オリジナル  

人間になりたい。  
そう告げたら、あなたはきっと笑うんだろう。  
今の能力を捨ててまで、なる程のものでもないよ、勿体ない。  
人間になりたい。  
もう一度告げたら、あなたはちょっと困った様な顔をして  
…それでもやっぱり、笑うんだろう。  
今のままでいいじゃないか。  

人間になりたい。  
どんなに口にしても、あなたには伝わらない。  
あなたが、人間だから。  

人間になりたい。  

 

「ねえ、私の体、変じゃない?」  
こう尋ねるのは何回目だろう。きっと彼は呆れているに違いない。  
だけど、彼はそんな事少しも表情に出さずに、決まってこう答える。  
「どこも変じゃないよ」  
腕の中にいる私の髪を撫でながら。胸元に、首筋に、顎に、頬に、額に  
…あからさまに人間のそれとは違う、長く尖った耳にキスをしながら。  
「でも、でも、どこかおかしい所とかない?何か違うなって思う所とか…」  
「────」  
少したしなめる様に彼が私の名前を呼んで、私はそれ以上の言葉を失ってしまう。  
でも、自分自身に対する胸の中の脅迫めいた感情は、決して消えはしないのだ。  
オマエノカラダハ、ニンゲンノカラダトハチガウ。  
人間の女性の体はどうして、あんなに豊かで艶やかで、魅力的なんだろう。  
私の体はどうして細くて痩せぎすで、みすぼらしいんだろう。  
(成人したのはとっくの昔だというのに!)  
そしてこの耳。人間の女性の可愛らしい形をした耳とは違う、  
いびつな形のエルフの耳。  
彼は一体、私の体に何を求めているのだろう。このみじめなエルフ娘の体に?  

人間の女性に処女膜という物が存在すると知ったのは、彼と結ばれた後だった。  
彼と初めて結ばれた時は、とても嬉しかった。  
生まれてきて良かったと、心から思った。  
だから「痛くない?」と聞かれた時は意味がわからなくて、人間の女性には  
処女膜という物があって、初めて男性を受け入れる時は痛みも出血もあって。  
それが、純潔の証なんだと知って、何か決定的な違いを見せつけられた気になった。  
私には彼に立てる純潔の証が無いような気がして、ひどく悲しかった。  
くだらない事だと他人は笑うだろう。彼もきっと笑い飛ばすだろう。  
それでも「違う」という事はそういう事なのだ。  
不安は消えない。  
いつか彼が私の体に飽きて、人間の女性の元へと去ってしまうのではないかと。  
やっぱり種族の壁は越えられず、この恋が終わってしまうのではないかと。  
それでもいいから、それまでは彼の求めに応じたいと思うのは愚かだろうか。  
この快楽が少しでも長く続けばいいと願いながら。  

「いや…あ、ダメ、やっ、そっ、そこは…ああっ」  
全然説得力が無いな、と彼は苦笑して、私の胸の先端に舌を這わせる。  
もう片方の胸のわずかな膨らみを、大きな手で押し出す様に揉みしだく。  
優しく噛まれたり、激しく吸われたり。ほんの小さな突起物のはずなのに、  
そのつど敏感に反応してしまう。  
「…っ、んっ、んんっ!」  
声を殺そうと私はシーツを噛んだ。  
どんなにコンプレックスを持っていても、この体を彼に愛撫されるのは  
悦びであって、その事実を彼に聞かれるのは恥ずかしかった。  
「せっかくの可愛い声なんだから、聞かせてくれないか」  
ダメ。私はシーツをくわえたまま、必死に首を横に振る。  
「…そっか。じゃあ」  
くちゅっ。  
「…!…っ!…あっ!…やあっ!」  
くちゅっ、くちゅっ、ぬちゅっ、ぬぷっ。  
淫らな音と共に、自分の腰が跳ね上がるのがわかる。  
「こっちの音を聞かせてもらうから、いい」  
彼の太い指が私の花弁を押し開き、芯をこすりあげ、中をえぐって行く。  
ぐちゅ、ぐちゅ、ぐちゅ。  
「や、あ、ふぁ、えあぁ」  
そ、んな、2、ほんも、ゆび、いっ、  
ぐちゅっ、ぐちゅっ、ぐちゅっ!  
「ふぁああっ!」  

彼は私の長い耳を、尖った先端から根元まで、ゆっくりと舐めて行った。  
それはとても優しい行為で、私はそれだけで溶けてしまいそうだった。  
「ん…くぅ、わ…たし、もう…」  
「欲しい?」  
耳元で囁かれると、耳が犯されてしまったかの様な錯覚に陥る。  
私は頷くのが精一杯だった。  
ぬるん。  
大きく、硬く張り詰めた彼自身が、濡れた私自身へとあてがわれ、一気に。  
ずぷっ!  
「…っあ!あああ!」  
牝肉が目一杯、穿たれる感触。私の空(から)が、全て彼で満たされる瞬間。  
「いやあ、んあ、すごい、すごいよぉ!」  
じゅぷっ!じゅぷっ!じゅぷっ!  
こらえ切れずに彼の背中に手を回し、必死でしがみつく。  
激しく腰を打ちつけながら、彼は私の耳たぶを口に含んで、舌をからめて来る。  
耳元から、結合部から卑猥な音が聞こえて、羞恥で気が遠くなりそうなのに  
気持ちがいい。  
ぴちゃ、ぴちゃ、ずぷっ、ぐちゅっ、じゅぷっ。  
「あ…はぁ、くふっ、ひあっ」  
なんとか彼の求めに応じようと、自分でもできる限り腰を振ってみる。  
しかしそれは、結果的に私自身の絶頂を早めただけに過ぎなかった。  

「ごめ…んなさ、わた…し、わたしぃ…」  
どうか、あなたをください。  
「い…しょに、いっしょに…っ!」  
どくん。どくどくっ。  
これ以上はないという位、彼の肉棒が私の奥まで捻じ込まれて、全てが吐き出される。  
「あああああっ!」  
私は彼の腕の中で、力を失った。  

相変わらず腕の中で、髪を撫でられながら、キスを受けながら。  
「…ねえ、やっぱり…その、私の体、変じゃなかった…?」  
「…あのさあ」  
ぽつりと彼がつぶやいた。  
「何が言いたいのかは、なんとなくわかる。『あなたなんかにわかりっこない』って  
言われるんだろうけど、それでもなんとなくわかる。でも」  
でも?  
「たとえ君がエルフだろうと、人間だろうと」  
そこで彼は言葉を切って、少し照れたようにそっぽを向いた。  
「俺はもう、君の体じゃないと、満足出来ないよ」  
抱きしめてくれる力強い腕。  
私の目から零れ落ちる涙。  

これ位じゃきっと、不安は消えないだろう。  
また何度も、私は自分の体に打ちひしがれて溜息を付くだろう。  
魅力的な、人間の女性の体に憧れるだろう。  

でももし、生まれ変わる事が出来たら。  
その時は、人間でもエルフでも、他の種族でも、なんでもいい。  

もう一度あなたに、愛される生き物になりたい。  

 

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