冬、明日は世に言うクリスマス
去年のように、いっしょに過ごす彼女が居なかくて布団に隠れて泣いた俺はもういない。
今年は彼女が居る、しかもずっと好きだった同級生、明日が楽しみでしかたない。
大学受験も控え、浮かれながらも俺は机に向う。
――問題が解けず、くせになったペン回しをしていると、ふいにトントンとドアをノックする音が聞こえた。
「…誰?」
「あ、お兄ちゃん、私」
壁越しに聞く声はまさしく妹の声、すぐにドアを開ける。
「どした?」
妹が俺の部屋に来るなんて珍しい、いや一ヵ月くらい前からよく来るようになったかな
「おじゃましま〜す」
「待てい」
手を後ろに回し、無断で入ろうとする妹の頭を掴み、廊下に押し返す。
「な、なにすんじゃい!」
「…お前が勝手に俺の部屋に入ろうとするからじゃ」
「え、入れてくんないの?」
「ちゃんと挨拶したら入れてやる」
妹の不作法は日常茶飯事だ、しかも外でもやるから質が悪い。
だから家でも親に、こいつの躾けを頼まれている。
「じゃ〜はい、入れてください」
「よし」
妹を部屋に招き入れ、俺は机の椅子に、妹は俺のベットに座った。
「で、なんかようか?」
「うん」
「なに?」
「あ……え、うん」
部屋に入った途端、妹の返事は曖昧になり、目を泳がせる。
「?、だからなんだ?」
少しキツめに言うと、急に妹は立ち上がり、こちらにズンズンと歩み寄ってくる。
「え、え何?!」
さっきからずっと同じことしか言ってない気がする…
妹の不可思議な行動で思考力がダウンし、うろたえる俺の首にフワリと何かが巻き付く。
それを手で触り、妹に視線を移すと
「マフラー、これから寒くなるからさ、作ってあげた」
目を逸らし、耳まで顔を真っ赤にして妹は呟く。
「ん、ありがと」
「それでね、お兄ちゃん…私さ、今日は重要な話があるんだ」
視線は合わせず、顔だけを向け俺に語りかける。
なんとなく予想が付いた俺は、すぐに言葉を考える。
だってさ、だめだろ?、兄妹を好きになるなんてさ
「私ね、お兄ちゃんのこと…――」
「――…俺とお前は兄妹だからな」
「え…?」
虚を突かれ、妹は面を食らったようにこちらを見つめる。
やがて妹の目から涙がジワジワと滲み、頬をつたいはじめる。
居たたまれなくなったのか、妹は俺の部屋を荒々しく飛び出す。
「躾け…か」
そういって俺は放心したように、しばらく中を眺めた。