緋鞠が死んだ。野井原での妖たちとの戦いで。それは野井原の緋剣と呼ばれた猫のあっけない最後だった。
緋鞠を助けるなんて大口を叩いて、結局は彼女に守られた。
冷たくなっていく体、光を失っていく瞳、何もできない。
「ふふっ邪魔な猫も殺ったし、次はおまえよ宦v
妖の女が何か話しているが理解ができない、いや本当はもう分かっているんだ。もう彼女が守っても笑ってもくれないってことは。
「ちぇっ もう反応もしてくれないか、まあいいや バイバイ」
迫り来る凶刃を俺は見つめる事しかできなかった。
「それじゃ、また電話するよ」夜というにはまだ早い時間。母への定期的な連絡。 祖国から遠く離れたこの国で俺、天河優人は暮らしている。
きっかけは祖父母の死だった。元々祖父母を変人扱いし野井原を出たがっていた両親には都合が良かったのだろう。
まだ祖父母の死を実感できずにいた俺に「引っ越すぞ」とだけ告げて強引に連れて行こうとまでした。
そんな時両親を押し留め、説得してくれたのは・・・
「何を話していたんですの?」
背中から抱きつき、耳元で囁く。 鬼斬り役にして希代の魔女、そして俺の許嫁。 「くえす・・・」神宮寺くえす。
不意に首筋を噛まれ、反射的に身をよじって逃げようとする。 だが、蛇のように絡みついた腕がそれを許さない。
肌が破れ、血が滲む傷口を舌先で抉られる感触に抵抗する意志が一瞬にして冷めてしまった。
背後からシャツのボタンが外され、少し冷たい指先が肌をかすめる。 久しぶりの家族との会話で満たされていた心が欲望の炎に溶かされていく。
ボタンが全て外され、服の内側に手が入り込む。 そのまま胸への愛撫が始まり、思わず彼女にもたれかかってしまう。
くえすは俺をベッドへ放り出すと、顔の脇に両手を着き俺を見下ろした。