それは、僕が学生の頃の出来事です。
夏休みを利用して、一人で或る島へ出かけました。
美しい海が広がり、観光客は殆どいません。
夜、浜辺へと行きました。
誰も居ない砂浜に寝転がり、女の子と一緒だったらと思いつつ、うとうとしていた時の事です。
「旅のお方ですか?」
浴衣を着た一人の女性が僕の顔を覗いてきました。
「あっ……うっ……。」
長い黒髪、整った目鼻立ち、透き通るような白い肌、その美しさに見とれて声を失ってしまいました。
「海がお好きですか?」
「え?……あっ……はい!」
「もっといい場所が有りますよ。いらっしゃい。」
耳につけた小さな貝のイヤリングを風に揺らしながら、彼女は手招きをしました。
一つくらい年上だろうか?僕より長身でプロポーションが素晴らしく、尻の線が見える事から下着をつけていないのが分かりました。
僕は、何かを期待しながら、ふらふらと後を付いていきました。
誰も来ないような岩陰で、彼女は立ち止まりました。
「あっ……あの?」
彼女は振り返ると浴衣を脱ぎ始め、上半身裸になりました。
「女が欲しいのでしょう?私じゃ嫌かしら?」
僕には経験が有りませんでした。
初めての女性がこんなに美しい人なら!
僕は、夢中で服をかなぐり捨てました。
彼女も帯を解き、浴衣を脱ぎ去りました。
しかし、月明かりで照らされた彼女の下半身を見て、僕は自分の目を疑いました。
彼女の両脚は、びっしりと鱗に覆われ、足首にはヒレのようなものが付いていたのです。
「うわああーーーっ!!」
僕は必死で逃げましたが、すぐに追いつかれ、後ろから抱きつかれました。
「ふふっ、つかまえた。」
僕は倒れ込み、彼女が上から覆いかぶさってきました。
「初めてでしょう?私の体で教えてあげる。」
彼女は唇を重ね、甘い蜜のような液を流し込んできました。
すると、気持ちが落ち着つくと同時に、声が全く出なくなったのです。
僕は抵抗するのを諦めました。
「怖がらないで。私とだったら、人同士の営みでは味わえない快楽の極みが得られるわ。
彼女は、ぬらぬらした脚を僕の下半身に擦りつけ、柔らかい乳房を胸の上で踊らせました。
とろけるような気持ちよさで、恐怖で萎えていたペニスが勃ってきました。
「準備はいい?これが女の体よ。」
彼女は、ペニスを手に取ると下腹部にあてがい、ゆっくりと挿し込んでいきました。
初めて体験する女性の中は、ねっとりとして柔らかく、とても暖かく、その感触で直ぐにでも果ててしまいそうでした。
彼女が腰を動かし始めると快感が急速に高まっていきましたが、なぜか射精する事が出来ませんでした。
「まだだめよ。私と一緒にイキましょう。」
彼女は笑みを浮かべ、喘ぐ僕の顔を見つめていました。
なんという美しさだろう。
たとえ、人でなくてもかまわない。
僕は、甘えるように彼女にしがみつきました。
彼女の腰の動きと息遣いが激しくなってきました。
「あ…あと少しよ……が、がんばって!」
僕は、既に気を失うほどの快楽の域に達していました。
彼女も限界に達そうとしているのが、その苦悶の表情からわかりました。
「うっ!……ううっ!……イ、イクッ!………ああああっ!!」
彼女が絶頂に達すると同時に、僕は大量の精を放ちました。
暫く、二人で快楽の余韻に浸りました。
「どお?気持ちよかった?夜は始まったばかりよ。夜明けまで楽しみましょう。」
休むのも束の間、彼女は再び腰を動かし始めました。
果てた直後であるのに、再び快感が襲ってきました。
その夜、僕と彼女は何度も何度も昇りつめました。
潮騒の音だけが鳴り響く、妖しく甘美な夜でした。
次第に夜が明けてきました。
「そろそろお別れね。とても楽しかったわ。」
彼女が唇を重ねると再び甘い蜜が流れ込み、意識が遠のきました。
朝の光で僕は目覚めました。
彼女と最初に会った砂浜です。
服も着ていましたし、声も出ます。
あれは、夢だったのだろうか?
しかし、すぐ横に貝のイヤリングが落ちているのを見つけました。
彼女がつけていた物です。
夕べの事が夢では無かったと確信しました。
僕は、必死に彼女を探しましたが再会する事は出来ませんでした。
島を離れる日が来ました。
僕は、帰りの船からポケットに入れておいた貝のイヤリングを海に捨てました。
彼女の思い出と共に。