彼氏が「獣化病」の感染者になった。  
今の社会では、大半がヒトの姿をしているけれど、  
本当はそうじゃない……そんな「ひと」達がいる。  
彼らは、「獣化病」でなるべき姿を、薬で押さえつけ、  
ヒトの姿を必死にとどめようとしている。  
 
私は其れがいやだった。  
 
親友が発病したとき……言った  
「見ないでっ……こんな姿になりたくないっ  
あたしは人間よ……人間!……こんな動物みたいな姿、  
動物園にいるような姿……見せたくないよ!」  
 
アンタも人間なのよ!姿が違うなんてどうでもいいじゃない  
 
だから、彼が病気の事を言ったとき……  
別れようって言うんじゃないかってそう思った。  
それがセオリーだって事も知ってる。  
私は……。  
 
「だから私は怒ったの」  
「へいへい。そーね。変わり者だもの、変態よ、変態」  
「なによ〜それ〜」  
「この獣フェチ」  
「うっさい!」  
 
目の前で、そう話したら、この国では一時期流行語になってしまった  
「獣フェチ」という言葉で思いっきりイジられた!  
まぁ、横でイジってる彼女の……(一応例の感染した親友な訳ですが)  
腕時計が電子音を響かせていた。  
「あちゃ〜。時間だわ」  
「アレの?」  
「うん……」  
 
すこし力なくそういうと、ハンドバックの中に手を突っ込み  
ゴソゴソと探したかと思ったら、取り出したるは  
小さな赤い液体が入った注射器。  
 
「ちょっとゴメン」  
 
そういってるあいだにも彼女の耳に黒い毛が生えてしまっている。  
急いで腕をまくり、注射をブスッと入れたかと思ったら、  
一気に注入。  
すると、彼女の耳から黒い毛は引いていった。  
 
「今は時計のなかに発症予測時間が組み込まれたから良いけど……  
一昔前なら、いつなるか分からないから……何時もビクビクしてたよ」  
そういいながら苦笑してる。  
 
なんでそんなに私の目を気にするの?偏見なんてないんだから。  
偏見持ってるやつらがあんたに何かやったら、  
あたしがぼっこぼこにしてやるわよ。なんてね。  
 
とにかく……今、この後のことを考えるとどきどきしてる。  
今日、彼が来てくれるみたいだから。  
 
Lycanthrope Syndrome 「変身」の話。終。  
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