コンコン。  
 シェリーが軽くドアをノックした。少し待たされて、ドアが開く。  
「──!!」  
 中から現れたミルディンが驚いていた。と、同時に身体をずらして  
シェリーに中に入るよう促す。シェリーが中に入ると同時に、急いで  
ドアを閉めた。シェリーは結構酔っていて、足取りが少々おぼつかない  
感じだ。それでも遠慮無く部屋を物色し始めた。  
 二人用の寝室だが、一般兵の部屋より広い。ベッドも一回り大きかっ  
た。壁際には、棚や二人用のテーブルと椅子がある。入り口に近いベッ  
ドの横に、鎧と剣が無雑作に置かれている。どうやらミルディンはベッ  
ドに座って武具の手入れをしていた様だ。  
「へぇー……結構綺麗にしてるのね」  
「……どうしてここへ?」  
「だぁーって……食堂で待ってても全然来ないからぁ、こっちから来て  
あげたのよぉ」  
 シェリーがプンプンとむくれてみせる。ミルディンがこっそり溜め息  
をついた。  
「……ギルダスが居たらどうするんですか?」  
「どうするってぇ……外へ叩き出すに決まってるでしょ?アタシ達の邪魔  
しないでって……つったって、どうせ女口説いてて朝まで帰って来ない  
んでしょ?アタシ知ってるんだからぁー」  
「……それと、『食堂で待ってて下さい』とは一度も言った覚えがあり  
ませんよ」  
「あら?貴方はご飯食べないの?呑んだりとかしないの?」  
「そりゃ飯は食べますけど、一般兵の食堂ではあんまり……」  
「そうなの?なら待ってて損したわ。……責任取ってくれる?」  
「……」  
 少しよろけ気味のシェリーが椅子にどっかり腰掛ける。  
「……お茶でいいですね?」  
「お酒無いの?」  
「……それ以上呑んだら潰れますよ」  
「フン」  
 またもやシェリーがむくれる。ミルディンは苦笑いしながらも、手際  
良く茶の支度を始めた。その姿をまじまじと見つめるシェリー。  
 鎧の下に着る厚手のシャツにズボンという軽装なミルディン。普段  
横に並んでいるのがマッチョなギルダスなので、ほっそりと痩せて見える  
が、武人らしい筋肉がしっかりついているのをシェリーは知っている。  
──その背中に無数の鞭の痕があることも。  
「いつ見ても、ハンサムね」  
「……褒めたってお茶以外出しませんよ」  
「なぁーんだ。つまんないの」  
 暖かい湯気が立ち上ぼり、シェリーの前にカップが一つ差し出される。  
「二日酔いを防ぐお茶ですよ」  
「んー、ありがと」  
 シェリーがカップを両手で持ち、ふーっと息を拭きかけて冷しながら  
コクンと一口飲んだ。ほんのり甘いけれども後に残らないから飲み易い。  
「……美味しい」  
「そうですか……で、ここへ何しに来たんですか?」  
「え……ええっと、ちょっと……そのー……顔が、見たかったの」  
 途端にシェリーは顔を赤らめた。火照って熱い。さっきまでの勢いが  
何処かへ飛んでいってしまった。  
「……本当にそれだけですか?」  
「え、ええ……」  
「じゃあ……ちょっと意地悪い事してしまったかな?」  
 
「?」  
「……実はそのお茶、ちょっと副作用もあるんです」  
 ミルディンが意地悪そうに微笑んだ。シェリーが慌ててカップから  
口を離す。さっきから火照りがとれない。  
「えっ?!何?」  
「……いや、大した事はありません。……軽い催淫作用があるだけです  
から」  
「──!」  
 シェリーが大きく目を見開く。カップには既にあと一口分位しか残っ  
ていない。さっきまでの酔っ払い気分が一気に冷めた。心臓がドクドク  
と波打ち、身体が熱くなる。火照って顔が真っ赤になった。  
「……そろそろ副作用が出始めましたか?何でもなかったら、全部飲み  
干していただけるといいんですが」  
 シェリーはミルディンに言われるまま、カップの残りを全部飲んだ。  
身体が芯から熱くなり、火照った顔がますます赤くなる。  
「……どうやら良さそうですね。さあ立って」  
 シェリーはふらつきながら立ち上がる。まるで自分の身体じゃない  
ようだ。  
「服を脱いで、ベッドへ行きなさい」  
 シェリーはミルディンの命令口調に逆らえず、膝より上まであるブーツ  
を脱ぐ。ワンピースの革紐を緩めて一気に肩から滑り落とした。下着  
だけになって、ちょっと手が止まった。  
「それも、ですよ。全部脱いでしまいなさい」  
 追い撃ちを掛けるように命令が飛ぶ。再び手がのろのろ動き、下着  
も脱いだ。一糸纏わぬ姿で、シェリーは立ちすくんでいた。羞恥心と  
茶のお陰で白い肌がうっすらと桜色に染まる。  
「あ、ちょっと待ってください」  
「?」  
 シェリーの後ろにミルディンが歩み寄る。  
「──きゃっ!」  
 いきなりシェリーの目に布が巻かれ、視界を奪われた。後ろで布を  
縛る音がする。  
「それと……こちらもっと」  
 更に両腕を捕まれ、後ろに廻される。両方の手首を合わせ、そこにも  
布がしっかりと巻かれた。  
「ちょ、ちょっと……何、するの?……」  
「これで出来上がりですね──よいしょっと」  
 ミルディンは、何が起こったのか分からず混乱しているシェリーを  
軽々と抱き上げると、ベッドにポンと落とした。漸く自分の状態を理解  
したシェリーはベッドの上に起き上がる。  
 
「……な、何するのよっ!こ、こ、これ外してよっ!」  
 返答がない。さらさらと衣擦れの音だけが聞こえる。シェリーの心は  
不安で一杯になった。  
「ね、ねぇ……何処にいるの?……怖い……」  
「……ここですよ」  
 シェリーの右耳にそっとミルディンのささやき声が聞こえた。そのまま  
背中から抱きしめられる。たったそれだけの事なのに、シェリーには快い  
愛撫のように感じられる。  
「あっ……」  
 シェリーの身体が更に熱くなる。ミルディンはもう一度右耳にささやく。  
「いつ見ても、美しいですね」  
「あ……はぅ」  
 ミルディンは、シェリーの耳たぶを軽く噛み、うなじに唇を這わせる。  
それ位の愛撫でもシェリーにとってはかなりの刺激だ。心臓が激しく  
動悸を打ち、顔が火照る。  
「んっ……あっ……ひぃっ!」  
 唇はうなじをゆっくりと降りていき、首の付け根で一瞬止まる。背中  
を軽く押されると、シェリーは力無く倒れ、うつ伏せに寝転がされた。  
背中にくちづけされ、思わず悲鳴にも似た声が漏れる。  
「今夜はいつもより随分感じやすくなっていますね。……もっと大きな  
声を上げてもいいんですよ」  
「……ねぇ……これ取って……お願い……もぅ変になりそう」  
「駄目です。もっと変になって乱れてください」  
「もう……意地悪……」  
 ミルディンはシェリーを背中から抱きすくめ、さっきとは反対側の  
うなじを舐め上げる。シェリーは思わず起き上がりそうになった。まだ  
触れられてもいない乳房の頂が疼き始めている。それをミルディンが  
見逃すはずが無かった。  
「おやおや、こんな所が触って欲しがっていますね……」  
 背中から廻された手が乳房を捕らえる。  
「んー……やんっ!」  
 大きな武人の手からも溢れそうに張っている乳房を揉みしだかれ、頂を  
弄られると、シェリーは気が遠くなりそうになる。素早くミルディンが  
シェリーの向きを変え、倒れないように肩を掴む。顎を持ち上げて唇同士  
が触れ合った。お互いに舌と舌を絡ませあい唾液を吸いあう。ひどく甘い。  
「はぅー……ひぃっ!」  
 今度は正面から乳房を揉まれ、再び頂を摘まれる。強い刺激を受け、  
シェリーは悲鳴に近い喘ぎ声を漏らして仰け反った。身体を支えるように  
ミルディンの左腕が背中に回される。右手で左胸を揉みしだき、もう一度  
唇にキスを落とした。  
「……さて、こちらの方もちょっと楽しませて貰いましょうか」  
 唇を離し、ミルディンはシェリーの頭を掴んで自分の中心へと導く。  
「……手だけでも外してよ……うぐっ!」  
 いきなりシェリーの口に、固くなり始めたミルディンが侵入してきた。  
シェリーは精一杯口を開き、ソレを迎え入れる。口の中が一杯になっても、  
全部飲み込めない。歯を立てないように慎重に舌を這わせ、吸い上げる。  
「ウッ……とっても上手ですよ……」  
 ミルディンの手がシェリーの頭を、髪を撫でる。要領を得たシェリーが  
口からソレを出し入れし、丁寧に舐め上げている。そそり立つソレは固さ  
を増し、一回り大きくなった。  
 
「……もうこの位にしておきましょうか。貴女も我慢の限界でしょう  
から……」  
 ミルディンはシェリーの頭を掴んでソレから引き離し、ペタンと座  
らせる。寝転がらないように膝を立て、股を広げさせて秘所をあらわに  
する。そこは既に蜜が溢れていて、ベッドまで濡らしていた。  
「イヤ……恥ずかしい……」  
「もうこんなにドロドロになって……いやらしいですね……」  
 そう言いながら手を秘所に伸ばし、ひっそりと隠れている熱い花芯に  
触れた。  
「ひぃあぁぁぁ……っ!」  
 悲鳴に近い叫び声を上げ、シェリーは足を閉じようとする。が、足に  
力が入らない。そのままミルディンのなすがままに秘所をまさぐられて  
いた。  
「……ここも準備はできているようですね……本当にいやらしい身体だ……」  
 花芯から指を滑らせて、蜜壷に入れる。何の抵抗もなくするりと入った。  
最初は人差し指。そして中指も。一番感じやすい所に触れると、蜜がどっ  
と溢れ、ベッドまで濡らした。  
「あふっ……あんっ……」  
 クチュクチュと音を立てて、蜜壷の中の二本の指がうごめいている。  
確かに、シェリーは限界のようだ。  
「……そろそろ、ですかね?」  
 二本の指がするりと蜜壷から抜け出す。蜜だらけの指が軽く花芯に  
触れる。  
「あぁぁぁーっ……も、もう駄目ぇーっ!……」  
 突然、ミルディンは手を離した。シェリーには見えないが口許が意地  
悪そうに微笑んでいる。シェリーは身体に力が入らず、ガタガタと震え  
ていた。  
「あ……何処?何処にいるの?」  
 快感が波のように引いていき、不安が広がる。手を伸ばしたいがそれ  
すらできない。  
「さあ……どうして欲しいですか?」  
 肩に腕を廻したミルディンがそっとささやき唇を吸う。またゾクゾク  
と背筋から快感が打ち戻ってきた。  
「……い、入れて、入れて欲しい……お願い……」  
「それが人に頼む言い方ですか?」  
 再び、唇が吸われる。それだけでも、蜜壷から蜜が溢れる。  
「はうぅ……はぁ……」  
「さあ、もう一度言って下さい。どうして欲しいんですか?」  
「……い、入れて、下さい……」  
「『お願い』は?」  
「……お願い……します……」  
「上手に言えましたね。良い子です」  
 ミルディンはシェリーの腰を抱き自分の中央に導く。と、同時に腰から  
手を離し、一気に貫いた。  
「ひぃあぁぁぁぁーっ!」  
 シェリーが獣じみた悲鳴を上げる。それにはお構いなしに下から子宮  
まで一気に突き上げるミルディン。そのリズムに合わせるかのように自ら  
も腰を揺するシェリー。二人一緒に快楽を貪りあう。  
「イ、イキそう……ああん……あ、もうダメぇーっ!」  
「ウッ……クッ……」  
「イッちゃう、はぅぅ、イクっ、イクゥゥゥッ!」  
 シェリーの頭の中が真っ白になる。と同時にミルディンもシェリーの  
中に精を吐き出した。──  
 
 
「ふう……キツかったぁー」  
 漸く目隠しと手首の戒めを解いてもらい、シェリーは少し大げさに  
両手を伸ばした。そして、まるで飽食しきった猫の様に満足げに微笑  
む。ミルディンはそんな様子を苦笑しながら見つめ、そっとシェリーを  
抱き寄せた。  
「そんなにきつかったですか?痕は残ってませんが」  
「え……あっ……そうじゃなくて……莫迦」  
「フフッ……キツいと言う割には満更でもない様でしたが」  
 ケロっとした顔でミルディンが意地悪く微笑むと、シェリーの顔は  
みるみるうちに赤くなり思わず誰にも──ブランタにさえも──見せた  
事の無い恥じらいの表情を浮かべ、思わずミルディンの胸に顔を埋めた。  
その背中を優しく撫でてくれる大きな武人の手。  
「……今夜は、良く眠れそうですか?」  
「そうね……夢も見ない位ぐっすりと眠れそう……はふ」  
「このまま寝てしまっても良いですよ。時間が来たら起こしてあげます  
から」  
「ウン……ありがと……」  
 シェリーは既にうつらうつらして、瞼を閉じる。すぐに軽い寝息を立  
てた。ミルディンはそんなシェリーを慈しむかのように見つめ、微笑み  
ながら布団を掛けた。  
 
 

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