「今日、射手座は1位のはずだよね。」  
ボソリと、独り言を呟く。  
『ラッキーカラーは赤色!!赤いモノを持ってれば今日はハッピーデイ!!』  
星占いの画面に合わせて、女子アナがナレーションをしてた。  
姉ちゃんに  
『あんたも射手座でしょ。ホラッ!!』  
と、真っ赤なハンカチを制服のポケットに突っ込まれた。  
余りに、趣味の悪いハンカチで汗を拭きながら登校して  
友人の少ない僕は、自分のクラスの余りにはっきりしてるグループ分けに息苦しさを覚え  
一人になりたくて、屋上にきてみた。  
「占いの通りにしたはずなのにな………。」  
やっぱり、あんな適当くさい星占いなんて信用してはいけない。  
だって、僕の目の前には絶対に幸福には結びつかない異常な光景があった。  
「沢田?」  
屋上には二人の先客がいて、その内の男の方が僕に気付いて後ろを振り向く。  
「おはよう、前田。」  
出来るだけ、目の前の異常を日常に近付けたくて僕は日常的な挨拶をした。  
「あ、……ああ、おはよう。」  
僕の、唯一と言って良い友人は戸惑いながらも日常を演じてくれる。  
「純子先輩も、おはようございます。」  
二人の内の、女の方ににも挨拶をする。  
 
「おはよ。沢田君。」  
それだけで惚れてしまうような、綺麗な笑顔で挨拶を返してくれる。  
よし、今日もいつも通り綺麗だ。  
「純子先輩、好きです。僕と付き合って下さい。」  
もう何回、同じ事を言ったか覚えて無いが、  
前田にこの人を紹介された当日に告白してから、会うたびに同じ事を言った。  
いわば、日常の挨拶の様なものだ。  
「ごめんね。沢田君。」  
これも、いつもと同じ。  
「100回目だな。」  
前田が苦笑しながら、僕に玉砕数を告げる。  
「前田、知ってる?  
101回目のプロポーズって言葉?」  
「言葉というかドラマね。」  
「何にしよ次だよ次。」  
「次か………。」  
前田の顔が、曇る。  
「次は無いの。」  
そう言って、純子先輩は前田の頬を両手で包み、自分の唇を前田の唇に寄せていく。  
目の前で、二人のキスが繰り広げられる。  
唇をつけるだけで無く、舌がお互いの口内を行き交う濃厚なキスが。  
「な!!!!!」  
もし僕が、この二人を知らない赤の他人ならば驚かないだろう。  
けど、僕は知ってる  
「んっ……姉ちゃん………。」  
「琢磨……んっんふ……。」  
二人が姉弟だという事を。  
 
「……………。」  
言葉を失う。  
姉弟でこんなキスをするなんて異常だ。  
二人の関係も  
二人がいる場所も  
全てが異常だ。  
「ごめんな、沢田。俺達、できちゃってるんだ。」  
「ふふふ、ごめんね、沢田君。だから、私の事は諦めてね。」  
二人は僕を通して世間に禁断の愛を見せつけ、手を強く握りあった。  
「ちょっ!!」  
僕はフェンスまで猛ダッシュする。  
「僕達は許されないんだ……。」  
フェンスの向こう側に立っていた二人は、一瞬だけ僕を振り返り言った。  
「沢田といると楽しかったよ。」  
「ありがと……。」  
タンッ………  
手を握りあった二人は  
二人の関係が許される  
世界に飛びたった。  
「ほら…………。」  
下を見れば  
唯一の友人と  
その姉が  
潰れていた。  
「これの、どこがハッピーデイだよ。」  
二人の周りは真っ赤で  
「何が、ラッキーカラーだよ。」  
真っ赤なハンカチをぶん投げた。  
 

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