「秋山先生飲み過ぎですよ‥ほら、ちゃんと立って!」
「やぁ~だ。里美ここで寝るんだもん!」
前々から酒癖が悪いとは知っていたが、これ程までとは…
思わずため息が出た。
―そもそも、
何かにつけ、飲みに誘ってくる同僚達の話に乗ったのが失敗だった。
気付いた時には、里美は既に出来上がっていた。
「住んでいる場所が近くなので、僕が送ります」
他の同僚達に告げ、タクシーに乗り込んだ。
ドア越しに
「よっ!送りオオカミ!」
「秋山先生襲っちゃダメよ~」
「無理無理!小動物だからそんな度胸ないよ~」
「役得ですなぁ」
「全く羨ましい限り」
全く人の事を何だと思っているのか‥
酒の勢いに任せ、一言言おうか考えたが、後々が恐ろしいので押し黙ることにした。
「‥うぅ~ん」
「…………」
一方、隣人はこちらの肩に頭を預け、幸せそうに寝入っていた。
自室前まで来ると、里美を一旦背中から降ろし、ドアの鍵を開けた。
「秋山先生、家に着きましたよ。中に入って下さい」
「ん‥」
軽く頷くと、里美はおぼつかない足で中へと入っていく。
続いて自分も中へと入ると施錠した。
「…何してるんですか?」
振り返ると、
里美が玄関で仰向けに眠っていた。
―そして今に至るわけだ。
「こんな所で眠っちゃうと、風邪ひきますよ?寝室行きましょう」
「いやぁ!」
「お願いですから~」
「じゃあ、里美のお願い聞いてくれる?」
「‥いいよ。ただし、一つだけね」
「うん!ありがと」
普段の本人からは想像がつかない程、幼児に逆戻りしてしまった彼女に話を合わせる事にした。
「お願いって何?」
「‥うんとね、里美をベットまでお姫様抱っこしてってほしいの」
「え゙?!お姫様抱っこ?」
「‥ダメ?」
「ゔ‥わ分かりましたから、それ以上僕を見つめないで下さい!」
飲酒によって、里美の頬は薄紅に染まり、猫のような瞳は潤んでいた。
寝室のベットまで、たかが数メートルの距離だというのに、真一の足取りは重かった。
真一の小柄な体格に対して、彼女があまりに大きく重過ぎるからだ。
しかし彼女は、ただ体格が良いだけではない。
教師にしておくには勿体ない程、目鼻立ちが整った小顔で手足が長い。まるでモデルの様な女性だった。
その彼女の手足が、酔いで幼児かしているためか、真一の行く手を阻むのだ。
「お‥お願いで‥すから、じっとし‥てい‥て下さい」
「やぁ~だ」
そんなこんなで、どうにか里美をベットに運び終えた。
「はぁ~‥はぁ~‥」
腕や太ももはぱんぱんに腫れ、腕は痺れも伴っている。自分の情けなさを痛感していると
「‥ねぇ」
「何‥で‥すか?」
里美から声を掛けられ、痛みが走る上半身を起こし、視線をベット上の彼女と交じり合わせた。
「なっ‥何にしてるんですか?!」
先程まで彼女が着ていた服はベットの下に投げ捨てられており、
里美が身につけていたのは、細い首を飾る繊細なデザインのネックレスと、
白く滑らかで柔らかそうな二つの丘などを包み込む品良く刺繍が施された薄紫色の
上下揃いの下着のみだった。
その扇状的な光景に、いつのまにか口内に溜まっていたつばを真一は飲み込んだ。そんな彼の事は気にも止めずに
「このネックレスを外してほしいの」
そう言うと、彼女は背を向け、長い髪を両手で掻き上げた。収まりきらなかった髪が零れ、
背中を流れ落ち、更に長いものは、くびれた腰に纏わりついた。
「…そんなの、自分で外して下さいよ。‥こ子供じゃないんだから‥」
目のやり場に困り、視線を彼女から逸らし、そう告げた。
真一はこれまでに何人か彼女がいたが、今はいない。ましてここ最近は、臨時とはいえ、
教師の立場上、レンタル店や書店にそういう類のものを気軽に借りたり買ったり行けずにいた。
また里美の所に居候している関係もあり、自己処理も叶わず
出すべきものも出せず、かなり溜まっていた。
そんな余裕がない状況で、酔いのせいとはいえ、あまりに刺激的な里美の姿は
真一にとって、目の毒にしかなかった。
「ねぇ‥早く外してよぉ~」
「‥自分でお願いします!僕もうリビングで寝ま‥わぁっ!」
なおも要求する里美に、目を閉じドアの前まで歩き、振り向きベット上の彼女に言ったつもりが、
すぐ後ろに里美は立っていた。
意外に力がある彼女に引っ張られ、
ベットの傍まで一気に逆戻りさせられてしまった。
「真一早く!全くだらしない!」
「‥分かりました。外せば良いんですね‥」
少し前の可愛らしい言葉遣いはどこへ飛んでいったのか、里美は完全に目が据わり、
説教上戸になっていた。
本当に酒癖悪いよ‥この人…
里美は今度はベットに正座し、こちらをじっと見ている。色々な意味で直視は避けたい。
「じゃあ外しますから…後ろ向いてください」
「いや、あんた‥また逃げるかもしれないじゃない」「…分かりました。僕が目を閉じます」
目を閉じ、恐る恐る両手を伸ばしていく。
ふにっとした感触に目を開ける。
「どこ触ってるのよ」
柔らかいはずだ。左手は里美の右胸に触れていた。
「す、すいません。もう一度やり直します」
真一は再び目を閉じ、腕を目的の位置に伸ばそうと上体を里美に近付けた。
「分かれば良いのよ」
両手に里美の髪が触れるのを感じ
よし!もう少しだ!
首のネックレスに触れようとした瞬間
「‥もう!じれったいわね」
真一に痺れを切らした里美は立ち上がった。
「うわぁ!?」
「きゃあ!?」
バランスを崩した二人は勢い良くベットに倒れこんだ。
「痛ッ?!!いったぁ~い!!…‥え゙?は?え、何なの?この状況は…‥ちょ、
ちょっと!は早く、どいてよ…‥」
「…嫌‥です」
「は?」
「…ここまで僕を誘っておいて、それはないんじゃないっすか?
責‥任‥取って下さいよ、秋山先せぇ‥」
ベットに倒れこんだ際、若干頭がはみ出し、角に頭を打ち付けた里美は酔いが醒めた。
真一は先程まで限界寸前の理性をすり減らし、里美の対応に当たってきた疲れと
付き合いで軽く飲んだ酒の酔いが今頃回ってきたようだ。目が先程の里美の様になっている。
「覚悟して下さい‥秋山先せぇ‥」
「じょ冗談じゃないわ!放せ!な、何なのよ~この馬鹿力は‥」
普段の小柄な真一の体格からは想像もつかない程の力で押さえられ、
里美は身動きがままならない。
「‥ひっ、脚の付け根に何か当たってるぅ‥」
「‥秋山先せぇ、知らないんですか?」
「はは、大丈夫よ‥男の生理現象でしょ?その知ってるから‥んッ」
乾いた笑顔を引きつらせ、何とかベットを後退しようと努力する里美の両腕を、容易く片手で頭上にまとめると
そのまま彼女の唇に同じものを重ね合わせた。
その重なりが深かった事を示すように、二人を銀色の糸が繋いだ。
「ンハァッ‥ハァ‥ハァ」
「ハァ‥ハァ‥秋山先せぇ」
「…‥ハァハァ」
里美はなかなか整わない息を何とか整うようとしながら、真一に牽制の眼差しを向けた。
「‥大丈夫。恐がらないで下さい」
真一は
いつもと変わらぬ向日葵の様な笑顔を里美に向けた。
「‥ちゃんと教えてあげますから‥」
End.
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