「でっさー、その硝子って子がさー、何時までもウジウジウジウジ幼馴染みのこと引きずってるの」  
 まずいなあ、一人で一瓶開けちゃったよ。  
「そりゃああんな最期じゃあ引きずるのも分かるけどさぁ、  
 頑張って振り向かせようとしてるこっちとしては、ねえ?  
 なんか対象外にすらされてない、そんな感じすらするんだよねぇ」  
 その幼馴染みもすっごい良い奴だったから、わからんでもないんだけどね。  
「あー、ショウはさ。なんつうか完璧だったんだよなぁ。  
 喋り方とか微妙に幼くて、どこか抜けてるとこが在るっていう欠点も含めて、完璧だったんだよね。  
 人としてっていうより、憧れの対象として」  
 もし女だったら俺が惚れる側だったかもしんねーしなぁ。  
「俺がこっち越してきた時にはもう硝子とショウは知り合っててさ、  
 子供心に俺は硝子に一目惚れみたいな感じだったんだろーけどさ、勝ち目ない感じだったんだよね」  
 思えば奴には生前にも勝った記憶がないなぁ、どうりで俺の性格も直立にひん曲がるわけだ。  
「でも一緒にいれて楽しかったんだよね、悔しいことに。  
 すげー楽しかった。だから妥協してあのままで良かったんだよね、十分だったの」  
 なんだけど。  
「ところがね、硝子はイイとこの娘だったからさあ、  
 冗談みたいだけど、一回誘拐されちゃったことがあんだよね」  
 結果的に、硝子は無傷で助かった。少なくとも、肉体的には。  
「ショウもバカだからさあ、俺みたいにスミに隠れてブルブル震えてれば良かったものをさあ。  
 呆気無かったよー、あんな完璧な奴も文明の力の前では何の意味も無かったね」  
 一緒に公園で遊んでいた所を俺等3人は拉致られた。  
  で、四時間以上も薄ぐらい倉庫に放り込まれて。  
  駆け付けた警察だかSPだかわからない奴等に対し人質を縦にする犯人。  
  硝子を助けようとするショウ。銃声。悲鳴。暗転。  
「で、残ったのは幼馴染みの事が忘れられないヒッキーと臆病な馬鹿」  
 もう一度酒を煽る、あ、やべっ。  
 ……意識が一瞬飛んだ、やべーやべー。  
「硝子、ねた?」  
 めちゃくちゃ自分だけ喋っていたので硝子に視線を向けてみる。  
 みると頬を机に載せてこっちをほんのり赤くなった顔で見返していた。  
「その物語の主人公はホント馬鹿だよね、もう何年たったと思ってんの?  
 それなのに、週四日もウチのSPに護身術みたいの習ってンだよ?」  
  俺に、硝子を守る力があれば、みたいなつもりだった、始めたきっかけ。  
「あー、そりゃ激馬鹿だ。でも諦めねーよ」  
「バーカ」  
 と、赤い顔を笑みの形に歪ませる。  
 何かそれが、すげーエロい感じだった。  
 ドサっ。  
「……?」  
 気がついたら、押し倒してた。  
「……犯っちゃうの?」  
 本当にただ、先生に因数分解のやり方が分からないんです、どうすればいいですか?  
 みたいな感じで見返された。  
「どうしよっかな」  
 なんて間抜けに返した俺に。  
「意気地なし」  
 なんと自分から唇をぶつけてきた。  
「!?」  
 
 
 
 翌日はまだ日が登りきっていない時間からデート。  
 まあ彼女にとっては昨晩消費しきってしまった物を買いにいくついで、みたいな感じなんでしょうか。  
 約束どおりお父さんは何も言わずに了承してくれた。  
 さて、最初で最大の問題は何処で何をしようということで。  
 日夜バーチャルの美しい世界を東奔西走している彼女を、如何にリアルで楽しませようか。  
 ここでゲームセンターとかに連れて行ったら本末転倒な気がするし、  
 かといってファンシーショップに連れてっても……似合わねー、気がする。  
 つうか、素でファンシーショップに連れて行くオトコってのも苦しいな。  
 映画、興味ねー、俺が。  
 遊園地、趣味じゃねー、硝子も。  
 と、袖をひっぱられる。  
「どうした?」  
 振り返ると全身黒いのが睨んできた。  
 ワンピースなんて可愛らしいもん持ってんのか?  
 うん、というか、それ以外にそれらしいもの持ってない。  
 ……寒いぞ?――とは朝の会話。  
「歩くの速い」  
「ああ、ごめん。考え事してた」  
 全くこれこそ本末転倒じゃないか。  
「そういう男って、どうかと思う」  
「いやいや、本当にゴメンナサイ」  
「自分で連れ出しておいて」  
 心が痛くなってきたので前を向いて歩き出した。  
 真冬の寒さが肌を刺す。夕方から雪が振るかもしれないと予報される程の冷気。  
  そんななか俺達は色々と微妙な距離を保っていた。   
 
 取り合えず妥当なところでショッピングモールに行ってみる。  
  家からバスに20分程揺られるとひときは目立つ大きなアーケード。  
 その中に最近なんだかピンク色の看板掲げたアイスクリームの店が出来たのを思い出し、  
 硝子の珍しく女の子らしい一面である「甘いもの好き」(レスザンお酒だが)を狙ってみました。  
「司ってこういう店来るの?」  
 「変かな? 男子は甘いもの苦手なんていうのは都市伝説だぞ?」  
 「そういう訳じゃなくて……で、来るの?」  
 「いや、流石に男一人でこういう店はちょっと」  
 「のわりには良く知ってたわね?」  
  と、既にチョコレートをクリアし、その下にあるストロベリーの攻略にかかりながら硝子。  
 「地味にでもポイント稼ぎにいくから」  
  顔を突き合わせながらその向いで未だ一つ目のチョコレートの球体をかじる俺。  
 「真冬に? アイス?」  
  ……そうでした。冬のオリンピックの真っ最中でしたね、トリノは北半球ですよね。  
 「……こんな時期にオープンするこの店が悪い」  
  ホントに上手くいかない。  
  いやになる程甘くて冷たい口は喋るのもおっくうにする。  
 「全く、私じゃ無かったらマイナスな所よ」  
  と、思い掛けないほど優しい硝子。  
 「次別の女の子と来る時は気をつけるように」  
  でも結局冷たい。きっと冷たい物を食べてるせいだ。  
  というかやっぱり微妙に怒ってるのでは?  
 「で、次はどうするの?」  
  もう残りはコーンとストロベリー1/3となった硝子。  
  早すぎです、頭痛くなったりしないんでしょうか?  
 「もうちょい待って、俺まだ半分」  
  しかもそろそろキツイ、甘いものは好きだけど、  
  普通に朝食食べた2時間後に二段は明らかに選択ミスだった。  
 「頂戴、司喋りながらだと食べるの遅い」  
  しょーが無いでしょ。  
 「あい」  
  と食べかけのミントを手渡す。  
 「関節ちゅー、とか言ってみる」  
 「昨日ホントのちゅーしたでしょ」  
  と全く動じた気配のない硝子、面白くない。  
  もっと中学生みたいな反応を期待したのに、あり得ないけど。  
  さあ硝子がこれを食べ終わるまでに次を決めないといけない。  
  計画性ないなあ、俺。  
  でもこうやってアイスクリーム頬張ってる硝子を見てるのはかなり楽しいぞ。  
  ……だから考えろって、俺。  
 
 
  どうしても硝子を喜ばせるような場所に見当が立たなかったので、  
  自分の買い物に付き合わせることにした。  
  元々なんでもよかったのか、硝子はあっさりとオーケーをくれたのがせめてもの救い。  
  自分でも今日はなんだか空回りしている気がするが、ここは突っ走ろう。  
  この前縁が破れてしまったバッグの代わりを買って、  
  後はこのいつもは味も素っ気も色気も無い格好をしている硝子が、  
  折角ワンピースなんて着てるのでそれに見合う小物を捜してみる。  
 「私そういうの興味ないから」    
  なんて態度なのは分かってたから俺が選ぶ。  
  でもやはり女の子、初めてくる……のか?  
  とにかくこういう小物店に興味が少なからず在る様子。  
  先程から帽子のコーナーをうろうろしているので、俺も硝子に似合いそうなのを捜す。  
  ふと硝子が縁の無い帽子を深めに冠った。  
 「どれどれ、見せてみんしゃい」  
 「……」  
  あー、駄目だ。  
 「駄目、目が隠れちゃってる」  
  ひょいっと帽子を取る。  
 「そんなに隠れて無かったよ」  
  その帽子が気に入っていたのか残念そうな硝子。  
 「俺がダメなら駄目なの」  
 「まあ、そうなんでしょうね」  
  俺が選んだのをぽすんと被せてみる。  
 「うーん、俺としてはすげー可愛いんだが」  
 「じゃあ駄目ね」  
 「なんだよそれ」  
 「あはは」   
  なんていいながら鏡の前まで行くと、満更でも無い様子で細かく微調整してみたり。  
  なんだかその仕種が、何時もよりも服装も相まって凄く可愛く見えたりしてみたり。  
  その後も色々迷ったようだが、結局俺の選んだのを買った。  
  ……当然俺が金は出したぞ?  
  まあ、こいつ金持ちだから有り難みはそんなに無いかもしれないけど、  
  そこはほら、気持ちで。  
 
 
  なんて雰囲気のあるデートを楽しんで、もう6時だ。  
  アーケード街だから分からなかったが外は雪が降り始めているらしい。  
 「そろそろ帰るか」  
  頷く硝子。  
 「ん、今日は楽しかったか?」  
  再び頷く。  
 「そうか、それなら幸いです」  
  うやうやしく礼をする俺。でも顔をあげると悲しそうな硝子の顔。  
 「でも、駄目」  
  ……。  
 「そっか、それは残念。次回も頑張るよ」  
  合格点は、もらえなかった。  
 「もう、止めてよ」  
 「嫌だね」  
 「絶対私は駄目だと思うよ」  
 「俺もそう思うまではやめないよ」  
  辛そうに首をふる硝子。  
 「私、ずっとショウの事好きだから」  
 「もう死んでる」  
  冷たく言い放ってやる。  
 「だからこそ、ずっと好きだから」  
 「っ……」  
  だったらそんな半端な態度を取るなよ。  
 「じゃあお前、俺の事嫌いかよ?」  
 「その質問は卑怯だし、それに的外れ……」  
 「じゃないよ」  
  っていうか知ってるんだよ。  
 「何処がよ?」  
 「だってお前、俺の事好きだもん」  
  っ。息を飲む硝子。  
 「じゃなかったら、俺とっくに諦めてる」  
  目を閉じて俯いて、硝子は何かを堪えるように立ち尽くした。  
  と、いきなり。  
 「! 硝子!!」   
  突然走り出す硝子。  
  アーケード街の出口へと向かって一瞬で人込みへ消えた。  
  慌ててそれを全力で追う。  
  途中何度も人とぶつかるがしったこっちゃ無い。  
  アーケードを出たところで硝子は黒い車に乗り込んだ。  
  っくそ! やっぱSPつけてやがったか。  
  見覚えのある車に毒づく。  
  あのお父さんも余計な事をしやがる。  
  急発進した車のナンバーを覚える、追う。  
  しかし外は早くも積もりはじめた雪で足場は最悪に近かった。  
  中々の豪雪。  
  構わず、ただひたすらに、走る。  
 
 
  一一昨夜。  
 ドサっ。  
「……?」  
 気がついたら、押し倒してた。  
「……犯っちゃうの?」  
 本当にただ先生に、因数分解のやり方が分からないんです、どうすればいいですか?  
 みたいな感じで見返された。  
「どうしよっかな」  
 なんて間抜けに返した俺に。  
「意気地なし」  
 なんと自分から唇をぶつけてきた。  
「!?」  
 ただ、唇を合わせるだけ、何もしない、形式だけのキス。  
  お互い、目は開けっ放しだった。  
  それが、最悪だった。  
  口は塞がってたのに、俺は硝子の言葉を聞き取ってしまった。  
 「ごめんなさい」  
  ゆっくりと、でも強く硝子を引き離す。  
  硝子は、俺を哀れみやがった。  
  まるで自分は第三者のように。  
  まるで自分とは関係無いかのように。  
  まるで自分の心はそこには無いかのように。  
  硝子の方を見ると既にもとの位置に座って、ばつが悪そうにしていた。  
 「ごめんなさい……」  
  また謝りやがった。  
 「明日」  
  勝手に自分の口が動き出す。  
 「明日、デート。それで許してやる」  
 「うん……解った」  
  泣きそうな顔で了承してくれた。  
 
 
  こういう時に限って車は信号に引っ掛かってくれない。  
  日々鍛えていた事がこんな風に役にたってしまうとは、  
  硝子を守る為に始めた事なのに、彼女を追うのに役立つ。なんて、皮肉。  
  もう15分以上全力疾走を続けている、  
  2度程見失ったがナンバーを頼りになんとか追跡を続けている。  
  雪のせいかできた渋滞につかまったのか、やっと距離が縮まりだして、  
  残り50メーターくらいまで追い詰めた。  
 
  と、その時。  
  それは、唐突に。  
 
    
  車の隣を、走っていた、トラック、  
 
  ーーーーー ーーーーー!!  
  倒れて、下敷一一  
 「硝子!!」  
 
  走る。  
  雪に足を取られたトラックが硝子の乗った車に倒れこんできやがった  
 
  叫ぶ。  
  トラックの運転手が助手席の方から這い出して来る  
 
  硝子!  
  運転手を殴り殺したいところだが  
 
  硝子!  
  トラックの積み荷が出火している。  
 
  叫ぶ。  
  なによりも先ず先に  
 
  叫ぶ。  
  車に駆け寄ると前のドアからSPが出てきた。  
 「おい硝子は!?」  
 「ここは危険です、早く離れて下さい司様!」  
 「硝子はどうしたってんだよ!」  
 「今私が助けますから、司様どうか」  
  冗談じゃない、こいつは硝子を車内に残してでてきたんだぞ?  
  俺は会話を諦め行く手を阻むSPに抜手を打ち込む。  
 「っが!」  
  手加減無しの一発が刺さると、前のめりに倒れた。  
  また、SPにならっていた護身術が皮肉に生きた。  
  そんなのは無視して後部座席の窓を叩く。  
 「硝子、硝子!」  
  硝子は後部座席で正面を向いてぼーっとしていた。  
  こっちを向くとふらりと笑って。  
 「早く逃げなよ、危ないよ」   
  なんて目で見てきた。  
 「ざっっけんな、今開けるからな!」  
  しかしドアが拉げて開かない。  
  車が丁度拉げてSPが出てきた助手席の方からでは、硝子を助けだせそうにない。  
  後部座席のドアに力を込める、とにかく込める。  
 「もういいよ、私司に沢山酷い事した」  
 「だから償えよ! 俺を幸せにしろよ!」  
 「でも、私はショウを選んだんだよ?」  
 「あいつの事は忘れろとは言わない! でもお前のせいじゃない!」  
 「でも私と一緒にいなければ……」  
 「うっさい! んなこと言うな、あいつが自分でやったことだ!  
  あいつだって、あいつのせいでお前はトラウマもらって!  
  あいつのせいで俺以外とは会話できなくなって。  
  あいつのせいでこんなに苦しんでんじゃねえか!」  
 
 
  一一3人で誘拐された、あの日  
  目の前で、自分のせいで、イチバンスキナヒトを、殺された硝子は  
 
  『声』を失った。  
 
  いろんな医者が手を打ったが回復の兆しはいっこうにみえず。  
  彼女は完全に喋る事ができなくなっていた。  
  それでも俺は硝子に話し掛け続けた。  
  まわりは彼女がふさぎ込むのを半ば仕方ないと諦める中。  
  俺はとにかく話しかけ続けた。  
 
  そうしたらあるとき、硝子の『言葉』が聞こえた。  
 
  聞こえた、というより解った。  
  彼女の目を見たら、彼女の言いたい事が解るようになっていた。  
    
 
  俯く硝子、そうされると俺は硝子の言葉が聞こえなくなってしまう。  
 「硝子! おい、おい!!」  
  トラックの火がヤバい、もうつかんでいるドアですら熱くなっている。  
  中も相当暑いはずなのに、硝子は一向に動こうとしない。  
 「返事しろよ!!」  
  ぴくりと首を持ち上げて、歪んだ顔を向けてきた。  
 「嫌だよ、逃げてよ司。死んじゃうよ」  
  お前は。  
 「自分の事だけかよっ! 俺に二回も好きな奴見殺しにさせんのかよ!  
  んなもん一生に一度でも多すぎんだよ!」  
  びくっ、と硝子が体を震わせる。  
 「自分のせいとか考えるな、さっきも言ったけどそれってすっげー失礼だぞ!  
  俺達は自分の為にやってんだよ! 自分がそうしたいからやってんだよ!」  
  またもや俯いて言葉を遮断してしまう硝子。  
  構わず続ける。  
 「つうかどう考えても今回のはお前のせいじゃねー!  
  素人丸出しの運転手が悪いんだよ!   
  だから気にすんな。そんで俺と一緒に生きろ!  
  俺はあいつと違って死んだりしない! だからお前も死ぬな!!」  
 
  すると、  
  車内から、『声』がした。  
 「私はまだ、ショウの事が好きで」  
  ぽつりぽつり  
 「でも、でも司も好きで!」  
  ぽたりぽたり。  
 「そんな、だけど……いいの?」  
  大粒の涙と共にそんな言葉を落とした。  
 「十分すぎんだよ、んのバカ」  
  硝子の声が聞こえた。  
  今まで唯一彼女の言葉を理解して、しかし一度も彼女の声が聞くことは出来なかった。  
  何年も聞きたかった声。硝子の声。  
  その声が聞こえた。  
  そんな俺が。  
  こんなショボい扉を開けられないはずもなく。  
  がぎんっ!!  
  骨とか筋肉とかに思いっきり負担をかける、今の音はドアと俺の体の音かもしれない。  
  ぶっ壊したドアを脇へよけると、硝子が飛びついてきた。  
 
 
 「硝子!」  
  警察とか色々いって疲れ果てて家に帰ってくると、義父さんがかけよってきた。  
  もう2時を回っていたが、玄関でまっていたらしい。  
 「大丈夫だったかい硝子、怪我は?」  
 「大丈夫よ、父さん」  
  硝子の声を聞いて目を見開く義父さん。  
 「俺の、勝ちっすね」  
  にやりと笑ってやる。  
  それを取り戻したのは、俺なのだ。  
 「……ああ、そうだね」  
  苦笑される。  
 「じゃあ、さっそく悪いんですけどしけこむんで」  
  そう言って硝子の手を握って寝室へ向かう。  
 「え、ちょっ。しけこむって!?」  
  硝子が戸惑いの声をあげる。  
 「意気地なしとかさんざ言われたからな、男としてのプライド取り戻さないと」  
 「あらあら、お疲れでしょうに……若いですねぇ」  
  のんびりとお手伝いさん。  
  義父さんは固まっているんだろうか?   
  後ろから何か硝子の声が聞こえるのが嬉しくて、つい顔がにやける。  
 「あーもうエロい顔して、ちょっと、御飯は?」  
 「今から食べるからいらない」  
 「下品!!」  
 「あはははは」  
 
 

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