くえす「全く…女を待たせて良いのは相手が  
男の場合だけですのに…」  
私はリズさんの喫茶店で紅茶を飲みながら、待っている  
心無しか、いつも戴く紅茶より苦く感じてしまう  
なぜなら私が待っているのはゆうちゃんではなく、猫…緋鞠だ  
彼女の用件は、大体察しがついている  
私とゆうちゃんの事で間違いないだろう  
もっとも遅かれ早かれ、いずれは避けられない問題だ  
リズ「あの…くえすさん、紅茶のお替りは…」  
明らかにいつもと違う私の態度に恐る恐るリズさんが尋ねてきた  
くえす「ありがたく頂くわ…ごめんなさい、今日は休業日なのに」  
リズ「いえいえ、くえすさんは私の大事なお客様ですから」  
私が多少落ち着きを取り戻した様に見えたのか  
リズさんはいつもの調子に戻って応対してくれた  
ゆうちゃんと私の事を知っても、この様に接してくれるか…  
争い事の嫌いな彼女だが、ゆうちゃんの事になると別だ  
そう考えていた所、ドアの開く音がした  
くえす「来ましたわね…」  
 
私は開いたドアの方へ視線を送った  
予想通りというか、緋鞠の姿がそこにあった  
緋鞠「…済まぬ、ちと遅れたようじゃな。くえす」  
くえす「全くですわ。私、もう帰ろうかと思ってましたわ」  
私と緋鞠は、互いにいつも通りの会話を交わした  
緋鞠「さて…此処ではちとマズイ…場所を変えるぞ」  
知り合いの前では話したくないと取れる  
あるいは、この二人なら店をも巻き込み兼ねないとも取れる  
くえす「…いいですわ。貴方の好きな場所で」  
私としても好都合だったので、緋鞠に了承した  
リズ「あ、あの…まさか二人とも…また…」  
遠慮がちにリズさんは私と緋鞠に尋ねてきた  
雰囲気からいえば、明らかに仲良く出掛けようとは思えないからだ  
緋鞠「大丈夫じゃ。これから危ない事をする訳ではない  
心配は要らぬ。次、来た時は熱い緑茶でも用意しといて貰おう」  
くえす「…そういう事ですわ。また今度戴きますわ」  
一応、私もフォローはしておいた  
とりあえず納得した様子で、リズさんは私と緋鞠を入り口で見送ってくれた  
緋鞠の後を追い、私が足を止めた場所は  
かつて私と緋鞠が戦った広場だった  
 
くえす「…そう言えば、ここは貴方と私が戦った場所ですわね…」  
緋鞠「…そうじゃな。私にとっては、決して縁起が良い場所ではないな」  
そう、あの時は互いの主張を力で争うしか無かった…  
もし、互いに違う立場、違う状況、同じ人間だったら…  
…いや、ゆうちゃんがいる限り恐らくあまり変わらないですわね…  
緋鞠「さて、そろそろ本題に入るか…お主と若殿はどういう関係じゃ?」  
私は当然のように緋鞠の問いに返答した  
くえす「…お互いに無くてはならない存在、解りやすく言えば恋人同士」  
緋鞠が直球で聞いてきた以上、私も直球で返すしかない  
緋鞠「…それは若殿も同じ気持ちか?それともお主個人の…」  
言い終わる前に、私は緋鞠の襟を掴んでいた  
くえす「もう一度言ってみなさい…ただでは済みませんわよ…」  
緋鞠は私の行動にも動じずに言葉を発し続けた  
緋鞠「ほう…黄昏の月殿も若殿の事となると別人じゃな」  
その言葉で私の感情は爆発した  
くえす「貴方に…貴方に、ゆうちゃんの苦しみがわかって!!」  
緋鞠「分かっておるわ!!たわけが!!」  
緋鞠も私の言葉を受け、隠していた感情を表した  
 
緋鞠「お主に言われてなくても、若殿を日頃見てきた私だ…  
若殿の変化に気付かぬと思ったか…  
若殿がお主の話をする度に、私は胸が辛い気持ちじゃ!!  
だからと言って、お主との関係を聞けるものか!  
一番辛いのは若殿じゃからな!」  
私は緋鞠の剣幕に思わず掴んでいた手を離した  
予想していたとは言え、ここまでゆうちゃんを想っていたなんて…  
緋鞠「…済まぬ。つい熱くなってしまった…許せ…」抑えていた感情を爆発させた後か、緋鞠は申し訳無さそうにした  
くえす「いえ、立場が逆転していたら私も同じ…  
それ以上の事をしたかもしれませんわ…」  
そう返答する事で彼女の非を軽くしたかったのかもしれない  
もし、彼女の立場なら私は力づくで解決しただろう…  
緋鞠「…お主に話して多少、気が楽になったわ  
まあ、後2年程は猶予があるからな  
私にもまだ機会はあるのじゃろうな」  
くえす「…2年とはどういう事ですの?」  
私は緋鞠の言葉の意味が解らず返答した  
緋鞠「この国では、男子は18歳以上が結納の年齢じゃからな  
後、2年はお主から若殿を取り返せる機会があるという事じゃ」  
 
くえす「…その間の2年間で、私とゆうちゃんの関係が  
より一層深まるかもしれませんわよ…」  
緋鞠「なら、私はそれ以上の行動で若殿を振り向かせようぞ」  
どうやら互いに感情を出したせいか、私達はいつも通りの口調になった  
くえす「…とりあえず貴方には礼を言うべきかしら…」  
緋鞠「…礼は私と若殿の結納で戴こうか…」  
前言撤回、やっぱりこの猫油断出来ませんわ  
もっともっと、ゆうちゃんとの関係を深めなくては…  
緋鞠「さて話も終わったので、帰って若殿に私の魅力を…」  
くえす「猫…やっぱりこの場で…」  
私は手の平に魔力を集めていた  
それを察してか、緋鞠は言葉を止めて帰ろうとしていた  
そして、私とのすれ違い様に  
緋鞠「…………」  
私に言い残して去って行った  
その言葉に思わず、手に集まった魔力が消えた  
くえす「言われなくても分かってますわ…」  
私自身、後ろ姿の緋鞠に呟くように返答した  
曇り空から日が差した、ある日の事の出来事  
 
続く?  
 

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