女たちは男を喰らう鬼となっていた。神々が人に憑依して人の男を玩弄し、妖しい渦に
呑み込んでいこうとする。紅子が鬼の角から削り出した朱色の張形で、お墨の菊座を
衝けば、紫苑の素肌がすみれ色に喘ぐ。男の肉柱をぎゅっと絞り「はあぁぁぁっ」と
赫い唇を大きく開き、お涼の黒みがかった薄い青色の肌を引っ掻いていた。その掻き傷は、
ひとつやふたつではなかった。その、お涼は女陰を男の口に擦り付けながら火の神・摩利に
肌を委ねる。
「お涼、そろそろおしまいにしないと、やばくないかい」
からくれない色の手が淡青色の揺れる大きな乳房をきつく絞る。
「ううっ、いっ、いいさ」
冷たい表情の、お涼が濡れた声音を洩らすたびに、蜜が男の口腔へと流れ込んでいた。
「なにが、いいんだよ」
首筋にお墨の貌が絡んでくる。
「お業を相手に、子まで……こさえたんだ」 「だからぁぁ?」
「だから、わたしらの……玩弄にも耐えるっ……あっ、あ、あぁああッ!」
摩利が乳首を、お墨が耳朶に甘咬みをする。
「お涼……でもこいつは……あたしの膣内で……気を遣るつもりは……」
「そうなの……かい?わたしにも、舌はつかってはくれないね」
「じゃあ、呑んでないのかい?」 「みたいだね」
男に群がる女たちが笑い出し、周りの男たちも笑っていた。風が出始めて、松明の炎が
揺らぐ。
「紅子、この男の……菊座を……突いてやりな」
摩利が声を掛けると、お涼が貌を捻って後ろを向く。
「だ、ダメだよ……。そいつは、お業にやらせるんだ。とっときな」
「それでしたら、あとでわたくしに、鈴口を松の尖りで嬲らせてくださいな」
腰を振り、お墨を揺らしながら、息も乱さずに澄ました声で紅子が言い、環はどっと
嗤いに包まれる。
火に照らされた裸の女体が男の裸身を嬲るみたいに手が蠢き――。
「お業に操を立てたのかい?」
嗤いながら、ぐったりとしている男の貌を舐めるように手で撫で廻し両手で支え、多くの
者たちが群がって白い衣を着せると躰を担ぎ上げ、相翼院への橋をぞろぞろと渡り
始めた。男を玩弄していた女たちもそれに続く。
「なにをしておる、紅子」
背の掻き傷を白衣で隠した、お涼が声を掛ける。
「だから、よさそうな松葉をひろおうと思うております」
少女のような、間延びした声音が返って来た。
「そんなものはよいではないか」
万珠院・紅子の神格は憑依した人間に取って変り、男のおもちゃにされ続けた少女の
人格が表面化し、神の怜悧は皆無になる。
「せっかく、おねがいいたしましたのに……」
「松葉でなくとも針でもよいのだろう?」
「よいのですか、お涼?」
「死するものに、なんの気づかいがいる」
「殺されるおつもりですか?」
「禁を犯したのではないのか」
「では、わたしたちは」
「そのようなこと、どうでもよかろう。ほれ、紅子、いくぞ」
お涼は紅子の疑問に、にべもなく答える。
「うれしい。終夜、淫楽に耽ることができますのね」
会話が噛みあっているのか、いないのか。持っていた松葉を夜闇に放り投げ、紅子は
衣を羽織り、お涼に続いた。紅子の楽しそうな黄金色の瞳をかがり火がきらきらと
照らしていた。
陰裂に肉柱を咥え込まされ、お業の躰と両脚は身動きできないよう腰布で縛られていた。
更に左腕で背を抱かれ右手で髪を掴まれ、けもののような舌を口腔に捻じ込まれている。
相翼院の橋の上、大江ノ捨丸は仁王立ちになって片羽ノお業の闇に浮かび上がる蒼白の
肌の尻を抱えて裂きに掛かる。湖に躰を浮かべ梁にしがみ付いて、磔にして散々に刺し
貫いても捨丸は満足しなかった。魔物、土ぐものようにして、お業と交媾したままで梁を
よじ登って橋の上に立っていた。
かがり火の下、浅黒い肌と雪肌が混じり合うことなく闘っている。呑まれまいとしようと
堪えるが、軽く腰を振られるだけで邪悪な蛇の鎌首が子壺を舐めてくる。お業は橙黄色の
瞳を見開いて捨丸の舌に歯を立てた。先刻は捨丸の首筋に歯を立てて血を滴らせ、その
生温かさが重なった肌と肌の隙間に忍び込んでくる。凌辱と性愛の境に蕩ける。大江山で
夫の瞳に死を覚悟したはずなのに、ひとりになると心細くなり揺らいでしまう。
術を掛けて跳ばしたとはいえ、黄川人のことも心配だった。心配……、イツ花を目の前で、
この捨丸に斬り捨てられ、いまは尻を抱えられてこんな格好で繋がらされ、お業は
口腔を蹂躙する捨丸の舌を噛み切ろうと歯に力を加える。捨丸の躰に己から抱きついて
いって廻した背に爪を立てて、肌を裂こうとして食い込ませた。
遠くから、一団の列が近付いてくるのが視界に入った。お業の目からは涙があふれ、
諦めたように瞼を閉じ、眉根をよせて長い睫毛を顫えさせる。近付いてくる一団はみぎわに
残されていた夫だとすぐにわかった。
まるで亡者が光を求めて彷徨っているようにも思えた。意を打ち明けたことを烈しく
後悔する、お業。諦めて現世を逃げていたらよかったのにと、自分の及ぼした累に泣き、
お業の気力が萎えた。
見透かしたように捨丸の手が、お業の長い髪を掴んで、腕にくるくるっと巻いて、
苦悶の貌をかがり火に晒す。
「どうした、俺を噛み切るんじゃなかったのか?」
「いっ、いやあぁああ……。いや、いやぁぁぁぁ」
「おぼこみてぇだぜ、お業!」
捨丸が摺り下がる豊臀を引き揚げ、喉から臓腑が飛び出しそうな衝撃が、お業を見舞い
さむけにではなく邪な気に、きめ細かな肌がそそけ立った。
「あ、あっ、あぁああああ――ッ!」
堕ちた天女の喚きは相翼院の漆黒の闇夜を切り裂いて、遠くに望む大江山を灼く天空を
摩するが如くの炎とともに一気に駆け上がっていった。お業の耳にも、朱に塗られた橋の
かがり火が立てるハチパチという音が落城の地獄絵図を甦らせる。
大江山の火ノ粉は更に昇って舞う蛍となり、やがてはひとつに淘汰され、お業の
これからを暗示して、ふっと掻き消えていった。捨丸はお業の喚く貌を覗き込んで、
あえかなる華を手折る快感を無上の悦びとした。
お業の夫を掲げた一団が近付く。お業は狂ったように躰を揺り動かした。しかし、お業の
抗いは濡れることの赦されない躰を悪戯に苦しめただけ、捨丸の咥えた屹立を煽情したに
過ぎない。
「あっ、あぁあああッ!うっ、う、うあぁあああッ!」
無残としかいいようのない声音と光景。黒が白を穢していた。一団からはゲラゲラと
嗤う声が風に乗って届いてくる。それでも、お業は気も狂わんばかりに捨丸の胸から乳房を
引き剥がそうとした。
いびつにひしゃげていた、お業の形の良いふたつの蒼い月がいやいやとあふれでた。
捨丸は己の血を擦り付けた、お業の乳房にむしゃぶり、喰らい付きたい激情に駆られる。
「捨丸、いつまで戯れているんだい?」
お墨が声を掛けた。紅子がタタッと駆け寄って仰け反っている、お業の躰を抱き起こす。
「よけいなことをするんじゃねぇ!」
紅子は一向に気にする風もなく、お業の毟られた左翼の肩甲骨の小さな傷痕を舌を
差し出して、そろりと舐めたのだった。
「うっ、ううっ、いや、いやあぁああ……」
万珠院・紅子のやさしい愛撫に、お業の躰が反応して濡れた呻きを洩らしたのだった。
少女は貌を上げて口を開いた。
「おもちゃがかわいそう」
調子のはずれた間延びした声音と少女のあどけない表情に戦慄する。もとより、神格は
捨丸よりも紅子のほうが数段も上位。紅子自身もこの少女の壊れた感情の肉体を
よりしろにして戯れている伏しが無くもない。
少女の貌に紅子の、お業よりも病的なまでの蒼白い貌と赫い唇が重なって、小さな唇が
横にすうっと伸びたのを捨丸は見た。紅子の中の彼岸があふれる。
「はあ、ああ……」
お業が頭をぐらぐらと揺する。
「よけいなことするな!」
紅子が羽織っていた無垢の白色のうちきの裾を開き、華奢な肩から滑り落す。
「紅子、あまり、おイタをしちゃいけないよ」
吉焼天・摩利が屈んで紅子の脱ぎ捨てたうちきを拾う。
「あ、あっ、はあっ……」
「どうしてぇ?」
「お前が、ほんとうに、お業をこわしちゃうからだよ」
八手ノお墨が笑いながら声を掛けた。
「これを、お業に付けてあげようと思っていたのにぃ」
紅子は、お業の背、艶やかできめ細かな肌に頬擦りして、朱色の股間から突き出して
いる尖端を――、「んっ、あ、あっ、あ……」――お業のむっちりとした双臀の柔肉に突き立てた。
「よせって、いってんだろ!お業の菊座を突くんじゃねぇ!」
お業は躰を揺さぶられる。
「あぁああ……はっ、んっ、ん」
「朽葉色の体液でぬめっているのよ」「それは、てめぇの張形が朱だからだろ、って!」
「はよう、きやれ」
一団が通り過ぎようとしたときに、月寒・お涼もめずらしく笑って促すのだった。
紅子が憑依した少女の総身の肉付きは薄い。乳房もやっと咲き始めた頃合いといったところ。
その未熟な肉と熟れた肉を絡ませればと、甘美さに昂揚し捨丸の下腹が波うつ。
「捨丸、いきましょう」
紅子が両脇から手を差し入れて自分に無い、お業の豊乳をやわやわと揉みしだきはじめる。
「ああっ……」
お業の耳には捨丸と紅子の声音という事実だけが届いて来る。どんな内容をしゃべっているのか
などとは理解できるものではなかった。嬲られているその横で、更に自分を貶める算段が
進められていると思うとたまらない。
「わかった」
摺り合わせる紅子の胸にお業の背を預けさせ、両手で双臀を鷲掴んでぐっと引き上げた。
「気の無い返事」
紅子が頭をぐらぐらさせる、お業の首筋にぺろりと舌を這わして、捨丸の躰からしぶいた血を舐め取る。
「そうでもねぇさ。紅子、本院の間へいくぜ」
「あいぃ」
無邪気な返事とは裏腹に紅子は、お業への玩弄を続けた。捨丸の返り血を浴びた乳房を揉んだ
両手が指を下にして、肉柱を咥え込んだ秘薗をむずん!と握り絞める。
「んあぁあああっ」
お業の喚きが噴く。お業の夫を担いだ一団は、本院の間へと消えていった。堪えていたものが
弾けて、お業の中で何かが壊れそうになる。
「よ、よせってぇの。ええぃ、よさねぇか!」
「ひくひくして捨丸も、お業も悦んでるから、もっとしてあげるうぅ」
「よ、よせ」
紅子は右手の人差し指と中指で、肉茎をきつく挟んでから、お業の右腿の上を手で
押し付けるように膝小僧まで降り、今度は内腿から腿の付根までをやさしく這い上がって
再度、腿の付根の縫工筋に親指を思いっきり押し込んだ。突っ張らせていた筋に爪を
食い込まされた本人は喘ぐ口を大きく開いて叫んで、女陰に咥え込んだ肉茎を締め付け
捨丸を呻かせる。
「今度は、もっといいの」
紅子がためて言葉を吐いていた。
「いいかげんにしろ!」
「もっといい」
捨丸の耳に本来の万珠院・紅子の湿った閨声がはっきりと聞こえ、紅子は指三本で
股間の付根から腰骨へと渡って尻を揉む。そして腰の背骨を弄って双臀の谷間に
小指とくすり指を合わせて潜り込ませ菊蕾に小指を挿入させた。
『陽を背にした池に咲く睡蓮の華を見たことがある?』
お業が夫の胸に顔を横にして見ている。
『天界に咲きし、お業。我が妻が華』
女の口元がほころぶと男の目が細くなる。
『わたしは堕ちた花』
『後悔しているのかい?そんな風にまだ思っているのかい?』
『ええ』
男の女を見る瞳が哀しみに曇る。好いたおんなを守ると言えないことが辛かった。
そのことが、諍いになったこともある。イツ花が、わたしが守るからと言って、ふたりの間に
泣いて割って入ったことも。でもそれは、確実にやって来る、避けては通れない運命。
『あなたや、子供たちに累が及ぶかもしれない』
『もう、何度も話し合っただろうに。わたしの命でお前や子供たちが助かるのなら何だってするから』
『ただ、待つだけなんて、耐えられない。わたくしが夕子さまに、おねがいすれば、
もしや道が開けるかも』
お業の縋りつくような瞳が女から母のものへと変わる。その瞳の色に男は弱い。己の
非力さを実感するからだ。唯一のよりどころは、お業をおんなとして愛したことだった。
心の奥底にしまっていた言葉を男は遠慮なく、お業にぶつける。時が迫っていると実感
していたからだった。お業とておなじ……というよりも、その実感は日に日に強まっていた。
イツ花と黄川人の成長がそれを物語っていたからだ。
イツは五枚の花弁にして、キツは桔とする、ふたりは、お業が愛した桔梗花。藍色を
おびた青紫色。落花して蟻が咬むと花弁は赤へと変わる。お業にとって朱夏に人と恋に
落ちて、愛を育んでいった記憶花。
仙境に咲く逸花を人の世に送り、此処に咲いて菊花となって民の邪気を永久に払って
環になってほしいという含みがあった。
すでにお業の力をも、後何年かもしたら、ふたりが越えてしまうという確信があったからだ。
それは吉兆と凶兆の表裏。
『わたしはどうすればいい。子供たちも大切だが、お前を手放すことはもっとできないよ』
朝陽に照らされた淡い桃色の幾重もの花弁が開く。男が覆いかぶさって躰をぐんっと
反り返らせ、女の華、濡れた赫い唇をいっぱいに開く。愛の一瞬に女のいのちをお業は
燃やす。
自分の業を男に何度もいい名付けられて泣き歔き、お業も男の名を叫んで、未来に
顫えて身悶えながら気をやってしまう。なにもかもをふたりで蕩けて忘れることのできる高み。
一瞬の久遠に向けて豊臀をゆすり、躰をゆさぶられて。遠いみらいになにがあるのと、
お業の涙が頬を伝った。
お業は衝撃に口を陸に打ち上げられた鯉のようにぱくぱくとさせる。しかし、衝撃は
紅子の小指が直腸内で鉤をつくって菊蕾を引き上げた時にやって来た。
「ひぃいいいッ!」
柳眉を吊り上げ、閉じた瞼を痙攣させ、長い睫毛をふるふると顫えさせる。もう
一押しで、堰を切ってしまいそうな、お業の躰。包んだ手の親指がやわらかい頬肉を
押し上げ苦悶する貌をしげしげと眺めながら、その弾力を愉しんで静かに捨丸は手を離す。
「捨丸、みなのところに」
「じゃあ、菊座から指をどけろ」
紅子は捨丸を見て、くすくすと笑い出した。
「いやぁ。この花はわたしのぉ。わたしが咲かすぅ」
そう言いながらも紅子は、お業の菊座を天上に向って、ぐいぐいと引き揚げた。夫に指を
挿入されて交媾に惑溺したことはあったが、神格のおなじ者からこうも嬲られたことは
あろうはずがない。
しかも、玉門は、小女たちや城の者たちを皆殺しにして、イツ花を殺し、夫の手を切り落とした
憎むべき捨丸の屹立で塞がれていた。
「ひっ、ひ、ひぃいっ……!」
身も世もあらずの、お業の堪える声に艶が混じり始める。その変化を見逃しはしなかった。
「もういい」
紅子は菊座に鉤をつくって引き上げていた小指をぬぷっと抜いた。そして自分の乳房を
うっすらと汗の噴き上げている背にぐいぐいと押し付け、透明な黄色の体液を絡めた小指で、
お業の小鼻を嬲り始めた。むわっとした臭気が、お業の羞恥をめざめさせる。
「いやぁああ……あ、ああ……」
お業は貌を烈しくおどろに振って、紅子と捨丸の肌を甘美に掃き愉しませるだけだということが
わかっていてもどうすることもできない。
「舐めて、お業。そうすれば、降ろして上げるからぁ。はやぁくぅ」
「いやぁ、いやぁ……。もう……もう、かんにんして……ください……」
「ほらぁ、めしませ。お業」
お業は諦めて、ゆっくりと唇を開いてゆく。
「うっ、ああぁ……」
諦めなのか、嬌態なのか。溜めていたものが蕩けあったままに吐露される。
「だぁめ。お業になんかやらないから」
水飴で舐めるみたいに小指に紅子が舌をちょっと出して舐める。
「捨丸も舐める?」
「いいぜ」
「あ、あぁぁぁ……。ゆ、ゆるしてぇ……ゆるして……もう、かんにん!」
ぐらぐらゆれる、お業の頭をよそに、開いた口に紅子は指を差し出し、紅子はそのまま
口に挿れずに紅をさすみたいにして指頭でそっと捨丸の下唇をなぞった。お業の菊座の
臭気と犯す女陰から滴る愛液の芳香に捨丸は酔う。紅子は捨丸の口腔に小指を根本まで
突っ込んでしゃぶらせた。
「捨丸。みなが待っているから、紅子もういく」
捨丸に咥え込ませていた小指をすっと抜いて、お業の背から離れた。支えをいきなり
無くしてしまった、お業は背から前に崩れていく。総身が強張って、やむえず捨丸の首に
すがろうとした、お業だったが虚しく空を掻いて後頭部を本院の渡り橋の床にしこたま
打ち付ける、鈍い音がした。
紅子は裸身をだらんと伸ばして気絶した、お業をじっと見ていた。
「こら、手伝え」
お業の空を掻いた手を取ろうとして前屈みになったのがまずかった。
「なに?」 「なにじゃねぇ、起すんだよ」
「綺麗だから、このまま、お業を引き摺れ」
「紅子……」 「なに?」 「な、なんでもねぇ……なにもな」
紅子はくすくすと笑う。捨丸は神格のちがう上位にある万珠院・紅子にそこはかと恐怖を
感じながらも、一度は男と女として手合わせ願いたいと思っていた。
お業は確かに綺麗だった。上体がいっぱいに伸び、おどろに白木に散らした髪の上に
両手を投げ出して置いている。髪の毛のいくつかは白い腕にも絡んでいた。首は折れて
かがり火のゆらぎに照らす歔き濡れた美貌は翳りをつくっている。
腕がだらりと伸ばされたことで、お業の脇の窪みが曝け出されてしまっていて、ふたりも
子供を生んだと思えない豊で形の良い綺麗な蒼白の乳房が縦に無残に引伸ばされていた。
その眺めは陵辱者の側から見れば醍醐味でもあった。しかし、腰骨や脾腹の肋骨も
くっきりと浮き出ていた。美女のつくりの土台たる骨格に捨丸は見蕩れた。逆末広がりの
骨が浮び、やわらかそうな下腹部を波うたせている。前屈みになって、お業を抱き
起こそうとした手が止まった。
「腰布をほといて、交媾したまま歩かせて本院においで」
このまま、双月の乳房を引き千切ってみたいと、心底思う。
「貫いたまま仰け反らせて、押せるわけねぇだろ!」
「そうね。羽根斬り場からでも、それじゃあ本院に辿り着くまで朝陽が昇るかも」
「羽根斬り……?」
「もう、とべないでしょう、お業」
「素に戻ったのか……」
紅子が華奢な丸い肩を前に後ろにくなくなとゆすりはじめ、だらりと垂らした両腕を
たゆたう。
「さぁ、どうかしら」
万珠院・紅子は細身の躰の少女の躰を借りて、漆黒の天を仰ぎ甲高い声音で笑うと、
くるくる廻ってから華奢な脚で大きな歩幅を取って風となって駆けて行った。
「狂女だな、ありゃ。」
お業は目を醒まして、貌を横に向けたままで、憎しみのこもった眼でじっと見ていた。
捨丸はぞくっと来て、膣内(なか)で肉茎を痙攣させると、下唇をきゅっと咬んでみせる。
「たまんなくて、堪えてるのか?鬼って言ってみな、お業」
「……」
「からかいには、乗りたくぇか。ほれ、手をかしな。抱いてやるぜ」
捨丸は更に屈んで手を差し出すが、お業は貌をぐっと捻って首に胸鎖乳突筋をくっきりと
浮かび上がらせた。
「そうかい。それなら、どうだ!」
捨丸は太腿を掴むと恥骨にぶつけるように律動を開始した。
「んっ、んあぁあああッ!あ、あっ、うあぁぁぁぁ!」
肩を床に付いたままで、前に衝きあげられていく。
「紅子の言ったように、このまま歩いていくか?」
お業は瞼をきつく閉じて貌は苦悶を浮べていた。鎖骨の深い窪みに、捨丸の逸物が
膨らんだ。柳眉が吊りあがっての屈辱に歔く貌がかがり火に照らし出される。口は子壺を
邪悪な尖端で衝きあげられるたび、ぱくぱくと喚きを噴く。捨丸のなかの淫楽の、お業が
もっともっとと哀訴していた。お業の鴇色の唇がかがり火に赫くなる。大きくひらかれた
口に漆黒の闇を捨丸に何度も見せていた。
捨丸は、お業の躰に覆いかぶさるように、肩の傍に手を付く。
「う、うっ、あ……。き、黄川……人だけ……でも……ああ……」
二度目の凌辱の精に子壺が灼かれた。ドクドクと腐った汚濁が流れ込むようで気が遠くなる。
しかし、躰がふたたび宙に引き上げられ、串刺しになる思いに身悶える。捨丸が
お業の臀部を抱えて曳き付け歩き出したのだった。尖端が、夫だけのものとしていた
寝殿、子宮が穢されてこわれてゆく。
大股で歩く衝撃は鎌首によって、躰をドスンドスンと貫くのだった。お業は掠れた声で絞るように
哀しく呻いていた。やがて薄暗い廊下に入って、遠くのほうに琥珀の灯りが洩れる場所へと
近付いていった。殺戮者に縋る格好の汚辱にまみれて。相翼院の外では疾雷が闇夜を
切り裂いていた。大江山の大火が雨雲を呼んだのだろう。それとも、殺された王国の信徒たちの
恨みつらみ――。大粒の雨が烈しくなって相翼院の甍を叩く。
琥珀の灯りの洩れてくる間の敷居を跨ぐと、祭壇へ続く一本の道が無数の狐火で示されていた。
お業はただならぬ気配に顫え、ぐらぐらと揺すっていた顔を捨丸の浅黒い肩に縋りつくように
埋めた。ほっそりとした首が折れ、幾重もの鬢ノ房、三日月が頬を切る。
「え、どうしたんだい?此処がこぇのか、お業?」
捨丸は髷がほとけておどろとなった頭を撫で付ける。紅子が祭壇のほうからタタッと
駆けて来て、途中で何かにつまずき、よろめきながら寄ってきた。
「はよう、捨丸。戯れよう」
「お業がこぇんだとよ」
紅子が捨丸の背に廻って、頤を掴んで掲げる。
「なぁ、お業。信徒のみたまとおもうたかぁ?」
怯えた貌を陵辱者の肩に埋めようとする、お業だったが紅子の手がそれを赦さなかった。
お業は頤に力を入れて伏そうとするのだが叶わなく、貌が小刻みに顫えていた。閉じた瞼も
またおなじようにして痙攣していた。閉じているのか開いているのか、お業にすら判らない。
「目を開きゃあ、お業。おまえたちが仕出かしたことぞ。濡れ衣ではなかろ?」
「わたしは夕子さまの意志に……」
「だまりゃ。禁を犯して尚も、帝を欺き、ないがしろにし……」
「わ、わたくしはただ!」
「ただぁ?」
「ひっそりと、暮らしたかった……だけ」
「なんなら、みたまよびでもしようか、お業?」
「ゆ、赦してください……」
「お前たちが、あったのも此処がはじまり。そして、いまはみたまに供える華、ふたつ」
お業の瞼がぎゅっと閉じて、両眦から一条の雫が頬を濡らした。
もとより、濡れたほつれ毛の房が細身の小刃となって頬を切ってはいた。
「華……。イツ……」
紅子の受けた手に頤の力が加わって、親指と人差し指で挟んだ頬肉が寄って、苦悶を
滲ませる。
「子が心配かぁ?」
「ひと思いに、みたまに供える二輪花に……して……ください」
「紅子が飽きるまで、辛抱しゃれ」
紅子が、お業の頤から手をすっと抜くと、捨丸の肩に額を擦りつけ、しくしくと泣き
じゃくる。なにをどうしようとも狐火が照らす一本の道のように定まっていた。
「子を跳ばした時に、神気を使い果たしたんだ。それぐらいにしとけ」
「捨丸はやさしいな。お業に逸物をひくひくさせてもらって情が移ったかぇ?」
紅子が捨丸にしがみ付く、お業の背に少女の微かに膨らんだ乳房と尖りを、ぐりぐりと
押し付け、顔を近づける。人差し指の爪を捨丸の首にあてて引き、一本の赫い筋をつけた。
「な、なにすんだ?こわれたらどうすんだ!」
「ほら、捨丸。先刻みたいに、お業を歩かしゃ」
捨丸にしがみ付く、お業の腕を鷲掴み、簡単に引き剥がすが、紅子の奇態に貌を左右に
振り出して紅子の顔を髪で叩く。ひっ、ひっ、と錯乱して捨丸の胸板からあふれた乳房を
ゆすり、躰を捻り出す。 「紅子がこわい、お業?」
黄金色の瞳が、神威を失った、お業を見下ろす。少女の躰の紅子は、お業の二の腕を
掴んで宙ぶらりんに揺れるのを愉しむ。 「もう、よせ」
紅子の瞳がじろっと捨丸を見る。 「じゃあ、そうする」 紅子は、お業の腕をぱっと
離したのだった。腿と下腹の縫工筋が突っ張り、堕ちる。
床を叩く音とともに、祭壇にいる者たちの嗤い声が、お業を苦しめる。手を頭上に掲げて、
しどけない格好で、お業は脇の窪みを晒し、天井を見れば相翼院・お業の間の写し身が
天上を、優雅に羽衣を掲げて舞っていた。 「お輪、ゆるして……」
「捨丸。お業を突きゃ」
お業の頤がかくかくと揺れ、投げ出していた手を額にあてて、おどろになった髪を掻き揚げる。
「もう……いやぁぁ……」
少女の躰に憑依した万珠院・紅子が、捨丸と交媾したままでいるお業の腹の上に馬乗りになって
無邪気な声音で叫んで、お業の追撃の手を緩めようとはしなかった。
「お業、見てみぃ。ほれ、ほれぇ。ほらぁ」
紅子はがばっと被さっていって、お業の細かい汗の珠を噴き上げた乳房を潰し、両肘を床に付くと
髪をむずんと掴んで両手を握り締め、ぐいっと引き下げた。
「うあぁああぁぁっ!」
お業は髪を紅子に下へと引っ張られ頤を仰け反らせると、頭を支点に弓なりになり痛みに耐える。
「瞼を開きゃ。ほれ、お業の好いた男が祭壇の手前に転がって」
捨丸は、お業の太腿を抱きながら押していった。
「いやぁ、いゃあぁあああ!」
「はよう、両手を付いて歩きゃ」
頭上に放り投げるようにして掲げていた手で、お業は怒りの拳をつくって、腕に一条の筋がすうっと
浮んだ。そして翼を拡げるように廻すと、引き付け手を返して躰を浮かそうとする。
「うっ、ううっ、ああ……」
紅子は四肢をだらりとして、お業が歩き出すのをじっとして待っていた。
「呻いているのかなぁ?お業、お業とのう。愛しいのう。はよう、いきゃれ、お業」
朱を刷いている、お業の貌に頬をすりすりとして、耳元に紅子がささやく。お業の逆しまになった瞳に、
愛しい男の転がる姿が映った。捨丸にドスッ!ドスッ!と抉られ、逆手にした手で歩いていこうとする。
祭壇の向こうからは嗤う声がきこえていた。
「うっ、う、うぅぅ……」
「はよう!待ちきれない!待ちきれないと、お業の男が泣いてるぅ」
叫んだかと思うと、急に囁くように喋りだす。一歩、二歩、ドスッ!と子壺を衝きあげる
衝撃で手がもつれ、お業は崩れる。
「いたあぁああっ!」
紅子が、お業の耳元で叫んだ。
「おめぇは、もう祭壇のほうにいってろ!がちゃがちゃうるせぇ!」
捨丸が前屈みになる。
「うむっ」
深く尖端が突き挿っての、お業の重い呻きが噴く。尻を向けて、お業の躰に乗っている
紅子に触ろうとした捨丸の手がぴしゃりと払い除けられる。薄い肉付きの乳房を捨丸に
捻って向け、黄金色の瞳が睨んでいる。
「はよう、捨丸」
少女の声音は、おねだり。貌に反して自分の女陰を突けと言っている哀訴のものとも聞けて取れた。
崩れたお業に覆いかぶさったままの紅子の脆弱な尻は捨丸に掲げ捧げるようにしてあった。
双臀の割れ目の下、両腿のあわいに見える、笹舟がいきもののようにして蠢き、女蜜を
滴らせ、お業の波うつ白い腹部を穢す。
「立て!お業」
紅子の稚い女陰を弄りたい衝動を振り、捨丸は割り開いた、お業の太腿を引き付けた。
紅子の躰とは対照的に、相翼院に祭られた神の躰のままに床に背を付けて転げる天女。
両太腿は、あられもなく拡げられて、凌辱者の腰に絡んで男根を咥え込んでいる。
ふくよかな盛り上がりを見せる柔肉に繁る、恥毛は凌辱の痕を残しそそけ、露でまばらに
濡れていたが、淫するよりも哀しみに歔くおんなの花そのもの。花は咲き誇る時がいちばんに
美しい。ならば捨丸は、美しき華が嬲りの限りを尽くされ、ぐったりとなりさがる。
花が腐れる一瞬の刻を無上の悦びと感じる男だった。戦に生きる鬼だ。お業は紅子を
乗せたままで、立ち上がろうと力を込めても……鬼の贄。
紅子の黒髪越しに逆しまの、お業の屈辱に苦悶する美貌を垣間見て、強張りがおんなを歔かす。
「おめぇが乗ってるとよう、お業の崩れた乳房も喘ぐ脾腹も見えねぇのよ。わかんだろ、紅子?」
逆手に付いて、もういちど躰を持ち上げて歩こうとした。素直なままで両手を付いて
持ち上げていれば、しなる躰のせいで捨丸の肉茎が穢された女に出し挿れされ、下腹が
蠢く卑しいさまを眺めることになりかねない。
持ち上がった紅子が左に貌を捻って、じっと捨丸を見た。
お業は自分の取った体位のことよりも、その恥態を見せつけられることのほうが、
なによりも苦痛だった。一歩、二歩、三歩とあゆみ、祭壇の手前に無残にも裸で
転がされる夫へと近付く、お業。けれど、捨丸が腰を突きあげて、いつまた崩すかも
しれない。逆しまの、お業の貌のこめかみから、粒状の汗がどっと噴く。
「はあ、はあ、はうっ……」
脾腹の汗の珠はすでに一条の流れとなり、床板に滴っていた。お業の赧くなった貌が
そうなって、汗を滴らせるのもさして刻は掛からなかった。涙と汗が混じり合う。哀しみに
歪み開く唇の、ぽっかりと開いた漆黒の闇を紅子はじっと見てから捨丸をまた見た。
「な、なんだ……?」
紅子は上体を起こし、お業の腹部に尻を付いてから、すくっと立ち上がった。突然に
躰が軽くなって、驚く。お業は自分を見下ろす紅子の暗い瞳を逆しまにした貌で見上げていた。
「おい。小便なんかするんじゃねぇぞ」
「ひっ……!」
お業の口から小さな悲鳴が洩れる。
「わかった」
「どっちがだ、紅子?」
「どっちらも。だから、ゆばりも掛けない。お業、待ってるからな」
裸の紅子はタタッと駆けて、転がされている男の裸身に向って脚を拡げて跨いで飛び
跳ね、男の開いた太腿の狭間にふわっと舞って、すとんと足を着いた。伸びた左脚に
揃え、折ったほそい右脚をゆっくりと伸ばすと貌を捻って、お業を誘う。
「はよう、きやれ」と赫い彼岸の唇だけが動いて、お業に少女の薄い躰を見せると、
爪先立ってゆっくりと跪く。転がされていた男の脚が拡がっていたといっても、少女ひとりを
座らせるだけの隙間はなかった。
紅子は爪先立つと半回転し、脚を折り始め膝を付いて、男の脚を割り開いた。
ほっそりとした上体を倒し、男の腰を挟み込んで両手を付く四つん這いの体位を取った。
万珠院・紅子は頤を上げていって、白い喉を晒していった。少女の、否、紅子の彼岸の
唇が白い雫をこぼして、瞼を閉じ長い睫毛をふるふると顫えさせる。綺麗に揃えた前髪が
さらりと割れて、白い額が覗いていた。男が後ろから剛直を突き挿って、歓ぶ所作をする。
がくっと紅子の伸ばしていた腕が折れ、首を折って頭を垂れると上目遣いに、お業を
見て嗤った。後ろを向き祭壇を見て腰に右手を廻して、朱の張形を固定する紐の結びを
ほとく。男の狭間に貌を埋め、ほそっこいゆびでふぐりをやわやわと揉みはじめ、少女の
小さな口から鴇色の舌が覗き男の裏筋の根本に触れた。ほとびる女陰のぬめりで、
鬼の角より削り出した朱塗りの張り形が、ごとっと落ちた。
男は少女の小さな舌が肉茎にふれ、「んんっ」と小さく唸り、躰を微かに揺さぶるのを、
お業は逆しまになった眼をカァッと見開いていた。男の顔には猿轡と朱の布で目隠しされ、
ゆめうつつの境を彷徨って、少女の舌が、お業のそれと錯覚していた。
それが、男のどういう反応なのかを熟知していたからで、眼には嫉妬の炎が灯り
はじめる。お業は突かれても喚きを呑み込み、下唇を噛み締めて歩き出す。
「おもしれぇ」
乳房の珠の汗がながれて、ふたつめの筋をつくり脾腹を通って床に滲みた。
「はやく、いかねぇと、紅子は噛み切るぞ。愛しい逸物を噛み切って、呑み込みかねねぇな」
お業は躰をゆすりながら、逆手にした手の運びを速めた。たとえ、嗤い声が上がろうとも。
「ほらよ」
捨丸の両手が脾腹を挟み、背を持ち上げ、しなう躰。
「んっ」
「なにしてんだ。はやくいきてぇんだろ?動けよ」
たどたどしい歩を、紅子が嬲ろうとする夫の元へ、お業は繰り出した。紅子は右中指を
男の菊座に押し込んだで、跳ねた強張りを左手で下腹に押し込み、貌を横に捻って唇を吸いつける。
「んっ……」
男は躰を揺さぶって呻くと、紅子の肩を落として掲げた尻に手を添える影があった。
紅子の華奢な双臀をゆっくりと撫で廻してから、親指を割れ目に押し込んで肉を割り開くと
小鼻を押し付けた。じゅるっと紅子の女蜜を啜るあけすけな音。紅子の開かれた太腿の下を
くぐって鬼の角の朱塗りの張り形を掴む手、水神のひとり・八手ノお墨。長い黒髪を
頭で髷に結い、頬に垂らす髪の房とうなじのほつれ毛が妖艶だった。お墨がしょった波が
大きくなり、朱の大ダコが躍る。
お墨の恥戯に少女の背もゆれた。お墨は掴んだ鬼の角を手の中で廻して、紅子の
膣内(なか)にあったほうを向ける。紅子に迫る波に、男のみみずがのたうつような肉茎から
手を滑らせ、錆朱色の張り詰めた瘤を握り締める。いきなりの強い締め付けに、男の
尻がびくんと痙攣し、紅子の埋まる顔を跳ね飛ばす。
「お墨ぃ、お業の逸物が跳ねよる」
床に手を付き、鈴口から雫をとろりとこぼしながらゆれる逸物を紅子は眺め嗤う。
「じらしてないで、はよう、咥えておやりよ」
頬を擦りつけ、少女の小さな唇を開いて亀頭を呑み込んでいった。少女の口腔には、
あまりある逸物の量感。少女の貌は醜く変貌した。頤が大きく開かれ、鼻孔が膨らむ。
それもまた美のうち、少女の秘めた美醜。帝がおもちゃにした所以。紅子はそこに
惹かれて憑依し、少女のこころを狂わせる。
喉奥にまで到達した時、紅子のひくつく菊座に、お墨の手にした張り形の尖端が
ぐりぐりと捻じ込まれる。
「んんっ、んん、ん、んうあぁああああッ!」
口から吐き出して、たまんないと大声で叫ぶ、少女の声音。お墨のほとびる膣の体液を
塗されていたとはいえ、一気に突き入れられ、肉が裂かれる灼熱苦に少女は歔き喚く。
「よく咬まなかったねぇ。褒めてあげるよ、紅子」
「もっと……もっとしてぇ、お墨……。して、してぇ」
亀頭に少女の歯が掠り、男の屹立から子種がしぶいて噴出した。紅子は顔を穢されは
しなかったが、黒髪にいくらかは降り注いでいた。しかし、お墨の菊座の責めに陶酔して、
男の下腹と右太腿の上に爪を立てて掻き毟って顫える。男の皮膚が紅子の爪に裂かれる。
飛沫はお墨の大タコにびたっ、びた、びたと降り注がれてもいた。その大半は近付く、
お業の逆しまになった美貌と目の前の床に落ちていた。
お業は驚いて、ひとみを大きく開いていた。目にも子種が入ってくる。咬んでいた
唇にも、いつのまにか開いていた口で受けていた。溜まっていた唾液がたらっと滴り、
夫の飛ばした子種に混じって顔を濡らす。
「はっ、はっ、は……」
「ほしいと思ってたんだろ。よかったじゃねぇか」
「はっ、はっ、はっ……」
捨丸が何を言っているのかさえ、分からなくなっていた。ただ、夫の傍に行くこと
だけに、お業は執着する。その矢先の射精を見てしまって、顔に受けたことで、なにを
しょうとしていたのかが思い出せなくなる。短く浅く、呼吸を繰り返すだけで固まっていた、お業。
「なにしてんだ。もうすこしだろ。動きやがれ!」
尻をぐいぐいと振られ、顔と躰を支えた腕がしなる。お業の重い乳房がゆさぶられる。
「ううっ、うあ、あ、あぁああ、あ、あぁぁ……、ああ」
「こわれやがったか」
祭壇に続く道筋を照らす、無数の狐火が床に転げる喉を仰け反らせ、貌を振り、お業の
唾液にぬらっと光る尖った頤が忙しく動くと、床に拡がった長い髪が哀しく波うつのを栄やす。
(いつか、近いうちにな、髪を絡めて扱いてやる。ほそっこい首も、もういちど絞めてやる。
愉しみにしてな)
「おい。お業、もうダメか?こわれちまったか?まだ、いけるか」
捨丸は腰を迫り出して、お業の躰は崩れ、背を摺りながら夫の仰向けになった顔にまで
やっと辿り着いた。男は手を伸ばして、お業の顔に触れようとした。愛しい女の芳香を
性臭の中に嗅ぎ分けたからだった。すぐ傍にある、守れなかったものを掻き抱こうとした。
掴むことはできなかった、もう抱く手は無く虚しく空を掻いただけ。ぼんやりと何かが空を
舞っているのを、お業は見ていた。しなやかだった女のような手。髪を撫で付け梳いてくれた、
やさしい手と細い指。
お業が涼んでいるのを素描きで画紙に描いてくれたやさしいあの手。頬に乳房に、くちびるを……。
からだを愛してくれた、手が無かった。まるい腕が空を掻いている。
「あ、あ、あっ、あぁああっ、うあぁああああああああぁぁぁぁ――ッ!」
男の空を掻く腕に、お業の手が掴み、腕が絡まって抱き寄せる。そして頬擦りをした。
「捨丸、受け取れっ!」
吉焼天・摩利が肩に巻いた臙脂の布を取ると、それをシャアアッと裂いて放うってよこした。
芭蕉天・嵐子がひと扇ぎ、風を僅かに起こして。
「口を塞いでやりな。お前の逸物が萎えちまうだろ」
「ありがとよ」
捨丸は、お業の躰に覆いかぶさり、律動を開始した。お業の髪に乗った布を掴んで。
「んっ、ん、んあ、あ、あう、あぁああ、あっ……あっ、あ!あ!あぁぁ!」
再度、くちびるをつぐまないよう、捨丸は的確に衝きあげてゆく。
「ほら、咥え込みな。はらからの女神さまたちは、見苦しいとよ。俺は、お前の歔く声をこいつに、
しっかりと聞かしてやりたいのにようぅぅぅ!」
男の股間のほうでは紅子が胎児の格好になって背を撫でられながら、お墨が手に握った
張り形で菊座を抉られ歔いて顫える。それに、捨丸の抉り立てる、啜り歔く閨声が加わった。
しゃんしゃん、鈴が鳴ります。たんたん、白無垢の絹織りの衣に、朱の大口を纏った
イツ花が舞い頭を垂れました。たんたん、扇子の日輪咲かせます。手を水平にかざして
ずいっと引いて頭を上げて両の手にたずさえた扇子を舞わせます。ひらひら。
巨木になる桜雲、散る花びらが風に舞い天上に駆け上り、ひらひら。たんたん。黄川人が
鈴を振ります。しゃんしゃん、たんたんたん。
相翼院・本殿天井、天女の壁画を見上げていた少年が外へ出て行く。台場では小女と巫女が
いっしょになって騒ぎ、朱色の欄干に足を掛け、羽織った衣を脱ぎ捨てて水に飛び込む。
ざぶん、ざぶん!ばしゃばしゃ!の音にまじって笑い声が響いた。くらげのように脚を拡げて、
ほとを開いて水を掻く女たち。きらめく青い波に、白い肌が熔けてゆく。少年は稚い逸物を
膨らませながらじっと見詰めていた。
「いっしょに入って戯れなされ」 お業は微笑んで、目元はほんのり桜色。
「え……」
「はよう」 「い、いやです……」 「なぜにですか」 「わたしは……」
イツ花のかぶりの黄金色おとめつばきが咲きました。まあるい花弁がたくさんに
重なって鴇色、おんないろ。
「わたしが、遊びたいのは、お業さまだけ……です」
欄干に腕を組み、少年は頤を乗せて淋しそうにする。
「ほんに、可愛い子。ほんに。いつか、いつか。あなたさまが、わたしを覚えていたなら、
いっしょに……ね」 遠い遠い約束ではありません。。
ほんのりと。まあるいまあるい、やさしい花を咲かせましょう。太照天・夕子のもとを
去りて愛しい男の子を宿し、赦されたことを歓びます。迷いを振り切って、男に
抱かれたことを悦びます。しゃんしゃんしゃん。いつか環になることを祈りましょう。
環になって、しあわせになりましょう。
仙郷より川を流れて現世に黄色い花、咲かせましょう。しあわせ祈って永久に。
しゃんしゃん。たんたんたん。ひとも神さまもいっしょ。こわいこわい、お業のこどもたち。
うつろいて、誓約(ちかい)は反故に、くれないの刻迫ります。たん!
お業は夫の手を切られた腕を胸に掻き抱き、その上に捨丸は腕を挟んで覆い被さって
秘孔を衝き上げた。がくん、がくんと裸身を揺さぶられ、夫の貌の傍で泣くだけ。互いの
頭で肩をぶつけ合う。
「ん、んんっ、ん、ん……!」
夫のもう一方の手が伸びて髪を触れると、お業は瞑っていた瞼を開いて潤んだ瞳で
辛くとも見ようとした。自分を見つめてくれた眼は黒い布で覆われ、覗く鼻とくちびるが
喘いでいた。お業は肘で摺り上がって貌を捻る。お業の声にならない声が赦しを乞う。
(ごめんなさい……、ごめんなさい。ゆるして、ゆるしてぇ……)
男の首が伸びて顎をしゃくり、ふたりの鼻が擦れた。髪を触る手に、お業の手が絡んで、
しっかりと握り締め逢う。
「もっと、くっつけてやるよ、お業!」 「ん!んんッ!」
捨丸に、お業は躰を無理やりに引き起こされ、泣き崩れて、しきりに貌を左右に振って髪を
散らす。抱き起こされ、掻き抱いた夫の腕は手放すしかなかった。
ぐらぐらとゆさぶられ口を塞がれた布を唾液でびっしょりと濡らし、躰を捻って、お業は夫に
縋ろうとした。捨丸の胡坐の中にすとんと落とされ、剛直に貫かれて無残。眼をカアッと
見開いて天井の壁画の自分の姿を見た。狐火に照らされてゆらぐ姿。
捨丸の尻が動いて前に進み、夫の貌の前に交媾の場面を晒す。たとえ目隠しをされていても、
凌辱の限りを尽くされて、女蜜を出す浅ましき匂いを嗅がれたくはない。瞼がひくひくとし、
白眼を剥いていた。小鼻が膨らんで荒く息を継ぎ、憎しみを込めて捨丸の背に爪を立て掻き毟る。
「お業。おめぇの、愛しい逸物だ」
捨丸は、お業の肩を掴んで、放り投げるように男の躰の上に押し倒す。
「んんっ!」
突き放され背から倒される恐怖に、お業は喚いて空をひと掻きする。
思わず捨丸の躰にしがみ付きそうになった自分に、倒れてしまってから無性に悔しく
なって、艶めかしくなよなよと、おんなの背を丸めて啜り泣く。夫の躰の上に逆しまに
載せられ、お業の顔の傍で鈴口から子種をとろりとあふれさせる逸物が、ぴくんぴくんと
蠢きながら硬度を急速に失わせてゆく。
「紅子、おもちゃが着いたぜ。逸物、競り合ったらどうでい?」
「んんっ、んん、んっ!」
紅子なら逸物を噛み千切って呑み込みかねない。捨丸の忠告を思い出した、お業は
騒いだ。
「自分で取れるだろうによ。世話の焼ける阿魔だ」
両手首を縛られているわけでもねぇだろうにと悪態を付きながら、判断力を失いつつある、
お業にほくそ笑む。お業の口から摩利の衣の切れ端を吐き出させてやり、それでも
吸い切らずに溜まっていた唾液が、たらっと子種によって塗された剛毛の繁みに滴った。
お業の荒い鼻息と吐息が、男の萎む逸物にそよぐと、精液を吐き出し、力尽きたはずの
性器がむくっと膨れ始め、下腹が波うち出す。
「あっ、ああ……」
頤をしゃくり、すべてを捨てて、お業は口に咥え込もうとした矢先、菊座を突かれ
悶えていた紅子が、貌を捻って錆朱色に絖ろうとする亀頭を、鴇色の少女の舌で、
れろっと掬い揚げて掠め取った。
「うっ、うあぁ、うあぁあああッ!ああ……!」
「ぎゃあぎゃあ、うるさいんだよッ!」
「ん、んっ、んぐうっ!」
お墨は相対張形の淫具を、紅子の捻り込んだ菊座からぬぷっと抜き取り、嬲っていた
ほうの尖端でもって喚く、お業の口腔深くにぐぐっと押し込んだ。
「んん、ぐう、ぐふっ!んんんっ!」
「手加減してやれ、お墨」
顔を振って、吐き出そうとしても叶わず、お業の涙目がいっぱいに剥かれ反転する。
それを待っていたかのように、捨丸は烈しく腰を打ちつけ衝きあげていった。捨丸の
こめかみにも粒状の汗が噴き上がり、お業の貌に飛び散っていた。天井から白い脚を
拡げさせられて、浅黒い尻に犯されている自分の痴態を眺めていた。お業は、なよやかな
躰を狂ったようにのたうたせる。
「あんたも、ほどほどにしときなよ」
「まだまだ、射精しゃしねぇよ。なんなら、やるかい」
「ふん、あんたより黄川人のほうが、まだましだよ。いたらだけどね」
お業は鼻孔をいっぱいに膨らませ、喉を抉られ続ける、お墨の手首を掴んで抗おうと
試みたが、躰を壊さんばかりの抽送に翻弄され、やがて意識を遠のかせる。
シャン、シャン。鈴の音がきこえてきます。妙かなる声音の女神たちの絖る閨声が
相翼院の広い本殿に奏で、狐火に煽られる交媾のむっとした性臭が満ち満ちていた。
どれぐらいの刻がすぎたろうか……。紅子がゆっくりと躰を起こす。お墨もならった。
ふたりは、お業の手首を掴んで捨丸に組み敷かれた躰を引き摺り出そうとする。
捨丸の逸物はすでに萎え切っていて、お業の陰華からは吐き出されて、うつ伏せに
眠っていた。
「このまま引けば、お業の夫と捨丸が抱き合うことになるなぁ」
「紅子、妬けるぅ」
「ふふっ、ぬかせ」
ずるっと、男の躰に挟まれていた、お業が引き摺り出された。そそける恥毛に凌辱の
残滓がこびり付いてはいたが、肉襞は爛れてはおらず、お業の性に対して抱く含羞より
醸し出される生来の品、ひっそりとした佇まいの秘園の柔肉へと回復していた。
少女は背を屈めたまま、お業の女陰を見詰める。
「どうした紅子?」
「お墨のよりもきれい」
「ばかをいいでないといいたいけど、ほんとだね。男に妬いているのかい。子を産んだことを」
「なめくじが這った痕みたいに艶々……。おくちにも」
紅子の屈んだ躰、尻の割れ目から狭間を弄り、少女の背骨を這い上がる指がある。
「あぅ……」
「紅子、拭いておやりよ」
月寒・お涼が仰向けになった、お業の右手首を掴んで見詰めていた貌の前に懐紙を差し
出していた。 シャン。狐火がひとつ消えました。またひとつ。またひとつ。たくさんの
灯がたったひとつに。最後に掻き消えて闇の中。 しゃん。シャン。シャン。
本殿に入り口のほうから朝陽が差し込んでいた。夏場でも、本院での朝はさむけを
感じた。お業は閉じた瞼を顫えさせ、長い睫毛をふるふるとさせ見開いた。頬、腕、肩、
そして腰にさむけを感じる。悪夢だったのだろうかと、ひとしきりぼんやりとする頭で
考えようとした。遠くにふたりの男が折り重なって倒れている。おんなの肌と躰をもつ
男と浅黒いごつごつとした男。
お業は祭壇の壁に両手を拡げ、手首を縄で縛られて吊るされていた。膝立ちになって、
尻と背中をぴっちりと隙間無く壁に付けて。その周りには、素っ裸のおめが淫にけぶり
躰を絡め合っていた。ひとりの女に四人掛かりで嬲っているもの。おんな同士で戯れる者たち。
大江山討伐隊の武者たちと帝の女官、相翼院の巫女や小女たちだった。淫らな
湿り気をおびた体液の音と閨の声に、お業は幻視ではないと蒼ざめた。
右腕に貌を伏して、しくしくと啜り泣くが、おどろになった髪に滲み込んだ性臭に闇に
堕ちそうになる。だが、それを引き止めたのは夫の姿ではなかった。腰を捩り始める、
お業。尿意が、むっくりと込み上げて来るのだった。尻をくなくなと揺すりだす。
絡み合う、おめたちには仰向けになった女に尿を浴びせている者もいた。気を静めて
瞼を閉じても、睫毛が顫える。聞く耳を持つものなどいないとわかっていても、たまらないと
かぼそく歔く、お業。
「だ、だれか……。だれか。ああ……」
二の腕に右頬を伏し、鴇色のくちびるを薄く開いて貌を赧らめ、はらはらと泣き濡れる。
腰を捩り、お業の小さな膝小僧も赤くなり剥けていた。
「もたげちまったものはどうしょうもねぇよなぁ、お業」
「ご、後生ですから……」
捨丸は相対したままで、右の二の腕に伏した柳眉をてわめて苦悶する貌に廻り、左手を
付き脇の窪みに舌を這わした。
「ひいっ」
「ひりだすほうなのか、お業?」
捨丸はわざと聞き取りにくい声音で囁いた。貌を捻って捨丸の鼻が晒された、お業の脇を擦る。
「後生ですから、おねがいいたします」
「だから、どっちだと聞いているんだよ。糞だと、奥の御用所まで連れていかねぇとなんねぇだろ。え?」
「も、もう……かんにん……」
捨丸の遊んでいた右手が、お業の腹に触れ、やさしく撫で廻し出した。
「いっ、いやあぁああ……」
「だから、どっちでぇ!」
「ゆ、ゆばり……」
「はっきり、きこえる声でいいやがれっ!」
「ゆばりっ!あっ、ああ……。お、鬼。鬼!鬼!」
二の腕に伏した面を上げ、お業は捨丸を睨んだ。
「ながい付き合いになるんだ。鬼はねぇだろうよ、お業」
ぺっ!お業は捨丸の顔に向って唾棄した。すぐさま、お業は平手打ちにされる。がくっと首を
折って長い髪で喘ぐ乳房と陰部を隠し、うわあっと泣く。
「あんまりなくと洩れるぜ。いびるのもこれぐらいにしておいてやるか」
「うっ、ううっ……」
捨丸は柄を握り、お業を縛る荒縄に刃をあてて切り、介抱する。お業は崩れる裸身を
横抱きに掲げられる。揃った、きゅっと引き締まった足首、ふくらはぎ位置の高い、
きれいな脚がぷらんぷらんと揺れていた。捨丸は、もっと撫で廻し、お漏らしをさせても
よかったかもしれないと思っていた。
「色男と繋がって、やつの腹に撒き散らしてもいいんだぜ」
「いっ、いやぁぁぁ」
お業の下腹がぐぐっとへこんだ。捨丸が歩き出して、転がされている夫を見まいと、
叩かれ腫れた顔を捨丸の肩に隠す。お業は夫を裏切った心持ちに囚われる。捨丸は男を
跨いだら、足首をしっかりと掴む手があった。
「お業さまはな、自分だけ助かりたいとよ。薄情なおんなだろ。そう、おもわねぇか、色男!
お業は小便がしたいんだとよ!じゃますんじゃねぇ!」
どかっ、どかっと肉を叩く鈍い音が聞こえた。
「ひっ!ひっ!や、やめてぇ!おねがい!おねがい!おねがいします……!」
お業に唾を吐きつけられた仕返しに、男に唾棄し腹に蹴りを入れた。男は転がって重い
呻きを放っていたが、猿轡をされていて何を口走っているのか聞き取れない。転がって、
唾液と噴き上がった胃液にむせ、躰を痙攣させていた。それでも、芋虫のように這って、
捨丸に抱かれた、お業を追うが目隠しされ、あらぬ方向へと。
「お業」 「は、はい」
捨丸の肩越しにその姿を見て、躰が顫える。生理現象と夫を天秤に掛けたとも思える。
事実、そうしてしまったのだから罪深い。
「湯殿へ行くか。きれいに洗ってやるぜ」 「御用所でかまいませんから……」
低声でやっと答える、お業に捨丸はにゃりと笑う。
「じゃあ、羽切り台にするか」
「羽切り……!」 「万珠院・紅子がそう名付けた場所だよ」 「う、ううっ……」
お業は、捨丸に大江山で羽を引き千切られたことを、怨んで嗚咽したのではなかった。
怨みはないわけではなかったが、琴線に触れたのは名付けるという意味合いでだった。
現世に降り、愛した男と育んだ月日、名付けられて躰を愛され喜悦に顫え、生を
実感した、お業にとっての尊い日々が遠のいた。外に出ると、更に肌寒い。
「はっ」
お業は小さく息を吸い込んだ。御用所に連れて行く気など無いのだ。朱塗りの鮮やかな
欄干の傍に湖水に向って裸身を立たされた。しゃがんで、欄干の隙間から放尿をしろとでも
言うのだろう。
「お業よ」
「は、はい」
「しゃがんで、欄干に両手を付け」
「はい」
両脚ががくがくと顫える。尿意もさることながら、こうまでも従順に従ってしまう自分が
信じられないでいた。
「男だって、我慢してるかもしれねぇってのによ。少しは感謝してくれよな、お業」
「は、はい」
脚を心持ち拡げ、お業はしゃがんで、両手を欄干に添える。
「踵もちゃんと付くんだぜ。さあ、小便をしなよ」
お業と同じ格好になって、肩を手で掴まれ促された。右手が肩から降りて、脾腹から
腰骨を這い、拇を立てられ尖りを捉え腹に押し込まれた。
「お業、俺の手に引っ掛けても構いやしねぇぜ」
「か、かんにん……う、うむっ、あ、ああ……」
頭を垂れて、うなじを晒していた、お業が頤をしゃくって呻き、がくっと頭を垂れた。
湖上の朝のさむさに顫えるのか、それとも耐えていた尿意の解放の瞬間に総身が
悶えるのか、捨丸には興味があった。つぶらな尿道口が拡がり、生温かい琥珀の水流が
チョロチョロと流れ始める。
捨丸の拇が核(さね)から離れ、湯張りが勢いよく迸った。捨丸はすぐに内腿から両手を
差し入れ、子抱きに抱え上げた。じょぼじょぼと湖水の波を叩いていた湯張りが、欄干に
跳ねてびたびたと音を立て飛び散った。
お業の尿道口からはシャーッという迸る音とともに勢いが増してゆく。いきなり躰が持ち
上がったことに驚いても秘孔は緩み、解放された湯張りの勢いが止まることはなかった。
お業は躰が不安定な状態にされることに加え、羞恥に染まり躰をくねらせて咽び泣く。
欄干は太く、手でしがみ付くことは出来ない。おのずと、背を捨丸の胸に付けてしまって、
左腕が捨丸の右肩から廻り、首を掻き抱く格好になって感情は弾け喚いた。
「うっ、いやあぁああ!あ!ううっ、うっ、うあぁああ……!」
お業の乳房と下腹が烈しく波打っていた。下腹部がへこむと、いくらか湯張りの勢いは
そがれたものの、お業はすべてを出し切る肚づもりだった。
異様なほどに迫り出た、お業のみごもった大きなお腹。
「あまり、しげしげと見ないでください」
「どうしてだい?」
「だって……」
おんなとして生れた、愛しき男の子をみごもる、しあわせの存在証明。
「羞かしい……?」
お業は神気を送り込むように、お腹を抱える。左手で下腹を支えて抱き、上部の迫り
出す膨らみのはじまりに、そっと手を添える。ちょうど気を溜めるような手つきになり、
もちろん子宮の仔へと送る為に。
「もう、いわないでったら」
「さわってもいいかな」
「ええ、もちろんよ。さわってみて」
「あん、そこなの……」
お業の豊な乳房は張りを見せ更に膨らみ、ずっしりとした量感を持っている。
「ここも、いっしょみたいだ」 「もう、いじわるなひと」
ろうたけた天女である、お業の肢体をこんな醜く変えてしまったという自負が無かった
といったら嘘になる。しかし、お業がみごもったお腹をやさしく抱き、語る所作に日輪を
男は見ていた。なによりも増して、きれいだと思った。男の乳房を触るいたずらな手が
止まっていた。
「どうしたのですか?」
お腹に気を配りながら、そっと口吻る。お互いのくちびるの感触が躰にやさしく拡がってゆく。
男は唇を懐紙一枚、挟んだだけの隙間をつくってささやく。
「きれいだ。最高に……。俺はしあわせな男だ」
「いやぁ……」 「いつわりなどではないよ」
お業のくちびるが横に伸びて、笑窪をつくっていた。鼻が擦れた。
「こら。まどわすな」
「おしゃぶりさせて……ください」
お業の蚊の鳴くような声音。
「ダメだ。そんなことはさせない」
男はピシャリと言う。
「ど、どうして。なぜ」
男が下へと降りていく。 「あっ」
「脚を伸ばしてごらん、お業」
「いっ、いやぁ、あなた……」「ほら、言うことを素直にきいて」
「な、なにをするの。だ、ダメだったら……あっ……もう……」
「どうだい?」 「き、きもちいいわ」
男はむくんだ、お業の両脚を揉みほぐしてやっていった。
「お業、横になって」 「え、ええ。ごめんなさい」 「あとで、腰も揉んであげようか」
「……」 「もちろん、きつくはしないよ。それとも、へんな気持ちになっちゃうか?」
「してちょうだい。そっとやさしく」 顔を赧らめる。
「出し切ったか」
お業は尻から内腿を掻き抱かれ両脚を拡げられて、稚子が母親にされて用をたすみたく
子抱きにされていた。
「はっ、はぁ、あ、ありがとう……ございました……」
目を伏し睫毛を顫えさせる。湯張りはとうに弱々しくなって内腿を濡らす。恥毛に朝露を
散らしたようになって、雫をぽたぽたと床に滴らせ乾いた板に滲ませる。
「殊勝じゃねぇか、お業。感心だぁ。子抱きにされて、よく言えたもんだ。褒めてやるぜ」
「はっ、ん、んっ、はぁ……、はっ、はっ」
「どうした。具合でも悪いのか」
「い、いえ。な、なにも」
泣くまい、嗚咽を洩らすまいとして、息を呑む。お業は小さく断続的に息を吸っていた。
それでも、乳房と捨丸の胸板に抱かれた肩が喘いでいる。捨丸はようやく右手を下ろし、
何かを湖に向って放り投げる。
「正直にいいな。どの道、糞便もひりださねぇとなんねぇんだからな。遠慮なくしときなよ」
「ひっ。もう……」 「しかたねぇだろ」 「かんにんしてください……」
右脚を降ろされはしたが、左太腿を抱えられたままで、それによって女陰がぱっくりと
湖に向って拡げられていた。しかも上体を右に捻って、左腕は捨丸の首にしがみついていた。
「でねえってんなら、穴を揉み解してやってもいいんだぜ。ひりだすか?してみるか、お業」
「あぁああ……」
つい出てしまう絶望の呻き。何かを放り投げた捨丸の右手が、首に絡む、お業の左手首を
掴んで掲げさせる。開いた脇の窪みを捨丸の赫い舌がねっとりと這った。躰に捻りが
また加わり、お業の右手がたすけてと欄干に伸びる。
「先刻、何を湖に放り投げたかわかるか、お業?」
「わ、わかりません……ひっ」
左内腿を抱く手が濡れた恥毛を摘む。捨丸の剛直の尖りが、お業の尻肉を小突いていた。
「あっ、あっ……いっ、いやぁああっ、あぁああ……」
「いい声で啼く。惚れ惚れするぜ」 「あっ、あ」
捨丸の指が柔肉を弄び眩暈に襲われる。
「懐紙だよ。お業の雫を拭いてやろうと思ってな、持ってきたんだぜ」
「んあぁああ……」
「紅子らがてめぇの膣内からだした、こゆい男女(おめ)の粘りを始末したものだ。いまいちど、
摺り込んでやってもよかったが、やめたぁ」
指がぬるっと絖る秘孔に挿った。しかし、浅く挿入されただけで、すぐに引き出され、
おんなの命である核をつねり上げる。
「あううっ、うあぁああッ!」
お業は吼えて、捻った躰を右横に仰け反らせた。欄干に掛かっていた右手が強張り爪で掻く。
「おいおい。また頭をしこたま打ち付けたいのかよ」
「はっ、はっ、ど、どうにでも……してぇ」
「ああ、そうさせてもらうぜ。なら、仰向けになれ」
躰を降ろされ、自分から右手を床に付き、寝そべって脚を拡げる。
「膝小僧は立てとくんだ。そして瞼を開けッ!」
お業は総身をびくんとさせ、剛毛を突き天上を向く屹立を見た。のたりと
踵を臀部に近づける。
「こいつが、おめぇのおそそを愛でるんだ。しっかりと目に焼き付けろッ!」
捨丸は、お業に覆い被さり二の腕を水平に引っ張って押さえ込んだ。そして絖って張り
切った錆朱の尖りで、秘園を突きまくった。
秘孔には突き挿らず、わざとなのか恥骨部分をしきりに小突いていた。
「あ、あっ、い、いやぁ!いやぁああ!」
頤を上下にがくがくさせて呻く。刹那、尖端が華芯を捉えて、ずぶっと突き刺した。
「うぐぅうううッ!」
肉茎の根本までも埋まって、ふぐりが、お業のぶるんと揺れる尻肉を叩いた。お業は喉を
突っ張って曝け出し、額を床板に擦って弓なりに仰け反っていった。屠殺された家畜みたく、
拡げられた両脚を痙攣させていた。
何度も何度も衝きあげておいてから捨丸は膝裏を抱え、お業の脚を乳房に持っていく。
ふくらはぎから足首を掴んで真直ぐに掲げさせ、拡げたり閉じたりして玩具にする。
お業の両腕は投げ出されてゆさぶられ、虚ろな貌におどろな髪が掛かって隠していた。
無残絵図が捨丸の闘争本能を掻き立ててゆく。
『捨丸』
「なんだ。神とは無粋なやつなのだな」
お業は捨丸に組み敷かれ、いまだゆさぶられていた。
『まあ、そういうな』
「すまぬ、感謝しているぜ。やたノ黒蝿」
『名は言うな。それに、もうそれぐらいにしといてやれぬか』
「風向きがおっかしいじゃねぇか」
『おまえは失敗したんだぞ。いま一度、よく考えろ』
「俺を殺すのか?」
『お業の子が、おまえをねらう。やすらぎを得たくば、探して殺せ。いいな、殺すんだ』
「おめぇらが、みつけられねぇもんを、どうやって見つけるんだよ。無体なこといいやがる」
『道理だな』
「おいおい」
『俺は去ぬ。くれぐれも、背の警戒を怠るなよ』
黒い羽が躰を包むと、黒蝿の姿はそこにはもうなかった。舞った黒羽根が、汗をどっと
噴き上げさせた乳房に降りてへばり付く。捨丸は、抉り立てて孕めよとばかりに、
おびただしい精を迸らせ子壺を灼き尽くす。
「ひっ、ひぃいいいッ!」
両脚を逞しい肩に担がれ、捨丸の強張りが秘孔に捻じ込まれ躰が跳ねる。肉襞が引き
摺られ、子種を鋳込まれて女であることを呪いながら悲鳴を上げた。叫んだ鴇色の唇が
捨丸の中で、おんなの赫色へと変態する。
お業の口には髪の房が絡まり含んでいた。それを振りほどくかのように顔を左右に
動かしても、高く掲げられた足首を押さえ込まれ、爪先が床に付く格好にされ剛直の尖端で
烈しく小突かれる。おびただしい汚濁が躰を満たして捨丸の腰さばきは饒舌になる。
確実な一撃を子壺へと、ぐいっぐいっと送りこんでくる。闇雲な抽送ではなく、どすん、どすんと
衝きあげられ、痛みともつかない衝撃とともに、お業の躰は捨丸によって摺り上がっていった。
凌辱の苦しみからの逃れ、これが愛する夫の逸物であったらと掠めて、狂ったように顔を振る。
どろどろに塗されて、淫らな音の奏でと、男女(おめ)の混じり合った粘りをどろっと垂らし尻を
穢しても。躰をふたつに折られ、足首を押えられ、捨丸の真直ぐに伸ばした躰がおんなを突く。
「ううっ、うむ……だ、だめぇ……」
埒がない淫の虜囚の身にあって、『どうでもして……』と弱音を洩らしたことを悔しがる。放尿を
眺められて尚、交媾を強いられる惨めさ。なれども肉襞が引き摺られ絡み始めて、瘤に抉られる
おんなの躰の反射が止まらない。腰が蠢きそうになって、お業は歔いた。
先刻まで捨丸の手で磔にされた手が、投げ出されて律動に揺さぶられている。二つ折りの
屈曲位に組み敷かれて、突き上がることのない躰なれど、お業の肘が上がって逆手で
堪える所作を取る。律動する捨丸の尻を求めて、おんなが這っていきそうだったから。
お業の浮きそうになる腰を捻じ伏せて、捨丸の躰が、ドスンと突いて台場の床に打ち
付けた。口からは臓腑が飛び出してしまいそうな感覚に重い呻きを噴き、咥えた髪を吹き
出して唾液を撒き散らす。
「お業、また射精しちまいそうだぜ!脚を絡めろよ!」
捨丸の足首を頭上で押さえつけていた手が、捨丸の担ぐ肩から外され放り投げられる。
捨丸は自分の意志で選択しろと言わんばかりに、一旦は脚が伸ばされはしたが、
お業の膝小僧は徐々に迫り上がりはじめた。
「ああ、あうっ……。うっ、う、ううっ」
足は捨丸の蠢く尻を越えて、ほっそりとした足指がくなっと内側に折れ、土踏まずに
皺をつくった。
「ゆ、ゆるしてぇ……!」
夫への顔向けできない躰への侘び。それとも、昂められそうなまでの女の心情。
お業の尻に重みが加わって、見下ろす捨丸の貌がほくそ笑む。お業の手が台場の
床板を掻いて、打ち付ける男の尻へと這って行こうとした。
「そうはさせるかよ!」
捨丸は、お業の手に指をがっしりと絡め、律動を強めた。お業と捨丸の指股が、
がぷっと四つに組み合わさる。
「お業。これは殺し合いだ。俺は大江ノ捨丸。鬼にとなって、俺の逸物で片羽ノお業を殺してやる!」
捨丸の腰で組まれていた脚が何度か揺れ、律動で跳ね飛ばされていった。
「こっ、殺してえぇえええええぇぇぇッ!」
刹那、喉を晒し額を台場の板に擦り付ける、お業だった。そして、お業は外の
台場から本院に連れて行かれた。おんなを極めての哀訴だったのか、永劫の
死を望んだのか、お業にすらわかっていなかった。ただ、諦めだけが色濃く、お業を支配した。
望みがあるとすれば、捨丸の躰になびいて夫の命乞いをすることだけだった。
裏切りのそしりを受けようとも、それだけが支になる。
しかし、その考えは、お業にとって間の刻でしかない。こころの隙に巣食う魔だ。
お業の躰は淫に溺れる兆しが見え始めていた。
「犬になれ」
子を失い、いまあるのは、目の前で生きている愛する夫の姿。生きる望みを見出すしか、
凌辱を凌げはしない。お業、やむなし。転がる夫の上に四つん這いになれと言い渡される。
「は、はい……」
秘孔からは、捨丸の射精したものが、どろりと滴って黒い布にこゆい白濁がぼたっと落ちた。
お業は横たわる夫の傍に降ろされ、両手を付いて腰を崩し、脚を揃えて踵を尻に引き寄せる。
「顔から跨って、いぬになれ」
「え……?」
「聞こえなかったか。犬だよ」
「なります。犬にでも、なんでも……。だから、この人の命だけは、たすけてあげて」
「お業のいのちなら、考えてもやらねぇことはねぇが、紅子たちもいねぇしなぁ」
「おねがいいたします」 「いぬになれ」 「は、はい……」
お業は起き上がって、四足になって横たわる夫の躰にのったりと進んでいった。すると、
股間の下で重い呻きが聞こえた。股間の下に目をやると、捨丸が夫の髷を鷲掴み、躰を
仰向けに直していた。目隠しの黒い布と猿轡を咬まされた口に汚濁が落ちるのを見た。
「ああ……」
凌辱の残滓が、夫の顔に掛かるのを見まいとし、頤をしゃくりあげる。それすらも
裏切りではないのかと、お業はうなだれておどろな髪で床板をざざっと刷いていた。
捨丸は目隠しを解いてやり、お業の女陰をくつろげる。
「うっ」
嬲られる男女の声音が重なる。
「いい息してるじゃねぇか。さすが、めおとだな」
捨丸は、お業の月輪――。太腿から臀部に掛けての形はまがうことなき蒼白の双月だった。
――に魅せられて、平手で打擲をする。
「ひあっ、ひっ、あ、あうっ!」
お業は垂れた頭を揺さぶり、豊臀の柔肉もぶるんぶるんと揺れ桜を咲かせる。
「おいおい。おれは犬になれって、言ったんだぜ」
「なっ、なりましたぁ……!」 「口答えするんじゃねぇ!」
バシィ――ン!と、お業の尻が小気味よく鳴った。
「あうぅうッ!」
捨丸は立ち上がって、強張りを掴むと、お業の尻肉の合わせ溝に亀頭を擦りつけ始めた。
「はやく、いぬになりな。でねぇと、このまま小便をたれるぞ」
亀頭がひくつく秘裂をそろりと刷いていた。 「ひいっ。ど、どうしたら……」
捨丸の尖端が浅く秘孔をくぐりだす。 「しっ、しますから!やめぇてぇ!」
お業は爪先立ちになって膝をゆっくりと上げ始める。
「できるじゃねえか、お業。それが犬だよ」
「う、ううっ」
「いちいち、めそめそするんじゃねぇ!うっとうしい!」
躰が前のめりになり体重が腕に掛かり、腕がぶるぶると震え始めた。まるまった背が
顫える。
「踵はつけるんじゃねぇ。指も立てて、尻をおっ立てておきな。そうすればな」
捨丸の左手が、お業の左腰、太腿と下腹の付根に掛かった。そのまま強張りが、
お業の膣内にぬぷっと挿入されたのだった。
「歓ばしてやるよ。ぬくい小便でな!」
「いやぁああ……!しないでぇ、しないでぇぇぇ!」
お業の下に垂れた髪が男の股座をざわっと刷いた。愛し愛され、奪い奪い合いの刻は、
はるか彼方に。股座を、お業の髪が刷いて愛撫しても男の逸物は勃起しない。
「このまま、崩すなよ。さもねぇと、わかってんだろうな!」
「いやぁああ!いやぁあああ……!」
お業のよじれる女陰に、ズッ、ズッ!と抽送される強張りを見せ付けられ、男は
守るべきものの凌辱されて泣く姿を見上げることしか出来ない非力に、猿轡を咬まされ
ながら咽び泣くしかなかった。
「それっ、出すぞ!小便だ、お業!」
「いやぁああ!いゃああッ!」
「逝け!もういちど、往生しなッ!」
衝きあげに、顔が揺さぶられた。頭を垂れると、お業の目に嫌が上にも見たくないものが
飛び込んでくる。凌辱されて突かれる肉の裂け目。その下に転がされている、夫の
虚ろな瞳が。瞼をきつく閉じていても、痙攣して薄く開いてしまう。はやく反転させて
白目を剥かせてと、あらぬことを思いながら突かれ衝きあげられ、疲れて……。
頤をしゃくって喉を突っ張らせていても、肩が前後に揺れ、お業の髪が男の萎えた逸物と腰、
本院の板を刷く。膣内の錆朱の瘤が開いて、琥珀の液体を迸らせた。奔流が、お業の子壺に
流れ込んでくる。朝靄の中で、子抱きにされて朱塗りの欄干を叩き放尿させられた屈辱が
折り重なり、お業は、ふたたび湯張りをチョロチョロと漏らす。
「あ、あっ、ああ、あ……」
男はひしゃぐ秘裂から逆流してくる琥珀とうねる下腹から漏れ出した、お業の湯張りに
瞼を閉じようとしたが、思い留まり最後の雫になるまで顔に浴びながらじっと見ていた。
両の気持ちが、お業の柳眉を顰めさせ、総身を強張らせて男の股座に崩れ落ちた。
秘裂からは捨丸の男根が抜け、お業の崩れて喘ぐ桜色の背をびたびたと濡らし、弧を描く
琥珀が、むっちりとした尻を叩き、お業のよわよわしい流れへと混じり合って終わる。
捨丸の屹立はまだ硬度を喪失していなく、下腹を突かんばかりに天上を向いていた。
夫の股座に崩れた、お業の顔に歩み寄り、右膝だけを付いてしゃがみ込み覗き見る。
頬を寄せた夫の性器からも、湯張りがあふれていた。捨丸は、お業の髪を鷲掴むと
男の尿に浸されていた貌を晒す。濡れる頤から琥珀の雫が滴った。だらしなく半開きになる
艶々とした唇に、滾る肉茎を捻じ込もうかと。
「怨んでいるの……。天上を去った、わたしを……べに……」
捨丸が、お業のうつろな視線を追うと、そこには黒髪をおかっぱにした華奢な躰の
少女が立っていた。手には鬼の角で削り出した朱塗りの張り形が握られ、根本に付けられた
白い組紐が三本垂れている。脆弱な男を迎え入れることの出来ないような尻。尻まで黒髪を
伸ばした少女が小首を傾げて、捨丸に貌を晒された、お業をじっと見ていた。
「紅子……」
少女の肉の綴じ目はひしゃげて、ねばりを吐き出している。
「やつらは帰ったよ。また来るかは、わからねぇ」
「か、かえった……?」
「こっちに来て、こいつの逸物をしゃぶりな」
少女の握っていた張り形が床にゴトッと音を立てて落ちた。捨丸は腰を落として胡坐を掻くと、
引っ掴んだ、お業の貌を引き寄せ、屹立を深々と捻じ込んでいった。
「んっ、ん、んぐうぅうっ」
世界が暗転し、お業は目をしばたかせ白目を剥いていた。