サン=フェリペ号での夜――。  
 眠れない、とまばたきを繰り返しながら茜は、蒼鬼に言われたことを思い出していた。  
「はしゃぎすぎると眠れなくなるぞ……か。アオ兄ぃはこのことを言ってたんだな」  
 体は疲れているのだが、頭も目も冴えてしまっている。しかたなく、茜は体を起こし、甲板へと出た。  
 甲板には先客がいた。大きな人影――ロベルトだ。  
 茜の足音に振り向いたロベルトは意外にもこう口走った。  
「お初?」  
「俺とお初姉ぇって似てるのか?」  
 茜が近づくと、ロベルトは、いや、と気まずそうに呟いた。  
「そういうわけではないが……」  
「西洋人から見れば日本人の顔は見分けがつかねぇんだってな」  
「あ、ああ、そうなんだ」  
 ロベルトなりにごまかすための返事だったのだが、茜が気づく様子はない。なおも軽快に話す。  
「見るのって初めてなんだけどよ。西洋人ってでかいんだな。ちょっと触ってもいいか?」  
 茜はロベルトを見上げ、本人がいいとすら言ってないのに、胸と腹をぺしぺしと叩く。蒼鬼とも天海とも違う筋肉の感触に茜は嬉しくなり、あちこち撫で始めた。  
「すっげーな。オレ、チビだし、胸もぺったんこだってアオ兄ぃに言われたし、ロベルトみたいに幻魔を殴り倒す力もねぇし……」  
 並べあげるごとに自己嫌悪が茜を包み、今では力なくロベルトの腕を叩くのみとなっている。  
 体を叩く茜をじっと見下ろしていたロベルトは、茜の腕をつかんだ。  
「俺から見れば、お初もお前も日本人女性に変わりはない」  
「ほんとか? 胸もぺったんこだぞ?」  
 よく見てみろ、と言わんばかりに茜は誇らしげに『ぺったんこ』の胸をそらす。だが、ロベルトは表情を変えることもなく、  
「そんなことはない」  
 と微笑むのだ。  
 
 今まで、チビ、と言われたことは数あれど、蒼鬼も含め、男から『女性』と言われたことはない。女性扱いなどもっての他だったから、当たり前のように女性だと言うロベルトの言葉に茜は嬉しくなる。  
 自分の中の女が茜をいつもと違うものに変える。  
「そ、そうか? そうかな? なぁ、ロベルト、オレに胸があるか確かめてくれねぇか?」  
 この茜の発言にはさすがのロベルトも動揺を隠せないようだ。茜には理解できない祖国の言葉で何かを呟いた後、日本語でこう言った。  
「確かめろ、とは?」  
「わかんねぇのか? 触ってくれりゃいいんだ」  
「しかし……」  
 胸を触れと平気で言う時点で、すでに女性の恥じらいというものがない。もちろん、茜はそんなことに気づいてはいない。  
 ロベルトもだてにここまで茜たちと付き合ってきたわけではないので、どう断ったところで茜が引かないことはわかっていた。  
 ロベルトの大きな手が茜の胸に触れる。いや、触れるというよりは包むといったほうが近い。  
 触れられた瞬間、茜の心に何かが湧き上がってきた。  
「なんだ、これ?」  
 離れようとするロベルトの手をつかみ、茜は再び自分の胸に押し付ける。  
 驚いたロベルトが指を動かした。  
「んっ……んん?」  
 突然もれ出てきた女の声に驚いたのは茜だけではない。  
「い、今の、オレの声だったよな? ロ、ロベルト、これって何なんだ?」  
 ロベルトの指が今度は意図的に動かされる。ぺったんこではない茜の胸を軽く揉み始めた。  
「ん……」  
 あの声がまた出そうになり、あわてて茜は口を手でふさぐ。だが、ロベルトによってその手ははずされた。  
「怖がらずに声を出すといい。女性が反応しているのだろう」  
 茜は何が起こってるのかわからない。でも、声を出そうとすると、どうしてもあの自分のものではない声しか出ないのだ。ロベルトは声を出せ、と言うが、茜にはその『声』を出すのが怖い。  
 ロベルトが、茜の羽織や鎧を外し、その小ぶりだがぺったんこではない胸を外気に晒した。  
 いつもの茜なら、こんなことをされれば必ず蹴りの一つもいれるのだが、不思議なことに体がロベルトの行為を歓迎していた。大きくて無骨な指を待っている。  
「どうしてだ? なんだ、これ? オレ、どうしたらいい?」  
 小さい子を抱くように、ロベルトの腕が茜を抱き上げた。これからの行為の邪魔になる、とロベルトは帽子をとり、茜の頭にかぶせた。  
「金色の髪、だ……」  
 茜はロベルトの髪に触れる。子供が親の頭を触るように、しばらく髪をもてあそんでいた茜は、唐突に胸を襲った甘美な刺激に、思わずロベルトの頭を抱きしめた。  
 
 抱きしめてもなおロベルトの攻めは止まない。胸の先端を何度も行き来するものが、ロベルトの舌だと気づき、茜は目の前の頭を叩く。  
「ど、どこ舐めてんだ。そんなとこ……う、あっ……、ない胸を舐めたって……なに、も、いいことなんか、ねぇ、だろ」  
「女らしい、と言葉で言うよりも早い。痛くはないか?」  
「痛いも何も……。オレだって、わかんねぇ」  
「思う感触に任せればいい」  
「お、おぅ……変な声出していいんだな?」  
「女の声が、聞きたい」  
 ロベルトの声に安堵した瞬間、自分でも抑えられないくらい声が出た。  
「ふっ……あ、あ、ん」  
 声を聞いたロベルトはさらに激しく先端を攻める。舌で触れてないもう片方の胸の先端を、人差し指の腹でころがした。  
「ふっ、はっ……あっ、はっ、んん……」  
 今まで一ヶ所の刺激しか味わってなかった茜が、二ヶ所からくる刺激に耐えられるはずもない。ロベルトの髪をかきまわし、荒い吐息の中から声をあげる。 同時に、下半身の中心を流れる何かを感じ取り、太ももをもぞもぞと動かす。  
 それに気づいたらしいロベルトが、茜を横抱きにした。赤子を抱くように片手で茜を支え、もう片手で落ち着かなげに動く太ももを撫でる。  
 ロベルトの二本の指が、茜の秘所を布の上から押す。撫でているわけではないのだが、過敏になっているそこは触れられるだけで茜に艶かしい声をあげさせる。  
「い、いやぁ……あっ、なん、で……そんなとこ触られて、こんな……オレ……」  
 すい、と撫でられたとたん、茜は背をそらせた。ロベルトの帽子が落ちそうになり、快感に震えながらも、茜は必死に帽子を押さえる。  
「こんな状態なのに……ありがとう」  
 全ての刺激からつかのま解放された茜は、帽子をかぶったロベルトを見上げ微笑んだ。  
「見慣れてるロベルトのほうが、いいな。アオ兄ぃよりかっこいいぜ」  
「いや、蒼鬼のような侍にはかなわない」  
「そうかな? オレはロベルトもかっこいいと思う」  
 ロベルトは答えず、柔らかかく微笑んだ。  
 同じく微笑み返そうとした茜の秘所に、今度は直接、ロベルトの指が触れてきた。布ごしとは明らかに違う感触に茜は、  
「あ、はっ、ああ! あっ……」  
 と小さな悲鳴をもらす。  
 ロベルトは茜が声をあげるごとに、嬉しそうな顔を浮かべ、指の動きを速めていく。その表情に引き寄せられるように、茜はまた『女』の声を出す。  
 
 最初は、茜の声だけだったが、今ではかすかな水音も辺りに響くようになってきた。茜の秘所が悦んでいる証拠だ。もはや、茜も恥ずかしがることなく、ロベルトの指に反応して声をあげ続けていた。  
 一定の快感に身を任せていた茜だったが、急激に襲ってきたものに耐えられず、ロベルトの服を強くつかんだ。  
「だめ、だ……ロベ、ルト……オレ、も……うっ」  
 刀で斬られた瞬間に襲いくる痛みに似た熱さが、秘所から流れ込み、茜の体を包んでいく。どうなってもいい、とさえ思えるほどの恍惚感。  
 茜は体を震わせながら、じっとロベルトの目を見ていた。ロベルトの指を引き止めようとする下半身のうごめきを、じっと受け止めていた。  
 やがて、秘所から指を抜いたロベルトが、茜の体を甲板の上に横たえ、鎧や羽織を整えていく。まだ少し震える体以外は、全て元通りになっていた。  
 体を起こした茜の前に、ロベルトがしゃがみこむ。それでも、目線はわずかにロベルトのほうが上だ。  
「胸はぺったんこなどではない。蒼鬼が何と言おうと、俺は女性だと思っている。……もう、眠れるはずだ。皆のところに戻るといい」  
 茜は、立ちあがり、去ろうとしたロベルトの足にしがみつく。  
「ロベルトも……ロベルトに、オレ、何かできないか?」  
「何か、と言われても」  
「オレみたいに、さっきみたいになる、からくり装置……は、ロベルトにもないのか?」  
 茜を悦ばせている間、ロベルトはどこか辛そうな顔、何かに耐えるような顔をしていた。茜にはそれが気がかりなのだ。  
 だが、ロベルトは茜の言葉に吹き出した。  
「からくり、装置……か。ないことも、ない」  
「教えろ。どこだ、それ?」  
「ここ、に触れてみてほしい」  
 ロベルトに手をつかまれ、茜が触れた場所は――。  
「固くて、膨らんでる?」  
「お前の反応を見て……こうなった」  
 茜に、股間に触れている、という意識はない。ただ、物珍しく手の平で形状を確かめていた。筋肉とはまた違った未知の感触だ。  
「どうするんだ?」  
「出して……触れてくれれば……だが……」  
「わかった」  
 茜はロベルトのズボンから器用にそれを取り出した。気持ち悪いと思うことも、恥ずかしいと思うこともなく、幻魔のしわざかと思えるほど奇妙な物体を眺める。  
「これは、幻魔蟲か?」  
 ロベルトは小さく笑った。  
「は、はっ……これは、生まれた時から男の体についているものだ」  
 男の中で育った茜は、小さい頃に男の子の体についているものは見たことがある。だが、ロベルトのような、こんなものは見たことがない。  
「天海にも、アオ兄ぃにも?」  
 つめよった茜に向かって、ロベルトがうなずく。  
「人間であれば、例外なくついているだろう」  
「成長したら、こんな風になるってことかぁ」  
 大きさを確かめるべく、茜はそれを手でつかんだ。ぴくりと動くので、あわてて離す。  
 そんな茜を見て、またロベルトが笑う。  
「お前が触ると、そうなる」  
「もっと、触ってみてもいい?」  
 
 ロベルトの返事を待たず、好奇心が先走っている茜は、今度は手でつつんで少しこすりあげてみた。  
 ロベルトが彼特有の低い声で、うっ、と言いながら息を吐いた。  
 痛みをこらえるようなロベルトの表情に、思わず茜は手を離す。  
「大丈夫か? 痛いのか?」  
「いや、そうではない。……続けてくれ」  
「なら、いいんだけどよ」  
 痛くないと言われても、先ほどの顔を見てしまった茜はまだ少し怖い。包み込まず、手で触れてさすってみた。  
 痛みを軽減させるかのような茜の手つきに、ロベルトは荒い息を吐きながらも苦笑いをもらす。  
「痛くない、と言っているのに」  
「でも、オレ、こんなの見たことねぇし、ロベルトのしてほしいこと、言ってくれよ。な?」  
 少女である茜の小さな手に、ロベルトの大きな手が重ねられる。ぎゅっと握りこまれれば、茜の手はロベルトのそれを包むことになる。  
「このまま、撫でてくれればいい」  
 撫でろと一口に言われても、やはりどうすればいいかはわからない。ロベルトを喜ばせたい一心で赤ねなりに『撫でる』を実行した。  
「こ、こう、か?」  
 震えながら撫でることで、ロベルトにより一層の快感を与えることになるとは、茜が知っているはずもない。  
 ただ撫でているだけなのに、ロベルトの吐息は確実に荒くなり、ときおり声ももれてくる。嬉しそうではなかったが、先ほどの自分と同じ気持ちを味わっているのだろう、となぜか茜には感じられた。  
 いつも見上げるばかりのロベルトが、自分の小さな手一つに翻弄されている。それが茜の胸と、そして、秘所を再び熱くした。  
 やがて、ロベルトの先端から何か汁が出てきた。茜の手に少しついたそれを目の前にもっていって眺めてみる。  
「すまない。……もう、いい。これ以上やれば手を汚すことになる」  
 ロベルトが茜に背を向けて座る。  
 茜は手についたそれをぺろりと舐め、まずい、と顔をしかめてから、ロベルトの大きな背中に呼びかける。  
「ロベルト、オレ、もっかい、やってほしいんだ、あれ。だめかな?」  
「あれ? 何のことか……わからない」  
「ほら、あの、指でさ、オレの……。わ、わかんねぇか?」  
 ロベルトの肩が揺れた。笑っているのだ。  
「わ、わかってんだろ? なんかさ、もっかい、やってほしくなったんだ」  
 茜の本能が、それは恥ずかしいことだ、と告げていた。指が羽織をつかみ、自然と甘えたような声になった。  
 ロベルトが体を茜に向けた。ロベルトと同じく大きくそそりたつそれに、茜の目はくぎづけになる。  
「指ではなく、今度は別のものを入れてみないか?」  
「別のものって?」  
 言いながらも、茜はやはりそこから目を離せない。  
 そして、ロベルトは茜が見ているそれを指し、  
「これを」  
 と、言った。  
 茜はますます、まじまじとその筒のような物体を眺める。お初の扱う銃ほどの太さがあるのではないだろうか。なによりも……。  
「こんなもん、入るのか? オレのは大きいんだか小さいんだか知らねぇけど、さすがにそれは入んねぇだろ」  
「指とはまた違う。だが、無理強いするつもりはない。お前が決めてくれ」  
 
 茜は本気で悩んだ。ロベルトのそれを何度も見るが、やはり大きいことに変わりはない。でも、指とは違う感触というものにも興味はあった。  
「よし、いっちょ、やってみるか」  
 男女の営みも、茜にかかれば剣術の試合と同じである。だが、意気込んだものの、やはり茜にはどうすればいいのかわからない。  
「つっても、オレ、やっぱりわかんねぇんだよなぁ」  
「ここに座ってくれ」  
 ロベルトが自分の太ももを叩く。大きな足は座り心地も良さそうだ。茜はロベルトの腿に座り、  
「爺ちゃんに座ってるみてぇだ」  
 嬉しそうに笑った。  
 こんな少女ではあるが、体はしっかり女性と化しており、秘所へと伸ばされたロベルトの指に艶やかな喘ぎ声をあげ始める。  
「ん……ロ、ロベルト……また指で、なの、か?」  
「そうではないが、濡らしておかないと、痛い思いをさせることになる」  
「そ、か……わりぃな……だったら、いいんだ」  
 茜はぎゅっとロベルトの首に腕を回した。  
 幻魔を殴り倒す無骨な指がもたらす優しい快感に身を任せるために――。  
「そろそろ、だな」  
 茜は、ここがどこだかすらわからないくらい、頭を快感に飲み込まれていた。ロベルトの指は抜かれたものの、指がまだ秘所を探っているように感じる。さすがの茜にも、濡れている、ということはわかった。  
「も、だいじょ、ぶ?」  
 首にしがみついていた腕をゆるめ、茜はロベルトを見る。  
「ああ、今から入れるが、無理だったらやめる」  
 ロベルトの手に抱き上げられ、茜は彼と向かい合う形となった。ゆっくりと下ろされ、何かの先端が茜の濡れた秘所に触れた。自分の体がロベルトを飲み込んでいくのがわかる。あるところまで到達した時、茜を激しい痛みが襲った。  
「いっ!」  
 ロベルトが茜を下ろしていた手を止める。  
「やはり、無理だろう」  
 引き上げようとするロベルトの手を、茜はぐっとつかんだ。  
「大丈夫だ。爺ちゃんの稽古に比べたら、こんなの屁でもねぇ。オレはあの柳生十兵衛だからな」  
 やはり、男女の営みを剣術と混同している茜ではあったが、ロベルトが己の中に入っていく歓喜はなにものにも勝る、と思っていた。ぐい、と歯をくいしばり、ロベルトに先をうながす。  
 
 やがて、茜の忍耐の甲斐あって、ロベルトのそれは根元まで見事に秘所へおさまった。  
「んっ……よっしゃ……やったぜ」  
「痛むか?」  
「少し、な」  
「痛みがおさまるまで待とう」  
「暇つぶしに胸でも舐めるか? あれ、嫌いじゃねぇんだ」  
 そう言って、へへ、と茜は笑う。  
 つられるようにロベルトも笑い、ああ、と着物の中から茜の胸を解放し、そっと先端を口に含む。指でもう一方を刺激してやることも忘れない。  
「ん……ん、ふっ……やっぱ、好き、だ、オレ、ロベルトに、こう、される……んん……のっ」  
「痛みは……どうだ?」  
「な、舐めた……ま、ま、しゃべるな。よ……けいに、やばくなる……」  
「少し、動かしてみる」  
 大きく、ゆっくりとロベルトが腰を動かす。合わせて茜の体も上下する。  
「ん! ふ、んん!」  
「やはり、まだ痛みが……」  
「ち、が……う。痛く、なんて……ない、から」  
 その言葉を機に、ロベルトの両腕が茜の腰に回され、何度も上下に揺すられる。ロベルトも腰を動かしているので、茜の中にあるものの動きも自然と激しくなった。  
 まさに、かきまわされるかのような感覚と、止めることすらできない快感が、秘所を通して茜に流れ込む。  
「ああっ……はっ、は、あ、はっ……ロベルト……ロベ、ルト」  
 揺すられながらも金色の髪を探り出し、茜は無我夢中でしがみつく。  
 ロベルトの動きがさらに激しくなった。  
 茜は、ただ、体の動きに合わせて声を出すことしかできなくなっていた。  
「うっ……」  
「あっ……」  
 耳元でロベルトのうめき声が聞こえた瞬間、茜の視界は真っ白に光った。  
 やがて真っ暗な夜空が視界に戻ってきた時、茜は全身をロベルトに預けていた。  
 秘所も、心も、まだ喜びに震えている。  
 茜の覚醒に気づいたのか、ロベルトが繋がりを解く。それが抜ける瞬間、強い快感が秘所にはしり、思わず茜は体を震わせた。  
 濡れて、役目を終えたそれを茜は愛おしげに見つめた。  
「これも、ロベルトなんだな。中に入ったんだな」  
 ロベルトは、ハンカチで茜の濡れた箇所を拭き、彼女の服を戻していく。  
「小さい体に無理をさせたな。すまなかった」  
「オレがいいって言ったんだ。今さら謝るのなんかなしだぜ。それにさ、何度も女だって言ってもらえて、嬉しかったんだ」  
「蒼鬼も、ちゃんと、気づいてくれるだろう」  
 羽織の帯を結ぶロベルトの腕をぺしりと叩いた。  
「な、なんで、そこでアオ兄ぃなんだよ。だいたい、オレはアオ兄ぃのことなんて」  
 茜は早口で蒼鬼について抗議する。  
 だが、それを聞いているのかいないのか、ロベルトは笑い、  
「お前も、気づいてないんだな……」  
 と、呟いた。  
「なんだ、それ。ロベルトの言うことは、天海と同じくらいわかんねぇや」  
 軽く口をとがらせ、茜は星を見上げる。  
 ロベルトと繋がった秘所の痛みは、甘く彼女の体を包んでいた――。  
 
 ◇終◇  
 

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