『私の身体がこんなに(以下略)』  
 
■zero day  
今日はひどい一日だった。  
朝の通学で京ちゃんと一緒の電車に乗ってたら、急に生理が始まるし。  
なんかいつもより経血が多かったし、オリモノがネバネバだったなあ。  
というか、2週間で来るなんてすごくおかしい。  
俗に言う危険日に生理が来るなんて…私の身体はどうなってるんだろ?  
おまけに駅のトイレで、すごい変な下痢を下しちゃうし……  
昼は昼で、なんだかお弁当のおかずもおいしくなかった。  
そのあとの午後の体育は、輪をかけて酷かった。  
下痢がまた始まるし、体育館の女子トイレは壊れてるし……  
男子トイレから抜け出すのにすごい時間がかかっちゃった。  
あと、生理のせいかもしれないけど、お風呂でエッチな気分になったのなんて初めて。  
あれからずっとアソコが下着と擦れてチクチク、ウズウズする。  
アソコの皮がめくれることなんて、他の女の子にもあるのかどうかわからないけど、そんなの聞けないし…  
とにかく、今日は疲れたからもう寝よう。  
でも、なんかさっきから部屋の中なのに誰かの気配がする。  
急にスカートがめくれたり、衣装ケースのパンツの配置が変だったりが気になる。  
部屋は鍵が掛かって、私以外誰もいないはずなのに、どうしてこんな気分になるんだろう。  
パジャマに着替えて、ベッドに横になっても、誰かが添い寝してる感じがする。  
あしたに備えて寝なきゃ……おやすみ京ちゃん。  
 
『ハァハァ…フゥフゥ…』  
誰かの荒い鼻息が耳元で聞こえる気がする。  
ギシギシとベッドが悲鳴を上げる音も。  
ユラユラと上下にゆれるベッドのスプリングも。  
あれ、何かが私の上に乗ってる?  
ていうか、どうして裸で寝てるんだろう?パジャマを着てないのはなぜ?  
『すげぇ、風呂あがりの麻奈実の身体すべすべじゃん』  
野太い声も聞こえてきた。  
『クリ剥きマンコも濡れ濡れだし。JKの部屋の中で生でやれるなんて夢見たいだ』  
言ってる意味がわからない。確かに誰かが私の身体に覆いかぶさって、下半身を突き上げてるのはわかるけど。  
(誰?ここは私の部屋じゃないの?)  
声を出そうとしたが声が出ない。いや身体が言うことを利かない。  
でも、肌と肌が触れ合う感覚が伝わってくる。  
それだけじゃない、皮が剥けて敏感になってるアソコにこの男の陰毛や下腹が擦れて猛烈な快感が押し寄せてきてる。  
(あっ!!あぁっ!!なに?やだ!?)  
『フフフ、麻奈実ちゃんもう起きてるよね?でも金縛りでしょ?』  
男の声の言うとおりだった。身体がまったく動かないのに声は聞こえ、身体は感じている。  
『実は、俺と麻奈実は今日出会ったばかりなんだ。で、早速こうして結ばれたわけ。つまり初夜ね』  
私のアソコの中に入っているモノ――考えたくないけど、<結ばれた>という男の言葉は事実かもしれない。  
(やだぁ!!わたしエッチしたことなんていのに)  
声が出せないもどかしさが募る。それだけじゃない、首も動かせないので男の顔や年齢すらわからない。  
男の顔は、ちょうど私の左側にあって、頬と頬がこすれあってるのがわかる。  
チクチクと刺すような感じが頬にあるのは、もしかしたらこの男の無精ひげかもしれない。  
 
『そろそろフィニッシュに持ち込むからね』  
男の右手が私の太ももをつかんで持ち上げる。  
ペチペチと肌と肌が打ち付けあう音の間隔がだんだん早くなってる。  
その上に男の左手が私の髪を鷲掴みにして固定する。  
(こんな強引なエッチはやだよ……わたし初めてなのに!!)  
『いくぞ、中に出すぞ!!』  
(やだ、やだ!!出すってもしかして…)  
私の願いは届かなかった。つながったまま動きを止めた男が何を出したのかは想像したくなかった。  
 
『どうだった?気持ちよかったか?麻奈実にとっての初体験?』  
首を横に傾けることすらかなわない私には、耳元でささやく男の顔は見えない。  
『やっぱある程度意識があるセックスも面白いね。JK夜這いレイプって男の夢だよな』  
『クリちゃんが顔だしてるとすげー効果あるね。剥いてよかったよ』  
初エッチのピロートークとは思えないようなせりふばかりをささやく男はいったい誰?  
『じゃあ、今日はこれぐらいにしとくよ。これは夢だよ夢。そうだろ?麻奈実ちゃん』  
本当に夢なの?だってアソコはジンジン疼くし、肌が触れ合って汗だくで気持ち悪いよ。  
『またしばらくはコッソリ楽しむから…じゃあね。おやすみ』  
それが<この夢>で聞いた最後の言葉だった。  
 
「きゃあっ!!」  
声が出たと思った瞬間、身体が飛び起きた。  
「はぁはぁ…なに?いまのなに?」  
ベッドで上半身を起こして肩で息する私の他には、この部屋には誰もいない。  
さっきまで裸にされて繋がりあっていた体には、寝る前に着た下着パジャマが着たまま。  
「ゆ、夢?金縛り?」  
どう考えても誰かが私を犯していたという事実はこの部屋の中にはない。  
念のために陰部を触れると、生理用ナプキンには濃い目の白いオリモノがべっとりと付着していた。  
「やっぱり夢?生理のせい?」  
こんな明晰な夢は初めてだけど、わたし欲求不満なんだろうか…  
もう朝みたい、窓の外ではスズメがチュンチュンと鳴く声が聞こえる。  
「初夜とか意味わからないこといってた……変な夢」  
とにかく今日は昨日とは違う一日が始まる。今日がいい日になればいいのよ。  
そう言い聞かせた私は、今日もきょーちゃんと同じ電車に乗るための身支度を始めた。  
 
 
■60 days after  
私の心と身体が異変を示し始めたのは、二ヶ月前のあの日からになる。  
京ちゃんと一緒に登校していた電車の中で始まった生理。  
あの生理だって直前の生理から二週間しか経ってなかった。  
そして、白くて異常な下痢、さらに体育の授業中に学襲ってきたもっとひどい腹痛と下痢。  
家に帰ってから入浴中に出血したアソコの皮。  
そして、明け方に見た悪夢――見知らぬ男に犯される明晰夢というもの。  
全部が全部あの一日の出来事だけど、あれからはもう何もおきてない。  
でも生理もあれから来てないのが、とても私を不安にさせる。  
いくらなんでも2ヶ月も生理がないのはおかしい。  
最近はひどい吐き気もする。  
勇気を出して一人でドラッグストアで買ってきた妊娠検査薬がいま私の手元にある。  
「この容器に尿を入れて、検査紙を浸すってことかな?」  
家のトイレの中で説明書と格闘していた私は、不安と恐怖に駆られながら尿を紙容器に入れた。  
「おねがい…あの夜のできごとは夢よね…だってだって…」  
私は祈るような気持ちで検査紙を尿に入れた。  
検査紙を浸す直前に、心なしか尿の色が突然濃くなったような気がした。  
あと、トイレの中なのに誰かに見られているような不思議な感じもする。  
結果は5秒後にあらわれた――<陰性>つまり妊娠はしていなかった。  
「よかった…そうよね。だって私だれともエッチしてないもん」  
あれ、なんかまた急にお腹が痛くなってきた。  
あの日の急な腹痛に似てるけど……  
「あっ!!あっ!!ああぁっ!!」  
自宅のトイレの中で思わず声を出した私は、様式便器の中に思わず出してしまった便を見て絶句した。  
「なにこれ……」  
便器の水溜めには、昨日食べたパスタがほぼ形を保ったまま浮かんでいた。  
ていうか、まだ肛門から長い麺がぶら下がっているのがすごく気持ち悪い。  
「なんでこんな。まさかね……あ、いたたっ!!」  
今度は下腹部に鈍い痛みが来た。何かがアソコの奥深くで突っつくような感じ。  
まもなくしてドロリと赤い液体が白い便器を汚した。  
いつもより白くて濃いオリモノも混ざってるのが見える。  
「え、いま生理来た?」  
せっかく検査薬を小遣いで買ったというのに、使った直後に来るなんて。  
でも、生理があるというのは私に安心感を与えてくれた。  
「そうよね、ぜんぶ気のせいよね」  
私が独り言をつぶやいた直後に、どこか遠くで笑い声が聞こえたような気がした。  
 
 
■180 days after  
あの悪夢の日から半年が経った。  
今日は眠れない。ていうか昨日もあんまり眠れなかった。学校も休んだ。  
だって、京ちゃんにも言われちゃったんだもん。  
『お前、急に太ったんじゃねえか?』  
うん、わかってる。あんまり食欲ないのにお腹がぽっこり出てる。  
でも、妊娠検査薬は何度やっても陰性だし、生理も定期的に来てる。  
ただ、生理の経血がなんか変な色っていうか染料みたい色なのが気にはなってる。  
「あした、病院に行こう」  
睡魔が急に襲ってきた。とにかく今日は寝よう。  
布団の中に入ってしまえば、すぐに眠れそうな気がした。  
うとうとしていた浅い眠りから、すぐに深い眠りに落ちたのが何時だったかは覚えていない。  
 
あれ?なんか耳元で声がする。  
『ハァハァ…このシャンプーの香りがたまんね。真面目っ子。地味子サイコー。ボテ腹JK最高』  
前に聞いたことがあるような声。いつも私の周りで聞く空耳の声。  
それに、なぜかわからないけど、ギシギシという音を出してベッドが軋んでるし。  
『おい、起きろよ麻奈実。もう出そうなんだけど』  
半年前のあの日のひどい悪夢と同じ感じ。  
そして突然襲ってきた左耳の痛み――誰かが私の耳たぶをあま噛みしてる!!  
(きゃっ!!だ、だれ)  
私は思わず声を出した――いえ、出そうとしたけど自分の耳には何も聞こえてこなかった。  
「おはよう麻奈実ちゃん。まだ夜明け前だけどさハァハァ…」  
耳元で聞こえる男の声は、確かにあの半年前の夢で聞いた声に違いなかった。  
「フフフ、しゃべれないでしょ?手足も動かないし、まばたきもできない。でも見えるし聞こえる」  
男のいうとおりだった。必死に逃げよう、叫ぼうとしてもなにもできない。  
金縛りというものかもしれない。でも男の舌が耳をなめたり、触れ合う肌の感じや  
ぬめぬめと濡れている汗の不快な感じ、そしてヤニくさい男の息も匂う。  
息苦しさの正体は、私の上に乗っかっている謎の男の体重のせいみたい。  
汗だくの小太りの男が私の身体に覆いかぶさり、腰をリズミカルに動かしている。  
そして、私のアソコ――誰にも許していないところに何かが深く突っ込まれてる。  
(うそ、また?レイプされる夢?!)  
 
今回は半年前と違って<夢の男>の顔が見えた。  
40前ぐらいのおじさんっぽい。前に見たような気もするけど思い出せない。  
無精ひげまみれの頬と、カサカサの分厚い唇からナメクジのような舌が見えている。  
その唇と舌が私の唇に重なり、舌がねじりこまれてきた。  
(やだ!!キスはやだぁっ!!京ちゃんたすけて!!)  
京ちゃんとしたかったファーストキス。それがこの中年男に奪われるなんて……  
それも甘いくちづけなんて感じじゃない。舌を絡めてきたり、つばを流し込んできたり。  
ヤニくさいし、なんかギョーザやキムチの味までする。  
こんなのが初キスの味なんてありえない。  
延々と地獄のようなディープキスから解放されたとおもったら、私に向かって宣言してきた。  
「もう出してもいいよね?出すよ、中に出すよ!!」  
私が首を横に振ったり、いやだと言えないことを知っていながら、このおじさんは気色悪い  
声で宣言して、一段と腰を深く突っ込み、そして動きを止めた。  
「ハァハァ。出た出た」  
 
おじさんが身体をどかして、私が寝ているベッドに腰掛けても身体が動かせない。  
一方的なセックスを終え性欲を吐き出し満足したのか、おじさんはタバコを吸い、缶ビールまで飲み始めた。  
加齢臭というものだろうか、おじさんの身体からひどい臭いがして、私の部屋に酒とタバコと男の臭いが充満する。  
(こんなひとが、こんなおじさんが……私の中に射精したの?コンドームはしてないの?!)  
絶望にくれる私を見下ろしながら、この見知らぬ中年男は、私に向かって話しかけてきた。  
「麻奈実ちゃん、お腹おっきくなったねー。ていうか乳首も黒くなったし」  
おじさんの言うとおりだった。不恰好に飛び出た私のおなか。色素が沈着してなんだか張ってきたおっぱい。  
そのおっぱいをおじさんが手荒く揉みあげてきた。  
「おや、これは……母乳キター!!」  
なんとか視界に入る私の両方の乳首から、白い液体がにじみ出ていた。  
「そうだよね、もう人によっちゃミルク出てもいいぐらいの月齢だもんねー」  
面白がって揉み、そして湧き出た母乳を舐めとって狂喜するおじさん。  
そして私の腹部をなでながら、おじさんは最悪の言葉を声に出した。  
「パパでちゅよー」  
(そんなはずない。夢よね?だって生理来てたじゃない!検査薬だって!!)  
 
「フフフ、驚いてる?信じないと思うけど、俺には不思議な能力があるんだよね。時間を止められるんだ」  
私が聞いているのかどうかお構いなしに続けるおじさん。  
「今だって麻奈実の随意神経系だけ止めてる。だから金縛り状態なわけよ」  
「で、妊娠検査薬のときは麻奈実ちゃんのオシッコの代わりに俺のに入れ替えてたんだぜ」  
確かに、あのときの尿の色は変だった。自分の尿じゃなかったなんて。  
「月イチの生理は、絵の具の水だし。ていうか毎回ついでに中だししてたし」  
それがあの奇妙な色の経血、そして白い粘り気のあるオリモノの正体のことなの?  
「半年前の夢を覚えてる?中だしされたと思って起きたらパジャマ着て寝てたってやつ」  
(そうよ、これも夢よね)  
 
「で、俺は時間は止められるけど戻せない。つまり麻奈実ちゃんはもう産むしかないわけ」  
急に涙があふれ出てきた。だって私は誰ともエッチしてないし付き合ってもいない。  
京ちゃんともキスだってしてないのに…それなのにこのおじさんの子を産むなんて。  
「あら泣いちゃった。うれし涙?んなわけねーか。泣いてる麻奈実みてたらなんか、たってきた」  
「じゃあ、今度はおじさんの生ミルクをお返しにあげるね」  
おじさんは、興奮したのか、再びいきり立った性器を私に見せ付けて、口の中に押し込んできた。  
異臭を放つ肉の棒の味が吐き気を催すけど、首を動かすことも歯で噛むこともできない。  
「麻奈実ちゃんの意識があるときのフェラは初めてかな?この半年間、何度もゴックンさせてきたけどね」  
そういえば、朝起きたときに口の中がねばねばしてたことが、何度かあった。  
この臭いと味にもなんとなく覚えがある。  
(夢ならさめて…わたしの大事なものを返して……)  
私の思いが神様に通じることはついになく、生臭い精液が大量に口の中に出された。  
自分の意思では、喉も動かせないのが気持ち悪い。  
この臭く生ぬるい粘液を吐けない、飲めない。だけど臭いと味だけは伝わってくる。  
白い涎となって口からあふれたネバネバが私の枕カバーに染みを作っていく。  
「ありゃありゃ、よだれ垂らしちゃって」  
二度も射精して満足したおじさんは得意げに自分語りをはじめた。  
 
「麻奈実ちゃん、どうしてわたしなのって顔してるね。そんなの特に理由はないよ」  
(そうよ、どうしてわたしなの?だって他にもっとかわいい子がいるのに……)  
 
「たまたま朝の電車で見かけて即レイプしたくなってさ。だってさ、普通のJKってさ、なんか親近感が沸かね?」  
(そんなのひどいよ。あの日の朝はきょーちゃんと一緒だったのに)  
 
「麻奈実の初エッチは電車内の立ちバックで生ハメ、中出しだったんだけど時間止めてたから覚えてないよね?」  
(ひどいよ、なんで避妊してくれなかったの……わたしは、きょーちゃんと……きょーちゃんが……)  
 
「なんつーか、麻奈実みたいな普通の女の子が、普通の結婚して普通に子供産むのってさ、ぶち壊してみたくなるじゃん?」  
(意味がわかんないよ。どうして、どうしてそんなことを……)  
 
「そろそろ時を動かすか。じゃあサヨナラだね。元気な子を産んでくれよ〜」  
「あ、そうだお別れの記念に直筆サインとプレゼントもあげるから起きてから見て〜バイバイ〜」  
名残惜しそうに語ってはいるけど、おじさんの顔には不気味な笑みが浮かんでる。  
 
壁にかけてある時計の針は7時5分。そうだ、もう夢から起きなきゃ……  
 
 
■Good Morning!!  
「きゃっ!!」  
夢から覚めた私はベッドから飛び起きた。  
時計を見ると7時5分。パジャマは着てるし、部屋には私以外は誰もいない。  
「夢……よね?また変な夢を……え?なにこの臭い……」  
そのとき、私は部屋の中を漂う匂いに気づいた。  
タバコとアルコール。そして汗の臭い。  
床を見ると、見知らぬビールの空き缶が転がってるし、タバコの煙もそこから出てる。  
丸めたティッシュが散乱し、下着やスカートが衣装ケースから出されて床にちらばってる。  
丸めて捨て置かれたお気に入りの白いスカートは茶色く汚れてるし、なんかすごい糞尿の臭いがしてる。  
 
そして、口の中にある異様な味。生臭いネバネバのものが舌にまとわりついてる。  
思わず吐き出すと、白い粘液がシーツに染みを作った。  
気持ち悪いのは口の中だけじゃない。おっぱいが張って痛い。  
布団をめくって自分の身体を確認したとき、私は自分の目が信じられなかった。  
寝る前に着てたパジャマは無くなってるし、私の肌に変な字がいっぱい書かれてる。  
<妊娠おめでとー><京ちゃんによろしく>  
<みるくたんく><搾りたて><中出し大成功!!>  
無数の文字が乳房や腹部にペンのようなもので書き込まれている。  
夢の中でおじさんが言ってた<直筆サイン>ってこれ?  
<みるくたんく>とか<搾りたて>と落書きされた乳首がカサカサする。  
歯型みたいなあざがおっぱいに無数にあるのは何故?寝る前にはなかったのに。  
それに、なにか白いミルクみたいなのが染み出てるけど、これは何?  
ふと気づくと左薬指に安っぽいプラスチックの指輪がはめられてた。  
あの夢の中のおじさんが言ってたプレゼントってこのおもちゃのリングなの?  
「ひゃく円……」  
思わず私が読み上げたのは指輪の値札の金額だけど、左薬指にはめていったってことは、もしかしてエンゲージリング?  
 
「え?なに?何かがうごいた??」  
<何か>が私のお腹の中で蠢く感覚が背筋を凍らせる。  
おじさんが私に言ってた言葉を思い出す。  
 
『パパでちゅよー』  
私の膨らんだお腹をさすってたおじさんの言葉。  
この<蠢く何か>が現実に――お腹の中にいる。  
 
『麻奈実ちゃんはもう産むしかないわけ』  
偽の生理や、嘘の妊娠検査薬でだまされ続けたことで引き返せない月齢まで大きくなった命。  
半年前の電車の中で時間を止めて私の中に出されたものが、知らない間に大きくなったという現実。  
 
『俺は時間は止められるけど戻せない』  
きょーちゃんとしたかったキス。きょーちゃんと交わすはずだった私の愛。私の大事な初体験。  
二度と帰ってこない私の大事なもの。戻せない時間と、できちゃった生命。  
 
「あのおじさんと私のあかちゃん?どうして!!どうして!!いや…いやっ!!いやぁぁぁっ!!」  
大声で泣き叫ぶ私の声を聞いて、階段を駆け上がってくるお母さんの足音と声が聞こえる。  
「麻奈実ちゃん。どうしたの!?ドアあけなさい」  
鍵の掛かった部屋のドアを叩くお母さんの声。これは夢かな。夢よね?  
そうよね?きょーちゃん。  
あんなおじさんより、ずっとだいすきよきょーちゃん。  
<了>  
 
 

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