なぜ、頷いちゃったんだろう。  
イヤだって言ったら、田島君はわかってくれたと思う。  
それより、そんなふざけたこと言わないでって、怒って見せたらよかった。  
怒るのが当たり前だもん。  
馬鹿じゃない!? って、聞いた瞬間、心の中では思ったもん。  
なのに、なんで頷いちゃったんだろう?  
自分の気持ちが一番わかんないよ。  
 
「なあ、よく見えないよ。もっとスカートあげて」  
言われて、たくし上げてたスカートをほんの少し、本当に少しだけ、持ち上げる。  
部室兼倉庫の中は、蛍光灯がふたつだけ。  
そのうち一つはチカチカうるさく瞬いていて、いつもなら鬱陶しいぐらいですむんだけど、今日はなんかムカツク。  
頭がくらくらするのは、このチカチカうるさい蛍光灯のせい?  
「さわっちゃダメ?」  
「ダメ、見るだけ」  
あたしの声は、情けなくなるぐらい震えているのに、田島君はいつもと変わらず、平然。  
「けちだなぁ」  
ううん、いつもより図々しいかも。  
 
練習もミーティングもとっくに終わって。  
後は鍵閉めて帰るだけだったのに。  
みんなと一緒に帰ったはずの田島君が、話しがあるからと戻ってきて。  
少しドキッとしたんだよ。  
女の子だもん。  
憧れるよ。「告白」。  
それなのに、田島君は言ったの。  
あのいつもの明るい口調で、「スカートの中見せて」って。  
「毎晩さ、俺おかしくなりそうなんだ」  
あまりにあまりの問題発言に、ぽかんとしている私の前で、田島君は憮然とした表情で言い募る。  
「チンコこすってるとさ。一番いいときに、必ずあんたの顔が浮かぶんだ。そうするとさ、なんかもうすぐに勃起しちゃってさ。拙いんだよ」  
なにが拙いのか、わけわかんないよ。  
「俺、もともと毎晩やんないとダメなんだけどさ。なんつーか、いまやりすぎで。  
 今日も腰が決まんなくて、打ってもいつもみたいに狙ったとおりにいかねえし、ミットかぶって座ってるとさ、立ち上がる時ふらつくし。あんたのせいだと思うんだよね。」  
そ、そ、それって、田島君の事情でしょう!?  
なんで、私のせいになるの?  
 
「でさ、ものは相談。見せて」  
「な、な、な、な、なんで?」  
「決定打に欠けてるんだと思うんだ。だから、ついついやりすぎちゃんじゃないかって」  
勝手にやってろと、怒鳴るはずだった。  
怒鳴るはずだったのに、………じっと見つめてくる目がね、凄い真剣で。  
なんか、きらきらしてて、無邪気で、それで…………。  
ほだされちゃった、馬鹿な私は、ふるふる震える手で、スカートの端を握り締め、自らまくっているわけで………。  
こ、これも、マネージャーとして、仕方ないことで・……。  
なんて、自分に言い訳して、どうするの?  
 
「いい匂いがする……」  
立ってる私の目の前で、跪いてスカートの中を覗き込んでる田島君は、突然そんなことを言った。  
「やめて、匂い嗅がないで」  
「別に嗅いでないよ。匂ってくるんだもんしょうがないじゃん。嗅ぐってのは、こうやんの」  
「あ!」  
思わず変な声が出ちゃった。  
だって、田島君。いきなり鼻をくっつけるんだもん。  
あ、あ、あ、あそこにっ!  
「やめてっ!! 見るだけって言った!」  
「へ?」  
「田島君言った。見るだけだって」  
「なんだよ。泣くなよ」  
「泣いてない!」  
「泣きそうな声じゃん」  
「泣きそうかもしんないけど、泣いてない!」  
「わかったよ。泣いてないよ。これでいいか?」  
「いいもなにも、もういいでしょ?」  
「よくない」  
「だって、もう見たじゃない」  
「見たけどさ。マネジのパンツ、白じゃないんだもんな。ずっこいよ」  
「ずっこいって。私が好きなパ……下着はいて、なんでずっこいなんて言われなきゃいけないのよ」  
「俺、篠岡は絶対白だと思ってたんだ。白か花柄。それなのに縦縞なんだもんな」  
「縦縞なんていわないで。ストライプって言ってよ」  
 
もう馬鹿みたい。  
私、スカートの端握り締めたまんま、なに言ってんだろう。  
「もう、おしまい!」  
我慢の限界。スカートから手を離した。  
そしたら、パサッて音がして、田島君の頭の上に落ちた。  
なんか凄くヤラシイ感じがして、一歩うしろにあとずさったら、田島君の手が、私の太ももの後ろに回って。  
顔が、ぐいって感じで押し付けられて。  
その拍子に、一番感じる床らに、田島君の鼻がこすれて、私また変な声出しちゃった。  
「あん……」  
「濡れてる」  
「いやっ」  
そんなとこで喋んないで。田島君の息が、………くすぐったい。  
「パンツ、凄く濡れてる」  
鼻で、……あそこを……つんつん突付きながら、田島君が嬉しそうに言う。  
「こっちなんかびっしょり」  
空いてたほうの手で、布が二重になっている辺りをさわってくる。  
見るだけって約束だったはずなのに。  
文句を言おうにも、胸が震えて言葉なんてでてこない。  
逃がさないって後ろに回っていた手は、お尻を掴んでいる。  
「どこもかしこも、柔らかいのな」  
ため息混じりに、そんなことを言う。  
 
ショーツの脇から、指が入ってきた。  
「ひゃー、ぬるぬる」  
鼻でつついていた辺りに熱くて濡れた感触。  
「やめて」  
ようやく声がでた。  
「ねえ、もう少し足を開いてよ」  
「いや」って言いながら、私、なんで言われたとおりにしてるの?  
ああ、田島君の指が、私の一番大事なところをゆっくり上下に撫でている。  
ク、クリトリス、ショーツの上から舐められてる。  
気持悪い。  
ナメクジ、それも凄く熱いナメクジが這ってるみたい。  
そのうち、ナメクジは固くなって、しつこいぐらいに刺激する。  
足ががくがく震えた。  
立ってられないの。  
何かにしがみつかないと立ってられないの。  
私、身体中から力が抜けてくみたいで、田島君の方に手を置いて、震える体を支えていた。  
なんか、悔しくて、悲しい。  
だって、田島君にしてみれば、女の子だったら誰でもいいわけで。  
それなのに、こんなに感じてる私は、情けないし、みっともないし、……悲しいし。  
 
「感じてる?」  
スカートのなかで、くぐもった声が尋ねてる。  
でも、答えられるはずがない。  
「嬉しいな。なぁんか、俺、幸せ」  
爽やかな口調でそんなことを言いながら、遠慮を知らない田島君の、後ろに回っていた手が、私のショーツを引きおろす。  
それは、あっという間の出来事で。  
太ももの真中辺りまで、ショーツがずり下がった状態で、私は………エッチな声を出していた。  
「あっ、……ダメ……それ……、イヤっ………。ふっ・・…ン」  
クリトリスをしゃぶられて、腰から下が、もう自分のものじゃないみたい。  
気持いいの。  
信じられないぐらい、気持ちいいの。  
指がね、私のあそこを行ったり来たりして、そのうちそれが一箇所に止まって。  
「入れていい?」  
いいも悪いも言う前に、入ってきた。  
いままでタンポンは入れたことがあるけど、自分でも恐くてできなかったのに。  
田島君の指が。  
「熱い。それにスッゲーエ、気持いい。トロトロ。ここにチンコ入れたら、どんな感じかな?」  
そんなの、そんなの、しらないっ!  
そんなの、いまはどうだっていい。  
それより。  
田島君は、ゆっくりと指を引き、また押し込んだ。  
クリトリスに吸い付いて、舌で嬲る。  
 
「あっん、あぁ………もうダメ、ぁっ、もう…………」  
じゅるって音を立てて、田島君が強くクリトリスを吸い上げた。  
その瞬間、私の頭の中は真っ白になって、身体中を電気が走りぬけたようになって。  
へたへたって感じで膝から崩れる。  
そんな私を、田島君が抱きとめてくれた。  
彼に抱き締められて、私の身体が余韻に震えた。  
びくっ、びくって、痙攣するみたいに、震えた。  
「気持ちよかった?」  
にこにこ笑いながら聞いてくる。  
チカチカ点滅する蛍光灯が照らし出す、田島君の口元はてらてらと濡れていた。  
思わず、ごしごしって、両手で、彼の口元を拭っていた。  
「明日は、白いパンツね」  
なにを言っているの、この人は?  
「あ、言っとくけど。俺以外の人間に見せたら、死刑ね」  
死刑って、死刑って、小学生でも言わないよ。そんなこと。  
「俺、浮気とか許せないから」  
浮気って、一体なにを言ってるの?  
「篠岡も俺のこと好きだとは思わなかったからさ。横っ面はったおされる覚悟だったんだけどね」  
「え? 好きって?」  
「今日から、俺たち恋人同士な」  
「なんで? 田島君、そんなことひとことも………」  
田島君が、きょとんとした顔で、私のことを見つめている。  
「あれ、言わなかった? 射精するときマネジの顔が浮かぶって」  
「それは言ったけど」  
「だから、そういうことじゃん。それに篠岡、誰にもこういうことさせるタイプじゃないだろ。それなら、そういうことじゃん」  
そういうことって、こういうことって、あれ? そうなの? もしかして?  
「明日は、白。OK?」  
 
私、また頷いてた。  
 
 

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