彼女の実名に関してはそれはどうでもいいことである。  
学校一の美女であるということのほうが重要だ。  
そして彼女には奇妙な癖があった。  
最後の授業が終わると、オシャベリも寄り道もすることなく  
家に帰ってしまうのである。  
そこがまた、男子生徒たちの興味をかきたてる点でもあるのだが。  
 
「ガチャリ」  
音を立てて彼女は自分の部屋の鍵をかけた。  
光を放つような長い手入れの行き届いた髪を  
後ろでうっとおしそうに結ぶ。  
彼女はおもむろに「ギコナビ」を立ち上げた。  
 
エロパロを選択してログ有りのみの表示をギコナビに命令する。  
新着が3つ。  
とあるゲームのなりきりスレである。  
「ふふ、来てる来てる……。」  
彼女は艶かしい唇をかすかに動かしてそう呟いた。  
 
【521瞳ちゃん萌え〜】  
【522おれのぽこちん<しゃぶれや、瞳】  
【523つーか瞳ウザ。炒ってよし。】  
瞳とは彼女がそのスレで演じているキャラの名だ。  
彼女はその吸い込まれそうなほどの瞳をしばし瞬かせた後、  
おもむろにレスを返すべくPCに向かう。  
整った顔立ちの彼女は、  
メガネをかけるとその視線の鋭さが増す。  
「さぁて…どうかえそう、かな…。」  
気だるげにイスに体重を預けたまま彼女は思考にふける。  
 

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