ある日の夕暮れ、九州は鹿護村。  
 門下生の子供達も帰り、静かになった道場で静那が素振りをしていると、ドンドンと玄関の戸を叩く音が聞こえてきた。  
 たまに近所の人が余った夕飯などを差し入れてくれることがある。 料理が決して上手いとはいえない静那は、少しばかり期待しながら戸口に向かった。  
 それでも木刀を手の届く場所に置いておくことは決して忘れない。 さり気無さの中に微かな慎重さを含ませた声で、「どなたですか」と問いかけた。  
 戸の向こうから返ってきたのは、明るい青年の声だった。  
「静那、俺だよ、俺俺!」  
「常葉丸?」  
 驚いて戸を開いてみると、そこには大きな荷物を背負った青年が立っていた。  
 静那のよく知る相手だった。  
「や、久しぶり」  
 ぽかんとしている静那を前に、常葉丸は気安く声をかける。  
 少しの間を置いて我に返った静那は狼狽しながらも、頭に浮かんだ疑問をそのまま口にした。  
「久しぶりって、どうしたの、急に来るなんて」  
「品物集めであちこち周っててさ。 九州に来たんだし、折角だから顔出していこうと思って」  
「そ、そうなの」  
「上がっていいかな?」  
「あ、そうね、ごめんなさい。 どうぞ」  
 静那は珍客をあたふたと居間に通した。 部屋の片隅に荷物を下ろした常葉丸は、ふう、と息を吐きながら首を捻っている。  
 茶を淹れながら、静那は動悸が激しくなっているのをハッキリと自覚した。  
 九州と東北という遠距離恋愛、会いたくても簡単には会えない恋人が、来てくれた──  
 
「でも、どうして来たの?」  
 囲炉裏の前で茶を啜る常葉丸に、静那はそう尋ねた。  
「商品の仕入れだよ。 この頃売り上げが良くてさ、じっちゃんが集めた骨董品も少なくなってきたんだ」  
「それで冒険がてら、品集めってこと?」  
「ああ。 刀とか掛け軸とか、それなりに集まった」  
 常葉丸は自分が持ってきた荷物の方へ目を向ける。 大小様々な箱を大きな布で一纏めに包んだそれは、現代を生きる者ならサンタクロースのプレゼントを連想するかも知れない。  
「商売繁盛、結構ね。 それでわざわざ九州まで?」  
「いや、それは、まあ、なあ」  
 常葉丸は言葉を濁した。 静那はどうしたのかと首を傾げる。  
「…やっぱり、久しぶりに会いたいだろ?」  
 ボン。  
 …と音が鳴りそうな勢いで、静那の顔がみるみる赤くなっていった。  
「そ、それで」  
 まだ暑い茶をぐっと飲み込み、咳き込んだフリをしてから静那は話題を変えた。  
「こんな時刻だけど、ご飯は食べたの?」  
「あ? あぁー、今日はまだだな。 そういや腹減ったな」  
「何か作ろうか?」  
「待った!」  
「なに?」  
「わざわざ作ってもらうのも悪いし、どこかで食おうぜ。 この村って飯屋とかあったっけ?」  
「あるけど。 でも小さい所だし、大したものは食えないわよ」  
「いいよ、行こうぜ」  
 
 そうして夕飯を食べ、静那の家に戻り、久しぶりの会話を弾ませていると、外はたちまち暗くなっていた。  
「って、もう真っ暗じゃないの」  
 湯呑みを置き、静那は慌てて腰を浮かした。  
「どうしたんだ? せっかく会ったんだし、もっとゆっくりしようぜ」  
「そうはいかないわよ」  
 静那は何か急いだ様子で押し入れの襖を開け、布団と枕を取り出した。  
 常葉丸がぽかんと驚いた後、妙に嬉しそうな顔になっていることに気付いた静那は、誤解を正す必要性があると感じた。  
「ごめんなさい、常葉丸。 先に寝といて」  
「へ?」  
 間抜けな顔の常葉丸を無視し、静那はてきぱきと布団を床に敷く。  
「これから稽古しないといけないの」  
「稽古? こんな遅くに?」  
「一日の最低量を決めてるのよ。 あなたが来たからつい話し込んじゃったけど、稽古するところだったのよ」  
 ごめんね、と苦笑しながらもう一回謝る。  
「長旅で疲れてるでしょ? 静かにやるから、ゆっくり寝といて」  
 そう言って、静那は道場へ向かうべく外へ出ようとする。  
 一人残されようとしている常葉丸は溜め息をつき、ポリポリと頭を掻くと、静那の背中に手を伸ばした。  
 
 ポン、とその右肩を叩く。  
 「え?」と振り返ろうとした静那の目に、先程までとはうって変わって、妙に色気を放つ真顔になった常葉丸が写った。  
 驚いて一瞬固まった静那に、常葉丸の顔がどんどん近付いてくる。  
「や、やだ、常葉丸」  
 相手の企みを察した静那は、慌ててその体を引き離した。  
「ん?」  
「何よ、この、いきなり」  
「なんだ、嫌か? 久しぶりだってのに」  
 常葉丸はニヤニヤと楽しげに口を歪ませる。  
「い、嫌っていうんじゃ… ちが、そうじゃなくて、稽古って言ったでしょ。 毎日やってるんだから」  
「静那くらい強かったら、稽古なんてちょっとぐらいしなくても大丈夫さ」  
「そ、そういう問題じゃなくて、剣士としての心構え…」  
「まあまあ、いいじゃんか」  
 抗議には耳を貸さず、常葉丸は静那の身体を両手で引き寄せた。  
「ち、ちょっ! あ、ふっ…」  
 静那がさらに何か言おうとしたが、その口を常葉丸は自分の唇で塞いだ。  
「ん、んん…!」  
 逃げようとする静那の体をしっかりと抱えて離さず、常葉丸は柔らかな唇の感触を楽しんだ。 静那の体が徐々に脱力してくるのを待ち、ゆっくりと舌を侵入させる。  
 静那は口の中に力を入れてまだ小さな抵抗を示したが、それも常葉丸の巧みな舌使いにすぐに解きほぐされた。  
 蹂躙される静那の口が、ぴちゃぴちゃと、湿った音をたてる。  
 静那の唇の端から唾液が溢れ、ツゥ、と一筋の痕を残した。  
「あ、ん… んっ…」  
 静那が常葉丸の服をぎゅっと強く掴む。  
「ぷは… ぁ…」  
 二人の口がようやく離れた。 その間で、名残惜しそうに涎が糸を引いていた。  
 
 顔を真っ赤にして俯く静那に、常葉丸は変わらぬニヤニヤ顔で言った。  
「いやぁ、なんだかんだ言って、静那もけっこうその気なんじゃないか?」  
「な、何を…」  
「本気で嫌だったんなら、俺なんかすぐに引き剥がせるじゃないか。 強いからなあ、静那は」  
「うっ…」  
 静那は言葉に詰まった。  
 常葉丸の言う通り、例え口を付けられている様な状況でも、静那なら相手を投げ飛ばすことができる。 剣士とはいっても、その程度の体術は基本として父から教え込まれていた。  
 それをしなかったのは、口では嫌と言っても、実際はそんなに嫌でもなかったワケで。  
「もうっ… もう、いいわよ、好きにしなさいよ」  
 もはや返す言葉も無く、静那は目を逸らして言い捨てた。  
 常葉丸はその様子を見て、やたらと嬉しそうに「くぅーっ」と歯を噛み締めた。  
「な、なによ」  
「静那、お前のそういうところって、本当に可愛いよな」  
「なっ…」  
 常葉丸の軽い言葉に、静那の顔がさらに赤く染まっていく。  
 半開きになっているその口に今一度、常葉丸の口が重ねられた。  
「ん…」  
 驚いたらしく静那の身体が少し震えたが、もう抵抗する気配は全く無くなっていた。  
「ん、んふぅ…」  
 常葉丸の耳に静那の可愛らしい声が届く。  
 柔らかな女の唇を味わいながら、常葉丸は静那の着物の内側にゆっくりと手を入れた。  
 さらしが巻かれている胸を、人差し指でちょんと押してみる。  
「ん…」  
 不意打ちのような刺激に、静那は微かな声を出す。  
 口を離し、困ったような甘えるような、子供のような視線を常葉丸に向けた。  
 
「さらし、取ってくれよ」  
「わ、わかったわよ…」  
 僅かばかりの反抗心を滲ませた声で、静那は渋々頷く。  
 上着に手をかけながら目で「見ないでよ」と訴えるが、常葉丸はそんなことを構わずに、恋人の肌が露わになっていく様子を観察した。  
 袴を下ろし、上着を脱ぐ。 さらしを取ると、拘束から解き放たれた二つの膨らみが微かに揺れた。  
 朝から晩まで剣に身を費やし、固く引き締まりながらも女性らしい細やかな雰囲気を残した静那の肉体が、常葉丸の前に曝け出された。  
 あとに残るのは股間を覆う…  
「…ふんどし?」  
 常葉丸はぽかんと口を開けた。  
 真っ白な幅広の布が静那の女性器を覆っている。  
「わ、悪い?」  
「褌って、男が付ける物じゃなかったのか? そう思ってたけど」  
「べ、別にいいでしょ、そう決まってるワケじゃないし。 腰巻だけだったらなんかスースーして心元無いのよ」  
 胸元を手で隠しながら目を逸らし、ブツブツと文句ありげに呟く。  
「…似合わない?」  
 チラ、と心配げな横目が常葉丸に向けられた。  
「いや、これはこれで」  
 常葉丸はズンズンと静那に歩み寄った。  
「あ、ときっ」  
 静那が何か言う前にその胸に手を伸ばし、片方の乳首を摘んだ。  
「あんっ!」  
 いきなりの刺激に、静那の体がビクンと震える。  
 常葉丸はそのまま乳房全体に指を伸ばし、その弾力ある塊をゆっくりと揉み始めた。  
 
「や、は… ん…」  
 時には強く、時には優しく、微妙な間隔を置いて手を動かす常葉丸。 静那もその調子に合わせる様に甘い声をあげ始めた。  
「んっ… んふ…」  
 上を向いて喘ぐ静那に、常葉丸は自分の顔を近付けた。  
 胸を揉む手を止めないまま、先刻までは静那の口内を犯していた舌を伸ばし、頬や首筋にゆっくりと這わせる。  
「んっ やっ はっ… や、あん…!」  
 常葉丸の舌は静那の体を舐め回しながら下方に向かい、乳房、そして乳首に達した。  
 もうすっかり固くなっている桜色の突起を、左右交互に口を含む。 手はまだ乳房から離さない。  
「あ……う、んくっ… はあ…!」  
 乳首からじんじんと伝わる快感に、静那は身悶える。  
 その様子に常葉丸は少しだけ口を離し、下から静那の顔を仰ぎ見て言った。  
「静那、相変わらず胸が感じやすいんだな」  
「ふあ、は…! えっ… む、ね…? きゃ、ん…!」  
 静那の反応は少し鈍い。 常葉丸は口の代わりに指で静那の乳首を転がし始めた。  
「ああ。 まだ胸と口しか弄ってないのに、もうこんなになってる」  
 常葉丸の攻めに嬌声をあげていた静那は、その時になって初めて、自分の股間を覆う布が濡れていることに気付いた。  
 快感に身悶えるままに太腿をすり合わせていると、そこからクチュクチュと卑猥な音が聞こえる。 羞恥の余り、静那は泣きそうになった。  
 常葉丸は必死に涙を堪える静那の顔を見て、優しげな笑顔を浮かべた。  
「静那って、何回やっても初めての時みたいな反応するよな」  
「わ、悪い…? …んぁっ!」  
「そういうところがイイんだよな。 本当に可愛いぜ、静那」  
 既に茹蛸のようになっている静那の顔が、さらに爆発しそうなほど赤くなる。  
 常葉丸は静那の反応を楽しみながら、片手をその下半身の方へと伸ばす。 水を吸い過ぎてグショグショになっている布の上から、そこにある丘をゆっくりと撫でてやった。  
 
「あっ!?」  
 静那の体が大きく震える。  
 新たに下半身に加わった刺激に、足腰がガクガクと揺れた。  
「ふあっ! や、は、あぅん! は、あ、やあっ…!」  
 静那はだらしなく口から涎を垂らしながら、甘い声をあげ続ける。 我慢していた涙は、とっくに目から零れ落ちていた。  
 乳房を揉まれ、乳首を座れ、秘部を撫でられ、獣のように声をあげながら乱れるその姿は、剣道場の主としてしか彼女を知らない者には信じられない光景だろう。  
「そろそろ立ってられないか?」  
 常葉丸はそう言うと手を止め、ふらふらになっている静那をゆっくりと布団の上に座らせた。  
 ぺたりと崩れ落ちるように腰を下ろした静那は、荒い息を吐きながら、焦点の遭わない目で常葉丸を見詰める。  
「褌取って。 脚、開いて」  
「はぁ、はぁ… え、あ… うん…」  
 静那はもう何の抵抗もすることなく、常葉丸の言葉に素直に従った。 座ったままで、褌の紐を解いていく。  
 尻をつき、膝を開き、己の大事な部分を曝け出している静那の姿は、男を誘っているものとしか見えなかった。  
 常葉丸の視線は静那のそこに吸い寄せられた。  
 繁みの中にある裂け目。 当然そこにある突起はぷっくらと膨らみ、さらなる快感を求めているようだ。  
 常葉丸は陰核に手を伸ばし、かるく押してやった。  
「ひやっ!」  
 今までのものより一段階上の快感に、静那の体が跳ね上がった。  
 常葉丸は指先で小豆ほどの突起をころころと転がしてやる。  
「あっ、ひっ、ああっ! んあ、や、ああーっ!」  
 静那は過敏に反応し、淫らに喚いた。 割れ目からはどんどん蜜が溢れ出してくる。  
 常葉丸は指を裂け目の中にも入れてやった。 そのねっとりと濡れた肉の内側を、優しく撫で回す。  
「あ、ふぁ、ひああん! は、ひ、い、いい…!」  
 静那は脚を閉じそうになったが、常葉丸は空いている手で片方の脚を押さえ、そうはさせなかった。  
 
「静那、気持ちいいか?」  
 しばらくそこを弄った後、常葉丸は返事が出来るように手の動きを止め、聞いてやった。  
「はぁ、は、あ… うん、いい、気持ち、いい…」  
 静那は潤み、とろんとした目で常葉丸を見詰めながら、なんとか言葉を紡ぐ。  
「それは良かった」  
「と、ときわ、まる…」  
「ん?」  
「はぁ、も、もう、いいから… きて、きて、ときわまる…」  
 掠れた声で名を呼ばれ、ゾクリと常葉丸の中の何かが刺激された。  
 常葉丸のムスコも既に痛いぐらいいきり立っており、今か今かとその時を待っている。  
「わかった。 ちょっと待ってくれ」  
 さっさと履いている物を脱ぎ捨て、常葉丸は一物を露わにした。  
 静那は何を思っているのか、既に何回も目にしている男のソレを、じぃーっと見詰めている。 その下の入り口はぱっくりと開き、久しぶりに入って来る常葉丸を待ちかねているようだ。  
 常葉丸が腰を下ろすと、静那は入れ易いように仰向けに寝転がった。  
「いくぞ」  
 常葉丸が静那の腰に手を添え、宣言する。  
「ん… …んああっ!」  
 静那が小さく頷いたのと同時に、常葉丸は一物を突き出した。 先端が入口に触れただけで、静那は大声をあげた。  
「くっ…」  
 肉の壁に絞め付けられる感覚に、常葉丸も呻き声を洩らす。 静那のそこは相変わらず絞まりが良く、誘い込むかの様に歪に動いた。  
 常葉丸はさらに奥へ奥へと押し進める。  
「ん、ああ、んーっ! んー!」  
 押し殺そうとして、それが出来ない静那の声を聞きながら、常葉丸は完全に根本まで刺し込んだ。  
 そこから、加速する。  
 
 グチュグチュと、二人の交わっている部分が卑猥な音をたてた。  
「ああーっ! ふあ、やっ、あーっ!」  
「あ、相変わらず、凄いな、静那…!」  
「んーっ! あ、ああーっ! あ、は、はあっ!」  
「こんな、絞め付けて、すげ、いいぞ、静那…!」  
「あ、はぁ、んっ! や、んあ、は、あーっ!」  
 常葉丸は前方に倒れ込んだ。 静那の脚が限界まで開き切り、彼の体全体を受け入れるような形になる。  
「んーっ! あ、はあっ! あーっ! あーっ!!」  
 静那の胸に、常葉丸の手が触れる。 激しく腰を動かしている状況で、優しく揉んでやることは出来ない。 常葉丸は柔らかな乳房をこねるように強く掴んだ。  
「あ、ひぃっ! んあ、と、ときわ、まるっ!」  
 静那も必死に常葉丸に手を伸ばした。 しっかりと愛しい男の体を抱き寄せようとする。  
「んーっ! ああっ! は、あ、あぁーっ!」  
 静那はもうまともな思考も出来ず、ただ常葉丸を求めて動き続けていた。  
「う、そろそろ、いくぞ、静那っ…!」  
「あー、ああーっ! と、ときわ、まる、ときわまる! ああーっ!」  
 常葉丸と静那は、共に達した。  
「ああーっ! あ、あ、はあ…」  
 迸る精子が静那の中に注ぎ込まれてゆく。  
「あ、あ… 奥まで… いっぱい…」  
 静那はうわ言のように呟いている。 常葉丸が自分の一物を引き抜くと、静那の裂け目からは女の蜜と男の精子が混じったものが溢れ出た。  
 全てを終えた二人は、力無く布団の上に転がった。  
 
「……常葉丸!」  
「ん……」  
 常葉丸は夢の中で、静那の声を聞いたような気がした。  
「常葉丸、起きなさいよ、常葉丸!」  
 それが夢なのではなく、現実に自分を呼ぶ声なのだと気付くまで、暫くかかった。  
「ん、あー… 静那、おはよう」  
 布団から上体を起こし、寝惚け眼で挨拶する。  
 あやふやな視界の中に、腰に手を当てた静那の姿があった。  
「おはよう、じゃないわよ。 こんな遅くまで寝て…」  
「ああ、悪い… 今、どれくらい?」  
「もう昼よ! もうすぐみんな来るんだから、早く出てって!」  
 がばっと布団を引っくり返される。 常葉丸は畳の上をゴロゴロと転がって壁にぶつかった。  
「なんだ、せわしないな… みんなって誰だよ」  
 起き上がらないままで聞く。  
「門下生よ! 最初に年少組が来るの!」  
「ああー… それなら、稽古の様子ぐらい見物させてくれよ。 別に出て行かないでいいだろ…」  
「何言ってんの! 私に恋人がいるって噂、琥金丸から広まってるのよ! 男と一緒にいるところなんて見られたら…!」  
 静那が必死に喚いている、その時だった。  
 外からドタドタと複数の足音が聞こえ、  
「しずなせんせー、おはようございまーす!」  
 元気な声と共に数人の子供達が居間に飛び込んで来た。  
「……あ」  
 場が沈黙した。  
 口を開けて固まる静那。 子供達は先生と一緒にいる見知らぬ男に目を向ける。  
 そして未だ半裸の常葉丸は、片手をあげて「よう」と挨拶していた。  
「せんせー、このひと、せんせいのこいびと?」  
「違いますっ!」  
 

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