「私なんかに優しくしないでよ!!好きになっちゃうじゃない!!」
どこかで聞いた事があるようなセリフを言われた。
先程のセリフを言った女性を見てみる。
綺麗。
その一言に尽きる。
髪は濃い黒色で肩の下くらいの長さ。一本一本がピシッと気を付けしているのに、少しの風で曲線を作る。
その美しい髪に包まれている顔はパーフェクトというしか無い程整っていて、また目の下にある泣きボクロが良い味を出している。
身長は168センチと女性にしては高めであるけど、体つきはあくまで女性であって男には無い丸みがある。
けど太っている訳では無く、痩せている訳でも無い。
言うなれば着物なんかを着れば女性特有のラインが自己主張しすぎの感が有るほど女女してる訳だ。
もう一度その女性を見てみる。
綺麗だ。
その事実だけであるなら僕は迷わず
「ばーか。好きでも無い人に優しくしたりなんてしないよ。だから好きになってもらっても構わないよ。」
なんて気持ち悪い事を言うだろう。
けど、そんな事は言えない。だって、
「好きになるって、何言ってんの?ねーちゃん。」
そうなのだ、姉なのだ。
園田 朋恵24歳。
物心付いた頃からの唯一の家族。
二人きりの家族。
両親が亡くなった時、私は17歳で智基は11歳だった。
両親が亡くなった理由なんて、どうでも良い。
ただ、両親がいなくなったという結果だけが私を苦しめた。
幸い、保険と両親の残してくれたお金で何年かはやっていける位のお金は手元に残った。
親戚連中は私達を引き取らない代わりに何も持っていかなかった。
気付いた時には家とお金と弟しか残ってなかった。
先の事を考えると不安になった。
横を見ると智基が笑顔で私を見ていた。
腹がたった。
何がおもしろいのかと。
私は苦しいのに。きっとこれからお前のせいで苦労するだろう。
なのにお前は何が楽しいのかと腹がたった。
だから、攻撃してしまった。
口で攻撃した。力で攻撃した。
なのに、智基は笑顔だった。
あー、智基は壊れたんだと思った。
壊れていたのは私のほうだったのに。
両親が亡くなった日から一週間位して、高校に登校した。
この日で何回「可哀想」という言葉を聞いただろう。
腹がたった。何が可哀想だと。同情なんてされればされるほど惨めになっていく気がした。
それが耐えられなくなって早退した。
家に帰ると、智基の靴があった。
攻撃しようと思った。
今日からは学校に行こうと約束したからだ。
智基を探した。
両親の遺影の前にいた。
智基は遺影に向かって言っていた。
「お姉ちゃんは僕が守るからね。」
11歳の子供が暴力を振るう姉を守るのだと言う。
訳が分からなかった。
ただ涙が溢れてきた。声を出して、泣いた。
智基が私に気付いて振り向いた。
そして、ちょっとオドオドした様子で
「ごめんなさい。」
ごめんなさい?何が?
「学校行こうと思ったんだけど足が動かなくて。」
私が今朝攻撃した足を擦りながら言う。
やっと後悔した。
そして死にたくなった。
「ごめんね。ごめんね。ごめんね智基。ごめんね。ごめん。ごめ……。」
智基を抱きしめながら、その単語しか知らないかの様に「ごめん」と言い続けた。
すると、智基はいつも通りの笑顔で
「へへへ、いつものお姉ちゃん。」
いつもの笑顔なんだけど目からは涙が溢れている変な表情でそう言った。
そこでやっと気付いた。
壊れていたのは智基では無くて私だったんだと。
智基を背負って病院に行く途中。
後ろから笑い声が聞こえる。
「何?どうかした?」
「へへへ、お姉ちゃんの背中良い匂い。」
「何、言ってんのよ!」
と、一応怒ってみるが。
背中で頬擦りしながら甘えてくる智基の事を愛しく思えた。
気付いたら智基が後ろから私の顔を覗き込む様にして顔を近づけていた。
綺麗だと思った。
どこか中性的な美しさがある。
決して美少年という訳では無いのだけれど、それでも女好みのする顔だと思う。
ただ、その顔にあるアザが私の心をひっかいた。ごめんねと心の中で謝る。
「あー。さっきは笑顔だったのにー。」
え?笑ってた?わからなかった。
「私、笑ってた?」
「うん。」
きっと、甘えられて嬉しかったんだろうな。
「やっぱり、お姉ちゃんの笑顔は男殺しだね。」
どこで覚えたか、そんな事を言ってくる。
「智基、生意気!!」
後頭部で軽く、後ろの智基に頭突きしてやる。本当に軽く。
もう二度と綺麗な顔を傷つけないように。
「いってー。家庭内暴力だよ。お姉ちゃんー。」
両親が亡くなる前の姉弟の様な気にさせてくれた。
「あははは。」
今度はわかった。
「へへへへ。」
私は今、笑顔だ。
決意した。
この関係を守るのだと。
智基は一生、
私が守るのだと。
それが罪滅ぼしであり
私の生き甲斐なのだと。
「智基。」
「なに?お姉ちゃん。」
「愛してるよ。」
この言葉の意味が変わるのに、そう時間は掛らなかった。
「智基。なんで喧嘩なんてしたの。」
高校の帰り道で聞かれた。理由は単純だった。
僕がお姉ちゃんを愛していたから。
だから、許せなかった。
「あーSEXしてー。」
「勝手にしたら。」
くだらない会話。
「はー!?智基だってしたいだろ?」
「いや別に。」
この手の話は嫌いなので早く終わらしたかった。
「あー、智基は興味ないよね。」
三人で居た内のもう一人が言う。 「なんで?」
「だって智基ホモじゃん。」
本当くだらない。
「マジで!?」
「マジマジ。だって智基から女の話なんて聞かんし、告られても片っ端から振るもん。」
だからホモか。くだらない。
けどホモの方がまだノーマルだろうな。
姉に欲情する様など変態のイカレ野郎よりは。
死にたくなった。
「もったいねー。」
まだ続くのか。吐き気がする。
「もったいねーよ。智基の姉ちゃん綺麗なのに。」
お前ごときがお姉ちゃんを語るなよ。
「なあ、智基。お前は興味無いんだろ。じゃあ俺に犯らせろよ。」
殴ったね。
殴り合いの喧嘩はした事無かったけど
一発決まってしまえば次々に決まった。
「お前ごときが汚しちゃ駄目だよ。」
お姉ちゃんを。
お姉ちゃんが少し前を歩いている。
「お姉ちゃん、ごめんね。仕事中だったんでしょ?」
「んー?気にしんさんな。けど、何で喧嘩なんてしたの?」
それは、好きな人を汚された様な気がしたから。
「ごめん。」
そんな理由言える訳が無いけど。
「まあ、良いんだけどね。けど、フフフフフフ。」
なんか、笑ってる。
「お姉ちゃん?」
「あ、ゴメンゴメン。学校に呼び出されるなんて初めてだったからさ。」
「そうだっけ。」
「そうだよ。初めてだよ。で、なんか改めてね私と智基は家族なんだなって。
私は智基のお姉ちゃんなんだなって。へへへ。」
………。
「私、智基の保護者だってー。へへへ。」
…………。
「ずーっと保護してあげるからねー。ん?智基?どうしたの?」
お姉ちゃんが立ち止まって僕の方を振り返る。
「……お姉ちゃん。…ごめん。」
涙が止まらない。
あ、お姉ちゃんが駆け寄ってきた。
「智基、どしたん?私は、もう怒ってないよ。智基が喧嘩したのには理由があったんよね。だから謝るなら喧嘩した友達にね。謝った方勝ちだからさ。ね?」
違うんだよ。そんな事じゃないんだ。
お前ごときがお姉ちゃんを汚すな?お姉ちゃんを汚してたのは
お前ごときがお姉ちゃんを汚すな?
汚してたのは僕じゃないか。
一番汚してはいけない立場にいる僕が。
最低だ。吐き気がする。
「智基。」
お姉ちゃんが、ぎゅっと抱き締めてくれた。
駄目だよ。汚れちゃうよ。
けど暖かいな。
「泣いても良いよ。
誰にも見えない様にしてあげるからね。」
お姉ちゃんが僕の頭を両腕で包んで胸にうずめる。
暖かい。
これは、家族に与えられる下心の無い優しさ。
綺麗で美しい、一点の濁りも無い純粋な優しさ。
それなのに、おっぱい大きいななんて思った僕は死んでしまえ。
これ以上はお姉ちゃんを汚せない。
お姉ちゃんの腕を剥いで少し離れる。
「智基?」
「もう大丈夫だから。ありがとう。
ねえちゃん。」
ならないと。
「そっか。良かった。……
ん?智基今、ねえちゃんって言った?」
普通の姉弟にならないと。
「帰ろ。ねえちゃん。」
少しずつ。
呼び方からでも何でも少しずつ。
今日は智基の誕生日だった。
だから、仕事を早くあがらせてもらい、祝ってあげる事にした。
「ケーキも買ったし。智基の好きな、豚カツの材料もバッチリ。フフフ。喜ぶだろーな、智基。」
智基の喜ぶ顔を想像すると自然に笑顔になる。
「あ!」
ケーキ屋さんを出た所で先を歩く智基が目に入った。
一緒に帰ろうと思って、駆けだそうとしたのだけれど、足を止めた。
「誰、あの娘?」
智基と一緒に女が歩いていた。
たぶん、智基よりは年上。
大学の先輩か何かだろーか。
それよりも問題は
「近い。」
二人の距離が余りに近い。
その距離が嫌にも私に問いかけてくる。
彼女?
かな。やっぱり。
「アハハ。」
渇いた笑いが口から出てくる。
別におかしな事では無い。
大学生にもなれば彼女の一人や二人いても。
想像が止まらない。
「嫌。」
なのに想像してしまう。
きっと、これから二人は智基の誕生日を二人きりで祝うんだ。
「嫌。」
なのに、想像。
祝った後二人はきっと。
私が何年も望んだ行為を……。
ふと、両手のケーキと買い物袋を見る。
「バカみたい。」
わかってた事なのに。
私は智基の姉としてしか智基の傍にいられないと。
いつか、智基は私の傍からいなくなるって。
なのに、なのに、
「嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌。」
呟きながら駆けていた。
智基と、汚れた女が一緒にいるのを見たくなかった。
気付いたら私は家のソファーに突っ伏していた。
「智基。智基。どこ?」
二人で誕生日を祝うはずだったのに、私は一人。
智基は今、あの女と。
「嫌だよ。そんなの嫌だよー。智基ー。」
いなくならないでよ。
ずっと一緒にいてよ。
「智基智基智基智基智基智基。」
ただ、ただ泣いていた。
帰る方向が一緒だからと無理矢理ついてきた先輩と別れて家に帰った。
「あれ?鍵が開いてる。」
閉め忘れなんてしないし、
もしかしてお姉ちゃんが帰ってきてるのかな?
「ただいまー。」
…………。
けど、靴があるし。
リビングの扉を開ける。
……泣いてる。
だから返事できなかったのか。
「ただいま、ねえちゃん。」
なんで泣いてるの?
なんて、理由もわからない奴に聞かれてもうっとうしいだけだからね。
いつも通りが、優しささ。
「……智基。」
「ん?なに?ねえちゃん。」
「帰って来るの早いね。」
「いや、いつも通りだけど。それよりねえちゃんの方が早いよ。」
わかってたらサボったのに。
「一人で帰ってきたの?」
なんで、そんな事聞くんだろーな?
「いや、先輩が方向が一緒だからって無理矢理付いて来てさ。」
「……そっか。」
お?若干、元気になったかな。
「智基、今日、誕生日でしょう。」
あ、だから早く帰ってきてくれたのか。
「憶えててくれたんだ。ありがと。」
「当たり前でしょ。智基の事は私が一番知ってるんだから。」
確かにそうだと思うけど。
何でそんな事言うんだろ?
「でね。ケーキ買って来たんだけどね。」
ソファーの前にあるテーブルを指差す。
「あ、僕の好きな駅前のケーキ屋さんの。ありがと、ねえちゃん。」
「なんだけどね。ごめんね。多分ボロボロ。」
箱を開けて中身を出してみる。
「本当だ。ボロボロだ。」
「ごめんね。食べられないよね。」
なぜ!?
確かに洋菓子は見た目も大事だけど、やっぱり一番は味でしょ。
「そんな事ないよ。確かにボロボロだけど、味は変わんないし。」
「本当?食べれる?」
うーん、弱ってるな。
何があったのか気になるけど、
僕に出来るのは詮索じゃなくて、一緒にいてあげることかな。
「あ!そうだ、ねえちゃん、ケーキ今食べちゃおっか。」
「………。」
何も言わない。
まあ、良いか。とりあえず、ケーキを二人分に分けてと。
「はい。ねえちゃんの分。」
テーブルの上にケーキを置く。
「ありがと。」
僕は……。
やっぱり一人にしといた方が良いのかな?
うーん、こういう場合、僕なら一人はきっと、嫌だな。
よし!傍にいよう。
自分の分のケーキをテーブルに置いて、自分はねえちゃんが突っ伏しているソファーの端に腰掛ける。
「………。」
「………。」
二人で黙々とケーキを食べる。
「ねえちゃん、コーヒーか何か入れようか?」
「………。」
すんげえ、弱ってるよ。
仕方無い。とっておきのを出そう。
………
「ねえちゃん。はい、ココア。」
デパートで買った、輸入品。高かった。確かベルギー産?
試飲したら美味しかったから奮発して買った。
ゴク。
お姉ちゃんがカップを口に運んで喉に流す。
「おいし。」
当たり前さ!!
なんてったって、
デパートで買った輸入………危ない、また説明しそうになった。
「………。」
「………。」
黙々とケーキとココアを交互に口に運ぶ。
「………!!」
しまった。食べ終わってしまった。
僕がここにいる理由が無くなる。
けど、今はお姉ちゃんを一人に出来ない。
……。
「ねえちゃん、テレビつけていい?」
「………。」
うーん、空気が痛いな。
今までで、こんなの初めてだ。
「つけるね。」
………。
カチャ…。
お姉ちゃんがケーキを食べ終わってフォークを置いた。
「フエッ。エッ、エン、ウエン。」
そして、今まで以上に泣き出した。
落ち着いたのかな。
「ねえちゃん。」
以前に僕がしてもらった様に、お姉ちゃんを抱き締める。
「ねえちゃん。泣いても良いよ。誰にも見えない様にしててあげるから。」
誰もいないけど。
「………ね。智基。」
「え?なに?ねえちゃん。」
「優しいね、智基。」
僕にはお姉ちゃん以外の人間に優しくする必要が無いからね。
「けどね、駄目だよ智基。」
ダメ?何が?
「智基。」
「なに?」
「私なんかに優しくさないでよ。好きになっちゃうじゃない。」
そう言って、
お姉ちゃんが覆い被さってきた。
何だ?この状態は。
近い!!お姉ちゃんの顔が近い。
「好きになるって何言ってんの、ねえちゃん。」
好きになるって、どういう意味だよ。
「私ね、ずっと前から智基の事好きだった。」
「………。」
何だよそれ。
「けど、ずっと抑えてた。私達、姉弟だもんね。」
何だよそれ。
「けどね、智基が女の子と歩いている所を見て、智基がその娘の所に行っちゃう様な気がして。私の前から居なくなっちゃう様な気がして。凄く怖くなったんだよ。」
だから、泣いてたのか。
「ねえちゃん。僕はどこにも行かないよ。」
「嘘!!信じられない!!」
そう言って、お姉ちゃんが唇を僕の唇につけた。
「ちょっ、ねえちゃん。」
僕が下にいるので、逃げられない。
「ともきー」
お姉ちゃんの舌が閉じた僕の歯をなぞる。
開けてとノックする様に軽く舌で叩く。
「智基、開けて。」
「ねえちゃん。」
理性の部分では駄目だと分かっているのに。僕の心底がお姉ちゃんを受け入れてしまう。
だから、開いてしまった。
お姉ちゃんの舌が僕の口の中の形状を把握したいかの様に動く。
全てを舐め尽される。
歯も歯茎も舌も何もかも。
ズズズズズ
舌を吸われた。
そして離れて、熱くほてった目で僕を見つめて。
「へへへへ、智基の味。」
みとれてしまう。
「智基は、してくれないの?」
そりゃ、したいけど。
「智基は、やっぱり私の事嫌い?他の女の所に行っちゃうの?」
僕もお姉ちゃんの事は好きだ。けど、こんな事したらさ。
「姉弟としての関係が壊れるよ。」
そんなの嫌だ。
「壊れないよ。もし、智基が私を拒否しても私が智基の姉だと言う事には変わりない。
死ぬまで世話焼いちゃうんだから。」
なんだよ。なんで。
「なんで、そんな事言えるの?ねえちゃん。」
「だって、私は智基を愛してるんだよ。弟として愛して愛して愛してるの。私には智基しか居ないんだよ。変態だよね私。弟を愛して弟と結ばれたいなんて。」
変態って…。
バカみたいじゃん僕。
「僕なんて、一番古い記憶の時点でお姉ちゃんの事愛してるんだけど。」
「ほんと?」
「うん。」
「へへへ、私達、変態姉弟だね。」
「お姉ちゃん。」
「へへへ、いつの間にかお姉ちゃんに戻ってるし。」
「好き。」
「おいで、智基。」
今度は僕からキスをした。
「お姉ちゃん。」
お姉ちゃんの唇に唇をつける。
「んっ……」
呟くというか、音が漏れた様な声を発して、僕の頭を抱えこむ。
ほぼゼロ距離で、見つめ合う。
先程の涙が残ってるのか、それともただ唇を重ねるだけのキスに熱を上げたのか瞳がうるんでいた。
理由はわからないけど、ただただ美しい。
そのまま時間が少し経って、鼻だけで息をする事が苦しくなったのでお姉ちゃんに抱えこまれている頭を振る。
「ん?智基?」
唇が離れたのが酷く名残惜しいのか今にも泣きそうだった。
「ちょっと、苦しくなっちゃって。」
ちょっと休憩しないと死んでしまう。
「智基、ごめんね。」
ごめん?何に謝ってるのだろう?
「これ……。」
そう言って、右目の上にあるキズを優しく触る。
「ああ、これ。」
両親が死んで間もない頃にお姉ちゃんにつけられた傷だ。
「綺麗な顔なのに、キズ残っちゃったね。」
僕の顔は綺麗なのだろうか?
なんて考えていると
レローン。
「うわっ!!」
キズのある部分をお姉ちゃんに舐められた。
そして、その部分を撫でながら
「痛いの痛いの飛んでいけー。」
胸キュン。
「今更なんだけどね。何か痛々しくて。」
そう言って、もう一度舐めた。
レローン。
気持ち良い。頭が働かなくなっていく。
「あ、うわ。」
恥ずかしい声が漏れてしまう。
「へへへへ、智基、声が出ちゃってる。」
嬉しそうに言う。
「うっ、だって気持ち良いから。」
気持ち良すぎ。
「そっか。じゃあ、もっと舐めたげるね。」
レローン。
そう言って、舐めてくる。
凄い。洗っても無い顔を何にも躊躇なく舐めてくれる。
「お姉ちゃん。」
すごく愛しい。
「智基。」
両手で僕の頬を触りながら、顔全体を舐めていく。
「あ、」
何かに気付いてお姉ちゃんが声をあげた。
「ん?なに?」
「鼻の頭が乾燥しちゃってるよ。」
肌弱いからな。
「ほんと?」
「うん。ちゃんと、お手入れしないとね。カプッ。」
カプッ?
「うわっ!ちょ、お姉ちゃん。」
鼻がお姉ちゃんの口の中に!!
「フフッ、ちょっと、しょっぱい。」
う、それはきっと鼻水。
「汚いよ。お姉ちゃん。」
「だいひょうぶ。」
大丈夫と言って、鼻全体を舐めあげていく。
少しして、鼻から口が離れた。
すー。鼻で酸素を吸う。
ムワッ。
お姉ちゃんの唾液の匂いがダイレクトにする。
「あ、……もしかして嫌な匂い?」
心配そうに聞く。
決してブランド物の香水の様な素敵な香りでは無い。
けど、嫌な匂いでは無い。それに、何か体が熱くなる様な。
「ううん。なんていうか、いやらしい匂い?」
「アハハ何それ。」
「お姉ちゃん。」
「ん?なに?」
「お姉ちゃんの唾液飲みたい。」
「うん、智基。」
そう言って、お姉ちゃんが唇を僕の唇につけてきた。
「うわっ。」
自分から言った事なんだけど、余りに早くて驚いてしまう。
「んっ。」
お姉ちゃんの舌が僕の口内を自由に動く。ファンタジスタだ。
負けてられない。お姉ちゃんがファンタジスタなら、僕の舌はストライカーさ。
舌をねじ込む!!
「ん、うわっ、チャパチュレロ、んっともひー。」
お互いの舌が絡まる。
気持ち良い。
「ん、レロ。おねえひゃん。」
お姉ちゃんの舌が、僕の歯を一本一本確かめる様に舐める。
「ん…ともひー。」
「ん、うわ、おねえひゃん。」
熱っぽい声でお互いの名前を呼ぶ。
お姉ちゃんの舌が散々僕の口内を犯した後、自分の住処に戻っていく。唇はつけたままで。
「ん?おねえひゃん?」
口内が寂しい。なんて思ってると、僕の口内が自分の唾液以外の水分で満たされていく。
お姉ちゃんの唾液が流し込まれてきた。
「んっ……チュパ。」
流し終ると、唇を離して
「飲んで、智基。」
僕の頬を擦りながら、優しく言う。
「うん。」
ゴクッ。一気に飲み込む。
「お姉ちゃんの、おいしい?」
「うん。おいしい。」
正直、おいしいとは思わないけど、お姉ちゃんのだと思うと嬉しくてそう答える。
気付いたら、頭の後ろにお姉ちゃんの腕が回されていた。
「智基。」
「ん?」
「智基のも欲しいな。」
「うん。」
と答えるのよりも速く腕に力を込めて、唇をつけてきた。
「ん…チュパ、レロレん、ともひ。」
「ん、…んわ、おねえひゃん。」
お姉ちゃんは、仰向けの僕に覆い被さる様にいる為、唾液を送り込むのも一苦労だ。
「ん…。」
重力に逆らいながら、少しずつ流し込む。
「ともひ…。」
お姉ちゃんが、おでこをつけてくる。
「お姉ちゃん。」
もう、唾液が生産できない位に流し込んで言う。
「お姉ちゃん、僕のも飲んで。」
「うん。」
ゴクッ。
お姉ちゃんの喉がなる。
「おいしい?」
「うーん、おいしくは無いかな。」
確かに、そうだとは思うけどさ。
「けど、うれしい。」
そう言って、腕を回して唇をつけてくる。
「ん、おねえひゃん。」
「ともひー。」
そうして、しばらくキスし続けた。
しばらくして、お姉ちゃんの唇が離れる。
「……智基。」
「……お姉ちゃん。」
見つめ合いながらお互いを呼ぶ。
「…智基。」
「…お姉ちゃん。」
だんだんと、お姉ちゃんの目が熱をおびてくる。
「智基、しよ。」
「…お姉ちゃん。」
……しよ。
きっと、というか絶対にSEXの事だ。
「私、智基を離したくない。だから…。」
もう体は、お姉ちゃんを求めてる。
僕の性器は完全に勃起してるし。けど
「僕、お姉ちゃんの事、愛してるよ。」
「私も、愛してる。智基の事。ずっと一緒にいたい。だから…。」
「駄目だよ。僕、お姉ちゃんの事、愛してるから、お姉ちゃんには幸せになって欲しいんだ。」
「私の幸せは智基と一緒に暮らして、ずっとずっと智基と姉弟でいる事。そして、愛しあっているなら抱かれたい。たとえ姉弟でも。」
「これ以上したら、戻れなくなるよ。姉弟で入れなくなる。」
キスしといて何だけど。
「変わらないよ。今までの姉弟の関係に、時々キスしたり時々一つになったりってのが上乗せされりだけ。
今まで以上に智基を愛するだけ。」
そう言って、キスをしてくる。
「ん…んわ。おねえひゃん。ん、チュパ。」
「ともひ、ともひ、ともひ、すき、すきなの、ともひー。」
ヤバイ、溶かされる。お姉ちゃんの顔を両手で持って、離す。
「智基?」
ごめんね。
「お姉ちゃん、やめよ。」
「………智基、私達本当の姉弟じゃ無いんだよ。」
「……智基。私達、本当の姉弟じゃないんだよ。」
嘘。
「………どういう事?お姉ちゃん。」
悲しい顔しないで、智基。
大丈夫。私達は実の姉弟だよ。
けど、ごめんね智基。
「私と智基は血が繋がってないんだよ。」
嘘つかないと、智基が抱いてくれないから。
「嘘。嘘でしょ。お姉ちゃん。」
肩を揺らされる。
泣いてる……。
そんなに、私と姉弟でいたいの?
ごめんね。ごめんね。すぐに悪夢から覚ましてあげるからね。
「ごめんね、智基。本当なんだ。智基の本当のお父さんは、亡くなったお父さんの友達なの。」
だから、抱いて智基。
「……なんだよ、それ。なんなんだよ!!それって!!」
「智基。」
優しく抱き締める。
「お姉ちゃん。」
「智基。抱いて。」
「…お姉ちゃん。」
「一つになっても良いんだよ。私達。」
「お姉ちゃん、良いの?」
勿論だよ。早く、早く智基、智基智基智基。
「うん。」
目を見つめて優しく言う。
「抱いても変わらない?血が繋がってなくても変わらない?
僕達、ずっと姉弟でいれる?」
やっと、一つになれる。嬉しい!!
やっと、智基と。
智基と一つに。
智基と智基と智基
「当たり前じゃない。私達は死ぬまで一緒で、死ぬまで姉弟だよ。」
だって、血の繋がった姉弟だもん。
血が繋がって無いと知った所で、
よし、お姉ちゃん。
さっそくSEXしよう!!
……………………………………なんて
思える訳も無く。
僕の頭は混乱していた。
それなのに、僕の太ももの上に馬乗りになっているお姉ちゃんは
「んしょと。」
服を脱いでいた。
「お姉ちゃん?」
僕はお姉ちゃんを抱くの?
そりゃ、抱いても問題無い間柄だとしても、
そんな急展開に付いていけてなくて、
だから
「もうちょっと、待ってよ。」
「ん?ああ、違うよ。」
ブラジャーのホックをはずしながら言っても全然、信用出来ないよ。
「ん…よしっと。」
お姉ちゃんの乳房が、ブラジャーの締め付けから放たれて、
プルンと揺れる。
「智基……見て。」
「……うん。」
言われなくても見てる。
「どう?綺麗かな?」
「すごく」
大きいのに、垂れていなくて、すごく柔らかそうで。 「綺麗だと思う。」
「ありがと。」
僕の目を見ながら。
僕の頭を撫でながら言う。
「びっくりさせちゃったね。」
お姉ちゃんが僕の涙を指で拭う。
優しい指の動きが、僕を落ち着かせてくれる。
「そりゃあね。」
何の脈略も無く、急に実の姉弟じゃないなんて衝撃の告白をされれば誰だって。
「智基。」
「ん?」
「おいで。」
「…うん。」
何をされるのか疑問に思ったんだけど、
お姉ちゃんの目があまりに綺麗だったから、
吸い込まれる様に自由な上半身だけを起こして、お姉ちゃんと向き合う形になる。
「智基、ごめんね。ごめんね。」
お姉ちゃんが今まで隠してきた事に対して謝る。
「ううん。ちゃんと話してくれてうれしいかったよ。」 何故、このタイミングで暴露を!?
と、思わないでも無かったけど。
「……智基、大丈夫?」
「うーん。ちょっと、いや、かなり混乱してるかも。」
正直に答える。
「智基。」
お姉ちゃんが両腕を前に伸ばす。
「なに?」
意図がわからない。
「おいで。」
「え?」
おいで?どこに?
「ここ。」
お姉ちゃんが、二つの乳房の間をペシペシ叩く。
「そこに?でも。」
エッチな事に突入するの?
でも、今はそんな気分じゃないんだよ。
……息子はギンギンだけど。
「もう!!」
迷っていると、お姉ちゃんが無理矢理、僕の頭を抱えて胸の間に埋める。
「んあっ、…ちょっと、お姉ちゃん。」
「じっとする!!」
「……うん。」
基本的に、お姉ちゃんには逆らえないので素直に従う。
「どう?」
お姉ちゃんが、片方の手で僕の頭を撫でながら言う。
「気持ち良い。」
率直な感想。
「智基が落ち着く迄、こうしててあげるからねー。」
「……ありがと。」
女の象徴であるはずのおっぱいに、
おっぱい聖人であるはずの僕が、
大抵のおっぱい聖人も唸るであろう
巨乳な美乳の二つの乳房に顔を挟まれいるというのに、
…………落ち着いていく。
なんというか、帰るべき場所に帰ってきたという様な感じ。
………………。
お姉ちゃんが、ずっと頭を撫でてくれている。
………………。
「智基。私達は、ずーっと死ぬまで一緒だよ。なんてったって姉弟だからねー。」
お姉ちゃんが呟く。
「……うん。」
疑う余地はない。
だって、僕は今こんなに落ち着いている。
お姉ちゃんだけが、僕をこんな気持ちにさせてくれる。
例え、血が繋がってなくたって変わらない。
「お姉ちゃん。」
「んー?」
「大好き。」
「へへへへ、私も智基の事大好きだよ。」
「うん。」
今、お姉ちゃんの顔は見えないけど、
お姉ちゃんの笑顔を想像するだけで満たされる。
「智基の髪は綺麗だね。」
お姉ちゃんは、ずっと頭を撫でてくれている。
落ち着く。
「…………。」
「智基、寝ちゃった?」
「……ううん、起きてるよ。」
「良かった。もう、落ち着いた?」
まだ、ここに居たいな。
「うーん、まだ。」
「んー?ほんと?」
お姉ちゃんが僕の顔を胸の間から剥がす。
「泣き止んでるね。」
お姉ちゃんの笑顔が目の前にある。
それだけで、
「うん、もう大丈夫。」
「そっか。」
お姉ちゃんが僕の顔に手を伸ばして、
目の下に残った涙を拭って、
その指を自分の口内に運ぶ。
「お姉ちゃん?」
チュパチュパ。
お姉ちゃんが指をしゃぶる。
その光景を凄くいやらしく感じる。
チュポンッ。
指を口内から出す。
その指が、お姉ちゃんの唾液でテカテカしていた。
「へへへ、しょっぱいね。」
「そりゃ、涙だから。」
当たり前だ。
お姉ちゃんがさっきまでしゃぶっていた指を、僕の口の前まで持ってくる。
「舐めて、智基。」
「……うん。」
舐めたいから舐めた。ただ、それだけ。
味がした。
お姉ちゃんの味だ。
そう思うと、
体が熱くなっていくのを感じた。
チュパチュパ。
リビングに、水気を帯びた音だけが響く。
「ん……。」
ただ、指を舐められているだけなのに声が漏れてしまう。
「……ん、チュパおねえひゃん……。」
「ん、んふ……あ、智基…。」
弟が、血の繋がった弟が二人で一つになる行為をする為に、
私の指を舐めながら気持ちを高ぶらせていっている。
「おねえひゃん、おねえひゃんおねえひゃん……。」
そう思うだけで下着が汚れていく。
「智基!!」
指を抜いて、智基を抱き締める。
強く抱き締める。
「お姉ちゃん?」
胸の間から、智基が私を見上げる。
「ずっと、一緒にいてくれる?」
抱き締める力を強める。
離したくないから。
「うん。」
笑顔で答えてくれる。
「私、弟と一つになりたいなんて思っちゃう様な壊れた女だけど嫌いにならない?」
智基に嫌われたら、生きていけない。
「お姉ちゃんが壊れているというなら、僕は小学生の頃から壊れてるかも。」
苦笑しながら答える。
「そっか……。」
嬉しい。すごく嬉しい。
私達、両想いだったんだ。
「……お姉ちゃん?」
「んー?」
「おっぱい、触っても良い?」
私の目を見て場違いな程、真剣に聞いてくる。
「へへへへ、良いよ。」
智基はいつだって、私を笑顔にさせてくれる。
愛しい。愛しい。愛しい。愛しい。
智基が血の繋がった弟が。
「……やらかいね。」
智基が、乳房に恐る恐るという様な感じで二つの乳房に手を添える。
「んっ……、もうちょっと強くても平気…。」
私の体はこんなにも敏感だったのだろうか?
ただ、胸を触られただけなのに熱っぽい声が漏れてしまう。
「じゃあ、もうちょっと強く。」
さっきより強い力で触るというか、揉まれる。
「うんっ、そ、それ位の…ち、力で…。」
もう止まらない。すごく、感じる。
「ここも、触るね。」
乳首を触ってきた。
「ひゃっ!!」
いきなりだったので、大袈裟な程感じてしまう。
「お姉ちゃん?」
心配そうな顔で私を見上げる。
「ううん、大丈夫だから好きなだけ触って。」
智基の頭を撫でながら言う。
「うん。じゃあ…。」
智基が乳首を指で摘んだりして触る。
「ひゃん。…あ…んっ、んふー。」
息が荒くなっていく。
「固くなってきた。」
「んっ、だ、だって、智基っ、に触られて、気持ち良いから。ひゃう、…嬉しいからー!……。」
もう止まらない。
止められない。
「お姉ちゃん?」
私の乳首を触りながら、さっきと同じ様な目線を送ってくる。
「んっ、な、なに?」
今度は、どんな注文だろう?
「舐めても良い?」
やはり、真剣に聞いてくる。
「良いけど、智基。」
「なに?」
「いちいち律義に聞かなくても良いの。」
何も知らない智基を愛しく思う。
「そういうもん?」
「そう。それに、これは今日から智基の物なの。」
胸をぺしぺし叩く。
「誕生日プレゼント?」
智基はいちいち私を癒してくれる。
「あはは、そう、誕生日プレゼント。だから、さあ!!好きにして頂戴!!」
両手を広げ、
来い!!の合図を送る。
「お姉ちゃん!!」
智基が私の胸に飛び込んでくる。
「智基!!」
ガシっと智基の頭を抱え込む。
「右かな、左かな…。」
智基が右の乳房か左の乳房か迷っている。
その眼差しが意外に真剣で笑けてしまう。
「智基、こうしたら?」
提案する。
「今日は右の乳房で、次は左のにするってのは、どう?」
暗に、次もしてね。という意味も含んでいる。
「それ、良い。」
そう言って、右の乳房の乳首を口に含んだ。
「ひゃうっ…、ん、あっ。」
チュパチュパ。
乳首を舐める。
「んっ、ともきー、おいしい?」
「………うん。」
それは、嘘だろうな。
だって、何も出ないもの。
チュパチュパ。
けど、私の乳首を嬉しそうに舐めている智基を見ていると
今度は生クリームでも塗ってみようかな、なんて考えて楽しくなってくる。
「んっ、…ふっ…ふ、ふふ、ともきー、おっぱい、すきー?」
余りに嬉しそうなので聞いてみる。
「僕、おっぱい聖人だから。」
「そっかー、けど他の女にしたらダメだよ。したくなったら私にね。」
智基は、私の弟だから。
私じゃないとダメだよね?
「んー、他の女どころか僕にとっての人間はお姉ちゃんだけだから。」
ようするに、私だけという事だよね。
それを、率直に嬉しく思う。
チュパチュパ。
「ひゃっ、お、おっぱいをね。ん…好きになってくれたのは、あっ、ん…
嬉しいんだけど…んっ…ひゃっ
私の一番恥ずかしい所見たくない?」
私の性器。
智基の性器が入る所。
チュパッ!!
乳首を口から放す。
「……見たい。」
へへへへ、
嬉しいな。
智基の頭を撫でながら智基の目を見て。
「見せたげる。」
智基。
もう、戻れないよ。