・ウェンディ……ピーターに拉致られて、ネバーランドに連れてこられたヒロイン。いつも貞淑で完璧を目指す。  
まじめに囚われたちょっと面倒くさい女性。  
・ティンク=ベル……ティンカー=ベルの兄。 イタズラ好きのウソつき妖精。  
ネバーランドの「世界の意思」に作られた「世界の意思」の望むとおりに動く人形。  
ティンクEND後はウェンディのモノになっている。  
・ジョン、マイケル……ウェンディの血は繋がらない弟達。   
 
 
  「妖精の教育、淑女の調教」  
 
 
母の言う”全てをパーフェクトにこなす完璧なレディ”となる。   
それが私、ウェンディ=ダーリングの目指していた理想の未来。  
 
「それがどうしてこんなことになっているのかしら……」  
ウェンディは不思議に思う。   
 
このネバーランドにピーター=パンに連れてこられ、ティンクと関わるうちに母の呪縛から解き放たれて、  
私は母の言う”完璧”に拘る必要はない、普通でいいんだ、と悟った。  
「でも、だからって、本当に私このままでいいのかしら……」  
 
その問いにアドバイスをくれるはずの弟達は元の世界に戻って、もうこのネバーランドにはいない。  
そして弟達と変わって、私の周りにいるのは、私が生まれた世界の”普通”からは遠くかけ離れた人たちばかり。  
大人になったり子供になったりする男の子や、チョコばかり食べている海賊の船長と、時計ワニをこよなく  
愛する海軍指揮官。 そして。もっとも普通じゃない、空を飛ぶイタズラ妖精=私の恋人。  
 
("普通"どころか、人間ですらないのだもの)  
 
見た目は美青年。 蜂蜜のような豪華な金髪にグリーンがかったブルーの瞳。 褐色の肌。  
小さい頃読んだ絵本の中の妖精は、トンボのような薄い透明な羽を持つモノや三角帽子を頭にちょこんと  
のっけた姿の、人間より小さな生物だったはず。  
でも実際は背も、肩幅も、手のひらも……何もかもが私より大きい。  
落ち着いた雰囲気なので私より年上かと思っていたのに、生まれてからたった約100日程度しかたっていないらしい。  
 
人間でいえば、生まれてから100日なんて、まだ赤ちゃんだ。  
そう思うと、ティンクはなるほど、赤ちゃんのような気がする。 見た目でなく中身が、だ。  
赤ちゃんのようにまっさら。  何も知らなくて、だから何でも知りたがって。  
善悪の区別が付かないので、それがどんな残酷な事でも平気でやってのける。  
 
そんな彼も、二人で一緒にいる時に何度も根気よく駄目なこととして良いこと、人がされて嫌なこと、  
喜ぶことを教えてきたので最近は私がお説教をする事もかなり少なくなっている。  
……はずなんだけど……。 ある面についてはとても困ったことになっているのだ。  
 
  ☆★☆  
 
「ウェンディ、どうかしましたか?」  
ティンクに後ろから声を掛けられてはっとする。 いつの間にか、カップを洗っている手が止まってしまったようだ。  
二人で一緒にディナーを食べ、私は食器を洗っている最中だったのに。  
 
弟達がいなくなって広くて持て余していたこの家にティンクが居ついてしばらく経つ。  
一人きりだと寂しくてあれこれ余計なことを考えがちだから、ティンクが居てくれてとても助かっている。  
何も知らないティンクに家事を教えていると、ジョンやマイケルが小さかった頃をつい思い出してしまう。  
(あの子達は大きくなっても家事を器用にこなす事はできなかったわね。)  
でも、ティンクは違った。  
妖精とは自分達が言うように人間よりも数倍優れた生き物なのかもしれない。  
彼は一度言ったことはなんでも直ぐに覚えてしまってその後は完璧にこなした。   
ただ、やるかやらないかはその日の気分次第だから結果的にあまり役に立っていないかもしれない。  
 
「ウェンディ?」  
ダメダメ。 今は洗い物に集中しなきゃ。  
慌てて泡だったスポンジでカップを擦る。  
「な、何でもないの。 ちょっとぼーっとしちゃっただけ」  
「ぼーっと? 何か考えていたのでしょう? 何が面白いことでも考えていたのですか?」  
気にしないで座ってて欲しいのに、逆に椅子から立ち上がって私のほうにやってくる。  
ティンクは直ぐに私の顔を覗き込む。 初めの頃はまったく空気の読めないヤツだったけど、最近は私の  
表情を見て、あれこれ心配してくれたりする。 それはうれしいのだが、こういうときはちょっと困る。  
「な、なんでもないの」  
「俺に言えない事なんですか?」  
ひょいと覗き込んできた顔が思いのほか自分の頬の近くにあって胸がドキンと跳ねる。 かぁっと頬が赤くなってしまい  
それを悟られたくなくてつい、視線を避けて俯いてしまう。  
「そんなんじゃないったら」  
「俺はあなたのことなら何でも知りたい。 教えてください。 何か楽しいことですか?」  
「ほんとになんでもないったら」  
 
あなたの事を考えていた、なんて言ったら、更に根掘り葉掘り聞かれちゃう。  
だから言わないでいたら、後ろからすらりと長い腕が身体に絡みついてくる。  
その手がイタズラではなく、マッサージなどの癒しでもなく、色を含んだ動きをする事に気が付きこんな場所で?と  
戸惑ってしまう。  
 
「ちょ、ちょっとティンク……まだ私洗い物が終わってない……ん…………ぅ」  
両手が泡だらけのままなので、ティンクの腕から逃げられない。 恥ずかしくて身体を捩るが強く抱きしめられたまま  
首筋にチュッと軽くキスされて、私の抵抗は口だけになってしまう。  
「教えて……ウェンディ……。俺はあなたのことが知りたい……どんなことでも……」  
大きな掌がいつの間にかエプロンの下に潜り込み、ウェンディの身体を摩り、乳房を下から持ち上げるように  
愛撫を加え始める。  
「や……」  
ふにふにと乳房の柔らかさを堪能した後、徐々に硬くなりつつある頂を服の上から探り当ててスリスリと  
指で刺激する。 直接触られたわけでもないのにジンッと感じてしまって思わずピクリと身体が反応する。  
「硬くなってる……。 感じてるのですか?ウェンディ」  
そう言いながらまたキスをし、そのまま片手はするすると下のほうに降りていき、スカートをたくし上げる。  
「ティンク、ダメよ。 邪魔しないで」  
慌てて泡のついたままの手で、イタズラな手を掴んで止めようとしたけど、時既に遅し。  
「食器洗いならあとで全部俺がやっておきますよ」  
そう言いながら、何度か下着の上からくすぐるように撫でた後、彼の我侭な指は既に私の下着を掻き分けて  
奥に進入し始めてしまう。 薄い草叢を掻き分けて、小さな蕾を見つけだすと円を書くようにゆるく摩りだす。  
「あっ!……もう、ダメだったら……んっ!……んんっ……」  
「もう濡れ始めていますね」  
掠れた声で耳元で囁かれると、背筋がゾクゾクとしてもう何も考えられなくなってしまう。  
「ウソよ」  
ウソじゃないのは自分が一番良くわかっている。 最近の私はティンクが私に触れただけで、直ぐにこんな風に  
とろとろになってしまう。 以前はこんなんじゃなかったのに。いつの間にこんなはしたない身体になってしまった  
のかしら。  
「まだ教えてくれないのですか? 俺の知らないことを何でも教えてくれる約束でしょう?」  
首筋の次は耳たぶを甘噛みしながらまだ教えてくれとせがむ。  
言えない。 だって困っているのよ、あなたの事ばかり考えてしまって。 私達、これって”普通”かな?って。  
初めての時だって。……。  
二人で初めて愛し合ったあの夜のことを思い出す。  
 
ティンクは言った。 ”あなたを気持ちよくしたい”と、私を抱きしめながら。  
でも、ティンクにとっては何もかもが初めての事だから、大変だった。  
愛を交わすのにも一から説明が必要なのだ。  
よく考えたら、ジョンもマイケルもそういうことっていつの間にか学んじゃっているのよね。  
学校の友達から聞いた話だったり、小説だったり。 何かしらその手の情報はいつの間にか耳に  
入ってくるものだから。   
でもティンクはそうじゃない。だって生まれてから約100日だし。  
それに両親もいないのだ。  
 
いつか、ティンクが妖精の生まれる瞬間を見せてくれた事がある。  
花の妖精は”妖精の森”の花畑で咲き始める花の中から月の光を浴びて生まれる。  
ティンクやティンカーは光の妖精だから強い光の中から生まれたらしい。  
つまり――。 男女が情を交わしてを子供ができる、という概念が妖精にはないとティンクは言った。  
 
「キスはあなたからしてくれたのよね。 キスは誰かとしたことあるの?」  
「はい。妖精同士でたまに。 でも本来、妖精に性愛の欲望はありません。  
でも人間達が街でしているのを見かけていましたから。 見よう見まねです。  
前から不思議だったんです。どうして人間はキスをするのか。 したらどうなるのか。   
でも今までは人間の誰かとしたいとは思わなかった。 でもあなたにはしたくなりました。  
だからあの時、キスをしましたけど……イヤでしたか? 俺はとても気持ちが良かったし、  
もっといっぱいしたいけど、あなたがイヤならもう二度としません。」  
そういってニコリと笑う。  
「性愛の欲望がないって……妖精は全て無性愛ってこと?」  
「そうです。 生殖……つまりSEXはしなくても仲間は次々に生まれてきますから。 人間はSEXをしないと  
人間が生まれてこないのですよね?」  
「ええ」  
「ウェンディは俺とSEXをしたいですか?」  
 
「えっ!」  
そんなにダイレクトに聞かれると恥ずかしい。  
顔を赤くして何と答えたらいいのか戸惑っていると、返答がないことをNOと受け取ったティンクがしょんぼりとした。  
「したくない、ですよね。 ……。俺、妖精で人間じゃないですし、できるかどうかわからないですもんね。  
俺自身、どうしたらいいのか良くわかってないですし」  
小犬がしゅーんとしょげかえるような項垂れ方にちょっとキュンとする。  
「……したいわ。 ティンクとならしたいと思う。 キスもティンクならうれしいからいっぱいして欲しい」  
「ホントですかっ!」  
「ええ」  
「あなたがそう望んでくれるのなら、俺、できそうな気がします。 だってウェンディは俺の世界だから。俺はあなたが  
望むからこの世界に存在できる。 だからあなたが望む身体に俺はなっているはず」  
「そうなの?……かしら?」  
ティンクが私の身体をぎゅっと抱きしめる。  
「そうだと思います。 これから試してみましょう。二人で。 俺にどうしたらいいのか教えてください」  
それからあれこれ身振り、手振り、時には紙とペンを使って図式で説明するなど、人間のSEXについて  
説明すること小一時間。 やっとなんとか行為にこぎつけたのだが――。  
 
「こんな小さなところに本当に俺のが入るのですか? 何かの間違いではないでしょうか」  
とか  
「あなたがどんな味がするか、ココ、舐めてもいいですか?」  
とか  
「どうしてこんなにヌルヌルなんですか?」  
とか。 もう返答に困る質問ばかり。  
どちらも初心者で勝手が分らないので、色っぽさの欠片もない、まるで理科の実験でもするような会話が続く。  
それでもなんとか挿入した後は、どんどん燃え上がっていき、止められなくなっていた。  
前儀のときはあんなに余裕そうだったティンクが、眉間にしわを寄せて、段々息が荒くなっていく。  
「これは……、こんなのは初めてです。 気持ちよくて……あなたは何をしているのですか?中が、中が絡み付いて……」  
「そ、そんなの……あ、……わからな……んっ……」  
ティンクの切羽詰った声に、自分の身体が彼にそんな声を出させているのかと思うと、安堵とともにうれしく思う。  
 
「あ…ぅ……、おかしいです。 俺……ごめんなさい……、腰が止まらない……く……ぅ……」  
段々腰を打ち付けるスピードが上がっていく。 額から汗を滴らせて無心で腰を振り続けている。  
もっと快感を引き出す為に、ティンクが私の足を肩に担ぎ上げて、更に奥へと突き上げる。  
「いい……気持ちいい。……こんなに気持ちいいなんて……思わなか……った。 こんな、快感があるなんて……」  
「あ……ああ……あ……あぁっ!!」  
突かれる度に溢れ出る愛液が純潔の血と混ざり合って、シーツに滴り落ちる。 初めての痛さがいつの間にか快感にすり替わる。  
「俺…、俺……もうっ!……ああっ……っ!!」  
ティンクが荒い息のままぎゅーっとウィンディの身体を強く抱きしめる。   
きつく抱かれて息が苦しいくらいだけど、それに勝る幸福感が身体を満たす。  
そうして、ティンクはウェンディの身体をさらに熱い楔で何度も突き上げ、やがて弾け、熱い液を奥深くへ吐き出した。  
 
「ハァ……ハァ……。 今の……」  
ティンクの身体の力が抜けてウェンディの上に崩れ落ち、ぐったりとしたまま質問してくる。  
「今のは……なんですか? 俺が今まで経験した事がない感覚です」  
「今のは……エクスタシーとか絶頂とか人は言うけど……つまり……『イった』って事なのよ」  
「”イク”ですか……。実に興味深い。あなたは俺に知らないことをいっぱい教えてくれますね」  
そういいながらティンクがウェンディの頭を抱き寄せチュッと髪の毛にキスをする。  
「愛し合う二人でないと体験できない事なのよ」  
「俺達が”愛し合ってる”ということですか。 なんだか良くわからないけどうれしいです」  
そう言いながら、ニコリと微笑んで腕枕をしてくれる。  
「だから……私以外の人と……人だけじゃなく妖精とも、人魚とも、したりしないでね」  
「わかりました。 ウェンディ以外の人間とはしません。妖精とも。 人魚は出来るんですかね?」  
人魚は美人ばかりだけど足がない。  
「さあ、人魚になったことないから分らないわ」  
ティンクは何か想像したのかちょっと考えたあと、  
「人魚になったあなたも素敵だけろうけど……あなたはあなたのままでいてください。 ウェンディ……愛しています」  
とまた、強く抱きしめてくれた。  
「私も愛しているわ、ティンク=ベル」  
満たされた思いでいっぱいで、とても幸せだった。  
そんなふうに、なんとか初体験はクリアしたのだが――。  
 
☆★☆  
 
先ほど、食器洗いの途中でいきなりティンクにイタズラされた私は、お姫様抱っこされてそのまま私の部屋のベッドに  
連れ込まれていた。 そしてティンクは手早くウェンディの服を全て脱がしてしまう。  
舐めて塗らした指をウェンディの蜜壷に挿入し、クプクプと出し入れしながら、一番感じる突起の包皮を剥いて、  
むき出しにしたままのそこを舌でぴちゃぴちゃと転がしだす。  
「ヤ……だめぇ……ティンク……そこだめぇー……」  
そうしてそのまま愛撫を続けられ、何度もイキかけるのに、イキそうになるとはぐらかされる……それを  
ずっと繰り返されていた。  
指は入り口から浅い部分までしか届いておらず、酷く感じているのに絶頂には至らず、生殺しの状態のまま。  
「ね……ティンク……おね…がい……」  
もう何度も何度もお強請りをさせられた。 でもティンクはワザととぼけてイかせてくれない。  
「『おねがい』? 何をしたらいいのかちゃんと言ってください。 俺にはどうしていいのか分らないから」  
「う、ウソよっ! もう分っているのでしょう? あれから何度も何度もしたじゃない」  
「ええ。でも今、あなたが何を望んでいるのかなんて俺には分りませんから」  
「ウソよっ!絶対ウソだわ。 もうお願いだから意地悪しないで〜」  
 
そう、これが今現在、私が悩んでいること。  
 
初めてしたときに、私が説明しながらした。それ以来、ずっとこんな調子で、私がティンクに何をさせたいのか、  
どこが感じるのか、今、気持ちいいのかを喋らせたがるのだ。  
初めてのときだって死にそうに恥ずかしかったのに、ティンクに教える為に必死で恥ずかしさに耐え、説明したのに。  
初めだけだから、とあんなに我慢したのに、こう毎回なんてイヤ過ぎる。  
 
そうしているうちにもじゅるじゅると耳を塞ぎたくなるような音をたてながら、ティンクが花芯を強く吸い上げる。  
こんなに強烈に感じているのにイケないなんて……。もうおかしくなってしまいそうだ。  
「あああああぁっ!……もう……だめ。……ティンク……して……お願いだから」  
「何をしたらいいのですか? ちゃんと言ってください」  
「だめ……そんなこと……いえな……あっ……ん……」  
「言えないのですか? あなたが望んでいる事ですよ? どうして言えないのですか?」  
「うう……あン……して……お願い」  
恥ずかしさのあまり、両手で顔を覆ってしまうが、意地悪なティンクはその腕を掴んで強引にベッドに縫いとめる。  
「さあ、ちゃんと、言って」  
「ああ……」  
「言ってください」  
イキたいと思う欲求が強固な羞恥心を徐々に塗りつぶしていく。  
 
「……入れて……」  
「俺のを入れて欲しいのですか? そんなにコレが欲しい?」  
「ええ、欲しいの……ティンク……早く欲しい。もう我慢できないわ……」  
片足を抱え、ようやくティンクが自身を蜜口にあてがい、二、三度こすり付けた後、ゆっくりと入ってくる。  
しかし、先ほどの指と同じように入り口近くの浅い場所で、焦らす様に動かしているだけだ。  
そんな事をされるともっと奥に剛直を飲み込もうと恥ずかしいヒダが勝手にヒクヒクと蠢いてしまう。  
「……もっと、もっと……」  
「ん? もっと?」  
言葉を促すかのようにチュッとキスをする。  
「もっと強く……激しく……してぇ……」  
「どうしてですか? あなたはいつも俺に、『女性には優しくする事!』と言っているのに。 だからこうして優しくしているのですよ?」  
「……あ……あ……でも……ダメなの……もっと強くして……お願い……」  
「もっと?強く、……何を、どう、『強く』するのですか?」  
ティンクはいつもと同じようににこやかな笑みを浮かべて、ウェンディを見つめている。  
 
(どうして? 私はこんなに気が狂いそうなほどティンクが欲しいのに。どうしてティンクは平然としていられるの?)  
 
「……や、いや……もう、ティンク、意地悪しないで。 そんなにいじわるしないでぇ……」  
焦らされすぎて、ついに泣き出してしまう。  
「『意地悪』? どうしたらいいのか聞くことが『意地悪』なんですか? 俺には分りません。 あなたが嫌なことなら  
止めたほうがいいですか?」  
そういうと、ティンクが動かしていた腰を止めてしまう。  
「いやぁ……っ!? ああっ……あ……ダメ……止めちゃダメなの……」  
「止めてはダメですか? あなたは我侭だなぁ。 じゃあ俺がどうしたらいいのか、ちゃんと俺に分るように教えてください。  
抜いたほうがいいですか?」  
ティンクは腰を引いて抜こうとする。  
「ひっ! ダメッ!! だ、だから……っ!」  
意地悪されて腹が立つのに、もう思考がぐずぐずで何も考えられなくなっている。   
「はい?」  
「だから……だから…………ダメ。恥ずかしくて言えな……ンッ!!やあああぁっ!!」  
恥ずかしくていつまでも言えないでいるウェンディに焦れたのか、ティンクがいきなり腰を突き上げる。   
突然奥まで挿入されグリッと突き上げられると、ウェンディの足の爪先がビクンビクンと空を蹴る。  
「こうして中を摺るんですよね?」  
「……ええ、ええ、そうなの」  
「でもそれだけじゃダメなんですよね?」  
 
「や……ティンク……ティンク……もう、ダメ。 ……奥が……奥が……っ!」  
「奥がなに……?」  
「もっと欲しいの……。 もっと奥まで……、もっと激しくして、……もっと、もっと……突いてぇっ!!」  
ついに羞恥で顔を真っ赤にして叫び出す。 きつく閉じられた瞳からは目尻からは涙がボロボロこぼれていく。  
「……奥ですか?……激しく?……あなたの言った『優しく』からはかけ離れていませんか?」  
「いいの……いいから、早くぅ!!」  
「分りました……ン……ウェンディ、瞳を開いて、俺を見て……自分で両膝を持って足を上げて……できますか?」  
目を開いたところでもう焦点など合わなかった。 それでもぼんやりとした意識の中でウェンディはティンクの  
言われるまま、瞳を開ける。 そして両足の膝裏を掴んで足を上げる。 ティンクに向けて足を開き、濡れそぼった  
花からとろりと蜜が溢れてしたたり落ちるのを見られているのに、もうまったく抵抗することもなく、潤んだ瞳で  
ティンクを見つめる。 普段のウェンディなら絶対にしない媚態を楽しみ、それでようやく満足したのかティンクは  
ウェンディの両の足首を掴み抱上げ、キスをしながらもうこれ以上無理なところまで屹立を埋め込んだ。   
お互いの上体に挟まれてウェンディの乳房が押しつぶされる。  
「ああっ!!」  
「――ン……ぅ……ウェンディ、口を開けて……舌を出して……」  
「あぁ、ティンク……ぅン……」  
言われるままおずおずと舌を出すと、直ぐにティンクが舌と舌を絡める。 口腔を摺られ、飲みきれなかった唾液が  
顎を伝っていく。  
「ああ……、ウェンディ、……可愛い……、もっと……もっと、俺を欲しがって……。俺だけを欲しがってください」  
両の手のひらをあわせて握り合う。 何度も何度も奥の感じる部分や、子宮口をゴツゴツと抉られ、  
繋がっている部分からはクチャクチャと音が響き、愛液が白く泡立ちながら滴り落ちる。  
「あっ……あっ……ティンク……ティンク……も…イク、……イっちゃう……」  
「ハ、……ッハ……。 お、俺も……気持ちよすぎて……もう……我慢……できなっ……ふっ!……っ!!」  
部屋中に身体を繋げる激しい音が響く。 壊れてしまいそうなほど激しく最奥を突かれて、ウェンディが先に絶頂を迎える。  
「――――っ!! ああぁあああああっ!!…………ン……ぁっ……ぁっ……ぁっ」  
達しても、ティンクがまだ突き続けるので感じすぎる身体がビクンビクンと痙攣するように跳ね、深い悦楽を味わい続ける。  
「――っ!!ウェンディ……ッ」  
快感に痺れたウェンディの身体を押さえつけ、ティンクもついに奥深くに飛沫を解き放った。  
 
☆★☆  
 
息が収まった頃、ウェンディ、とティンクが笑顔で言った。  
「さっきの顔、俺にもっと見せてください」  
「さっきの顔?」  
「今日はあなたの素敵な顔をいっぱい見られました。 空から落とされて悲鳴上げているあなたの顔も好きだし、  
俺のイタズラに怒っているあなたの顔も好きだ。   
でも一番好きなのは俺を見て笑ってくれる、あなたの笑顔だったんです。 と、今日まではそう思っていたのですが……」  
今日までは?  
「でもイッた瞬間の顔が最高過ぎて……。ウェンディ、今日初めて俺ので中でイってくれましたよね? イった顔も声も  
身体も……中も……最高でした。 涙目で余裕がなくて……素敵で可愛くて、もっと酷く泣かせたくなってしまいました」  
とても聞いていられないような恥ずかしいことをティンクはさもうれしそうに語りだす。  
 
「だからもっと俺に見せてください。さっきの顔。 俺にもっと教えてください、新しい感情を。  
もっと、もっと……知りたい。あなたのことを。   
ああ、あなたはなんて素晴らしい人間なんだ。 俺は退屈する暇なんてありませんよ。 あなたのあんな姿、  
ピーターも、ジョンやマイケルですらも知らないいんですよね? 俺だけが知ってるんだ。 ああ、最高です」  
中空を見つめ、うっとりと微笑みながら、可笑しな言動を続けるティンクにウェンディはげんなりする。  
 
「ふふふ、ティンクったら。 ”イキ顔がみたい”とか言われて私は 最 悪 だわ」  
折角の夜が台無しになって、ムカついて拳骨と拳骨でこめかみをぐりぐりしてやる。  
「イタタタ。 えー?どうして怒るんですか、俺にはまったく分りません。 さっきまであんなに喜んでいたのに」  
「っ!……コホン。 レディに対して、そういう顔が見たいとか言ってはいけないの。それはマナー違反よ」  
「そうなんですか? ”あなたの笑顔が見たい”と言ったときにはそんなこと言っていませんでしたよね?」  
それとこれとはまったく別次元だという事がティンクには分らない。  
そもそも見せてといわれてもそう簡単にハイッ!と見せられるようなものでもない。   
更に言えば、あんなに恥ずかしいのはもうコリゴリだ。   
これからはもう少しすんなりと事を運んでくれるよう言い聞かせなくては。  
 
「いいから! 情事の話を事後にあれこれ言うの禁止!」  
「うーん。人間のマナーは難しいなぁ。 ……本当はあなたと俺が繋がっている所をどうなっているのか開いて見て  
みたいなー、と思ったのですが、ウェンディが死んでしまいそうだから我慢しているのに。 イク顔くらいみせてくれても……」  
恐ろしい呟きに、自分が魚のヒラキにされた図を想像してぞっとしてしまい、慌てて釘を刺す。  
 
「私に限らず、人間を”開く”とか、絶対にダメよ、いいわね!」  
「分っていますよ。 退屈なときにはしたくなりますが、あなたがそばに居てくれていいる限り、  
俺は退屈しませんからね。 だからずっとずっと、俺のそばにいてください。」  
退屈したら殺してもいい……と思っているのだ。その考え方だけは何度注意しても変わらないから恐ろしい。  
 
私はどうして、この世界に残ってしまったのだろう。 そしてどうしてこんな彼を愛してしまったのだろう。  
「私だってティンクがそばにいる限り、退屈とは無縁だわ」  
 
☆★☆  
 
「と、言うわけで、あなたのお兄さん、ちょっと、というか、かなり変なのよ。 妖精ってそういうものなの?」  
翌日、久しぶりに妖精の谷へティンクに連れていってもらって遊んでいると、後からティンカーもやって来た。  
ティンクの妹であるティンカーに二人の性生活を相談するのは凄く恥ずかしいが、  
他に相談できる女友達がこの世界にいるわけもなく。 ティンクと恋人同士になって以来、友達になったティンカーに  
ぼやいてみる。 すると、思いもかけない言葉が返ってきた。  
「あははははっ!! ばっかじゃないのっ!! そんなわけないじゃないっ!!」  
「えっ?」  
「あーー。ティンクに騙されているわけね。 バカみたい。 あーあ、しまった。言わなきゃよかった」  
ティンカー=ベルは可愛らしい見かけとは反して毒舌妖精だ。 それは友達になっても変わらない。  
「それ、どういう事なの?」  
「妖精と言っても、私とお兄様は普通の妖精とはちょっと違うってわけ。 人間のように感情も身体も作られているし、  
生まれたときから大人の身体で生まれてくるのだから、それなりに知識も持って生まれてきたのよ。   
それにお兄様は今までだっていろんな人間と……あわわ」  
「ティンカー。ウェンディと何を話しているんだい?」  
いつの間にかティンクが私の後ろに立っていた。 それに気が付いたティンカーが慌てて羽ばたいて空に浮かび上がる。  
「な、何でもないのよ、お兄様。 あははは。 あ、私、ピーターとドロップの花畑に行く約束していたんだったわ。  
ウェンディ、お兄様、じゃーねーっ!」  
そういうが早いか、ティンカーはあっという間に流れ星のような勢いでピーターの住む方向に飛んでいってしまった。  
 
残されたのは怒りでプルプルと身体を震わせているウェンディと、いつものようにニッコリ笑顔のティンクだけだ。  
「〜〜〜〜〜ティンク?」  
「はい、何でしょう。ウェンディ」  
「全てウソだったのね」  
「はい?」  
「妖精はSEXしないって事も、初めてだって事も、やり方を知らないって事も」  
「全部ウソってわけじゃないですよ。 俺にはあなたがどうして欲しいかなんて分らないですから」  
「でもそれを私が口にするという事はとても恥ずかしい事なのよ」  
「ウェンディ。 俺は人間のマナーについては、まだまだ分らないことばかりなんです。 あなたがちゃんと教えて  
くれないと、俺はあなたが望む俺になれません だから――」  
そういうとティンクはチュッと唇にキスをして微笑んだ。  
「恥ずかしいのは”ちょっとだけ”我慢してください」  
 
「全然ちょっとじゃないわよっ!! もう、絶対に イ ヤ」  
「ウェンディ。 俺はただ学びたいだけなんです。 他に他意はありません。 だからまた――」  
「いやよっ!なんであんな羞恥プレイをさせられなきゃいけないのっ!」  
「”羞…恥プレイ”? あなたの世界にはそんな呼び名があるんですか? やはりこれが楽しいのは俺だけじゃなかったんですね!」  
「〜〜〜〜〜〜〜っ!! やっぱり全部ウソなのねっ!!」  
「あ、やば」  
「ティンク〜〜〜〜っ!!」  
「ご、ごめんなさい。 だって仕方ないです」  
拳骨を握り締めた私に慌ててティンクが両手を広げてガードしながら言い訳する。  
 
「俺はその”恥ずかしがるウェンディ”が見たいんです。淑女なあなたが俺に攻められて必死で平静を保とうとして  
いるのにできなくて、顔を真っ赤に染めて、泣きながら恥ずかしそうに『もっと……』とか『して……』とか、  
そんなあなたの顔を見ると俺は堪らない気持ちになるんです。 これは本当に初めての感情です」  
「それのどこが”仕方ない”のよっ!!」  
そう怒り狂うウェンディを前にして、ティンクがしれっと言い放つ。  
「それに俺は、ああいうことをしたらいけないなんて知らなかったし」  
「知らなければ、私を”言葉攻め”して、からかって遊んでいいわけねっ!」  
「”言葉攻め”? 違いますよ。 愛し合ってるんです。 ですよね?」  
「ウソよっ!私を辱めて楽しんでるんじゃないのっ!」  
「?辱める?さっきから難しい言葉ばかりですね。 良くわかりません」  
 
(このドS妖精め〜〜〜っ!本当は何もかも分ってて言ってるんじゃないでしょうね〜〜〜〜!!)  
 
しかし、ティンクのきょとんと首を傾げる姿を見ていると、やはり本当になにも分っていないように思えるのだ。  
そう、彼は約100日前に生まれたばかりなんだから。  
「怒っているのなら謝ります。 許してくれますか?」  
しょんぼり小犬のような顔をした彼が目の前で謝っている。  
 
そう。 ”羞恥プレイなんて、普通のカップルはしない”って事を知らなかったのよ。 だからしょうがない。  
私がこれからもいろいろ教えてあげないと。  
「……。そうね。あなたは生まれたばかりでまだ何も知らないのよね」  
「はい!」  
そうティンクがうれしそうに笑う。  
どこまでがウソでどこまでがホントか。 まったく分らない顔で。  
 
「それでも、もう次からはああいうことはしないから」  
キッパリと言うウェンディに、ちょっとがっかりした顔をしたティンクが言葉を返す。  
「そうですか。わかりました。 あなたがどうしてもイヤというなら無理強いはしません。  
 ……でも、羞恥プレイがイヤなら、別の遊びを考えないといけませんね」  
「っ!?」  
「今日はどうしましょうか? コットンキャンディの雲の上でふわふわしながらはどうですか? たまには外も刺激的  
ですよね。 あ、食べるとHな気分になっちゃうチョコが自生している場所を見つけたのですけどウェンディに食べさ  
せてもいいですか?」  
「……ティンク、お願い。私、普通がいいの。 普通になって」  
ティンクもピーターといっしょで、言い出したらどんなにイヤダと言っても止めてくれないので本気でその気になる前に  
慌てて止めてくれるように懇願する。がもちろん止めるつもりは無いようだ。  
「え? 俺、普通ですよね?」  
「普通じゃないわよ。 ちっとも!!」  
「そうですか?」  
いつものように爽やかにニコリと微笑んで言う。  
「俺はあなたのモノ。 恋人になったあの日から、俺はあなたが望んだとおりに成長するんです。普通でないのは  
あなたがそれを望んでいるから。 ちゃんと自覚して、俺をこんな風にした責任、取ってくださいね」  
そういってこの恋人は私を抱きしめ、誰よりも甘い声で耳元で囁くのだ。  
「それにウェンディは”普通”なんかじゃ物足りないでしょう?」  
「〜〜〜っ!!」  
(ウソでしょう!? これが私が望んだ世界なの?? 誰かウソだと言って〜〜〜!!)  
赤面しながらあわあわしている間に、頭から金色に光り輝く”妖精の粉”を振り掛けられて、ふわりと身体が浮き上がる。  
 
 ここはネバーランド――。  
この世界に来てまだ数ヶ月のウィンディのほうが、この世界の理をまったく知らない、赤ちゃんだという事に  
ウィンディは気が付かない。  
そしてドS行為にすっかり味をしめたティンクは、そんなウェンディが可愛くて大好きだなぁなんて思いながら、  
あっという間に青い空の彼方まで連れていってしまった。  
 
 
糸冬  
 

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