雨が、降っている。
春に時折降る、しっとりとした雨だ。
茜は、比叡山にいた。
幻魔王フォーティンブラスを倒し……蒼鬼がいなくなってから一週間が経っていた。
「いつまで…ここにいる気だ?」
声をかけたのは天海だった。
「ロベルトも…お初でさえも新しい道を歩みだしたというのに、お前は何をしている?」
慰めてくれたって良いじゃないか…と思ったが、天海の言う事ももっともだった。
「ちょっと、天海!!そんな言い方無いじゃないか?!」
阿倫ちゃんの声がする。またオレのこと庇ってくれてるんだ…
「私は事実を言ったまでだ。それに我々もこの鬼の篭手を封じる旅に出なくてはならん。」
「でも・・・!!」
「良いよ、阿倫ちゃん。天海の言ってる事、正しいから…」
茜は重い体を無理矢理持ち上げた。
「いつまでも、甘えてちゃ、ダメ、だよな…」
そう言うと、茜はゆっくりと外に出て行った。
「ちょ、ちょっと茜……?!」
追いかけようとした阿倫を天海が止めた。
「阿児、今のアイツには1人にさせてやる時間が必要なんだ。放っておいてやれ」
「佐馬介……」
当ても無く歩いていたが、気が付くと茜は見覚えのある、少し開けた場所にたどり着いていた。
―――蒼鬼と剣術の稽古をした場所だった。
「アオ兄ぃ……」
もう泣かないと決めたはずだったのに、涙は止まらなかった。
「おら、十兵衛!その程度かっ?!」
蒼鬼の凄まじい剣戟に、軽い十兵衛の体は宙に舞った。
「ッのヤロォーーー!!舐めんなよ!」
すかさず体を返した十兵衛が、蒼鬼に2,3回蹴りのフェイントを加えながら反撃する。
「うわっ、ちょ、おまっ!」
「オラオラオラァーーッ!!」
「全く、こうなったら稽古じゃなくて喧嘩じゃないか…。」
阿倫が呆れたような顔で隣にいるお初に話し掛けた。
「あの2人にはこれが一番じゃないのかしら?」
困ったような顔でお初が答えを返した。
「もう、あの頃には戻れないのかな……」
思い出から目を覚ました茜は、低く呟きながら大きな樹の影にゆっくりと座り込んだ。
ふと、自分の胸に目が行った。
(お前の胸って、まるでまな板だなぁ)
(何ぃ!?)
「…実際に見たことも無いくせにさ……」
そう思いながら、服の上から自らの微妙な膨らみに手を伸ばした。
「んっ……」
乳首は、何故か痛いほどに固くなっていた。
(おっこの里芋の煮物、すげえうめぇ…)
(へっへーん、オレが作ったんだぜ!うまいだろ!?)
(おう、案外立派な嫁さんになれるんじゃねえか?)
(なっ、、、ば、バカなこと言ってんじゃねえよ!)
(ハハハハハ、耳まで赤くなってるぞー)
蒼鬼との思い出が甦るたびに、茜の体は火照っていった。
「アオ…兄…せつ……ない、よぉ…んっ…はぅ…」
服の上からでは我慢することはできず、気付けば直に胸を揉みしだいている。
そして、もう十分に熱く湿っている自分のソコにゆっくりと手を伸ばしていった。
雨は、もう止もうとしていた。