方向感覚をロストして流れる潮に身を任せていた。  
 一瞬で全ての感覚が失われ、体がどこか遠くへ飛ばされたような気がして・・・・  
 そこから先の記憶はない。  
 ただ、ふと気が付くと俺はまだそこで漂っていた・・・・  
 
 酸素ボンベの残量が1時間を切ったようだ。  
 どっちが海面かですら解らなくなっている。  
 そもそも、バラストを外したはずなのに浮力が効かないのは理解できない。  
 もしかして既に死んでいるのか?  
 答えの出ない問を延々と繰り返していたら、どこからともなく声が聞こえた。  
 水中で声が聞こえるというのも不思議なのだが・・・・  
 
 「あなたはだれ?」  
 
 どこから声がする?左右を見回すけど誰もいない。  
 それどころか、あれほど泳いでいたはずの熱帯魚も鮫もイルカもいない。  
 海底も水面も無い水中の空間。  
 
 「あなたはどこからきたの?」  
 
 声の主は誰だ?  
 俺は体を動かして背後や頭上や足元を見た。  
 きっと宇宙空間で船外作業をする宇宙飛行士はこういう感覚なんだろうな・・・・  
 
 「どこをみているの?」  
 
 あちこちキョロキョロしていたのだけど声の主は見つからない。  
 迂闊にもくわえていたレギュレーターを無意識に外してしまった俺は信じられない光景  
を見た。水上に向かって浮き上がるはずの空気が大きな玉になって、俺はそこへ顔を突っ  
込んでしまった。  
 
 「俺を呼ぶ声の主はどこに居るんだ?」  
 
 表面張力で球体になった空気玉の中で俺は大声を上げた・・・・  
   
 「あまりおおきなこえをださないで、わたしもこえをだすのはひさしぶりだから・・・・」  
 
 仄暗く薄明るい水中のその世界に現れたのは・・・・・・  
 
 
 
 −良いですか?この辺は水流が早いですから気を付けて下さい!  
 
 船上でイントラの若いアンちゃんが大声を張り上げている。  
   
 −昨日のクリスマスダイブでは3人が行方不明になり、後で救助されてます、実費徴収  
されますので気を付けて下さいね、洒落にならない金額ですから!  
 
 ウェットスーツの上からバラストを腰に巻き、アクアラング一式を背負うと自分の体重  
が倍になったような気がする・・・・。が、それも船の上の話だ、水中で有れば重さを忘れら  
れる。  
 
 −皆さん準備できましたか?では行きますよ!  
 
 皆で船縁に腰を掛け一斉に潜ろうとしたとき、船は急に下から突き上げられるような衝  
撃を受けた。バランスを崩し海に投げ出された俺は咄嗟にレギュレーターを口に突っ込ん  
だのだが、すぐ隣にいた埼玉から来たというオヤジはそのまま海に投げ出され沈んでいく  
のが見えた・・・・  
 
 
 
 
 
 何が起こったのか?  
 それは未だに解らない。  
 
 ただ、今自分の目の前にいる、その・・・・・・その・・・・・・  
 
 「あなたはかわったすがたをしているのね、うごきにくいでしょ」  
 
 澄んだ声で俺に話しかけるその生き物は子供の頃、童話の本で見たあの生き物の姿。  
 海に憧れる人間にとって、この存在と遭遇すること神に出会うことにも等しい・・・・  
 
 
 
 マーメイド  
 
 
 
 そう、人魚だ、どうで見ても、その姿は・・・・人魚だ、それも女性の。  
 
 
 
 「あなたはどこからきたの?どうやってここへきたの?」  
 
 不思議そうな顔をして話しかけてくる人魚はジッと俺を見ている。  
 
 「ここはどこなんだい?」  
 
 「ここ?ここは・・・・ときのさいはて」  
 
 人魚はそう言って俺の周りを泳ぎ始める。  
 音もなくスーッと流れるように尾ひれをはためかせて。  
 
 「あなたの名前を知りたい、あと、地上へ帰りたいんだけど」  
 
 俺の周りを泳ぐ人魚は不思議そうな顔でこっちを見ていた。  
 
 「ちじょう?ちじょうってなに?、あと、なまえってなに?」  
 
 人魚は体をくねらせて俺の周りを横ではなく縦に回転し始めた。  
 本当に綺麗な泳ぎ方だ。イルカと泳いだときもそう感じたのだけど。  
 
 「俺は空気がないと死んでしまうんだ、水の中では息が出来ない」  
 
 「しぬってなに?みずってなに?」  
 
 なんか馬鹿馬鹿しくなってきた。  
 マーメイドじゃなくてエイリアンとでも話をしてるような気がする。  
 いや、エイリアンならもっと楽なのかも知れないけど・・・・  
 
 「君は一体なんなの?」  
 
 「わたしはときのばんにん、はるかなかこからこのさいはてまでをみつめるもの」  
 
 「時の番人?」  
 
 「そう」  
 
 「遙かな過去から最果てって」  
 
 「うけつがれるきおくはそういってる」  
 
 「受け継がれる?」  
 
 人魚はアクロバティックな動きを見せて足元方向へスーッと泳いで消えていった。  
 
 「こっちへきて」  
 
 俺は慌ててレギュレーターを口にくわえて人魚の後を追った。  
 空気を放出しすぎたのか、残量がレッドゾーンに入り10分を切っている。  
 夢中になって俺は人魚の後を追ったのだけどいつの間にか見失ってしまった。  
 
 酸素の残量は残り5分・・・・  
 俺の人生はこの最果てで終わるのか・・・・  
 圧が下がってきたのか、段々と息苦しくなってきた。  
 水圧に負けてる訳じゃないけど、何となく苦しい。  
 
 ちょっと朦朧とし始めたとき、人魚が俺の首に抱きついた。  
 
 「こっちよ」  
 
 強烈な力でグッと引っぱられておれはされるがままに人魚と泳いだ。  
 ウェットスーツ越しに触れた人魚の胸は弾力があった。  
 
 しばらく身を任せていたら突然水から下に落ちた。  
 何とも不思議な経験をしたのだが・・・・  
 
 「それをとってみて、ここならいきができるでしょ?」  
 
 言われるがままに俺はレギュレーターを外してみた。  
 ちょっと生臭い臭いのする浜辺の空気がそこにあった。  
 
 「ここは?」  
 
 「ここはきおくのこうさてん、みずのしょうがあつまってきおくをうけついでいくの」  
 
 直径にして10mほどの大きな泡のような部屋、そこは重力を感じず俺は空気の中をふわ  
ふわと漂った。宇宙船の中ってこんな感じなんだろうなぁ・・・・  
 
 「君はここでも息が出来るの?」  
 
 人魚は無言で頷いた。  
 
 「わたしはときのばんにん、わたしはおいず、わたしはやまず、わたしはほろびない」  
 
 「え?」  
 
 「わたしはえいえんなの」  
 
 無重力の空間を漂う人魚はトップレスの豊満な胸を震わせて俺の周りを漂い続ける。  
 まるで水の中を泳ぐようにスーッと周りを泳ぎながら。  
 
 「君は一体ここで何をしているの?」  
 
 人魚は首元に掛けた水晶の様なネックレスの玉を指で弾くと美しい声で歌を歌い始めた。  
 すると空気の玉の水面に沢山の画像が現れ始めた。  
 
 −始まりは暗闇だった  
 −やがてそれは光と陰に別れた  
 −塵が集まり陸が出来た  
 −陸に水が貯まり海が出来た  
 −海に生命が生まれそだった  
 −生命は海を飛び出し陸へ上がった  
 −陸へ上がった生命は塵の玉をとびだした  
 −生命は光の速さを越えて塵の玉へ戻ってきた  
 −生命は少しずつ輝きを失った  
 −生命が滅び始め沢山の痕跡が残った  
 −ほんの少しだけ滅び残った生命が再び輝いた  
 −やがてまた滅びた  
 −それを4回繰り返した  
 −5回目の輝きの時代にそれはおきた  
 −時間の流れをエネルギーに変えた生命は再び光り輝いた  
 −でも長くは続かなかった  
 −生命は自分の力を過信してまた滅び始めた  
 −使う者の減ったエネルギーは暴走し始めた  
 −暴走し始めたエネルギーは時間の流れを乱し始めた  
 −そして時の崩壊が始まった  
 
 「わたしはここでときのすきまにおちたひとをすくうのがやくめ」  
 
 人魚は違う玉を指で弾いてまた歌い始めた、すると違う映像が沢山浮かび始めた。  
 
 −崩壊が始まると残された生命はそれを止めようと必死に頑張った  
 −時の流れを整えるために時の隙間へと沢山の生命がそそぎ込まれた  
 −沢山の生命が時の隙間を埋めようとそこへ入っていった  
 −時の隙間の大きさと生命のエネルギーが釣り合って時の崩壊は止まった  
 −そそぎ込まれた生命は帰ってこなかった  
 −やがてその隙間を埋めた生命が沢山の玉になった  
 −それは隙間を埋めていきながら違う玉と合体したり分離したりした  
 −最初の暗闇の世界を中心に幾つも玉の世界が生まれた  
 −その玉の世界を境目を飛び越えてしまう生命が現れ始めた  
 −その玉同士が喧嘩して壊れてしまうことも度々おきた  
 −やがて沢山あった世界はいくつかの大きな世界にまとまっていった  
 −最初の世界とは違う時間の流れる世界が幾つも生まれた  
 −その新しい世界はヒトを忌み嫌う世界になった  
 −最初の世界を滅ぼした忌まわしい記憶だけが受け継がれた  
 −いくつかの新しい世界が突然くっつき始めた  
 −その中で果てしない闘いが生まれ膨大な生命が再び世界を壊し始めた  
 −最初の世界に残っていた者は残された英知を集め世界を管理し始めた  
 −幾つもの世代に渡って記憶を受け継いで世界を整える役目を負った  
 −いつの間にかその役目を負った者だけが生き残った  
 
 「のこされたさいごのひとりがわたし・・・・」  
 
 とても悲しそうな表情を浮かべた人魚は首に掛けたネックレスの中から緑の玉を選び指  
で弾いた。すると船の上で今まさに飛び込もうとする俺の姿が映った。  
 人魚は物悲しい声で歌い始めた、そして何が起こったのかを俺は理解した。  
 
 
 突然海面が盛り上がったかと思うと、それは大きな波となり陸に向かって押し寄せ始め  
た。俺の乗っていた船は波に乗りきれずズドンと下へ突き落とされ、その勢いで俺は海に  
沈んでしまった、やがて盛り上がっていた波が上から落ちてきて、俺は海の底深く深く押  
し込まれてしまった。それは巨大な地震だった。  
 憧れのライセンスをようやく取得してやってきたインドネシアで、俺は人類史上でも5  
本の指に入る大災害に遭遇した・・・・  
 
 愕然とした表情で映像を見ていた俺の前に人魚がやってきて俺の顔を両手で押さえた。  
 
 「らくにして」  
 
 そう言って人魚は突然俺の顔に自分の顔を寄せた。瞳を閉じた人魚は何かをブツブツと  
唱えた後で俺にキスした。チュッと言う吸い込み音が聞こえて、そのままディープキスに  
なったのだが、驚いたのは俺の口の中へ人魚の舌が入ってきた事だ。  
 その下はザラついて長く伸び俺の喉を越えて奥へ奥へと入っていった。  
 しかし、その舌先が目指したのは食堂ではなく鼻の側のほう、そしてその舌先は鼻の穴  
の奥から脳幹の方へ強引に押し込まれて行って、猛烈な吐き気と痛みが襲い掛かった。  
 
 グチョッ・・・・・  
 「はぁはぁ・・・・・あなたの名前はヒロシね・・・・時の最果てにようこそ・・・・」  
 「君は・・・・」  
 「私はサーシャ、多分18番目のタイムキーパー」  
 「タイムキーパー?」  
 「そう、そしてあなたは私を救ってくれる人」  
 「一体いま何をしたんだ?」  
 「あなたの脳幹からデータを貰ったの、言語野もスキャンしたから言葉遣いはこれで問  
題ないでしょ?」  
 「で、俺がなんで君を救うんだ?」  
 「聞きたいのはそっちなの?」  
 「いや、世界の終わりも詳しく知りたい」  
 サーシャはちょっと俯いてからまたその辺を漂いだした。  
 ・・・・遠い遠い昔のお話、あらゆるエネルギーを使い果たした人類は汲めども尽きぬ無尽  
蔵のエネルギーとして光と時間を使うことにしたの。細かい仕組みは省略するけど、って  
言うか私もそれはもう忘れたんだけど、その時間をエネルギー源にする永久機関は膨大な  
電力を生み出したの。世界中を照らしてもまだ余る位。でもね、エネルギー保存の法則っ  
てのがあって、それだけエネルギー変換し始めたら時間の流れが遅くなったの。  
 そして、その遅れて行く時間の進み具合が段々と世界に見えない歪を溜めて、そして世  
界はゆがんで行ったのよ。  
 その結果、ある時から世界のバランスが崩れて、そして大災害が続いたの。  
 バランスがどう崩れたか?ってのも私の受け継いだ記憶には既に無かったわ。でも、そ  
う言う知識だけがあるの。  
 
 そしてね、世界に残された人類はその遅れてしまった時間のエネルギーを生めるために  
多くの人間を捕まえて霊魂のエネルギーを取り出したの。これも仕組みは聞かないでね、  
私も知らないから。  
 ただ、霊魂って言うのは肉体が滅んでも存在し続ける非常に高エネルギーを秘めた存在  
だったのね。だから霊子炉ってのが作られて、そこの中へ生きた人間が大量に投げ込まれ  
たのよ。霊魂のエネルギーを抜き取って魂の炎って形に作り変えられたそのエネルギーは  
時の狭間に大量に注がれたの。  
 その結果、時間の流れは正常になったわ。しかし、今度はその注ぎ込まれた霊子力の中  
にある恨み辛みといった負の情念が大きな黒いウネリになって世界を襲った。  
 今度はそのウネリを補正する為に時間エネルギーを生み出す永久機関のエネルギーを使  
って封じ込んだの。  
 狭い部屋で火を焚いて、それで暑いからってクーラーも入れる状態なのよ。火を焚かな  
ければ何も出来ないから、火を焚いてクーラーを入れたのね。  
 そしてある時、霊子力を生み出す霊子炉に投げ込むべき人が尽きてしまったの。  
 だから、そのときのタイムキーパーはやむを得ず人以外の生物を投げ込んだの。  
 膨大な量を投げ込み続けて、ふと気が付いたら世界に居るのはタイムキーパーだけにな  
ったのよ・・・・・・  
 
 「酷い話だな」  
 「そうでしょ」  
 「で、最終的にはどうなった?」  
 
 ・・・・・・投げ込まれ続けた人の負の情念が少しずつ落ち着き始めたのね、随分と時間が掛  
かったみたいだけど。そして、形を持たない群体生命になった人類は時間の隙間にコロ  
ニーを作り始めたの。実体を持たない生命の空想の産物。  
 そこへ他の生き物の生命が入り込み始めて、やがてそれらの空想の世界で受肉が始まっ  
たのよ。その小さな世界が現実になり始めたの。  
 その小さな世界同士が重なったり闘ったりして、少しずつ大きな世界になって行って、  
そして今は私の見ている世界だけでも20はあるわ。全部違う独立した世界。でも、その境  
目は非常にあいまいで脆弱で、そしていい加減なの。  
 だからヒロシ、あなたのようにそれらの世界のどこかから飛び出してしまう生命が出だ  
したのね、色んな理由で飛び出すのよ。運が良いとあなたのようにこの最果ての地へ流れ  
着くんだけどね。運が悪いと・・・・・・  
 
 「運が悪いと?」  
 「別の世界へと飛ばされてしまうの、私達はゲートと呼んでるわ」  
 「そうなるとどうなる?」  
 「ほら、これを見て」  
 
 サーシャが指差した先には大きな水の玉が水中にあった。その球体状の水はほかの水と  
明らかに組成が違うようで、屈折率の違いからか光って見えた。  
 
 「ヒロシ、中が見える?」  
 「あぁ、見えた・・・・マジかよ・・・・」  
 
 そこには猫耳や犬耳や蛇や虎やそんな多くの生き物が知性化された姿で歩き回る世界だ  
った。そしてそこへ普通の人間が落ちて行って、そして奴隷になっていた。  
 
 「これもね最初の次元反応炉の暴走から始まったの、それを埋め合わせる為の霊子炉エ  
ネルギーに使われた動物達が人の姿に受肉したんでしょうね。理由は私にも分からないわ  
よ。でもね、人の姿に受肉したとき、もとになった人の性格とかがそのまま受け継がれた  
みたいなの。だからヒトを大事にする生き物がいれば、ヒトを消耗品扱いする生き物もい  
るのよね。そして、この世界でヒトは試される。その生き方とか、魂の強さとか」  
 
 「それじゃぁ余りにも・・・・」  
 
 「ヒロシは自分の居た世界で、他の生き物を殺して食べる事で生きてきた筈。そのとき  
死んだ生き物に感謝していた?してないでしょ。命を頂くって事への感謝を忘れたらこう  
なるのよ・・・・きっとね」  
 
 俺はガックリとうな垂れ言葉を失った。しかし、そのときある事に気が付いた。  
 この直径10mほどの球体が明らかに小さくなっていた。  
 
 「サーシャって言ったよね、この空気の玉はどうなるの?」  
 「ヒロシが吸った分だけ小さくなるわよ」  
 「じゃぁ全部吸い尽くしたら?」  
 「あなたは死ぬでしょ」  
 「サーシャは?」  
 「私は滅びないの、永遠なの」  
 
 「サーシャ、お願いがある」  
 「なに」  
 「俺を殺して欲しい、空気が切れて死ぬのは本当に苦しいんだ、だから」  
 「じゃぁそうしてあげるから、その代わり私の願いも聞いて」  
 「あぁ、分かった俺に出来る事なら」  
 「本当に?」  
 「あぁ、約束は守る」  
 
 サーシャは無表情で頷いた。  
 
 「じゃぁ、私の願いを聞いて」  
 
 そういってサーシャはスーッと寄ってくると、俺のアクアラング装備を全部剥ぎ取った  
上にウェットスーツを脱がせてしまった。水着姿の俺を見たサーシャはさらに水着まで脱  
がせてしまうと、俺の股間に手を伸ばした。  
 「あなたのこれが欲しいの」  
 そう言うが早いか手が早いか。水かきの付いた手が俺のペニスをしごき始めた。  
 途端にムクリと起き上がる俺の息子をサーシャは口で咥えて舐め始めた。  
 ザラザラとした舌先に擦られてたまらない・・・・  
 
 「サーシャ!」  
 「ダメ、動いちゃダメ。私の願いも聞いて」  
 「でも…」  
 「私はあなたの子種が欲しいの」  
 「え?」  
 パンパンに起き上がった俺のペニスをサーシャはひとしきり舐めると自分の卵管辺りを  
いじり始めた。ヒトの女なら割れ目になるあたりの鱗を左右に押し広げると人魚の女性器  
が姿を現した。  
 
 「ヒロシ、動かないでね・・・・」  
 サーシャの秘裂に俺のペニスが飲み込まれメリメリと言う感触が伝わってくる。  
 「あぁいぁいぁいぁぁぁぁアああっぁっぁぁぁぁぁぁああああ・・・・・」  
 グチョッグチョッっと言う水音と共にサーシャの尾びれが揺れて俺のペニスをサーシャ  
のヴァキナが締め上げた。無重力でセックスするって感覚はきっとこうなんだろう。  
 「アァァァ!ヒロシ!アァ!イッイイ!」  
 
 長い髪を振り乱してサーシャはよがっている。その姿に俺は軽く引いていた。  
 「ヒロシ・・・・お願い・・・・私に・・・・私に注いで!」  
 
 悲しそうな瞳で見つめられたとき、おれはサーシャの孤独感を思った。  
 随分長い事一人でここに居たんだろう。孤独な思いが女を狂わせるのかもしれない。  
 
 「サーシャ、これで良いかい!」  
 おれはサーシャの腰が一番くびれている所に手を回して大きく腰を振った。  
 無重力の世界とは言え慣性の法則は働くようで、それなりに重量のあるサーシャを上半  
身の力だけで振り回すのは疲れる行為だった。  
 
 「ヒロシ!アァッアアァ!イイ!凄くイイ!」  
 「サーシャ、ごめん!行くよ、行くよ!、行くよ!」  
 「うん!アー!」  
 熱い波が俺のペニスを駆け抜けサーシャの内側へ大量にザーメンを注ぎ込んだ。  
 
 「ウッ!ア゙ァァ!」  
 全部注ぎ込んでちょっと放心状態になった俺の横にサーシャがぴたりと寄り添った。  
 
 「ヒロシ、ありがとう・・・・私の旦那様・・・・」  
 「え?」  
 「ちょっとまって・・・・・」  
 サーシャの腹がボコ!ボコ!っと膨れ上がり始めると同時にサーシャは見る見る干から  
びて老いさらばえていった。  
 
 「お!おい!どうした!」  
 
 サーシャは口をパクパクとさせているが声にならないようだ。  
 しかし、腹はどんどん膨れて行って、やがてポリタンク一個分近くも膨らんだ。  
 
 「ヒ・・・・ロ・・・・シ・・・・ 」  
 
 「サーシャ!」  
 
 大きく膨らんだ腹が突然スバッと裂けて、中から小さな人魚が飛び出した。  
 ビクビクと震えている小さな人魚は程なくして痙攣を止めると口の中から大量の血と白  
濁液を吐き出して、そしてヒューヒューと喉を鳴らして息をし始めた。  
 
 「あなたが私の父ですか?」  
 
 「え?」  
 
 「あなたが私の父ですか?」  
 
 「あぁ、多分そうだ」  
 
 「ではこちらが母ですね」  
 
 その小さな人魚は干からびきったサーシャの体に噛み付くと、鋭い牙を立てメリメリと  
音を立てて食べ始めた。豊満だった胸は干からびてシワシワになり、そこへ牙を突き立て  
て小さな人魚は食べていった、呆気にとられて見ていた俺が呆然としているそばで小さな  
人魚はサーシャの頭部分を残してほぼ全部食べてしまった。  
 
 「お父様、私に名前をつけてください」  
 「え?」  
 「私の名前はあなたが付けるのよ、ヒロシ」  
 「じゃぁ、君は」  
 「私はもうサーシャじゃないの、まったく新しい命よ。ただ、サーシャの記憶を受け継  
いでるだけなのよ」  
 「そうか・・・・じゃぁ・・・・」  
 「じゃぁ?」  
 
 「君の名前は・・・・スターシァ」  
 「スターシャ・・・・私はスターシャ、19人目のタイムキーパー」  
 
 食べ残していたサーシャの首にはネックレスが掛かっていたのだけど、首から下が無い  
状態では簡単に抜き取る事が出来た。まだ小魚程度のスターシャがその首にネックレスを  
通し赤い玉をキスをした。  
 するとスターシャの体がムクムクと膨らんで行ってサーシャと同じサイズになってしま  
った。自動的にネックレスは抜けなくなったのだが・・・・  
 
 「今度は私が約束を果たす番です、お父様」  
 
 スターシャは俺の周りをグルグルと泳ぎながら大事そうにサーシャの首を抱えていた。  
 
 「私はお父様を殺して差し上げる事が出来ません。でも、タイムキーパーの力を使えば、  
この時の最果てからあらゆる場所へお父様を送り込めます。どこへ行きますか?」  
 
 そうだな・・・・  
 
 「じゃぁ、この時限反応炉が暴走する直前の世界へ飛ばして欲しい」  
 「え?お父様?そこに行っては死んで・・・・」  
 「良いんだ、どっちにしろ俺は泳ぎではなく死ぬ為に行ってたんだから」  
 「分かりました、では・・・・」  
 スターシャは俺の手にサーシャの首を渡した、その首を見て俺は腰を抜かさんばかりに  
驚いた。  
 
 「さぁ、旦那様、私の大事な旦那様、あなたの望む世界へ行きましょう。私も連れて行  
ってね・・・・」  
 
 スターシャがネックレスの黄色い玉を指で弾き低い声で何かを歌い始めた。  
 すると俺の周りの光が急に色を失い始め、おれは暗闇に閉ざされ始めた。  
 
 「ヒロシ、私を放さないで。お願い。あなたのそばに居させて。私を無限の時間から救  
ってくれた愛しい人・・・・・」  
 
 「サーシャ・・・・君は全部分かっていて」  
 
 「えぇ、私は私の母を同じように父の望む世界へ送りました。そして今は私が娘に飛ば  
してもらう番なのです。あなたの事をさっき全部理解しましたから心配しないで。あなた  
の願うような女になってあなたのそばに居るから」  
 
 「サーシャ、君はたいした存在だよ、いい女だ」  
 
 「ありがとう」  
 
 フッと世界が明るくなった瞬間、俺は見知らぬ家のベットの上に居た。  
 人の姿になった裸のサーシャと抱き合ったまま、裸で寝転んでいた。  
 
 「ここは?」  
 「きっと私達の家」  
 「世界崩壊は何時なんだろう?」  
 「それはスターシャにしか分からないわ」  
 「そうか・・・・」  
 「ねぇ旦那様」  
 「ん?サーシャ、どうした?」  
 「私を抱いてください・・・・世界が滅びるまで」  
 「あぁ、そうするよ」  
 
 おれはサーシャを抱き寄せてキスをした、俺の口の中にサーシャの舌が入ってくる。  
 でも今度は滑らかで柔軟で、そしてちょっと甘い女の舌だった。  
 
 サーシャの舌裏をくすぐって前歯の裏側もくすぐって、そしてサーシャの口内につばを  
たらして啜ってやった。それだけでサーシャがイキそうになっている。  
 
 「あなた・・・・愛してます。愛しいあなた」  
 
 すっかり空気の玉が小さくなった時の最果て。  
 ヒロシの脱ぎ落としたアクアラングが漂うそこでスターシャはネックレスの玉越しに二  
人を見ていた。  
 
 「お父様お母様、世界が滅びるまで1年ありますわ。どうかお幸せに」  
 
 スターシャは最果ての空気の玉を抜け出してどこかへ泳いでいった。  
 受け継いだ記憶を整理しながら、自分の重荷を解き放ってくれる時の旅人が流れ着くの  
を待ちわびて・・・・・  
 
 ・・・・スターシャ、私の愛しい人がここへ来るまで70億時間掛かりました  
 ・・・・辛い旅ですが頑張ってね・・・・・  
 
 
 −了−  
 

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