は消えていた。  
 
もう何も考えずに自分の胸や股間を弄繰り回している。  
フェリシアの指の動きの加速と共にモルドバの喘ぎも甲高くなってくる。  
もう誰が見ても、彼女は激しい快楽と興奮の渦中にいた。ニバスの名すらもはや彼女の口から出ることは無かった。  
 
「あああああぁぁぁッ!!」  
 
絶叫が響き渡る。  
モルドバは目を見開き、ビクンと体を弓なりにのけぞらせ、しばらく痙攣させるとぐったりと床に倒れた。  
同時にヴォルテールもモルドバの膣内に精を吐き出す。  
だが、ヴォルテールの頭にあったのは射精による開放感でも、モルドバの純潔を奪った達成感でも無く、  
彼女を汚してしまった罪悪感と、彼女が満足してくれたかどうかに対する心配だった。  
とは言え少なくとも後者に関しては、ヴォルテールの肉棒を激しく締め付ける膣が答えになっていた。  
 
そしてフェリシアもまた、自慰による絶頂に達していた……。  
 
「クァドリガ砦だ。ニバス様はそこにいる」  
 
気を取り直したモルドバは予備の囚人服を着るとフェリシアにそう言った。  
 
「良く話す気になりましたわね。やはり、その……」  
 
フェリシアは横目でちらりとヴォルテールを見る。彼は部屋の隅でうずくまってブツブツ呟いていた。  
 
「別に、いいきっかけだっただけだ。使えない道具として切り捨てられた立場を認識する、な……」  
「そうですか……」  
 
それでもモルドバはヴォルテールを横目でちらりと見ると頬を染めた。  
 
「それと、ニバス様は……、なるべく殺さないでくれ、私にとっては、恩人なんだ」  
 
一瞬プレザンス神父の顔が脳裏によぎったフェリシアだが、数瞬の逡巡のあと、頷いた。  
モルドバは詳しい情報を話すために拘束されたままフェリシアに連れ出され、  
尋問室にはヴォルテールのみが取り残されていた。  
 
「わ、私は何と言うことを〜〜〜、騎士でありながらぁ……」  
 
尋問室にその呟き声はずっと響き渡っていた。  
 
 

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