柳生の庄は今日も平和だった。
「おい、茜〜!どこだ!俺のグラサンどこやった!」
老練な威厳のある、いや、若い頃から変わらないドスの利いた黒い声が柳生の屋敷に響き渡っていた。
(うふふ、祖父ちゃんの色眼鏡だぁ。うわぁ…カックいい)
茜は天井裏に隠れていた。
天井から頭だけ出して、色眼鏡越しの景色を楽しんでいると…
「お゙お゙い゙っ!グラ゙ザン゙何処やったんだっつってんだよ!」
(ひゃっ!あっ…)
突如開いた障子と野太い声に驚いた茜。
グラサンは茜の手をはなれ、板の間に落ちて…
カシャーン
砕け散った。
「な…なんじゃこりゃぁぁぁぁあ!!!」
「ごごごごめんなさい祖父ちゃん!」
器用に天井裏から降りて、平身低頭ジャパニーズ土下座の体を取り繕う茜。
「謝ってすむもんだいじゃねぇだろぅ!こんの馬鹿が!まったく…後で俺の部屋こい!わかったな!」
「わ、悪かったよぅ。許してよ祖父ちゃん」
「口答えすんな!わかったな?ちゃんと来いよ?」
「ううう…わかった…」