それは深夜と呼べる時間ではなかったが、もはや真夜中であった  
剣術道場の一人娘、ロッテーシャは今日、エドと結婚を交わした  
ウェディングドレスなどはなかったが、道場の練習生達に祝福され、厳かに執り行われた結婚式を思いだし、自然と彼女の口に微笑みが浮いた  
 
しかし、彼女には不安もあった、彼女は新婚である  
新婚といえば、初夜にすることはひとつである  
彼女の口から微笑みが消え、はにかんだ表情になる  
足が自然と鏡に向かった  
自分の顔を改めて見てみる  
(特に変…ではないわよね)  
右から、左から、注意深く自分の顔を分析する  
その後にすっと視線を下に下ろし、自分の身体を観察する  
胸はそれほど膨らんではいないが、剣術で鍛えた身体はよく絞られており、無駄な贅肉もなく、良い体付きだった  
 
彼女は部屋のドアにチラリと視線を向ける  
彼女の夫―エドは未だその扉をくぐったことはない  
しかし今夜、あのドアからエドは入って来るだろう、そして――  
(わ…私たら、何を想像してるのよ、これじゃまるで待ってるみたいじゃない)  
一人で赤面し、狭い部屋をウロウロする  
(エドはドアをノックするかしら、しないかも。彼はそういう人だし、それはわかっていて、それでも私は…)  
 
そんなことを考え、椅子に座り、すぐまた立上がり、ウロウロして、また座るのを繰り返していた  
(そういえばあの人、まだ私に一回も好きとも言ってない…私もだけど)  
よく結婚できたものだ、と苦笑する  
そんな時に、  
コンッコンッ  
ドアの向こうからノックの音が響く  
ロッテーシャは心臓が跳ね上がりそうになるのを必死で堪え、冷静になるよう自分を戒めた  
「だ…誰ですか」  
「俺だ」  
震える声で言った一言にかえって来たのは、いつものあの冷たい声だった  
 
「エ、エド?なんですか、こんな時間に」  
「用があって来た、開けてくれないか」  
まだ自分の声がどうしても震えることに苛立ちながら、  
「鍵なんてかかっていません、どうぞ」  
ガチャ…  
今まで、一度も入ったことのない部屋に入ったエドは、興味があるのかないのかわからないような態度で部屋を見回した  
「何の用ですか、こんな時間に」  
愚かしい質問だ、と自ら認める  
しかし、愚かしい質問にエドは平気で答えて来る  
 
「…わからないか?」どこか冷たいものを含む目と声でエドはロッテーシャを、自分の妻を見返した  
たまらずロッテーシャは視線を逸らし、所在無さげに部屋を右往左往して、最後にベットに座り込んだ  
(な、なんでベットに座ってるのよ私…  
これじゃ誘ってるみたいじゃない)  
ロッテーシャは赤面し、視線は逸らしたまま答えた  
「わ、わかりません。あなたの考えてることなんで、私にわかるわけないじゃない」  
自然と口に出る言葉に、僅かな自己嫌悪が混じる  
普通の新婦なら、もっとらしい態度があるはすだ、甘えるなり、笑うなり…  
「そうだな、確かに。俺もよくわかない、特に俺のことは」  
 
エドがかなりの間を取って先ほどのロッテーシャの言葉に答えて来る  
「しかし、こんな時くらいは素直になってもいいんじゃないか、ロッテーシャ」  
エドは事も無げに言ってくる  
ロッテーシャは自分の考えが全て見透かされているようで、更に赤面した  
「お前がどうしても嫌だと言うなら、俺は強要はしない。どうしたい、ロッテーシャ」  
エドは少しずつ近付きながら選択を迫って来る  
ロッテーシャはなんだが完全に負けているようで悔しくなった  
 
「エドは…」  
「ん?」  
「あなたは、どうしたい?私はあなたの本音が聞きたい。私が…いえ、私を好きなの?愛してくれているの?何故結婚したの?」  
ロッテーシャは涙目になりながら、床を見ていた視線を夫に向けた「俺は、常に俺の意思に従う、逆に言えば、俺は、俺の意思でのみ行動する」  
涙目のロッテーシャを見下ろしながら、いつも通りの口調でエドは話し出した  
「だから、お前と結婚したのは俺の意思だ。そして、いくらなんでも、好意を持てない相手と結婚はできない。それは俺の意思に反する」  
 
「エド…っ」  
ロッテーシャは胸が痛くなるのを感じ、自分もこの無愛想で不器用な男に好意を持っているのを感じた  
「そして、今この場での俺の意思は、お前を抱きたい、それだけだ」  
エドは、ロッテーシャを真っ向から見据えて、一言一句切るように語った  
(もう、本当にデリカシーとかムードとかを考えない人なんだから)  
ロッテーシャは、赤面し、俯きながら答える「は、はい」  
その一言は、また震えを含んでいた  
 
震えを含んで懸命にロッテーシャが答えた後、部屋には重く冷たい沈黙が落ちた  
(ど、どうして…?聞こえなかったのかしら)  
俯いていたロッテーシャはその疑問に顔をあげ、夫を見つめる  
その男は、本当にいつもと変わらなかった。冷たく、暗い。  
ロッテーシャは眉を寄せて自分の疑問を視線で問い掛ける  
何故何もしないのか、先ほどの言葉は偽りだったのか  
 
そんな逡巡をロッテーシャが巡らせていた時、エドはついに口を開いた  
「ロッテーシャ」  
それは唐突だった  
エドは妻の名を呼ぶと同時に、疑問に口を開きかけていた妻の口を自らの唇で塞いだ  
「んっ…っ!?んーんー!」  
ロッテーシャはいきなりの事で半分パニックとなった  
まさかエドがいきなりこんな事をするとは考えもしなかった  
反射的に拒絶する  
手で突き放そうとするが、そのあまりにか細い腕は、エドの両椀によって完全に押さえられてしまった  
 
エドもロッテーシャも目さえ閉じていない  
愛し合う夫婦同士のファーストキスとしては相応しくない光景だった  
「ん、んー、んー!」ロッテーシャはパニックから立ち直れず、かぶりを振ろうとするがそれさえもこの夫は許してくれない  
そして、エドはロッテーシャの固く閉ざされている唇に舌をねじ込んだ  
「んっ!?やっ、ちょっ!」  
ロッテーシャは舌を入れられたことで少しだけ話せるようになったが、夫のなにもかもいきなりな行動に激しく拒絶しようとした  
 
しかし、そんな激しい妻の抵抗を意にも介せずエドはロッテーシャの口の中を貪った  
舌を絡ませ、歯の裏まで舐めあげた  
「や、い、や…こんっ…」  
ロッテーシャは必死で言葉を紡ごうとするが、次第に頭に霞みががったようにぼんやりとしてきた  
何を拒絶するのか  
彼と自分は夫婦でないか  
ならば、当然の行為であるはずだ  
そんなことをロッテーシャの頭は考え始める(それでも、こんなっ、一方的みたいなのはイヤっ!)  
ロッテーシャは涙を流しながらエドに訴えた  
 
エドはそれを受け、存外にあっさりと口を放した、両椀の拘束はとかなかったが  
「エ、エドっ!いきなり、なにするんですか!」  
ロッテーシャはようやく自由に話せるようなり、夫の粗暴な振る舞いを罵倒した  
「ロッテーシャ、違う。聞け」  
「なにが違うのよ!こういうのには順序とか…」  
涙目で訴えるロッテーシャだったが、エドは表情を全く変えずに言ってくる  
「いきなりした事はすまなかった、謝ろう。しかし、始めてなんだ。こんなことは」  
ロッテーシャはきょとんとした  
 
「こんなこと…てこういう…行為が?」  
ロッテーシャは自分の発言に赤面した  
とんでもないことを言ってしまっている  
「それもある。だが、俺も驚いている。始めてなんだ。こんなことは」  
「だ、だから、なにが?」  
「俺は常に自分の感情をコントロールできる、そのはずだった。しかし、今。お前に答えられた時に、俺の感情は暴走した。どうにも抑えられなかった。始めてだ。こんなことは」  
 
エドはそれだけ話すと、バツが悪そうに視線を逸らしてロッテーシャの腕を解放した  
ロッテーシャは先ほどまでのショックは残ってはいたが、なんだか笑いたくなった。まだ出会ってから一年も経っていないが、この夫のこんな表情を見るのは始めてだった  
「エド、その…私も、その、えと…始めて…だから、あの…や、優しくしてくれるなら、す…好きにしていいですよ」  
ロッテーシャはこれ以上ないほど赤面し、エドとは決して視線を合わせないようにしながらボソボソと呟いた  
 
エドはそれを聞くと、ほんの一瞬ロッテーシャの顔を覗きこみ、いつもの冷たい声で囁くように言った  
「ロッテーシャ、なるべく優しくする。だから、嫌になったらそう言ってくれ」  
それだけ言うと、さっきとは違い、エドは妻の唇に優しく口付けたしっかりと目を閉じてロッテーシャは少しだけ身を強張らせたが、エドが乱暴にする気はないことを悟って、夫に身を任せた  
 
唇は本当に優しかったそれは触れるだけの軽いキス  
しかし、今度は夫婦はしっかりと目を閉じ、相手と自分の接点を確かめるように長く口付けを交わしていた  
(ああ、これが本当のファーストキスなんだ)  
ロッテーシャは心の中で呟いた  
もう体の強張りもないこの夫への恐怖もないそして、ロッテーシャの頭は先ほどのキスの時と同じく靄がかかったようにぼんやりとしはじめた  
エドは妻が完全にリラックスしていることを確認し、ゆっくりと舌を差し入れた  
「ん…っ…ふ…」  
ロッテーシャはさすがに再び体を少し硬直させたが、先ほどの不快感はない  
 
おずおずと舌を突き出し始めると、夫の舌が優しく絡んでくる  
ロッテーシャはためらいながらもそれに答え、自分もまた舌を絡ませる  
静寂に包まれていた部屋は今ではピチャピチャとした淫らな音に包まれていた  
エドは舌を少し激しく絡ませ始めると、妻の髪を優しく撫で、その手をそのまま胸に持っていった  
「ん…!ふっ…」  
唇は互いに今や激しく貪りあっているため、ロッテーシャは鼻から切ない息を漏らした  
エドは始めて触る妻の体に、似つかわしくもなく緊張しながら触れていく  
それほど大きくはなかったが、膨らみはあり、エドを興奮させた  
 
「ふ、ふぅっ…ん…はぁっ…」  
もはやただ触れているだけではない、完璧に揉んでいる夫の手つきに困惑しながらも、ロッテーシャは懸命に舌を絡ませ続けた  
エドはその時には既に目を開き、妻の鍛えられた体をまさぐっていた  
エドは妻の紅潮し、陶酔の表情に更に興奮した  
(まさか俺が、こんな気分になるとはな)  
エドは自嘲気味に心中で呟く。しかし、今はそんなことすらどうでもいい  
そう、どうでもいい。こんな気持ちになれるなら  
こんな気分になれるなら。  
今は、今だけは。  
エドは言葉に出さず繰り返し、ロッテーシャの服を捲りあげた  
 
「……っ!や、エ…ド…ッ!」  
ロッテーシャはいきなり服を捲られたことになり流石に困惑した  
もう夜だったと言うのに、しっかりと下着は付けていた  
派手な下着ではない、質素な白い下着であるしかし、それはロッテーシャの色白な肌とマッチして良く似合っていて、より一層エドに興奮をもたらした  
「ロッテーシャ、触るぞ」  
唇を放し、エドは断言してくる  
ロッテーシャは苦笑した  
「…そんなこと、言わなくてもいいわよ」  
ロッテーシャはようやく開放された顔を横に逸らしてから呟く  
顔が紅潮しきっているのを知られたくなかった  
 
エドは何も言わずにその白い下着に手を差し入れ、柔らかい膨らみを弄び始めた  
「んっ、ふっ…あっ」ロッテーシャは我知らず甘い声を漏らしていた  
始めて味わう甘美な感触は、じわじわとロッテーシャの精神を侵していく  
エドは形の良い膨らみの中心にある、ツンとたっているものを唐突に刺激し始めた  
「あっ!エ…ド…そこ…はっ…ぁっ!」  
ロッテーシャは敏感に体をくねらせては甘い呟きを漏らす  
エドはそれに気を良くして、遂にブラを捲りあげて乳首を直接刺激し始めた  
「や…ぁっ…ん、は…ぁっ…」  
 
ロッテーシャの声が一際高くなる  
それは処女とは思えない艶を含んだ声だった「はぁっ…エドぉっ…や、ぁっ…そこ…は…だ…ぁっ…」  
エドは妻のそんな言葉には答えず、乳首を口に含み始めた  
舌で舐めあげ、軽く歯をたて刺激する  
「あ!んぁっ…やぁっ!…や、エ…ド…!」ロッテーシャは声を必死に押し殺し、ベットのシーツを握り締めたエドは妻のそんな反応を見ながら―滅多にないことだが―口元に笑みを浮かべた  
妻の反応が楽しかったもっと見たい  
もっと乱れさせたい  
そんな思いがエドの心を支配し始めた  
そして、エドは相変わらずの無言で、胸を責められ喘いでいる妻の下半身に手を伸ばした  
 
「はっ…ん…エド…」ロッテーシャは夫の激しい愛撫が急に治まったことを不思議に思い、夫の顔を見上げた  
すると、  
「ロッテーシャ、その、脱がして、いいか」有り得ないことに思えた  
まさかこの男が…この男が口ごもるとは!  
ロッテーシャは快感に支配されていなければ笑い出していたかもしれない  
だが、その質問は笑えないことだった  
本当に、誰にも見せたことのない場所を見せる――  
本当は、聞かないでほしかった  
聞かないで、いつもどおり無言で、勝手にしてほしかった  
やはり、この夫は優しくない  
ロッテーシャはぼんやりした頭でそれだけの情報を羅列すると、真っ赤に紅潮した顔を両手で覆い、小さく頷いた  
 
エドは何も言ってこなかった  
何か言ってほしかった…  
 
エドはゆっくりと…本当にゆっくりと、ロッテーシャのパンツと下着を脱がした  
ロッテーシャはあまりの羞恥に泣きたくなった  
恥ずかしい、恥ずかしい、恥ずかしい…  
そんな言葉だけが頭を回る  
完全に一矢纏わぬ姿にされた  
自分のどの部分も、この夫の視線から隠せない  
ロッテーシャが羞恥で平常心を失っている時、エドは静かに囁いた  
妻の耳元で、優しく  
「ロッテーシャ、綺麗だな」  
 
 
それは、先ほどまでのどんな愛撫よりも、どんな刺激よりもロッテーシャは嬉しかった  
「エ…ド…エド…エドぉ…」  
 
 
ロッテーシャは泣きたいような、笑いたいような、どっちにも取れる感情で夫の名を呼び続けた  
嘘であってもいい、偽りでもいい  
今の言葉は、ロッテーシャの心をそれほど激しく動かした  
そして、それに呼応するかのように体も熱くなる  
エドはしばらく妻の裸体を眺めていたが、やがてゆっくりと覆いかさぶり、妻の体を愛し始めた  
胸を揉み、吸い、舐め、噛む  
そして、潤い始めていた妻の泉を優しく、慎重に指でなぞる  
「ああっ!はぁっ!だめ、ダメぇっ…!やっ……はああっ!」  
ロッテーシャは体中から襲ってくる快感に目を閉じ、声を我慢しようとしてもしきれず、シーツを爪が痛くなるほど握り締めて耐えていた  
 
エドは妻のそんな反応を見ながら、優しく秘部を刺激した  
 
潤いが増してきている秘部をなぞり、軽く開く  
先ほどまでの唇の舌と舌が絡まり合うピチャピチャという音でなく、クチュ…クチュ…という音がいつの間にか狭い部屋に響き始める  
「エ…ぁ…ド…や…お……とぉ…あっ!ああ…」っ!」  
 
ロッテーシャは明らかに自分の秘部から漏れ出ている音を聞いて激しく羞恥を感じ、夫に懇願する  
 
「エド……っ…恥ずかし……お…とは…ゃっ…ぁあ」  
 
慎重にロッテーシャの秘部を弄っていたエドは妻の懇願に気付いて顔を上げたが指の動きは止めず、むしろ激しくしていく  
そして、いつも通りの声で  
 
「音がいやなら耳をふさげばいい、それですむことだ」  
 
あっさり言い放つ  
 
そのままエドはロッテーシャの胸に再び舌を這わせ、そのまま舌を下半身へとのばしていく  
「あっ、エドっ…な…なにして…ひぁっ!」  
エドは胸を舐めていた舌を下半身の方へ延ばし、臍を通過して妻の秘部を舐め始めた  
「んぁっ…や…そんなっ…と…こ……や、い、や…きた…な…あっ…ふぁぁっ!」  
「汚くなどない、少し黙れ」  
 
エドは相変わらずの鉄面皮であっさり妻の懇願を一蹴すると、更に深く舌を差し入れ、音を激しくさせた  
 
吸っても舐めても、際限なく溢れ出す愛液を丁寧に舐めとる  
 
舌を差し入れ、一気に吸い上げる  
 
エドの愛撫は全く止まらなかった  
当然、  
「あっ!あっ!やぁっ!んぁあっ!だ、だぁめぇっ!やめ!やぁっ!」  
 
処女のロッテーシャが夫の激しい愛撫に耐えられるはずもなく、秘部を舐めている夫の頭に爪を立て、必死に襲いくる快感と闘っていた  
部屋にはジュル、ピチャ、クチュ…  
という卑猥な音で満たされ、ロッテーシャの羞恥が更にかきたされた  
 
そして、ロッテーシャが未だかつて感じたことのない感覚が襲いかかってくるのを感じた瞬間、  
 
エドは愛撫を止めた  
 
「はっ…はぁっ…エド…?ぁっ…どうし…たの…?」  
 
息も絶え絶えなロッテーシャは突然愛撫をやめた夫に顔を上げ尋ねた  
そして、その夫は、  
「きゃぁああ!!」  
 
ロッテーシャは悲鳴をあげた  
 
ロッテーシャが顔をあげ見た夫はシャツを脱ぎ捨て、パンツと下着を脱ごうとしていた  
 
「何を驚く、ロッテーシャ」  
 
エドは自分が脱いでいるのが信じられないという顔の妻に尋ねた  
 
「ちょ…ちょっと!なんっ…なんでいきなり脱いでるのよ!」  
 
ロッテーシャは夫のその言葉でようやく我を取り戻し叫んだ  
 
しかし、当の夫は、  
 
「あたりまえだ。こうしなければ出来ないだろう。初めてでもそれくらいは知っている。それに、お前も脱いでいる」  
 
この男にしては珍しくペラペラとよく喋る  
 
そんなことをロッテーシャが考えた時、エドは下着も脱ぎ捨てた  
 
「きっ…!きゃあああ!!」  
 
先ほどよりも大きい悲鳴があがる  
 
ロッテーシャは夫のそれから視線を逸らし、顔を手で覆ってベットに突っ伏した  
 
「だから、なんなんだ。ロッテーシャ」  
 
エドは呆れたように妻を見た  
 
考えてみれば出会ってそれなりにたったが、この妻が悲鳴をあげるのを聞いたのは初めてかもしれない  
 
エドはそんなことを考えながら、妻が冷静になるのを待った  
 
やがて、ロッテーシャが顔をあげた  
 
「と…とり…みだしてごめんなさい…は…初めて…だったから、その、あの…男の人の見るの…」  
 
ロッテーシャは父親以外の異性と付き合ったことはなかった  
 
そして、ともに生活していても父のその部分など凝視したこともなかった  
 
しかし、今目の前にあるそれは、信じられないほど大きく、グロデスクだった  
 
「なんで、その…それ…そんなに…大きく…」  
 
ロッテーシャはまだそれから視線は逸らしていたが、チラチラと様子を見ながらしどろもどろに尋ねた  
 
「男なら当たり前のことだ。女を抱くための準備を体がする。それだけだ。お前が濡れているのと同じだ。なにがおかしい」  
 
本当に珍しい、本当によく喋る  
 
それがエドの微かな緊張によるものだと、ロッテーシャは気付いた  
しかし、だからといってここまで恥ずかしいことをあけすけにポンポン言われて、ロッテーシャは顔を再び覆って横を向いた  
 
「そん…なの…本当、に……はい…る…の」  
ロッテーシャは自分の耳まで熱くなっているのをひたすらに感じながら尋ねた  
 
「当たり前だ。男女のからだの構造はそういったものになっている。安心しろ、ロッテーシャ」  
 
この夫にしては優しい声で、お互い初めてだというのに断言して来る  
 
そして、  
 
「ロッテーシャ、いいか」  
 
エドは妻の足を撫でながら、決定的なことを告げた  
 
「…………」  
 
ロッテーシャは何も答えない  
 
「…初めては…女は痛いと聞く。お前が嫌なら…」  
 
それはエドにとってもギリギリの自制だった  
 
塔での苦しい指導を思い出し、必死にマインドセットを行う  
 
(俺にあいつほどの自制があるか…)  
 
塔を飛び出した彼のもうひとりの家族を思い出し、襲い来る衝動に耐える  
 
そんな沈黙が一分ほどたったあと…  
 
「いい…よ…」  
 
ロッテーシャが口を開いた  
 
「入れて、い……いよ…」  
 
それは、掠れていて、本当に小さい声だった  
しかし、エドの自制を粉々に打ち砕くには十分な言葉だった  
 
「ロッテーシャ、いくぞ」  
 
エドは妻の足を広げ、秘部にそれを押しつけた  
 
「…ぁっ…」  
 
そして、そのままゆっくりと侵入していく  
 
「い…あ…いた…っ…」  
 
ロッテーシャは自分の中に異物が侵入してくる違和感と秘部から体中に広がる痛みにシーツを力の限り掴み、歯をかみ締めて耐えた  
 
エドは妻の痛みに震える顔に微かな罪悪感を覚えたが、自分のものがゆっくりと暖かいものに包まれていく初めての感覚にとてつもない快感を感じた  
 
やがて、エドのそれはその場所に辿り着いた  
「…ロッテーシャ、痛いか」  
 
「だい、じょ…うぶ…」  
 
嘘だな、エドは断定した  
 
「この先はもっと痛いだろう…やめるか」  
 
「だい…じょぶ…だから……続けて…エ…ド…」  
 
ロッテーシャは息をきらし、なんとか言葉を紡ぐ  
 
エドは妻の覚悟を感じ、腰に力を入れ、一気に奥まで突き刺した  
 
「いっ…ぁ…い…た…」  
 
強がっていても、いや、実際にこの妻は強いが―やはり痛いのだろう。目を思い切り閉じ、シーツを握り締めて痛みに必死に耐えている  
 
 
痛い、いたい、イタイ…  
 
頭の中がその単語に埋め尽くされる…  
 
幼い頃より父に剣術を習い、木剣で打たれたこともある。練習生と試合して負けた時もある…  
 
そして、いま、尋常でない痛みを与えてくるこの男にも、何度も何度も試合を挑んでは破れた。その度に打たれた…  
 
しかし、今ロッテーシャの体を襲う痛みはそれらなど比較にならない痛みだった。シーツを握り締めても、目を閉じても、気休めにしかならない。  
 
「あ…ぅ…いたぁ…ぁっ…」  
 
我知らずロッテーシャの頬には涙が流れていた  
 
自分の中にゆっくりと侵入される異物感、違和感…そして痛み。つまりはこれが……  
 
(私が…望んだことなんだ…)  
 
その場所を突破し、ロッテーシャの再奥にまで到達したエドは、そのままの体勢で止まっていた  
 
「ロッテーシャ…痛いか」  
 
そのままの体勢でエドはできうる限り優しく妻に尋ねた  
 
―痛いに決まってるじゃない―  
 
ロッテーシャは痛みに耐えながらも口を開いた  
 
「だ、だい……ぃぁ…じょ…ぅ…へ…ぃき……です…」  
 
唇から漏れたのは頭で考た言葉とは反対の言葉だった  
 
「ロッテーシャ、無理はするな…痛いだろう」  
 
エドはもう一度尋ねる。優しく、労るように、ギリギリの、本当にギリギリのの自制の中で。  
 
初めて入ったその中は、エドのものをきつく、暖かく包み、締め、エドに常に快感を与えていた  
 
(耐えろ、耐えろ…耐えろ…自制しろ…ユイス、エルス、イト、エグム、エド―)  
 
エドはいくつもある自らの名前を数え上げるなどをしながら、妻を犯したいという衝動に限界の瀬戸際で耐えていた  
 
(俺が本能に負けるなどあってはならない、耐えろ、衝動は最大の敵だ…勝て、俺はいつだって勝者だ)  
 
 
エドは優しく声をかけてきた。二回目。素直に嬉しい。この夫が自分を気遣ってくれている。自分の痛みをわかってくれようとしている。それが…たまらなく嬉しかった  
 
 
そうして時間だけが過ぎていき…少しずつロッテーシャの痛みが引き始めた  
 
違和感と異物感は変わらないが、少なくとも、先ほどよりは痛くは無い  
 
「エド……もう、本当に、大丈夫…だから…」  
 
エドはずっと妻の髪を撫でていた  
 
それは、妻を気遣うというより、自分の自制を少しでも保つために行っていた  
 
しかし、保ってきた自制は、その言葉で消えた  
 
ズ…ッ…  
 
軽くゆっくり引き抜く  
ズプ…ッ  
 
ゆっくりと差し込む  
 
それだけで、エドは凄まじい快感を感じた  
 
「い…んぁ…っ…ぁぁ…ん…はあ…ぁ…んぅ……く…ぁ…」  
 
ロッテーシャは未だ僅かな痛みと違和感はあったが、ほんのすこし、ほんのすこしだけ先ほどの甘い感覚を感じ始めていた  
 
ズ…ズプ…ズプ、ズ…  
 
エドはできる限りゆっくりと腰を動かそうと考えていたが、快感に少しずつ流され始めていた  
 
腰がゆっくりとした前後運動から激しい動きになっていく  
 
「…っ…!ロッテーシャ…ッ…」  
 
「あっ!ああぁ!んぁあ!エド…エドぉ…!あ…は…ぁっ!い…あっ…あぁん!」  
 
ロッテーシャも激しくなっていく夫の動きに合わせるように声が高くなっていく  
 
エドは再び自制を強いられた。絶頂が近い。快感が止まらない、腰が止まらない。  
 
「ああっ、ああっ…やあっ…んぁっ…!も…エド…もぉ…いあ…!ああぁぁ!!」  
 
ロッテーシャが一際高い嬌声をあげたとき、ほぼ同時にエドは達した  
 
「あ…ぃあ…あつ…い…エド…」  
 
ロッテーシャは自らの中に流れ込んでくる熱い迸りに体をゾクゾクと震わせた  
 
 
エドはひとつ息を吐くと、そのまま妻の体に倒れこんだ  
 
ヌ…プ…ッ…  
 
音を少しだけ残し、エドのものが妻の中より名残惜しそうにぬかれる  
 
シーツには白と赤のコントラストが生まれていた「エド…お…おもい…」  
 
ロッテーシャは倒れこんできた夫に呼び掛けた  
 
が、  
 
「すまない、もう少し、こうさせてくれ」  
 
「……はい…」  
 
 
 
 
 
翌日  
 
「ロッテーシャ、足でも痛めたのか」  
 
練習生の一人に突然言われ、ロッテーシャはギクリとした  
 
「だ、大丈夫です。どこも怪我などしていません。さぁ、もう一本いきましょうか」  
 
少し慌てながら練習生に指示を出すロッテーシャを見ながら…  
 
 
練習生の剣を軽く打ち払い、エドは苦笑した  
ロッテーシャも夫の苦笑に気付き、赤面しながら剣を振るった  
 
この日、剣術道場では妙に機嫌のいい男と妙に機嫌の悪い少女の被害者が続出した―  
 

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