それはいつも夜に聞こえる。特に神経を研ぎ澄ませているわけではないのだが―――、  
ただ、気づいてしまうのだ。いつも。  
夜の帳も下りた頃、ドアの開く音、そして閉まる音。続く小さな足音。  
向こうのベットではマジクが背を向けて眠っている。  
規則正しく上下する彼の体が薄暗い闇の中でぼんやり見えた。  
 (またか……)  
ギシリ、とベットを軋ませて体勢を変えながら、オーフェンは一人ごちる。  
彼女が深夜に部屋を出るようになったのが「いつも」になったのは、一体いつからだったのか。  
 (…考えなくてもわかる事じゃねえか…)  
そう、あの日からだ。彼女が「彼」を殺してしまった日。  
その日の夜から、彼女はどこかへと出て行くようになっていた。  
 (…結果論とはいえ、結局は自分で手を下しちまったわけだしな。  
…仕方ないっちゃあ、仕方ない状況だったんだが)  
今でも思い出す、彼女のあの時の顔。  
『どうしたらいいのかな?』  
普段と変わらぬようにも見えた、しかし嘲るようにも見えたあの微笑み。  
変わらないものなどなにひとつないとわかってはいても、――変わって欲しくはなかった。  
しばらく天井を見ながら思いをめぐらす。  
実際問題彼女にはあの黒い子犬がついているのだから、何時外出しようと特に心配する必要はない。  
必要はないのだけれど―――  
(やっぱ心配だよな…。つーかいつまでもこのままってわけにもいかねーだろ)  
思い切って上半身をがばりと起こす。  
寒い季節でないとはいえ、温もった布団から出て感じる外気はひんやりとしていた。  
そのままそっとベットから抜け出し、マジクを起こさないようにもそもそと着替える。  
 (さて…)  
ゆっくりとドアを開け、音を立てないように閉める。  
 「…どこいったんだろーな、あいつは」  
それだけぽつりと呟くと、オーフェンは足早にそこから動いた。  
 
宿屋の屋上に彼女はいた。  
弱いとはいえ、冷たい風が吹いているというのに、  
彼女は白いキャミソールのワンピース一枚で突っ立っている。  
頭の上には黒い小さな塊。傍目から見たらただの子犬に見えるのだろうが、  
あれは旧世界・旧時代から何者にも敗れたことのない究極の戦士、ディープドラゴンなのだ。  
そのディープドラゴンを頭に乗せ、彼女は手すりに体を預けて空を眺めているようだった。  
風に揺れる金色の髪が、月の光を浴びてきらきらと揺れていた。  
「……クリーオウ」  
その背後に声をかける。なんとなく、声がかけ辛い。  
数秒の間を置いて、彼女はゆっくりと振り向いた。  
「オーフェン…?」  
軽く揺れる金糸を手で押さえながら、呼ばれた少女は少し驚いた表情でこちらを見た。  
「もしかして起こしちゃった?」  
「いや、寝ようとしてたときに足音がしたから…」  
「そうなんだ、ごめんね」  
彼女はそう言って困ったようにくすりと笑う。それを見てオーフェンも少しだけ頬を緩めた。  
 「なにしてんだこんなとこで。風邪引くぞ」  
そう言って彼女の隣に立ち、同じように空を見た。雲ひとつない、綺麗な星空だ。  
白い満月が明るく夜空を照らしている。  
 「別に、なにをしてるって分けでもないんだけど…。夜空を見て、風に当るとなんだか落ち着くのよ」  
笑いながら、言葉を選ぶようにして彼女が言う。  
そしてそのまま、二人の間に沈黙が流れた。  
 (…つーか、俺が来たところでどうしようもないんだよな、よく考えたら…)  
流れるそれになんとなく気まずいものを覚えながら、オーフェンが胸中で独りごちる。  
横目でクリーオウを見やると、彼女は特に何を気にするでもなく、ぼんやりと夜空を見ていた。  
―――いや、何を見ているのか良く分らない。本当は何も見ていないのかもしれない。  
オーフェンは少しだけ、ため息をついた。  
 
「つーか寒いからこっちに場所を移そう」  
親指でくいと指差す。屋上の隅にある小さな倉庫。  
鍵は閉まっているから中には入れないものの、とりあえず風除けにはなるだろうと思ったのだ。  
クリーオウは軽く頷いてオーフェンの後に続いた。そしてオーフェンの横に腰を下ろす。  
「ほらよ」  
かがんだ時にいっそう露になった彼女の素足が寒そうで、オーフェンは自分の上着をぽいと渡した。  
「…ありがと。」  
それを体育座りした体全体に出来るだけ被せる様にして、クリーオウが体を縮める。  
「本当は寒いんだろ」  
「まあ、ちょっと薄着過ぎたかなって後悔はしたけど。それほどでもないわよ。」  
強がるようにそう言って、彼女はふいとオーフェンから目線を逸らした。  
それからお互いしゃべることなくただただ夜空を見上げる。  
「…なあ、クリーオウ」  
とりあえず何か話をしようとして、しかし話すような話もなく、結局再び沈黙が流れた。  
 
(考えてみれば、なんで俺はここにきちまったんだろーな…)  
今更考えなしに行動してしまった事を悔やみながら、オーフェンは再びここへ来た意味に悩んだ。  
(確かに今のまんまのこいつじゃあいけないような気がする。だからといって、一体俺に何が出来るんだ?  
最終的に答えを出すのは自分自身だ。だから…俺にしてやれることなんて結局ないんじゃないのか…)  
続く言葉が出ない自分をじっと見つめる視線をわざと無視しながら、オーフェンは胸中で嘆息した。  
(ホントになんで来ちまったんだよ、俺は)  
「オーフェン、心配してくれてるの?」  
と、突然澄んだ声が耳に響いて、オーフェンはそれに軽く驚きながら彼女に目をやる。  
レキの頭をゆっくりと撫でながら、クリーオウは心底驚いたようにこちらを見ていた。  
「…まあ、一応な」  
素直に認めることに何となく抵抗を覚えながら、オーフェンはボソリと肯定する。  
「…オーフェンが人の心配するなんて大変だわ。だって人の心配出来るほど自分に余裕なんてない人だし、  
ましてや私、オーフェンは何よりも自分が一番大切だって思ってるって信じてたのに」  
「うるせ。心配してやってるんだから素直に礼の一つでもいいやがれってんだ」  
大げさな身振り手振りで訴えるクリーオウにすばやく毒づく。すると彼女はひとしきりけたけたと笑って――  
「――ありがとう」  
壊れるように微笑んだ。  
 
「――あのね、私、オーフェンに聞いたでしょ?私が勝手な事して……ライアンを殺してしまって、それで…、  
…だから、どうしたらいいのかな、って」  
膝に乗ったレキの頭を撫でながら、クリーオウは静かに話す。まるで子供に昔話でも聞かせるかのように。  
話は更に続く。  
「そしたらオーフェンは、今までと変わらないように振舞えって、いったよね?」  
問いかけるかのように語尾が上がったものの、彼女はオーフェンに視線をやることはしなかった。  
「…ああ」  
それが何となく責められているような気がして、オーフェンはますます居心地が悪くなる。  
そしてそのまま言葉が途絶えた。子犬の頭を撫で続けるクリーオウからは、なんの感情も読み取れない。  
しかしよくよく見てみると、彼女の指先は小さく震えていた。戸惑うように。  
「ねえ、オーフェン」  
意を決したように、しかし努めて明るい声でオーフェンは呼ばれた。  
そのすぐ後に、彼女がゆっくりと息を吐くのが分った。自分を何とか保たせているようにみえた。  
「…今までの私って、どんな人だった…?」  
ぽつりと、彼女が呟いた。  
風が大きく吹いて、木々がざわざわと騒ぎ立てる。  
――何も言えない。今何を答えても、いや、答えようとすることさえが無意味なのではと思ってしまう。  
「クリーオウ…」  
ただただ、名前を呼ぶことがオーフェンにとっては精一杯だった。  
 
「思い出せないの。今までどんな風に笑っていたのか。どんな風に、私がいたのか。  
笑おうとすればするほど、…今は怖くて仕方がないの。上手く笑えないの。  
ねえオーフェン…。今までの私って、どんな私だった?どうしたら私に戻れるの!?」  
目に涙をいっぱいに溜めてクリーオウが見つめてくる。  
何かを訴えるような、縋る様なその瞳が、オーフェンの胸をひどく痛めた。  
「オーフェン…。私怖いの…。もう昔の私が私じゃなかったみたいな気がして、すごく不安になるの…!  
だけどね…、もし私が昔の私みたいに笑えるようになってしまったら、  
…私、ライアンの死を裏切った事になるでしょう?だから、私はここから一歩も動けない…!!  
怖いの…。どうしたらいいのか分らない…!」  
大粒の涙を流しながら、クリーオウはそのまま呻くように泣き崩れた。  
それをオーフェンは突然ぎゅうと抱きしめる。なぜいきなりそうしたかは自分でも分らない。  
ただ彼女が絶望に打ちひしがれている姿を見るのは辛かった。  
だからとりあえず抱きしめた。自分の胸の中だと、彼女を見ないで済む。  
「オー…フェン…!」  
クリーオウは彼の腕の中で更に泣き続けた。  
「俺は…、おまえにかけてやれる言葉を持っていない。…人を殺した事がある俺も、だ。  
誰もおまえを救ってやることは出来ない。だから…、どうするかは、結局自分次第なんだ…。  
クリーオウ、これはおまえが乗り越えなきゃいけないことなんだよ」  
我ながら冷たい言葉をかけていると思う。しかしこれは事実だ。  
どんな慰めも励ましも、なんの意味を成さない。  
再び立ち上がることが出来るのは、自分自身で納得できた時だけだ。  
「でも…、オーフェン…」  
泣きじゃくりながら、か細い声でクリーオウが彼を見上げる。  
「…やっぱり、怖いの…」  
泣き腫らした目でクリーオウが見つめてくる。彼女の怯えた表情を、初めて見たような気がした。  
そのまま彼女の顔がゆっくり近づいてきて、やがて唇に温かい感触を覚えた。  
再び距離が離れる時に、彼女の吐息が頬にかかった。  
完全に距離を置かれる前に、今度はオーフェンが顔を寄せる。  
次にした口付けは、すぐには終わらなかった。  
 
「ん…、ふ……」  
繋がった唇から、時々クリーオウの声が漏れる。逃げようとする頭をオーフェンはぐっと押さえつけた。  
そのまま少しだけ開いた彼女の口に、ゆっくりと舌を捻り込む。クリーオウの体が、ぴくりと震えた。  
「ん、やっ…」  
それを無視して、オーフェンは生温い彼女の口内をちろちろと舐めまわす。  
舌を絡ませ、歯筋をなぞり、前歯の裏を強く押し付けるように舐めると、彼女は困ったように体をよじった。  
互いの唇を十分に堪能した後、名残惜しく舌先を絡ませ、暫くしてようやく互いの顔が見える距離を取る。  
見るとクリーオウは既に息が上がっていて、頬はうっすらと桃色に染まっていた。  
オーフェンは自分の動悸が激しいのを感じ取り、思わず苦笑する。  
(俺もこいつと同じような顔してるって事だよな…)  
「…で、どーするよ」  
敢えて、オーフェンはクリーオウに聞いてみた。  
「……どうって……」  
困ったように眉をしかめて、クリーオウはせわしなく視線を動かす。  
その様子がいつもの彼女に戻ったようで、オーフェンはなんとなく安堵した。  
「ひどいわ!あ、あんなキスした後でそんなこと女の子に聞くなんて…。  
あのね、私、オーフェンってすっごくデリカシーがないと思うの」  
それだけ言って、クリーオウは拗ねたようにオーフェンを見上げた。  
「悪かったね、デリカシーのない男で」  
やれやれとため息をつきながら、オーフェンは彼女の首筋を唇でなぞる。  
「んっ…」  
「しかしこんなところで誘うなんて、おまえも大胆な事するな」  
おどけたようにオーフェンが笑うと、彼女にぐっと腕を捕まれた。  
「…違うの、そんなんじゃ、…ない」  
再び泣き出しそうな表情で、クリーオウが頭を垂れる。  
「…分ってるよ。ただの冗談だ」  
再びクリーオウを抱きしめる。  
「一人じゃ怖かったんだろ?どうしようもないくらい」  
クリーオウの腕が、自分の背中に回ってきたのを感じた。  
 
三度クリーオウの唇を貪りながら、彼女の着ているキャミソールの肩紐をずらしていく。  
抵抗はしないものの、なんとなく怯えた様子が伝わってきた。  
それをなんとか安心させたくて、オーフェンはクリーオウの胸元に口付けた。  
そのまま下着のホックを外して、ゆっくりさげる。彼女の白い乳房が露になった。  
あまり大きくはないものの、綺麗な形をしている。まだ発展途上なのかもしれない。  
オーフェンはそれを手で包み込むように触れた。  
「ふ…!」  
クリーオウが声を上げる。  
彼女の乳房は思ったよりもとても柔らかくて、とてもさわり心地が良かった。  
「あ…、やっ…」  
顔を朱に染めてよがるクリーオウの表情が、オーフェンの情欲を次第に掻き立てる。  
熟れ切っていない乳房をふにふにと蹂躙させながら、先端には触れずに周辺を舐め回す。  
むにむにと弾力のある肌がオーフェンの舌先を微弱に押し返した。  
「オーフェ…、あっ、…な、なんか……」  
十分な快感を与えられない事に焦がれたクリーオウが、控えめに抗議をする。  
「さわって欲しいならそういえよ」  
目つきの悪い双眸を意地悪く光らせながら、オーフェンは彼女の乳房を強く掴んだ。  
「ひ…あっ…!あっ…!おっ、お願い、…先も、さわって…」  
両手で顔を覆い、その間から覗かせた瞳をこちらに向けて、クリーオウがそう懇願した。  
望み通り、すでに固く張り詰めている乳首を親指でくにくにと捏ね繰り回す。  
「んあ…!ふ、は、あぁっ…!!」  
胸の先端から下腹部に電流のように走る快感に、クリーオウは堪らず声を上げた。  
更にオーフェンはその先端を爪で優しくなで、クリーオウに見せつける様に口に含む。  
「や…っ、なんか、やらしいわ…」  
「やらしいことしてんだろ?」  
そう言って、口に含んだ乳首を舌で激しく刺激した。  
「ひゃああっ!んっ、…ふあ!あぅ…!!」  
絡み取るようにねちっこく舐め上げ、優しく甘噛みすると、クリーオウはびくびくと体を震えさせる。  
そんな彼女が、オーフェンには一番いやらしいように思えた。  
 
片手で体を支えながら、口で乳首を吸い上げ、もう片方の手ではクリーオウの体中をさわさわと駆け巡る。  
首や鎖骨、脇などを愛撫しながら、オーフェンは胸元まで下げられたワンピースを腰まで下ろして、  
ウエストやへそ辺りを丁寧に撫で回した。  
その一つ一つの行動が、クリーオウの感度をより一層引き出していく。  
快楽を覚えるたびに歪む彼女の表情を見ると、どうしようもなく興奮してしまう事に気づいたオーフェンは、  
それを相手に悟られないように、奥歯を噛み締めて彼女の急所を攻めていった。  
「あ…はぁ、ん…!オーフェン、私、…なんだかお腹が溶けそう…」  
とろんとした瞳でオーフェンを見つめながら、壁にだらりともたれかかったクリーオウが告げる。  
「…じゃあ腰上げろよ。座ったままじゃあ手が届かないだろ?」  
するとクリーオウは恥ずかしそうにゆっくりと膝立ちになり、オーフェンの両肩に手を置いた。  
オーフェンはクリーオウの上半身に顔をうずめ、少し開いた彼女の両太ももを労わるように優しく撫でた。  
「んあ…!」  
既にどこをさわられてもクリーオウは感じてしまっていた。  
はしたないと思いつつも、頭のどこかでもっと気持ち良くなりたいという願望があることを否定できない。  
――オーフェンとなら構わないかな。正直そんな気持ちもあった。  
それにしても相も変わらず太ももを右往左往している指がやたらもどかしい。  
そのせいで本人の意識とは無関係に、クリーオウの腰は自然と下がっていった。  
「そう急ぐなよ」  
笑いながら、オーフェンは自分の顔をクリーオウの胸に押しつけ、その柔らかさを楽しむ。  
そんなことをするオーフェンが子供みたいで、クリーオウはぎゅうと彼を抱きしめた。  
しかし指先で背筋をつ、と撫でられ、再びクリーオウの体から力が抜ける。  
「ひゃ、はっ…!」  
背筋を撫でた手でクリーオウの小さな臀部をむにむにと揉み解しながら、  
オーフェンはもう片方の手を彼女の両の足の間に忍び込ませた。  
 
下着越しだというのに、そこはもう洪水だという事がすぐに分った。  
クリーオウの下着は既にじっとりと水気を含んでおり、指でさわるとひんやりとした感触がする。  
「こんなに濡れるもんなんだな…」  
わざと感慨深げにオーフェンが声を上げると、クリーオウが無言で彼の頭をぺちりとはたいた。  
それに苦笑しながら、オーフェンは濡れた下着の上から割れ目をゆっくり指でなぞる。  
「ふあぁぁ……!」  
待っていたかのように空を仰ぎながら、クリーオウがため息のような切ない声を上げた。  
オーフェンは丁寧に割れ目をなぞり、指先で軽くつついたり、あるいは強く擦ったりした。  
「んあっ!んぅ…!あぁ…、あん!」  
「気持ちいいのか?」  
こくこくと必死に頷くクリーオウに満足しながら、オーフェンは下着をずり下ろす。  
改めてさわる彼女の秘部は、自身の蜜でぬるぬるとぬめり、また温かく火照っていた。  
「…あったけえ」  
これが初めてでもないのにそんなことに感動しながら、オーフェンは固くしこった彼女の肉芽を爪で弾いた。  
「ひあっ!そこっ…!」  
クリーオウの体がびくりと反応する。  
「ここが気持ちいいんだろ?」  
囁きながら、更にその肉芽をくりくりと爪先で擦る。中にしこりのような感覚があるその肉芽は、  
クリーオウに嫌というほどの快楽を与え続ける。  
「やっ…!オーフェン…!そこ、だ、めぇっ…!おかしくなっちゃうよおっ…!」  
目に涙を浮かべながら、クリーオウが必死で鳴く。気持ちよすぎてもう膝を立てていられないほどだった。  
がくがくと震える膝になんとか力を入れながら、クリーオウはオーフェンをぎゅっと抱きしめた。  
当のオーフェンはそんなクリーオウの意見を全く無視して肉芽を弄る。  
そして臀部を撫で回していた手を、クリーオウの蜜壷にそっと差し込んだ。  
「っは…!ああっ…!!」  
中はもうしとどに濡れており、上下に指を動かせばちゅぷちゅぷと音が零れた。  
狭い肉壁がオーフェンの指をうねうねと飲み込み、更に奥へと誘おうとする。  
これにもし自分自身を入れたらと思うだけで、オーフェンの口から熱いため息が吐き出された。  
もっとクリーオウを焦らして、よがるところを見たい気もするのだが、既にオーフェンが限界だった。  
 
「もう、いいだろ…?」  
息の荒い自分をなるだけ抑えながら、オーフェンは喘ぐクリーオウをじっと見上げた。  
気づいた彼女は頬をいっそう赤く染めてこくりと頷く。  
そこでクリーオウを壁に手をつき、尻をこちらに突き出すような体勢にさせる。  
外だとこれが一番楽だと思ったのだ。  
「オ、オーフェン…。これ、ちょっと恥ずかしいんだけど……」  
必死に首をこちらに向けようとしながら、本気で困ったようにクリーオウが言う。  
「まあ…、いずれ良くなるから気にするな」  
突き出された尻の間から見えるクリーオウの性器を観察しながらオーフェンは答えた。  
彼女の髪と同じ色をした薄い陰毛の隙間から、ピンクの肉ヒダが幾重にも重なっているのが見える。  
そしてそれらは彼女の蜜でぐっしょり濡れており、月の光を反射しててらてらと淫靡に光っていた。  
ガラにもなく少しだけ緊張しながら、オーフェンは自分のモノをそこにあてがう。  
上下にそれを動かして慣らしたあと、クリーオウの中を一気に貫いた。  
「ああぁっ…!!」  
喘ぎとも悲鳴ともとれるような声を上げながら、クリーオウがびくりと体を仰け反らせる。  
「…ぅ…あ……」  
久々の女体の感覚に溺れながら、オーフェンは堪らず呻いた。  
ぴっちりと閉まった膣口の中の、沢山のヒダがざわざわとオーフェンに絡みついてくる。  
少し腰を動かすと、クリーオウの膣は柔軟にうごめいてオーフェンをぎゅっと締め付けた。  
それが、どうしようもなく気持ち良い。  
「おま…っ、なか…すごいな…」  
やっとのことでそれだけ言うと、彼女の腰を掴んで何度もそれを出し入れする。  
「ひゃんっ!あんっ!ぅぁあん!…ふ、あ、はう…!!」  
狂ったように鳴きながら、クリーオウは突き寄せる快感に身を委ねた。  
肉がぶつかり合う音と、結合部分からぐちゅぐちゅと漏れる卑猥な音が辺りに響く。  
もう少ししたら達しそうだという時になって、クリーオウが声をあげた。  
「オ…フェン…!これじゃ、なんだか、…あっ、…寂しいから……!  
……オーフェンの、顔を見ながら、…したいの……」  
動きを止めて見ると、真っ赤な顔をしたクリーオウは、困ったような上目遣いでこちらを見ていた。  
 
「…で、いろいろ考えた結果、この体位が一番妥当だと思ったんだが」  
拗ねた様に頭を掻きながら、オーフェンがクリーオウに言う。  
オーフェンは地面に座り、その上にクリーオウが乗っかっている体勢…、つまり座位だ。  
「地面に寝かせたらおまえが冷たそうだし、…抱きかかえてやるのは疲れるからな…。  
これならおまえの要望通りかつデメリットの無い体勢だと思うんだが、異存はないな?」  
「全く異存はないんだけど、どうしてオーフェンはなんだか怒ってるの?」  
繋がっている部分をもじもじとさせながら、クリーオウがきょとんとオーフェンを見つめる。  
「…なんでもねぇよ…」  
とりあえずそう言ってはみるが、内心してやられたような感でいっぱいだった。  
(あともう少しでいきそうだったところをお構いなしに中断させやがって…。  
――結局俺が焦らされてるじゃねえか)  
それがなんだかとても悔しくて、オーフェンはきっ、とクリーオウを睨みつけた。  
そんなオーフェンに、クリーオウは優しく微笑む。  
「…ありがと。オーフェン」  
「え…」  
「ごめんね。私が怖くて寂しがってたから、…だからこうやってオーフェンを巻き込んじゃって。  
一人でなんとかしなきゃいけないって、分ってる。だけど……。…そう。  
どうしようもなかったのよ。オーフェンが言ったように、一人じゃどうしようもなかった。だから…」  
同時にクリーオウがぐいと腰を動かす。再びあの波のような快楽が二人を襲った。  
「…っ、だから、一緒にいって?」  
にっこりと笑って、クリーオウが激しく腰を打ちつけた。  
 
「ふ…!は…!あっ!ひあっ!あん!…ぅ、あん!やぁん!!」  
オーフェンのそれがクリーオウの奥をえぐるたびに、痛いほどの快感がクリーオウの体を駆け巡る。  
もっと奥深く来てもらえるように、自然と股を大きく開いてしまう。  
オーフェンもまた、情欲が再熱して快楽を貪ることに専念し始めた。  
「クリーオウ…」  
熱に浮かされたように名を呼びながら、下から激しく彼女を突き上げる。  
上下に揺れる彼女の半分口の開いた表情が、オーフェンの欲望を一層駆り立てた。  
「クリーオウ…!」  
彼女の体が揺れるたびに、一緒にふるふると揺れる乳房に、オーフェンは再び吸い付いた。  
その上と下からとの快楽の波に、クリーオウは一気に上り詰めそうになってしまう。  
「んっ…!やっ!ああっ……!そんな、どっちもされたら…!!  
オーフェン…!あっ、は…!いや…!はぁ……、も、もう、私……!」  
「…まだだ」  
今にも飛んでいきそうな彼女の本能を言葉で押しとどめて、更に腰の動きも静める。  
彼女の腹部を優しくさすりながら、彼は呼吸を整えようと息を呑んだ。  
「いゃぁ…」  
なんとかクリーオウも堪えるが、どろどろと溶けそうな下腹部が熱を帯びて、  
どうしようもなくじれったかった。  
自分で動いてみようかとしてみるものの、彼女の最後の羞恥心がそれを許さない。  
何故かひどい意地悪をされているようで、クリーオウはオーフェンが恨めしかった。  
一方当のオーフェンはというと、酷く汗ばんだ自分に驚きながらクリーオウをじっと見上げていた。  
彼女は額に汗を浮かべ、目に涙を滲ませながら、いかにも物欲しそうな表情でオーフェンを見つめる。  
恍惚の一歩手前のその表情になんともいえない疼きを覚えながら、  
オーフェンはクリーオウの頭を優しくなでた。  
「もうちょっと…、楽しもうぜ」  
 
クリーオウの腰を自分の方にピッタリと押し付け、そのまま円を描くように腰を動かす。  
「はっ…、ああっ…!な、なんか変な感じ…」  
オーフェンがうねうねと腰を使うと、今まで感じたことのない快感がクリーオウを襲う。  
「きゃ!あん……!気持ち、いいよ…!」  
言いながら自然とクリーオウも腰をくねらせる。  
それにあわせる様に、オーフェンも少しずつ動きを速めていった。  
「あっ!あっ!…ふ、はっ…!んや…っ!ああっ!ああぁ…っ!!」  
再びクリーオウの嬌声が辺りに響く。  
にちにちと音を立てる結合部からは、どろどろと二人の液が混ざり合ったものが零れ出している。  
もっとぎゅうと腰を密着させて激しく突き上げると、オーフェンは総毛立つほどの快楽に落ちた。  
「は…!やべ、クリーオウ…!」  
「んああっ!お…奥に当って……!はあっ!ああっ…!!わ、私も…!!」  
互いの頂点を確認しあいながら、一気にそこまで駆け上る。  
既にオーフェンの腰の動きの速さについていけなくなったクリーオウは、  
がくがくと体を揺さぶられながら快楽に溺れきっていた。  
「オーフェン…!ああっ!も…、いい……?」  
うわずった声で彼の名を呼びながら、クリーオウは目に涙を浮かべて切なく鳴いた。  
「ああ…。俺も…」  
腰を動かして必死で快楽を貪りながら、オーフェンはそれだけいってさらに腰使いを速めた。  
「ん…!や…っ!や…!あ!ああ……っ!!!」  
クリーオウは弓なりに体をしならせ、びくびくと震えながら頂点に達した。  
そのせいで彼女の膣内が一気にぐっと閉まり、オーフェンも飛んでしまう。  
「…く…!……はぁ…!」  
粘り気のある白濁液をびゅるびゅるとクリーオウの中に吐き出し、オーフェンは果てた。  
「…ん……、は…。……オーフェン…」  
まだ火照った体をのろのろと動かしながら、クリーオウはオーフェンをそっと抱きしめる。  
それに答えるように、オーフェンもクリーオウを強く抱きしめた。  
果ててもまだ繋がったまま、二人は暫く互いの体温を確認した。  
 
――これは愚行なのだろうか。  
自分の膝を枕にして眠る少女の髪を指で梳きながら、オーフェンはふと思った。  
あの後上手く立てなくなったクリーオウをおぶって、彼女を部屋まで送ってやると、  
眠るまでそばにいてくれなどと子供染みた駄々をこねられ仕方なく一緒にいた。  
そして気づくと彼女は自分の膝で眠っており、帰ろうにも帰れない状況だ。  
レキもベッドのはじでぐっすりと寝入っているようだ。  
けだるい体で少し伸びをして、寝ているクリーオウに毛布をかけてやる。  
膝の中の少女を起こすのにも気が引けたので、オーフェンも仕方なく寝の態勢に入った。  
明日のこと考えると少々めんどくさいものを感じたが、疲れた体はさっきから休ませろと要求してくる。  
むしろ明日のことを今考えるのがもっとめんどうだった。  
「ん…」  
もぞもぞと自分の膝の上で動く少女を、オーフェンはもう一度見つめる。  
――果たして先程の行為に一体なんの意味があったのか。  
そんなことをオーフェンは思った。あれは結局なんの解決にもなっていない。  
むしろ彼女の一時的な逃避の役に立ったのかもオーフェンには分らなかった。  
一人じゃどうしようもなかったという。かといって二人でどうにかなったわけでもない。  
(もしかしたら…、結局俺はクリーオウの弱音につけこんで、彼女を抱きたかっただけなのかもな)  
そう思って苦笑する。  
既に空はうっすらと夜明け前の準備をしているようだ。  
膝の上の少女を可哀想だとも愛しいともおぼつかない気持ちで眺めているそのうちに、  
うとうとと眠気が訪れ、やがてオーフェンの視界も暗転した。  
 
 
 
 
終わり  
 
 

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