よく晴れた日、岩国村から少し離れた森の中。  
「転身っ!」  
 凛とした叫びと共に、木々の中を閃光が迸った。  
 少しして光が消え去った後にあったのは、白い毛を持ち鋭角的な鎧に身を包んだ猫又の姿。  
 猫又はキョトンと目を丸くして自分の体を暫く見下ろすと、突然、  
「やったー!!」  
 歓声をあげて跳び上がった。 体が一丈以上もの高さまで浮く。  
「やっと転身できたー! わたしってすごーい!!」  
 猫又は狂喜して叫びながら、バタバタと手足を動かした。 妖艶かつ凄然とした姿には不似合いな、極めて子供じみた仕草だった。  
「見てなさいよ高野丸ー! わたしもやれば出来るんだからー!」  
 愛しい人の名前を含めたその言葉は森中に響き渡り、そこに住む動物たちは思わず身を竦ませた。  
 
 それから一月ほど経ち、これもまたよく晴れた日。  
 巨悪・天輪乗王が滅びてからも人を襲う妖魔の脅威は未だ完全には消えず、退魔業の最中、高野丸は岩国村に立ち寄った。  
「やあ、秘女乃」  
「高野丸っ!?」  
 神社に顔を出した高野丸に、秘女乃はパタパタと駆け寄った。  
「久しぶりだね! どうしたの、急に」  
「いや、ちょっとそこまで来たんでね。 秘女乃はどうしてるかなって思って」  
「え、どうしてるかって… えへへ、この通りだよ」  
 だらしなく顔をニヤけさせながら、秘女乃はその場でくるりと回る。  
 それも仕方のないことで、恋仲の相手と久しぶりに会えた少女の喜びは大層なものだった。  
「とにかく上がって上がって! お茶入れるから!」  
 
 ほぼ半年ぶりに顔を合わす二人の話は大いに盛り上がった。 と言っても、実質的には殆ど秘女乃からの一方的な話である。  
 簡単な近況報告から始まり、日々の些細なこと、正直高野丸にとってどうでも良いことまで、ペラペラとよく喋る。  
 しかし秘女乃との付き合い方をよく心得ている高野丸は、笑いながら聞き続けた。  
 やがて日は暮れる。 小さな村の小さな飯屋で酒を含めた夕食を済まし、神社に戻る頃になっても、秘女乃の口はなかなか閉じることはなかった。  
 そして機を見計らい、彼女の話は取っておきの話題へと移る。  
 
「ねえ高野丸。 前に会ったとき、言ったよね」  
 前振りにしばらく沈黙を挟んでからの切り出しだった。  
 高野丸は首を傾げる。  
「転身は心を静かにして、自分を見詰めなきゃ出来ないって。 だから秘女乃には難しいって」  
 いつかの記憶を思い起こし、ビクリと高野丸の体が震えた。  
 
 以前この村を訪れた時、高野丸は強大な妖魔を調伏する任を帯びていた。 それに秘女乃は協力を申し出て、二人で退魔に趣いたのである。  
 しかし妖魔は思いのほか強大で、秘女乃は命の危機に陥った。 そのとき高野丸が転身し、窮地を打破したのである。  
 聞けば、かつて天地丸が見せたものと同じ転身の法を、高野丸は少し前に体得していたとのことだった。  
 ならばわたしも、と意気込む秘女乃に、高野丸は先の通りのことを述べた。 妖魔調伏から数日後、酒の席でのことだった。  
 
 まさか、そんな前のことを持ち出されるとは。  
 怯える高野丸に秘女乃は満面の笑顔を向け、  
「わたしも転身できるようになったんだから! すごいでしょ、高野丸!」  
 まだ育ち切らない胸を張って自慢する。  
「────え」  
 怒られるのではないかと思っていた高野丸は、拍子抜けの声を出す。  
「な、なによその反応! 本当にすごいんだから! 転身したらすっごく強くて、すっごく綺麗なのよ!」  
 彼の反応を変に勘違いし、秘女乃は必死にまくし立てる。  
 好きな少女のそんな姿を見、高野丸はコホンと咳をすると、言ってやった。  
「本当、凄いね。 おめでとう、秘女乃」  
 不満そうだった秘女乃の顔が、ぱっと輝いた。  
 
 間も無く、秘女乃は高野丸の前で転身を実演してみせることになった。  
 近所の目もあるので、襖は完全に締め切っておく。 神社の巫女が猫又に化けるところなど、見られては大事である。  
 すうっと深呼吸をして、緊張を解そうとする。 高野丸はすぐ目の前で見ている。  
(大丈夫、がんばれ、秘女乃)  
 自分に言い聞かせ、心を落ち着ける。 一月前に初めて転身して以来、何度も試みて成功してきたのだ。 今度もいける筈。  
 
 精神を集中する。 己に埋没する。   
 心を自分の内へと向ける。 そこに流れる人以外の血、そこに秘められる人を超えた力。  
 普段は閉じ込められているその力を、解き放つ。 力は堰を切った水流のように体中に満ちてくる。  
 人間ではその力は扱えない。 だから、人以外のものになる。 力を振るうのではなく、力と同化し、自分が人を超えた力そのものになる。  
 体が変わってゆく感覚。 こうして、やっと転身は成る。 戦いの中でやろうと思えば、全てを一瞬で行わなければならない。  
 そう言えば、天地丸は鬼雷石を媒介として姿を変えている。 この難しい法が些か簡略化されるんだから、ずるい────。  
 雑念が入った。  
 
「あ、あれ?」  
 部屋を満たしていた閃光が消え、秘女乃は惚けた声を出した。  
 体を見下ろしてみると、何も変わっていなかった。 着ている衣装はいつもの巫女服で、体型が変化した様子もない。  
 高野丸の方を見ると、彼もぽかんと惚けた顔をしている。 それで、失敗したのだ、と悟った。  
「……ふにゃ〜〜」  
 奇妙な声を出して、その場にペタリと座り込む。 落ち込んでいた。  
「格好悪い… 大口叩いて、失敗しちゃうなんて…」  
 悔しくて目尻に涙が浮かぶ。  
 それには関係なく、惚けた顔のままの高野丸は、  
「耳」  
 とだけ言った。  
「え?」  
「……みみ」  
 顔を上げる秘女乃。 彼が口にした言葉の通り、耳に手をやってみると… そこに耳は無かった。  
「あ、え、あれ!?」  
 慌てて、顔の側面をパタパタ触る。 本来耳があるべき場所に耳は無く、代わりに、頭頂部近くに変なモノが生えていた。  
「……ネコミミ」  
 間抜けた表情は消え、高野丸はハッキリと奇妙な単語を口にする。  
 ハッと思い当たった秘女乃は別室へ通じる襖を開き、先にある鏡台へと向かった。 そこに映る自分の姿をまじまじと眺める。  
 いつもと同じ自分、見慣れた姿。 違うのは、転身を果たした後に見られた猫の耳が生えていること、体の後ろで二本の尻尾がピコピコと蠢いていることだ。  
「やだ、袴に穴あいちゃってる…」  
 臀部の辺りを触り、尻尾が袴を突き抜けて伸びていることに気付く。  
 ますます情けなくなり、秘女乃はまたその場に座り込んでしまった。  
「えーん… こんな中途半端な格好になっちゃうなんて…」  
 どっと鬱の波が押し寄せてきて、完全に落ち込み状態に陥りそうになる。  
 目から涙の粒が落ちそうになったところで、ふっと顔をあげると、高野丸がこちらの部屋に入って来ていた。  
 彼はてくてくと歩き、秘女乃の前でしゃがむと。  
「可愛いよ、秘女乃」  
 優しく微笑んで、彼女をぎゅっと抱き締めた。  
 
「高野丸…」  
 慰めてくれるの、と問いかけた口は結局開かず、愛する男の温もりに身を任せる。  
 高野丸の手が秘女乃の顎を優しく持ち上げ、その唇がゆっくりと重なった。  
「あ… う、ん…」  
 高野丸の舌が口の中に入って来ると、秘女乃も自分のそれを絡めさせて応える。 二人の口の中で、ピチャピチャと湿った音がなった。  
 少しして、どちらからともなく唇を離すと、その間をつつと唾液の糸が伸びた。  
 高野丸は、そっと秘女乃の衿の中に手を入れた。 そこにある小さな膨らみに触り、軽く撫でる。  
「ん、んん…」  
 くすぐったいような軽い快感に、秘女乃は小さく声をもらす。 しかし高野丸の指が桜色の先端に振れると、ピクンと体が揺れた。  
「あっ! や、あん…」  
 秘女乃は首を振って胸を押さえ、嫌がる様な仕草をする。 勿論、本当に嫌がっている訳ではない。  
 高野丸は彼女の乳首を軽く突つきながら、もう一度、唇を重ねてやった。  
「ん、んふっ… ふ、うう…」  
 秘女乃は口内に相手の舌を受け入れながら、胸からの快感に体を震わせる。  
 口を付けたまま高野丸は胸から手を離し、綺麗な巫女装束を脱がしにかかった。  
 あっと言う間に、秘女乃の上体は曝け出される。 弄くられていた乳首はすっかり固くなっていた。  
「秘女乃」  
 高野丸は一言、名を呼んでやり、未成熟な少女の体を軽く抱き寄せた。 そうして頭を低くすると、今度は乳首に口をつけた。  
「あんっ! あふ、んん…!」  
 指でしていた時よりも反応が強い。 高野丸は見た目は赤子のように、しかし微妙に強弱を変えながら秘女乃の乳首を吸う。  
 両手を空けておくのも勿体無く、今度は袴の帯を解きにかかる。 帯は馴れた所作ですぐに解かれ、赤い袴がゆるりと広がった。  
「う、く、んあぁっ…」  
 乳首からじわじわ広がる快感に、嬌声をあげ続ける秘女乃。  
 ややあって、高野丸はその胸から顔を離して一息ついた。  
 
「ん…」  
 秘女乃は潤んだ瞳で高野丸を見詰める。 やめないで欲しい、もっとして欲しいとその目が訴えている。  
 高野丸は優しく微笑むと、また彼女を感じさせてやろうと手を伸ばし…  
 ふと思うところあって、頭の上にぴょこんと在る猫の耳を触った。  
「あっ!? た、高野丸」  
 驚いた秘女乃が手を上げて、高野丸の腕を払うようにする。 しかし三角形の大きな耳を弄くる手は止まらない。  
「や、やだ、くすぐったいよ…」  
 奇妙な感覚に、体を震わせる秘女乃。  
 初めて転身できた時も、自分に生えている猫の耳や尻尾を物珍しさに触ったりはしていた。  
 しかし今は、体が完全に異形へと変化している訳でもない、初めて経験する状態だ。 それに自分でするのと高野丸にされるのとでは、感覚が奇妙に違っていた。  
「んん…っ」  
 秘女乃は堪えるように、ぎゅっと目を瞑る。  
 その反応を見て良しと思い、高野丸は本格的に、その可愛らしい部分を攻めることにした。  
 秘女乃の体を軽く抱き寄せ、耳にふうっと息を吹きかける。  
「う、ふ、ぅ…っ」  
 もう抵抗しようともしない。  
 次いで、高野丸は柔らかい耳を甘く噛んでやった。  
「あ、や、あん…」  
 抱き合った時に秘女乃が耳で感じさせられるのは初めてではなかったが、今回は特に反応が強かった。  
 中途半端な転身が、体に変調をもたらしているのか。 その感度はいつもよりも高いようだった。  
「う、うぁ、ああん…」  
 
 口と手で猫耳を攻めるのを止めず、高野丸はもう一つ気になっていた箇所に、一方の手を伸ばしてみた。  
 それは、秘女乃の袴から飛び出している二本の尻尾だった。 彼女が感じているものの強さを表すかのように、ピンと伸びたり、ふにゃと力無く曲がったりしている。  
 よく動くそれの片方を掴んでみると、秘女乃の体が今までになく強い反応を示した。  
「う、きゃあっ! な、なに!?」  
 秘女乃は驚いて高野丸の顔を見上げる。 思わず手を離した高野丸もその様子に面食らったが、すぐに気を取り直した。  
「あ、いや、これ… しっぽ」  
「あ…」  
「そんなに感じるの、ここ?」  
 秘女乃は高野丸の問には答えず、驚いたような困ったような、微妙な顔をした。  
 それが肯定の反応なのだと読み取った高野丸は、薄く笑いながら、また尻尾を握ってみた。 今度はすぐには離さず、揉むように力加減を変える。  
「あ、ふゃあはぁぁんっ! あふ、あ、んあぁっ!」  
 秘女乃の嬌声が、今までよりも一段と激しくなる。  
 人間には有り得ない部分から感じられる、彼女にとって全く未知の感覚だった。 我慢することも出来ず、快感に翻弄される。  
「う、は、はあぁっ…! や、た、あふ、たかや、まる、ああぁっ…! だ、だめ、そこおぉぉっ!」  
 高野丸の手は、まるで男性器に刺激を与えているような動きをしている。  
 尻尾は激しく暴れ回り、高野丸の手から逃れようとしている様だが、少し強く握ってやる度にビクンと硬直して動きが止まった。  
「あ、あぁっ は、ひやぁっ…! だ、だめ、ふぁっ! し、しっぽ、しっぽらめぇぇっ!」  
 大声で喘ぎ続ける秘女乃の手は、いつの間にか彼女自身の性器に向かっていた。  
 既に大量の愛液を洩らしているそこを、さらに両手で愛撫する。 際限無く高まっていく快感に、秘女乃の思考力が薄れていく。  
(凄いな… これ…)  
 今まで何度か秘女乃を抱いている高野丸でも、彼女がこうまで乱れる様を目にするのは初めてだった。  
「あーっ! あぁーっ! あや、やあぁっ! も、もう、いく、イクッ、イクぅぅぅぅッ!!!」  
 最後の声をあげると、秘女乃は背を大きく仰け反らせて達した。 陰唇から大量の液が吐き出され、履いたままの下着や袴を濡らしていく。  
 
「あ、あぁ… はぁ、はぁ…」  
 荒い息を吐いて横たわる秘女乃に、高野丸が遠慮がちに声をかける。  
「秘女乃… 大丈夫?」  
 ぼうっとした目で天井を見上げていた秘女乃は、ちらりと顔を高野丸に向け。  
「う… ん…」  
 赤い顔をしながら、なんとか頷いた。  
「…凄かったね。 そんなに気持ち良かった?」  
「ん… 変な、感じで… あんなの…初めてで… 我慢… できなかった…」  
「へえ」  
 二人がそれだけ言葉を交わすと、一時の沈黙が訪れる。  
 秘女乃は体を落ち着けるために、ぼんやりとした顔で横になったまま。 その脇に座り込んでいる高野丸は、愛する少女の姿を穏やかに眺めていた。  
 ふいに高野丸の手が動いて、秘女乃の頭に触れる。 耳を触られて彼女は微かに体を震わせたが、あとはもう、頭を撫でられる心地良さに身を委ねた。  
 それから少しして、秘女乃は体を起こした。  
「…その、ごめんね…」  
「え?」  
 突然の謝罪に、高野丸は戸惑う。  
「あの… わたしだけ、気持ち良くなっちゃって…」  
 秘女乃は恥ずかしそうに着物の裾で顔を隠しながら、そんなことを言った。  
 キョトンとした高野丸も、すぐに「はは」と笑った。  
「じゃあ、僕もお願いしようかな」  
 高野丸は袴の紐に手を伸ばす。 しかしそれを、秘女乃の手が優しく遮った。  
 彼女の思惑を悟った高野丸は、それで動くのを止める。  
 秘女乃は自分の手で高野丸の袴を下ろし、褌も解いた。 優しげな顔立ちには余り似合わぬ、見事な一物が姿を現す。  
 ちらりと彼の顔を見上げた秘女乃は、  
「ん…」  
 大きく太くなっているそれを、ゆっくりと咥え込んだ。  
 
「んっ、ん、ふっ… んんっ…」  
 少女の柔らかな唇と舌が、高野丸の上を這う。 唾液が湿った音をたてる。  
「んっ… う…、ん…」  
 猫の耳を生やした頭が、ぎこちなく前後に動き始めた。  
「ん、んくっ… う、んん…」  
 秘女乃は一生懸命に肉棒をしゃぶる。 初めてする行為ではなかったが、その技術はまだまだ拙いものだった。  
 しかし高野丸にとってはやり方の良し悪しよりも、彼女がしているという事実こそが、その心地良さの起因である。  
「あ、ふぅ、んう… た、高野丸、どう…?」  
 行為を中断し、上目遣いに確認する秘女乃。  
「うん… 気持ちいいよ、秘女乃」  
 高野丸は正直に答えた。  
 秘女乃は恥ずかしそうに嬉しそうに笑った後、  
「ん…」  
 今度は角度を変え、男根の横に下を這わせた。  
 自分が高野丸のモノを求めると同時に、相手に快感を与えようと懸命に奉仕している。 その顔が、高野丸にはたまらなく愛しく思えた。  
 しかも今回は今まで求め合った時とは違い、彼女の頭に生えた大きな耳が、奇妙な味付けになっている。 それはこの少女によく似合った、可愛らしい装飾の様だ。  
 無意識の内に高野丸は手を伸ばし、再びそこに触れた。  
「あっ!」  
 体を震わせた秘女乃は、驚いた顔で高野丸を見上げる。  
 しかしそれも一時、再び柔らかな舌が一物を舐め始めた。 高野丸も彼女の頭、というより猫耳を撫で続ける。  
「ん、はっ、ああ、ふぅ…」  
 耳を触られる感覚に肩を震わせながら、拙いなりに男の弱い所を責めようとする秘女乃。   
 
「ひ、秘女乃… そろそろ…」  
「え… う、ん…」  
 暫くして高野丸が限界を伝えると、秘女乃は再び一物を大きく咥え込んだ。 口をすぼめて、それを吸い上げるようにする。  
「うっ…!」  
 高野丸の先端から熱いものが迸った。 その勢いに、秘女乃は思わず口を離してしまう。  
「あっ! ああ…」  
 溢れ出した白い精子は、少女の顔と黒髪をべったりと汚した。  
「あ、あ… ん…」  
 恍惚とした声をあげながら、秘女乃は口の中に流れ込んだ白濁液を嚥下する。  
 それだけでは足りないのか、頬に粘り付いた分まで人差し指で取り、口に含んだ。  
「あ、ん… 高野丸の…」  
 男根よりもずっと細い自分の指を、物欲しそうにしゃぶる秘女乃。  
 高野丸は、ぞくりと震えた。  
 
「秘女乃… もう、いいかな」  
「え… あ、うん。 わたしも…」  
 高野丸が確認すると秘女乃は立ち上がり、おずおずと袴を脱ぎ始めた。 二本の尻尾も、器用に穴から抜ける。  
 一糸纏わぬ彼女の姿にたまらなくなった高野丸は、その柔らかな肢体をぎゅっと抱き締めた。  
「秘女乃」  
「高野丸…」  
 互いの名を呼び合い、二人は密着したままゆっくりと倒れ込んだ。 仰向けの秘女乃が大きく股を開き、高野丸がその間から重なる形だ。  
 高野丸は入れる前に、秘女乃の女性器を部分を手で触ってみた。  
「あ、はっ…」  
 ふるふると反応する少女の体。 若い繁みの中にあるそこは、もう十分に濡れそぼっていた。  
「今日は、ここには何もしてないのに。 尻尾とか、そんなに気持ち良かった?」  
「え… う、うん…」  
 秘女乃は真っ赤になって頷いた後、ぽかりと高野丸の頭を叩く。  
「そんなこと、聞かないでよ」  
「ごめん」  
 謝ると、高野丸は自分の一物を秘女乃の入口にあてがった。  
「ん…」  
 秘女乃が微かな声をあげる。  
 高野丸はそこから一気に、彼女の奥まで突き入れた。 狭い肉の道を押し広げるようにして、男根が進んでゆく。  
「うっ…」  
「あっ… ああっ!」  
 
 性器からじわりと広がる快感に、二人の声が重なる。  
 高野丸はそのまま動き始めた。  
「あっ、んあっ、あああっ! や、あぅあっ!」  
 秘女乃の嬌声に、男女の交わる音が重なる。  
「はああっ、ふぁっ! ああんっ! あ、は、はっ…」  
 高野丸は絞め付けられる感覚に、秘女乃は押し広げられる感覚に、酔う。  
「あ、ふぁ、あ、た、たかや、まるぅ…」  
「秘女乃…」  
 互いの名を呼び合ったあと、秘女乃をしっかりと抱き締めていた高野丸の手が動いた。  
 彼女の体の下から伸びている二本の尻尾に、片手を伸ばす。  
「ああああぁっ!?」  
 そこに触れると、秘女乃の反応が一段と大きくなった。  
 それも当然、先程は尻尾を弄ぶだけでああも乱れたのだ。 互いに腰を動かしている今に触られては、その感覚はどれ程のものだろう。  
「あ、や、やあっ! だ、だめ、た、たかや、まるっ…!」  
 悲鳴のような秘女乃の声。  
「こ、これ、す、すご、ああぁっ…! お、あ、おかしく、なっちゃうぅ…!」  
 そう言われても、高野丸は尻尾から手を離さない。 こうしている方が秘女乃は気持ち良い筈だから、離す訳がない。  
「や、ひゃっ、ああぁっ! あ、あーっ! あああっ! だ、ら、らめ、らめぇぇっ!」  
 秘女乃の嬌声は、いよいよ高くなっていく。 高野丸の限界も近くなってきた。  
「も、もう… いくよ、秘女乃…!」  
「あ、うあ、あーっ! ああーっ! わ、わたし、も、いく、イク、イクぅぅっ!」  
 高野丸は秘女乃の体をぐっと抱き締め、自分の唇を彼女の唇に重ねた。 繋がった口の中で、二人の舌が絡み合う。  
 そのまま、達した。  
「ん、んん、うん…っ! ん、ん゛んーっ! ん゛ーっ!」  
 溢れるように放たれた男の精子が、女の中に注ぎ込まれてゆく。 秘女乃は口を塞がれたまま、絶頂の声をあげた。  
 
「ん… ふぁ、む… んん…」  
 果てても、二人の抱擁は終わらない。 むしろ、よりお互いを求めるかの様に、口で繋がり続ける。  
 高野丸の精は長く放出を続け、それが終わる頃に、ようやく二人の唇は離れた。  
「どうだった?」  
 尋ねる高野丸に、  
「は、はは… すごくて、もう… よく、わかんなかった…」  
 秘女乃は苦笑しながら答える。  
 二人はしばし肩を並べて、心地良い脱力感に浸った。  
「ん…っ」  
 不意に声をあげる秘女乃。  
「どうし…」  
 問いかけた高野丸は、彼女に生えていた猫耳が、空気に溶けるように消えてゆくのを見た。 顔の側面には、しっかりと普通の人間の耳が在る。  
 二本の尻尾も消え失せていた。 秘女乃は火照った体で、その変化を感じていたようだ。  
「あ…」  
 自分の頭や尻に手を当て、今まで生えていたモノが無くなったことを確認する。  
 秘女乃が少し名残惜しそうな顔をしていたので、高野丸はクスリと笑った。  
 
 それから間も無く、秘女乃は寝息をたて始めた。  
 勝手知ったるという訳でもないが、高野丸は布団を取って来て、彼女をその上に寝かせてやった。  
 無論、この期に及んで別々の布団に入るほど、高野丸も無粋ではない。  
 
 秘女乃が高野丸の前で転身を成功させるのは、それから数日後の事になった。  
 見事に退魔を果たした高野丸は、帰路の最中にもう一度、岩国村にやって来た。  
 
「やった…」  
 視界を覆っていた光が晴れ、自分の姿を確認した秘女乃は興奮の中で呟いた。  
 微かに青を交えた白い獣毛。 人の手によるものとは異なる鎧。  
 完全に人間とは違う異形の姿だが、そこには野性的な美しさが備わっていた。  
「どう、どう、高野丸! これがわたしの転身! ねえ、凄いでしょ!」  
 どれほど姿が変わろうとも、子供の様にはしゃぐ声と仕草は間違い無く秘女乃である。  
 自分の肉体を変化させる法も、恋人の前では新しい服を着て見せる程度の感覚でしかないようだ。  
「へぇ… 凄いよ、秘女乃。 強い力を感じる。 それだけの力を発現できるなんて」  
 素直に感嘆の言葉を述べる高野丸も、今は人の姿をしていない。 白い狐の獣面に神秘的な衣装。 黄牙太子と呼ばれる、高野丸が転身した姿だ。  
「えへへっ… これで、高野丸の足手まといにならないからね」  
 秘女乃は楽しげな足取りで近寄り、異形の高野丸に密着する。 どれほど姿が変わろうとも、彼女の愛しい男である事に変わりはない。  
「その力を、ちゃんと使いこなせればね。 天地丸さんの所で教えてもらったらどうかな」  
「えっ! えー、あー… ちょっと厳しそうかな… 高野丸が、訓練してくれる?」  
「僕が? いや…でも、ちゃんと出来るかな…」  
   
 いかにも恋人同士、といった語らいをする人外が二体。  
 端から見れば異様な光景かも知れない。  
 
 恋人と楽しく話しながら、秘女乃はふと思った。  
(転身したまま、やってみたら… どんな感じなのかな…)  
 
おわり  
 

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