大陸中の種族の紳士が乗り込んだ豪華客船が、氷山に接触、沈没し始めた。  
周りの海は、冷え切った厳寒の北の海。  
身体能力に優れたオスの獣人達だからこそ、流石に簡単に死んだりはしないだろうが、  
それでもやっぱり冷たいのは嫌、みんな飛び込むのを躊躇っている。  
 
船長は、乗客をスムーズに海へ飛び込ませるために、  
 
ネコには 「生還の暁には今回の体験を出版してベストセラー、大儲け間違いなしですよ」  
ウサギには 「そんなんだから自分の国でも女性に頭が上がらないんですよ」  
イヌには 「規則です。飛び込んでください」  
オオカミには 「イヌ族の方々はもう飛び込みましたが」  
トラには 「飛び込まないでください」  
キツネには 「油揚げの積荷が流されてしまいました! 今追えばまだ間に合います!」  
クマには 「クマって体大きいわりに泳ぎが得意なんですってね、是非とも見せてくださいよ」  
カモシカには 「所詮は弱小種族の出ですか、そんなんだからコンキスタドールとかされるんです」  
ヘビには 「ここで飛び込めずして何が砂漠の覇者。…さて王の器が一番大きいのは誰でしょうね?」  
ネズミには 「飛び込め! 飛び込め! さっさと飛び込まないと海に放り込むぞ!(怒声)」  
ペンギンには 「…あんたらは大丈夫そうですね」  
シロクマには 「あんたらも意外と抵抗なさそうですね」  
ライオンには 「飛び込めないんですか? 4000年の武術も大したことないんですね(嘲笑)」  
ジャガーには 「お噂のヒトの世界の泳法とやら、ここで使わずしていつ使います?」  
 
「船長! まだ飛び込んでいない種族の方がいますッ!」  
「いいんだ、放っておけ」  
「!? 何故!」  
「…だってあいつらトリとサカナだし」  
 
片方は空を飛べ、もう片方は水中呼吸可能。  
そういやそうよねと思いつつ、副船長が船長の様子を改めて観察すると、なにやら顔が真っ青だ。  
 
「あの、船長、どこかお体の具合でも?」  
「……いや、俺はどうしたらいいんだろうな、って思ってな…」  
 
船長は、ヒトだった。  
 

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