「依頼が有る」
そう言って御伽銀行本部に入ってきたのは地蔵さん。若干顔が赤いのは夏だからでしょう。厚着ですし。
「はーいですの」
と、営業スマイルで返事したのはりんごさん。パパッとお茶を用意します。
地蔵さんがソファに腰掛けると反対側におおかみさんとりんごさんが座ります。亮士君は狭いので入り口付近に立っています、不憫です。
「それでどんな依頼ですの?」
「ああ。実は花咲との事なんだが……」
と、語りだしました。
「し、進展が無いんだ」
あまりに簡潔なので一瞬きょとんとなる御伽銀行メンバー。
それに気が付いた地蔵さんは詳しく言い直します。
「つまり三ヶ月も立ったのにデートの先まで行かないんだ。こんな体質だし手もつなげないしな……」
「キスぐらいまではいきたいということですの?」
と、りんごさんが聞くと地蔵さんは顔を真っ赤にしますがコクコクと首を縦に振ります。
たしかに体質の問題で手をつなぐこともできないでしょう。
むー、とかわいらしいポーズで少し考えたりんごさんはかばんから何かを取り出しました。
「これを使って一度行くところまで行ってみるといいですの」
取り出したのはコンドームの箱だった。それを見て顔が赤くなる地蔵さん。そして逆に青くなるおおかみさんと亮士くん。
しかし堂々と持ち歩くりんごさんって一体……。
空気が若干凍りますが地蔵さんはりんごさんに訊きます。
「な、なんでこんなものを持っているんだ?」
そう訊くとにやにやと笑いながらりんごさんは言います。
「とてもじゃないけど、涼子ちゃんの私物の中に有り、しかも使われた形跡があるだなんて言えないですの」
「て、てめぇりんご!!なに言ってやがるんだ!!」
怒り出すおおかみさん。亮士くんがりんごさんに殴りかかろうとするおおかみさんを止めますが二人とも顔が真っ赤です。
地蔵さんはコンドームを見て考えます。もしかしたらこれで進展できるかも、と。
触れられないならそんなことできないのにねぇ?
何はともあれ、出来もしないことに気合を入れる地蔵さんでした。