友人が一人死んだだけで、独りになった。  
別に、独りは苦手では無い。  
ただ、独りでは無い人間ばかりが居る空間に独りで居て、疎外感を感じるのは苦手だった。  
だから、必然的に僕はここに来た。  
屋上に出ると、あの時と同じ様に先客がいた。  
「姉ちゃん、まさか…………。」  
「飛び降り無いよ。」  
姉ちゃんは苦笑しながら言う。  
「准は?」  
「たぶん、姉ちゃんと同じ理由。」  
「そっか………。横、おいで。」  
姉ちゃんが、座っているベンチの横をぺしぺしと叩く。  
「ん、じゃあ失礼します。」  
僕は、姉ちゃんの横に腰掛ける。  
「ここも、元通りだね。」  
昨日までは、テープやらが色々貼り巡らされていた。  
まあ、自殺以外に考えられないんだから、捜査もへったくれも無い。  
だから、それはすぐに無くなった。  
「姉ちゃんは、どうやって入ったん?」  
ただ、あの日から、屋上に出る扉の鍵はしめられた。  
「小窓から。」  
「そっか。」  
「准もでしょ?汚れてる。」  
小窓は低い位置にある為、歩腹前進で窓をくぐった時に汚れた袖をパシパシと姉ちゃんがはたいてくれる。  
「ありがと。」  
「どういたしまして。って……准?」  
姉ちゃんが僕の顔を覗き込む。  
 
「目の下も、真っ黒。」  
「ん?ああ、なんかさ、眠れないんだよね。」  
寝ようとしても、頭の中で色々考えてしまう。  
あの時に受け入れてあげれば、もしかしたらって。  
けど、通夜でおばさんに会った時にわかった。  
『最期の二人は笑顔で手を繋いでました。』  
キスをした。って事実は伏せて伝えた。  
『そう………。最期まで、笑顔だったの………。』  
伏せても、わかったんだと思う。  
というか、二人が愛してた事も知ってたんだと思う。  
『うっうぅぅぅ…………。』  
一度、前田の家に行った事がある。  
入る時に軽く挨拶して、  
帰る時には  
『また来てね、沢田くん。』  
名前を覚えてくれていた。  
柔らかな笑顔で、挨拶してくれた。  
けど、そんなおばさんの笑顔は見る影も無かった。  
きっと、二人の関係を知った時もこんな風に泣いたんだと思う。  
だから、二人は自殺したんだと思う。  
おばさんを悲しませた事を死ぬほど後悔するなら、何で姉弟なんかで愛し合うんだよ!!  
って思う。  
けど、愛してしまったのなら仕方ない。  
だから、僕が二人の関係を認められれば…………。  
わかんない。思考がループする。  
そんな事ばかり考えて眠れない。  
 
「准!!!」  
「うわっ!!」  
耳元で大声を出される。  
「なに!?大声出して。」  
「さっきから何回も呼んでんだけど。」  
「え?」  
気付かなかった。  
また、夜みたいに考えてしまってた。  
「何か、考え込んでたんでしょ。」  
「ごめん。」  
「ばーか。」  
姉ちゃんが、僕の頭を掴む。  
「ちょっ、姉ちゃん!?」  
「そんなんだから、眠れないの!!」  
そして、自分の膝の上に僕の頭を乗せた。  
「………姉ちゃん、恥ずかしいんだけど。」  
周りには誰もいないが、そういう問題では無い。  
高校生にもなって、姉に膝枕をされているという事実が恥ずかしいのだ。  
「風が気持ち良いでしょ?」  
けど、姉ちゃんは僕の羞恥心を無視して続ける。  
「だから、きっと眠れるよ。」  
「………………。」  
寝る?ここで?  
姉ちゃんは凄い事を言う。  
「やっぱりここは、まずいか……。」  
僕の顔を見て、姉ちゃんは苦笑しながら言う。  
「んー、まあ前田の幽霊なら大歓迎だけど。」  
「ははは、そっか。なら、寝てしまえ。」  
「けど、授業は?」  
「サボってしまえ。」  
僕は、目を閉じる。  
確かに、風が気持ち良い。  
姉ちゃんの、ほどよい柔かさの太ももも気持ち良い。  
けど、それより。  
「准には、姉ちゃんがいるし母さんもいるからね。」  
髪を撫でる姉ちゃんの手の優しさに安心して、  
僕は久し振りの眠りにつけた。  
 

Gポイントポイ活 Amazon Yahoo 楽天

無料ホームページ 楽天モバイル[UNLIMITが今なら1円] 海外格安航空券 海外旅行保険が無料!