杉原家の嫡男、春樹は自分の部屋で仰向けになって本を読んでいた。  
 夕食や風呂なども済まして、後は寝るだけだ。  
 と、そこへ「お兄ちゃ〜ん」と甘えた声を出しながら女の子が飛び付いてきた。  
 春樹の妹、姫香だ。ピンク色のワンピースから甘い匂いがふわりと香る。  
「姫香、重いぞ」  
「私そんな重くないよ!」  
 姫香は不満げな顔をすると、春樹の体をぎゅっと締め付けた。  
 胸から伝わる感触はリアルで、それだけで春樹の股間はドクンと反応してしまう。  
 
(この微妙な刺激、毎度のことながら慣れないよな)  
 はあ、と春樹は一つ溜め息をついた。  
 
「姫香ってブラ着けないのか?」  
「うん、家だと。苦しいから……えっちぃ〜」  
 にやにやしながら姫香が答える。  
 その姫香の子供っぽい言動の裏側に潜む女の艶態に、春樹は思わずドキリとした。  
 しかしそのことは姫香には悟られていないようだ。  
「苦しいっていうほど無いくせに」  
「ひっど〜い! 今のがキツくなってきたから、たぶんBくらいは有るよ!」  
「はいはい。今度『ウチフク』行った時に新しいの買ってもらいなよ」  
「そうするー。ねぇ、そろそろ寝よっ?」  
 姫香がベッドの上で足をぱたつかせながら催促をする。  
 時計の方を見やると、もうすぐ22時を指すところだった。  
 
「んー、そうだな。歯は磨いたか?」  
「お兄ぃ、私が台所で磨いてたの見てたじゃん」  
「姫香その後でドーナツ食ってただろ?」  
「やばっ、そうだった。磨いてくるね」  
 ガバッと起き上がった姫香は、そのままベッドから降りるとドアまで駆けていった。  
 
 ―――刹那、何かにつまずいたのか姫香の体が宙を舞った。  
「きゃっ、痛ッ!」  
「大丈夫か姫香! ……!?」  
 転んだ姫香が気がかりで、そちらの方を見る春樹。  
 だが、その顔色は心配のものから好奇のものへと次第に変化していった。  
 そこにはワンピースが捲れて、姫香の可愛らしいお尻が顔を覗かせていたのだった。  
 
「あのさ、姫香。ブラは分かるんだが……パンツも穿いてないのか?」  
 思わず気遣うのも忘れて聞いてしまう春樹。  
「やぁっ! ……見た?」姫香は慌ててワンピースの裾を引っ張り隠す。  
 しかし時既に遅く、春樹が瞼の奥に焼き付けた後だった。  
「いや、見たけど」  
「痴漢! 変態!!」  
 姫香は大きな声でそう罵倒すると、勢いよく部屋から出て行った。  
 どちらかと言えば穿いてない姫香の方が変態だよな、と思いつつ、春樹は背中を見送っ  
ていた。  
 
 20分後、目が半分閉じかかって、いかにも眠たそうな姫香が部屋に戻ってきた。  
 むすっとしながらも春樹の入っている蒲団の中に潜り込む。  
 どうやら春樹への抵抗心も眠気には逆らえなかったらしい。  
 そこで、春樹は先程から気になっていた仔細を問うてみることにした。  
 
「ねぇ姫香、どうして穿いてなかったの?」  
「あのね、"ノーパン健康法"って言うのが有ってね、クラスの一部で流行ってるの」  
 すっかり大人しくなった姫香の口から、なにやら怪しげな言葉が発せられた。  
(ノーパンと健康に因果関係が!?)  
 春樹は初めて聞く事柄に驚きつつ、その辺りを突き詰めて聞いていく。  
「それってどんな効果が有るの?」  
「私も友達に聞いてみたんだけど、思いつく限りあらゆる御利益が有るって」  
「へ、へぇ〜。……胡散臭いな」  
「信じられないなら、やらなきゃ良いだけだよ」  
 それはごもっともだと思いながらも、春樹は一番気になっていたことを口にした。  
「姫香はいつもやってるの?」  
「んー、家に居る時は一応やってるよ」  
 
 眠たそうに答える姫香とは裏腹に、春樹の意識はどんどん覚醒していった。  
(クラスの女の子の下半身が剥き出し? ……それに今の姫香も)  
 
「お兄ぃ、もう寝ようよー」  
「あ、ああ、そうだな。電気頼む」  
 春樹は今聞いたことなんて気にしてないかのように装いながら、いつものように振舞う  
努力をした。  
 
 部屋の明かりを小さくして、また蒲団に潜り込んでくる姫香。  
「お兄ぃ、手」  
「はいはい」  
 春樹が手を差し出すと、これまたいつものように姫香が腕を絡めてきた。  
 必然的に春樹の手が姫香のデルタゾーンへと導かれる。  
 それは、少し指を動かすだけで姫香の秘部に届いてしまう距離だった。  
 
(うぅぅ、どうしても意識してしまう)  
 春樹にとっては隣で姫香が寝ること自体が意識せずにはいられないことなのだ。  
 それなのに今回は、更に乙女の秘密まで知らされ、もはや欲望の衝動を抑えるのは困難  
だった。  
 一方、姫香はそんなことなどお構いなしとでもいった風に、すぅすぅと寝息を立て始め  
ていた。  
 姫香にとってはショーツを身につけないことなど日常的なことなのだ。  
 
(ちょっとくらい触っても気付かれないよな)  
 気持ち良さそうに寝ている姫香の寝顔を見ると胸が若干痛んだが、春樹はもう我慢の限  
界だった。  
 春樹は動かせる手先を、そっと姫香のスカートの中へと潜り込ませた。  
 
 そこには木目細かな肌があった。すべすべした感触は、これまでに一度も味わったこと  
の無い女児特有の触り心地だった。  
 春樹は、大腿の方から恥丘まで滑らかに撫でてみた。  
 どうやらまだ恥毛の生えていないその場所は、春樹が想像していた以上にぷにぷにで柔  
らかく、また精緻に出来ていた。  
 姫香は、少しくすぐったいのか足をもぞもぞと動かしている。  
 その動作にビビッた春樹は、姫香の足の付け根である、所謂ヴァギナで手を一旦動かす  
のを止めた。  
 慎重に姫香を観察してみるが、どうやらまだ気付かれてないようだ。  
(俺は今、姫香のワレメを触っている)  
 春樹は感慨に浸った。  
 
 そうしてしばらく放置していると、性衝動とは別に探究心が芽生えてきた。  
 春樹は、この際だから姫香の全てをいじり尽くしてやろうと、心を新たにして冒険を再  
開させたのだった。  
 とりあえず姫香の秘部から手を引くと、太腿から内腿をツーッと撫でてみる。  
 すると、姫香は体を緊張させてくすぐったそうに身をよじった。  
 次に春樹は、堅く閉ざされてしまった股の付け根に強引に手を差し入れた。手には程よ  
い肉圧がかかり、このもちもちとした感触がたまらなく春樹の脳髄を刺激する。  
 春樹は、まだ縦スジでしかない姫香のヴァギナに手を這わせると、親指と中指で大陰唇  
を挟み込み、グッと開いていった。  
 
 そこには、ぱっくりと口を開けた姫香の膣があるのだろうが、手探りだけで行為をおこ  
なっている春樹には知る術は無かった。  
 今更ながらこの体制を恨んだが、どうしようもない。  
 春樹は、やりきれない気持ちを表すかのように、親指と中指を閉じたり開いたりした。  
 するとその度に姫香のそこは、まるで口を開くかようにぱくぱくと動いた。  
 
(いつか、姫香の好きになった男のモノがこのナカに入るのだろうか)  
 穢れの無いその場所を触っていると、ついつい変なことを考えてしまう。  
 春樹は、自分のモノがそこへ埋没していく様を想像してみた。  
 
 ―――純粋無垢なその場所が、初めて飲み込む異物を懸命に受け入れようと、幼い口を  
めいっぱい開けて飲み込んでゆく。そして、純潔だった証が辺りを彩る―――  
 
 春樹は感慨に耽りつつ、空いている人差し指を自分のモノに見立て、姫香のナカをそっ  
とこすってみた。  
 
 すると、指とナカの粘膜がこすれるたびに、姫香は体をぴくっぴくっと痙攣させた。  
 
(寝ていても感じるのかな?)  
 夢見気分だった春樹は、少し警戒して姫香の様子を観察した。  
 すると、薄暗いながらも姫香の頬がほんのりと紅潮していることに気が付いた。手に巻  
きついた姫香の腕も若干力が入っている気がする。それに何だか姫香の手のひらが汗ばん  
でいる。息遣いもどこか荒い。  
 春樹は天国から地獄へ一気に突き落とされたような、臓腑が切り刻まれる感覚に陥って  
いた。体中からイヤな汗が噴き出してくるのを感じながら、  
「姫香、起きてるのか?」  
 と、おそるおそる姫香の耳元で囁いた。  
 
 実は、姫香は春樹が悪戯を始めた当初から起きていた。  
 最初は偶然手が当たっただけだと、姫香は夢見の頭でぼーっと考えていた。  
 しかし、徐々に春樹の手つきが卑猥なものになっていくにつれて、春樹が意志をもって  
手を動かしているということが姫香にも分かってしまった。  
姫香はパニックに陥り、どうしてよいか分からず身を強張らせた。  
 ところが、そうしている内に幼いながらも女の部分が反応してしまい、またもやどうし  
てよいか分からず春樹に身を任せていたのだった。  
 
 もちろん、姫香は春樹からの問いかけには答えなかった。ここで返事をして全てが終わ  
ってしまうのがたまらなく嫌だったのだ。  
 このお腹の底の疼きから解き放ってくれるのは春樹だけしかいないということを、姫香  
の本能は告げていた。  
 
 春樹には、姫香が本当に眠っているのか、はたまた起きてて黙っているのか見当がつか  
なかった。  
 ただ、姫香の様子からすれば、たとえ起きていたとしても怖がったりはしてないようだ。  
 
(この様子なら続行可能か)  
 
 春樹は一息呼吸を入れると、覚悟を決めて悪戯を再開させた。  
 手でこすっていた部分がいつの間にか湿り気を帯びていたので、それを指に馴染ませる  
と、膣の上あたりにある皮を被った突起物にそっと触った。  
 瞬間、姫香の体がびくっと動き、姫香の口から喘ぎ声のようなものが漏れ聞こえた。  
 つかまれていた腕にも先ほど以上の力がかかっていて、そこから姫香の熱い体温が伝わ  
ってくる。  
 
 姫香は、春樹に気取られまいと、快楽の波を必死に耐え、取り繕っていた。  
 もう何も考えられない頭の片隅で、僅かな理性がそうさせていたのだ。  
 しかし、情け容赦の無い春樹の指づかいは彼女の未知なる部分を的確に刺激しており、  
なやましい吐息を押さえ込むのは困難を極めた。  
 それに、先程から春樹の動きで乳の突起した部分が服にこすれて、姫香をよりいっそう  
せつなくさせていた。  
 しかし残念なことに、そのむずがゆい責め苦のことなど春樹は知る由もなく、そのこと  
により触ってほしいのに触ってもらえない生殺しの状態が続いていた。  
 
 
 姫香はもうどうにもたまらなくなって、とうとう抱きついていた腕をそっと解き、自分  
の手で胸を触るという一大行動に出た。  
 
「んんっ!」  
 
 ワンピースの上から乳首を摘まんだ瞬間、それまで押さえていた色っぽい喘ぎ声が喉の  
奥から言霊となって発露していた。  
 姫香は、その恥ずかしさに一瞬手を止めるが、もはや自分の気持ちに抗うことはできな  
かった。  
 こんなにせつない気持ちは初めてだ。  
 姫香は、自分と兄の織りなすハーモニーに酔いしれ、刻一刻とのぼりつめていった。  
 
 春樹も、もう姫香が起きていることには気が付いていたが、暗闇の中での彼女のせつな  
そうな嬌声や顔を知ってしまった今となっては、止めようという気は起きなかった。  
 否、止められなかったのだ。  
 姫香の幼き体から確かに漂ってくるまぎれもない女の匂いに翻弄されていたのかもしれ  
ない。  
 ただただ姫香の悦ぶ顔がもっと見たくて、春樹は膣から湧き出る蜜をすくい取っては包  
皮に包まれた肉芽に優しくこすりつけていた。  
 
「んっ! んんっ!! ふぅんん!!」  
 
 春樹の指の動きに合わせて、規則的に姫香が喘ぐ。  
 意識が遠のきそうなほどの甘美な快感をリズムよく送り込まれ、姫香はもう意識を保て  
ないでいた。  
 ただ、無意識に内股に力を入れて、快楽に抵抗しようとしていた。  
 何故か漠然と自分が弾けてしまうような、そんな感覚が迫ってきて、なんだか少し怖い  
と思ったからかもしれない。  
 しかし、あわれ内股の筋に力を入れれば入れるほど、かえって快楽の波は威力を増した。  
 
 もう限界かも、と姫香が思い始めたとき、唐突にお尻の穴に何かが触れる感触があった。  
 姫香は急速に意識を取り戻しつつ、春樹がいつの間にか起き上がっていて、もう片方の  
手でお尻の穴を弄んでいることに気付き、驚いた。  
 そんな汚い部分を触られるのは羞恥以外の何物でもなかった。  
 
「えっ、いやぁ!」  
 
 思わず拒絶の言葉を発してしまう姫香。しかし、高ぶった快楽の渦は姫香の気持ちなど  
お構いなしに姫香の裸身を侵食してゆく。  
 春樹は手を止めてくれない。  
 
「いやぁ、やぁだっ、あんっ! んっ!」  
 
 眉に皺を作り、必死に抵抗する姫香。  
 乳首とクリトリスの攻撃に新たにむずむずとした感覚が加わり、それらが複雑に絡み合  
って、姫香の心臓はもうはちきれそうだった。  
 お尻の穴に力を入れると、逆のぬるぬるした手でヴァギナを一撫でされた後、肉芽を包  
皮の上から優しく愛撫されるのだ。そうされると、どうしても下半身の筋がほころんでし  
まい、またお尻の穴近くへの侵入を許してしまう。  
 
 何とか逃げようとお尻や腰を振って抵抗してみるのだが、そんなことをしても規則正し  
かった快感の波がその動きの為に変調で独特のリズムに変わっただけで、かえっていっそ  
うの快楽を味わうことになるだけだった。  
 姫香はもう汗びっしょりで、兄から受ける恥ずかしい責め苦に一心に耐えるしかなかっ  
た。  
 
 春樹も、姫香が嫌がっているのは承知の上だった。ただ、姫香の全てをいじり尽くそう  
と思った以上、お尻の穴も当然触るべきポイントだったし、また、姫香の嫌がる姿も見た  
かったのだ。  
 姫香の見せるくねくねした妖艶な動きも、春樹の剥き出しの心を挑発するには十分すぎ  
る役割を果たした。  
 
 手を動かしつつも春樹は、消灯後の仄かな豆電球の明かりを頼りに姫香の捲くれあがっ  
たワンピースの中を覗き込んでいた。  
 そこは薄暗いながらも、姫香の透きとおるような愛液がまるで月明かりに照らされたか  
のようにキラキラと光っていて、神秘的な雰囲気をかもし出していた。  
 それに加え、春樹の指によって開かれている、普通なら決して誰にも見せることの無い  
処女の処女たる部分は、甘酸っぱくも人を魅了する匂いを放っていて、その香りは春樹の  
脳を麻痺させた。  
 春樹は、そこへ吸い寄せられるかのように顔を近づけていった。  
 間近で見る姫香の潤んだ膣は、まるで雨上がりに咲く淡紅色の桜の花びらみたいな慎ま  
しくも可憐なもので、春樹は思わず固唾を飲んで見入ってしまった。  
 
 そして、いつの間にか春樹は蜜を集める蜂の如く、姫香のそこへ口づけしていた。  
 
「ひゃっ! お兄ぃ!! 舐めちゃいやぁ! やぁっ!」  
 
 それに気付いた姫香が絶叫する。  
少しざらついた舌が膣壁をこする感触のあまりの気持ち良さに頭がどうかなっちゃいそ  
うで、もう自分が自分でなくなってしまいそうだった。  
 粘液が奏でる、クチュクチュ、といった卑猥な音と共に、主旋律である喘ぎ声は段々と  
フィナーレに向けて大きくなっていった。  
 
 やがて、姫香の限界を知らせるかのようなヒクヒクと蠢くヴァギナの様を、春樹は舌で  
感じ取った。  
 
「もうイクの?」  
 
 春樹は体制を起こして、姫香に顔を近づけていった。今度は右手をヴァギナ、左手を姫  
香がいじっていない方の乳に添えて、獣が獲物を狩るが如く、荒々しくも無駄の一切無い  
動きで姫香の弱点を摘まんだり揉みくちゃにしたりした。  
 姫香は顔を真っ赤にして、春樹の言葉も耳に入ってないようだった。  
 しかし羞恥の対象が消えたからか、姫香はいくぶん安堵の表情を見せていて、迫り来る  
快楽の波を享受しようとしていた。  
 
「やんっ! あっ! お兄ぃ! あぁんっ!!」  
 
 姫香は弱いところを春樹に激しく掻き回されて、もう両手でシーツを掴む程度の力しか  
残っていなかった。  
 乳首とオマメを指で摘ままれ小刻みに振動させられると、姫香は反則的なほどに感じて  
しまう。  
 
「やぁ! 変になるっ! 変になっちゃうよぉ!」  
 
 もはや絶頂の寸前。姫香は首を振って顎を突き出す。  
 春樹は、最後にもっとも強烈な刺激を用意していた。  
 その摘まんでいたものを引っ張って、絶妙な力加減でぐいっとひねったのだった。  
 
「ああっ!! だめぇぇっ!!」  
 
 太腿の筋がピンッと張りつめ、体を弓なりにして姫香は我慢の終焉を訴えた。  
 そして、腰を浮かせ春樹の手に自らの性器をこすりつけると、それが合図だったかのよ  
うにそのまま立て続けに腰をガクッガクッと揺らして絶頂を迎えた。  
 春樹はその瞬間、姫香の唇を奪っていた。とにかく姫香と繋がりたかったのだ。  
 だらしなく開いていた姫香の口に激しく自分の口を這わせ、荒々しく舌を絡め、だ液と  
ともに彼女の断末魔をも飲み込んだ。  
 やがて姫香の体が弛緩する。  
 春樹は唇を離し、そのまま横にごろんと転がった。  
 
 
 静寂がおとずれた。  
 春樹の隣にいる姫香は脱力パンダの如くぐったりとしている。どうやらまだ絶頂の余韻  
から覚めやらぬようだ。  
 
(終わった。凄かった。こんなことになるなんて想像すらできなかった)  
 春樹は呆然と、今起きたことを思い返していた。  
 軽い気持ちで始めたはずが、知らず知らずの内に後戻りできないところまで来てしまっ  
ていた。  
 この先の2人の関係は、姫香が正気に戻ってからの一言にかかっていた。  
 そこまで考えて姫香の方を見てみると、もう瞼を開けてこちらをじっと見つめていた。  
目にはうっすらと涙を浮かべている。  
 春樹は背筋が凍った。  
 
「お兄ぃの、ばかぁ」  
「姫香」  
 姫香の口からは拒絶とも取れる言葉が飛び出した。  
 春樹はただ名前を呼ぶことしか出来なかった。深い絶望を感じていた。  
 
 しかし、それは春樹の早合点だった。  
「舐めるのは絶対ゼ〜ッタイに駄目! それにお尻も」  
 耳まで真っ赤にして、そう訴える姫香。  
 べつに姫香は春樹に対して拒絶する気持ちは心底無かったのだ。むしろ今の心境は、ノ  
ーパンの神様にありがとうを言いたい気持ちだった。  
 春樹はうろたえながらも、  
「ああ、今度からはそうする」  
 と、次を匂わすことを言ってみた。  
「なら、良いっ」  
 姫香は満面の笑みでそう答えると、春樹の胸に顔をうずめた。  
 そんな姫香を春樹は包み込むかのように優しく抱きしめた。  
 姫香は幸せいっぱいの気分になり、温かい胸の中で心地よい眠りについた。  
 そしてちょうどその時、春樹の腹の内では姫香の性における全ての初めてを美味しく頂  
く決意が固まったところであった。  
 
(完)  
 

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