今日、猫を拾った。
なかなか毛並みの良い猫だ。生意気にも土台は人間の姿をしているが、黒い髪を掻き分けて
三角の尖った耳が突き出しているし、尻からは長い尻尾が伸びているので、間違いなく猫には違いない。
俺の名はレイノルズ・リッティと言う。縮めてレリィと呼ばせることが多い。だから、最初俺を
見たとき、耳を前に倒して脅えた目つきでうなだれているその猫にも、そう名乗ってやった。
猫は、しけた街の寂れた裏通りで、複数人の男達に襲われている最中だった。猫である
ことは間違いなくても、体は人間のものとさほど変わりないので、まあ仕方のないことと言える。
というより、ここらへんでは、そういったケモノ(獣人と呼ぶのが分かりやすいかもしれない)
は人間以下としてぞんざいに扱われることが普通なので、俺は格段驚きもしなかった。非力なくせして、
夜中にうろついている奴が悪いのであるし、慈善事業をする趣味もないからだ。
だが、男らがあまりに野卑でしつこいので、つい制裁を与えてしまった。猫が地面に
ねじりつけられている場面に、意図せずに出くわした俺を見て、そいつらは「何だ兄ちゃん
おまえも混ざりたいのか」「そこで指くわえて見てるなら俺らが終わった後に譲って
やってもいいぜ」とふざけた口をきいてきた。俺は男どもを一人残らず蹴散らすと、
もう二度となめた態度を取れないように、顎いっぱいまで開かせた口の中に拳を突っ込んで
歯を叩き折った。
こんなわけで、脚を両側から左右に開かされ、大の字の体勢で
組み伏せられていた猫は、自由になった手足を労わるように撫でながら、
冷たい地面の上に座り込んで俺を見上げてきた。まだ男らに捕まって
間が経ってなかったようで、衣服は綺麗なものだった。
猫はなかなか愛らしい容姿をしていた。長い黒髪は腰に届くほどあり、
ふっくらとした頬は、灰色に薄汚れている。幼い顔立ちのわりに豊満な肉体を、
薄いまといもので覆い、それでも隠し切れず露出した太腿が、黒い闇夜の中に
ぼんやりと浮かんでいた。
俺はそれを見て、これなら男らが暗い欲望を噴出させても、まあ理解できると思った。
が、猫は窮地を救い出してやった俺を見ても、安堵や感謝の表情をするわけでなく、ただ
一挙一動を窺うみたいにして、びくついた視線を投げかけてきている。
思うに、人間でない体をしながら、人並み以上の相貌を持っている者の宿命として、
何度となくこんな目に遭ってきたのだろう。俺は猫に歩み寄った。猫はかすかに体を
逸らし、大きな瞳で、俺の顔を見つめ続けている。
猫を覆い隠すように身をかがめ、手を差し出すと、猫は極端に怖がり、自身を
抱きすくめるみたいに腕を曲げた。どうやら、俺が先程の男らと同じことをすると
思ったようである。
その警戒を解くために、俺は猫の腕を強引に取り立ち上がらせた。猫は二、三歩
よろめいたが、すぐに二本の足で地を踏みしめた。そして戸惑いながら、黒目がちの双眸を
いっぱいに開き、俺の顔を凝視している。俺はそれを、鼻を鳴らして悠然とした目で見返した。
ざっと上から下まで猫の肢体を一瞥すると、滅多にない魅惑的な体つきだった。ただ
人間の女と違うところは、顔の横についている丸い耳の他に、頭の天辺に獣の耳が二つあるのと、
足下に、膝の下を過ぎたぐらいまでの尻尾が垂れていることである。
獣人の中には、目を逸らしたくなるほどの容貌をした奴もいるが、それで考えたら
この猫は、まったく観賞に耐えられる部類だった。それどころか、その辺の人間以上の
魅力を放っていると言ってもいい。けだもの独特の悲愴感というか、人間に対しての
遠慮がちな態度も相まって、無償に力づくで手に入れたくなってくるのも事実だった。
が、そこまで考えて、俺は踏みとどまった。馬鹿馬鹿しい、ここでこの猫を
押し倒してしまえば、さっき奴らが言っていたことそのままになってしまうじゃないか。
夜道でか弱い生き物を捕まえて集団でものにしようとする、そんな汚らしくて
しみったれた行為と、同じことを繰り返すのは死んでも御免だ。
俺は猫に向き直ると、ゆっくりと言葉を投げかけた。
「怪我はないのか」
「は、はい」
猫は驚いたような、困惑するような目つきで、おずおずと返事をした。
「そうか。良かったな。俺はレリィってんだ。お前は」
「わたしは、ニィナと言います。あの……」
そこまで言って、猫は、初めてこちらに感謝の目線を送ってきた。体の前で手を組み、
頭をぺこりと下げる。
「助けていただいて、どうもありがとうございました」
俺は猫を軽く睨めつけながら、こんなところを夜ふらふら歩くんじゃねぇと
厳しい声で言った。すると猫は耳を倒し、悲しげに眉間に皺を寄せ、
いっそう身をちぢ込ませてはい、とか細く答えた。
俺はしばらく間をおくと、幾分声をやわらげて
「お前、もしかして行くところがないのか」
と訊いた。猫は唇を苦しげに噛んで、俯いている。さっきまで
気がつかなかったが、よく見れば、猫は貧相な首輪をしていた。
この身なりから察するに、大方どこかの金持ちの飼い猫だったのだろうが、
何らかの理由で捨てられたため、行く当てもなく夜の通りをうろついていたのだろう。
見る限り従順そうで、見目も良い猫が追い出されたとなれば、せいぜい
その家の夫人が、夫が可愛がるのを見て悋気し、叩きだしたというのが関の山だろう。
外見が一部を除いて人間の娘とほぼ同じなので、正気ではいられない気分というのも
わからないではない。
そんな場景を思い巡らし、そもそも主人にいい様にされるのが仕事なのに、それで
気に入られずに放り出されるという理不尽さを強いられた目前の無力なけだものに、
俺は少なからず心が移った。猫のほうは、腰に手を当てて自分を眺めている俺を盗み見ては、
再びつま先に目線を落とす。どういう顔をすれば良いのかわからないといった様子だ。
「おい、大人しく俺の言うことを聞くというなら、俺がお前を拾ってやってもいいぞ」
俺がふと、明確にそう言うと、猫は足元から目を上げ、俺を見た。黒目いっぱいに、
射抜くような力強い目つきの俺の顔を映し出し、猫は二、三度大きく瞬きをした。
俺は猫の瞳の中の自分と目を合わせ、黙って猫の反応を待った。すると、猫も俺の眼の中に映る
自分の頼りない顔を見つめながら、形の良い眉を下げて、どう答えたものか必死に考えている。
そして、ずいぶん長い時間をかけて、やっと「こんな私でも、いいんでしょうか」と
問いかけてきた。
「いい」
俺は素っ気無く返事をした。猫はそれを聞くなり、息をつくようにして肩を下げ、
こくん、と頭を小さく下へ動かした。
「そう言ってくださるなら、私、あなたのところへ参ります」
猫の呟きに、俺は満足して笑ってみせた。猫はその顔を見ると、みるみるうちに
全身の力が抜けたみたいに安堵し、初めて目尻を下げて顔中で微笑んだ。やはり
緊張していたのか、ぴくぴくと震え倒れていた耳は、今は先端を突き出すように
ぴんと上へ張り、元気よくはためいている。
猫の体の後ろで、長い尻尾まで嬉しげに大きく振れる。その様を見て、
俺は無意識に顔を緩ませた。
「おい、ニィナ、じゃあ行くぞ」
そう声をかけると、はいっ、と猫は素直な目で、生き生きと返事をした。
俺はお尋ね者をとっ捕まえては、その首にかかっている懸賞金を頂くという、
しがないその日暮らしをしている。定職につくのも億劫だし、一つの街に
長く留まるのも味気がないので、まあ自分の身にあった生活といえる。
実入りがないときは徹底的に懐が寂しくなるが、その代わり仕事が
成功したときはまとまった収入があるので、さしてこの不安定さに不満はない。
そもそも俺が本気で仕事にかかって失敗することなどないのだから。
が、今はちょうど路銀が乏しい時期で、猫、もといニィナに持ち合わせが
あるわけもないので、仕方なくその晩は野宿をすることにした。俺はあの男達を
撃退するのに余計な体力を使ったことを心中で苦々しく思いながら、あいつらから
金銭を剥ぎ取ってやればよかったと後悔していた。
それは強盗だって? そんな倫理観は通常の人間にだけ当てはまるもんであり、
あんな人間のゴミどもがどうなろうと知ったことじゃねぇ。ニィナはさくさく歩を
進める俺の後ろを、三歩ほど離れてついてきている。その身のこなし方は、人とまったく
同じように見えて、やはりどこか少し違った。
俺のブーツの底が硬いレンガにぶつかっていちいち音を立てるのに対して、ニィナは
ほとんど物音というものを上げずに歩く。ちらりと後ろを横目で窺うと、俺との距離が
これ以上開かないように、早足で俺の背中を追いかけつつ、それでも一定の間を保ったまま、
しなやかな動作で歩を繰り出している。
俺はその数歩分の隙間に、ニィナの体に染み付いた謙虚さみたようなものを感じた。
それとも単に、そう簡単に相手と密着しない、動物特有の本能から来る行動かも知れないが。
どちらでも良かったので何も言わずに進み続け、街の外に出て、いくらか行ったところで
歩みを止めた。
この辺りは気候が温暖で、土壌は豊かであり、街から離れたところでも緑の芝が地面を
覆っている。さらに目の前には、清涼な泉が湧き出していた。そんなに大きくはないが、
水は澄んでいて冷たく、手に心地よかった。
俺はくるりとニィナを振り仰ぐと、「よし、今日はここで寝るぞ」と言った。ニィナは
異存がないようで、頭上の耳を同意するみたいにぱたぱたと動かし、俺の瞳を見つめたまま
頷いた。俺はそう多くない荷物を、その辺に突き出した岩の上に下ろすと、その中から一つの
石鹸を取り出した。
「どうした? ついて来い」
俺の手の中の白い塊りに、不思議そうな視線を注ぐニィナを誘導すると、俺は泉の縁に立って
衣服を脱ぎ去った。あわてて首を後ろへ向けて、顔を紅く染めるニィナを引き寄せ、
その身に纏った簡素な服を脱がせにかかると、ニィナは跳ねるようにして腕を伸ばし俺の手から
逃れようとした。が、俺はニィナの腰の辺りを捕まえ、後ろに引く体を無理に自分の前に
固定させたまま、手早く服を剥ぎ取り、ニィナを裸に剥いた。
「あっ……」
「ん、これは外れんな。まあいいや」
頭のついていかないニィナが困惑の目線を投げかけるのを無視し、
俺はそ知らぬ顔で細い首に巻きついた黒い首輪を引っ張ったが、
見た目の割りに頑丈でどうにも外れなかった。大して邪魔にもならないので、
そのまま気にせず、ニィナの体を泉の中に沈めた。驚いたのか、ばしゃん、と
水音を立て尻餅をつくニィナに、俺は水を蹴りながら歩み寄った。
「何ぼーっとしてるんだ、久々に風呂にありつけたんだろう。もっと喜べ」
両手で水をかけながらそう言ってやると、ニィナはやっとことの意味を理解し、
目元を緩ませてゆるやかな笑みを見せた。そして、やはり数日間の汚れが気になっていたのか、
小さな手を頬にあて、ごしごしと拭い始めた。
俺は手に持った石鹸を慣れた手つきで泡立て、掻き混ぜるみたいにして頭を洗った。
その様子を感心した目つきで眺めているニィナの方を見、手を動かしながら言った。
「野宿することなんざそう珍しいことでもねーからな、こうして持ち歩いてるんだ」
「まあ、そうなんですか」
そしてざっと上から水を浴びて、泡を洗い流した髪の水気を切りつつ、ニィナに向かって
呼びかけた。
「さあ、おいで。体を洗ってやろう」
「え……、でも……」
「遠慮することないぞ」
俺は大股でニィナに近寄ると、その二の腕の辺りを掴んで自分に引き寄せ、膝の上に
座らせて向かい合った。ニィナに何か言う暇も与えず、手の平に石鹸をこすりつけると、
ニィナの体に塗りたくっていった。
「あっ」
ぴくんと、ニィナの尻尾が屹立した。体の上を、大きな手が滑っていく感触に、戸惑う目線を
送ってくる。俺はなめらかな肌を指で堪能しつつ、構わずに大人しくしているニィナの全身に
泡を擦り付けていく。
ニィナは強引に這い回る指と、気泡の頼りない冷たさに、眉間に皺を寄せ、じっと俺の手を
受け入れ続けている。見れば二つの耳は、俺の手が動くのに合わせてぱた、ぱたと揺れ、尻尾は
水に浸かったまま、先端で宙に曲線を描いている。俺はものの数分で、ニィナの首から下、太腿、
細い腕に、真っ白な泡をまぶした。
「どうだ、ひんやりして気持ちいいだろ」
「は、はい……」
もじもじと、困った顔をしてニィナは答えた。どこに目線を定めていいのか判断しかねる様子で、
俯いて、頼りなげに視線を漂わせている。俺はふと思いつき、口の端を上げて、ニィナにこう言った。
「そうだ、俺の体も一緒に洗ってくれないか。それなら手間が省けて一石二鳥だろう」
「え、ご主人様のも、洗う?」
「そう、こうだ」
ニィナの体を抱き寄せ自分に密着させると、俺はニィナの尻を抱えたまま、体を上下に滑らせた。
あっ、とニィナは短い声を上げた。ニィナに付着した細かい気泡が、俺にも擦り付けられ、俺が体を動かすたびに
ますますこちらへ移動してくる。
「こういう要領だ。わかったな?」
「あ……、は、は、はい、やってみます……」
俺の肩に手をかけて、ニィナはたどたどしく呟いた。そして、俺に抱きついて、
そっと肌と肌を重ねると、先程俺がしたのと同じように、ぎこちない動作で体を上下させた。
柔かい肌が全身に纏わりついてきて、俺はつい目を細めた。ニィナのほうは、意識を
集中させて、懸命に俺の体を洗っている。豊かな胸と太腿が、絡みついては上に下に滑り、
石鹸の淡い感触も相まって、俺はこれだけでじわじわと気分が高まってくるのを感じた。
「もういいぞ、よくやったな」
俺は体を放して、ニィナの頭を撫でてやった。ニィナは幾分ぼんやりとした目で、それでも
嬉しそうに満面で微笑んだ。てっきりこういった情事には散々付き合わされて慣れたものだと
思っていたが、反応を見るにどうも経験が薄いようである。
俺に応えるように、体を投げ出して快楽を高めてくるのもいいが、こうして初心な感じで
ぎこちなく戸惑われるのも嫌いじゃない。というより、むしろこっちの方が教えがいがあって
いいかもしれない。
俺は自然と昂ってくる体を抑え、ニィナにこう言った。
「体が冷えないうちに上がるか」
「はい」
ニィナは素直に従った。俺がニィナの体の泡を、指を使って隅々まで洗い落としてやる間、
じっと耳を伏せて、体を固くしていた。俺はその作業を終えると、ニィナを泉の縁へ連れて行った。
ニィナは頬の汚れも落ちて、最初見たときよりもずいぶん明るく、さらに好ましい造作になった
ように思える。本人もさっぱりした目つきで、あどけなく俺を見つめている。それでもその瞳の奥に、
裸であることの恥じらいを混ぜながら、である。
「こっちへおいで」
俺が静かにそう言うと、ニィナは頭を下げて、遠慮がちに近づいて来た。闇の中に見える体は真っ白で、
折れてしまいそうなぐらい細い。足の後ろに、生き物のように尻尾が揺れている。
俺は泉のほとりの平らな岩に腰を下ろすと、ニィナを腕の中に収めた。俺が引き寄せると、
ニィナは膝を折り曲げ、俺と同じ高さに顔を持ってきた。俺はすぐ近くにある唇に自分の口を重ねた。
「んっ」
ためらいがちに舌が引っ込み、ニィナは驚いたみたいに体を動かす。俺はしっかりニィナの体を抱いたまま、
ますます深くニィナの口内に侵入した。奥へ隠れた小さな舌を裏側から絡めとって、思いのままに嬲ってやる。
「ふぅ、んっ」
ニィナは苦しそうに顔をゆがめ、甘んじてそれを受ける。経験がないのか、下に目を
やれば、黒色の尻尾は緊張しているみたいに真っ直ぐに張り、ときどき波打っている。
すぐに舌を引こうとするニィナを叱り付けるように、俺はひたすらニィナの舌を弄り、
口の中いっぱいに自分の唾液を擦り付けた。
「はぁ、ぁっ」
ニィナは俺の強引で執拗なキスに、瞳を潤ませて懇願する顔をした。だが俺は
それを冷たい目で見下ろしながらゆっくりと舌を引き抜いた。まるで、
まだまだこれからだ、と暗示するように。
ニィナは、しばらく口を開けて、喘ぐみたいに空気を吸っていた。俺はそんな
ニィナの全身にむしゃぶりついてやる。乱暴に乳房を咥え、手は臀部をまさぐった。
ニィナはびくついて体を震わせたが、俺は構わずにニィナに愛撫を加え続けた。
ニィナの体の後ろで、尻尾は上に持ち上がって、先端だけ揺れている。
「あっ、あっ」
舌を動かすたびに声を上げるニィナを、俺は加虐的な目つきで眺め、
固くした全身をほぐすようにして刺激を与える。ニィナは完全に耳を倒し、
俺を嫌がっている様子でもないが、受け入れているわけでもなく、
逃げようとはせずにただ体を竦めている。ニィナの肌はしっとりと
なめらかで、指に吸い付くようだった。
その感触をたっぷりと楽しみながら、俺はニィナの二つの乳房を両手で掴み、
内側から押しつぶすみたいにして揉んだ。
「うぁっ」
ニィナの体が大きく跳ねた。痛みと、まだ快楽とまでいかないむずむずとした
疼きが這い上がってきて、困ったように眉を下げている。その変化をからかうように
眺めつつ、俺は丸い二つの胸を長い間まさぐった。
ニィナの胸は呆れるほど柔かくてマシュマロみたいだった。その先端に、
透き通ったピンク色の乳首が尖っている。指の先でそれを円を描くみたいにいじると、
ニィナはぴくぴくと体を揺らす。
腹や腰や太腿、尻を、時間をかけて手の平いっぱいでじっくりと丁寧に撫で回していると、
ニィナは段々と落ち着いてきた様子で、黙って俺の手の動きにあわせて目を細めている。
弱い刺激を感じるたびに、ニィナの尻尾は伸縮するようにして反応する。だが、その黒い瞳には、
まだ未知の感覚への慣れない戸惑いや、異性への恐怖感が混在していた。
それは俺にとって、そこはかとなく心地よいものだった。俺は平らな岩肌の上に
寝転がると、ニィナに、俺をまたいで俺とは逆向きに体を向けるように言った。
「え……でも………」
ニィナは不安と躊躇いの色を顔中に映して、窺うように俺を見つめた。俺は、何気ない
表情のまま、深く頷いてやった。何も怖がることはない、という風に。
それを見て、意を決したのか、ニィナはこわごわと俺の上に寝転がった。引き締まった尻が
俺の眼前に突き出され、その間の薄い色の花弁まで、隠すものもなく空気に晒される。
そしてニィナの目の前には、ちょうどそそり立った俺の男根がすぐそこにあった。
黒々と猛った異物を直視し、ニィナは引きつったような表情で目を見開いた。その後、
急いで顔を逸らすみたいに、後ろを振り仰いで、自分の脚の下に顔を埋めている俺を見た。
俺はやわらかく微笑んで見せた。
ニィナは俺の自信に充ちた目を見て、幾分安心したみたいに顔を緩めた。俺は俺で、
張りのあるニィナの太腿を掴むと、指と指の間を開いて丹念に滑らせた。ニィナの
花弁の上には控えめに菊状の穴があり、そのさらに上に、細かい毛の生えた尾が
空気を撫でるように揺れている。
「ご主人様ぁ……」
俺を振り見たまま、ニィナはぐずるように、鼻にかかった声を出した。俺は
それをあやす風に優しく、だが拒否を許さない断定する口調で、言う。
「俺のを、舌でしごくんだ。できるな?」
「……私が、ですかぁ……?」
「お前がやるんだ」
強い瞳で答える。目前に突き立った猛々しいものに、目のやり場すら困って
当惑していたニィナは、俺のゆるやかな命令に、観念したように息を吐き、
再び俺の股間に顔を戻した。
鼻先に突っつく距離に、凶暴なものが聳えている。畏怖があるのか、頭上の耳は前に
折れていた。こわごわと手を伸ばし、それを細い指で包み込む。ものをすっぽりと包む、
繊細な感触に、俺はつい体をぴくりとさせた。
するとニィナは驚いて指を引っ込めた。俺は言った。
「やめるんじゃない」
それを聞いて、はい、と素直に返事し、ニィナはまたそっと俺のものを握った。
もう片方の手を俺の腿に置き、ぎこちなく白い指を上下させる。俺はだんだんと
気分が昇りつめてくるが、それを表に出さず、変わらない声で言った。
「ニィナ、もっと強くだ。強く、速く」
「は、はい」
ニィナの尻尾は、俺の顔にかからないところで、漂うみたいに振れている。
それを眺めていると、何故か淫靡で高揚した気持ちが無性に湧いてくる。
ニィナは言われた通り、指に力を込めて必死に手を速め始めた。むずむずと
高まってくる快楽に、俺は口元を緩めながら、俺の上に寝そべったニィナの
秘所に目線を戻す。
それは、ニィナの髪の色と一緒の黒い毛にうっすら覆われ、閉じた貝みたいに
深く切れ目が入っている。その花びらの色は見事なピンク色で、今まで俺が
見た中で一番純真で、なおかつ衝動を激しく湧き上がらせる色あいだった。
「何て可愛いんだ」
俺は挑発するように言いながら、そこへ熱い息を吹きかけてやった。
「あっっ」
ニィナは俺の体の上で大きく揺れた。だが俺に太腿を抱えられているので、
体を浮かすまでには至らない。
「俺に見られて、ますます鮮やかなピンクに染まってるぜ、お前のここ」
「っ……嘘です……」
卑猥な言葉に、思わず反抗するニィナをからかうように、俺はそこへ
指を伸ばして、両側から花びらを外へ向かって開かせた。さらに濃いピンクの
中身が、隠れようもなく顔を覗かせる。
「嘘なもんか」
それをまじまじと眺めた後、俺は鼻が埋まるほどそこへ顔を押し当てた。
ニィナはぁっ、とまた声を上げ、無意識に逃れようとするが、俺はがっしりと
ニィナの体を固定し、舌先で花弁を撫で上げた。
「はっ、あっ」
「手がお留守になってるぞ」
「あ、は、はぃ……」
体を震わしながらも、俺に言われるとニィナは素直に俺の男根に意識を戻した。
俺はそれを好ましく思いながら、ニィナの花弁をますます強く責め立てる。
外側を唾液でまぶしたら今度は中に侵入し、固くしこらせた舌をくねらせる
ようにして暴れさせ、柔な肉壁に容赦なく擦り付けた。
「うぁっ、はぁっ、んっ」
ニィナは耐えられずに、その度に甘くすすり泣くみたいな声を漏らし、びくびくと
震えた。だが、俺の舌が止まると、また俺の男根を握る手に力を込め、精一杯俺に
言われたことを成し遂げようとした。
俺はそれをわざと邪魔するように、刺激に慣れない初心な花芯を、念入りに甚振った。
「ふぁぁっ、あぁんっ」
俺が花弁を愛するつど、ニィナの尻尾は俺の頭上で蛇が速くうねるみたいに大振りで
くねった。さももっと強い快楽を欲し、ねだっているように。
「尻尾がすごく動いてるぞ」
「っ、あっ、つ、つい、意識しなくても、か、勝手に動いてしまうんです……」
切れ切れにニィナは言った。尻尾が目の上で振れるのを見ていると、つい捕まえて
強く握ってみたい気持ちになってきたが、今は放っておいて目前の愛らしい割れ目に
集中した。ニィナのピンク色の粘膜からは、じわりと粘った汁が少しずつ湧いて出てきている。
俺は挑発するみたいに、舌を離しては勢いよくぬめった肉壁にあて、わざと
いやらしい音を立てた。それを四つの耳で聴きながら、ニィナは恥じるみたいに
頭上の耳を震えさせている。ニィナの手が懸命に俺のものをしごき続けて、俺は
途切れ途切れの弱い刺激に、そろそろもっと強い感触が欲しいと思った。
ニィナのピンクの割れ目から口を離すと、俺は言った。
「ニィナ、手はもういい。次は口だ」
「は……はい……」
短い指示に、ニィナは耳を折り畳んで躊躇いつつ、それでも俺のものを
目を見開いてまっすぐに見つめ、おずおずと桜色の舌を突き出した。ぺちゃりと
湿った温かいものが触れ、俺は息を吐く。ニィナは俺のものの下側を握ったまま、
そろそろと舌を当てていった。
その顔は真っ赤に染まっており、泣きそうなほど瞳は潤っている。
「男のものを見るのは、別に初めてじゃないんだろう」
「あ……は、はい……」
落ち着いた口調で尋ねる俺に、ニィナは恥ずかしげに返事をする。その間も、
大きく膨張した俺の男根から放たれる熱気を肌で感じ、圧倒されたように目を
眩ませながらである。
「今までのご主人様は、こんなことはさせなかったのか」
ニィナは湿った音を立てながら、俺の質問にたどたどしく答えた。
「わ……私は、すぐに追いだされてしまったので……する暇がなかったんです……」
「ほぅ?」
言いながら、俺はまたニィナの花弁に舌を当てる。
「はふぅっ、っ」
「横側から舐めるんじゃなくて、口全体で咥えろよ」
「あぁ……はい……」
言われた通り、ニィナは口いっぱいで俺のものを頬張った。湿った柔かい口内に
すっぽり包み込まれ、俺はますます猛った。すでに限界まで膨れ上がっていたと
思った男根は、ニィナの口の中でまだ膨張を続ける。
「んぅっ、うぅ」
それに脅えるように、ニィナは塞がれた喉から声を漏らす。
「ちゃんと根元まで呑みこむんだ」
「……ふぁい……」
さらに要求を出す俺に、ニィナは困惑しながらも従う。口の中が俺のもので埋まり、
苦しそうに眉間をゆがめ、それでも懸命に舌を動かしている。
尻尾のほうは、左右にしずかに揺れている。ニィナの意識は口に集中しているので、
振り出した尾が慣性でしばらく宙を舞うような、動きのない揺れ方だった。
「そうだ……そのまま続けろよ」
ニィナは息を漏らすみたいにしてはい、と言う。俺はニィナの花弁をまた責め始めた。
ニィナの全身は揺れるが、構わずに舐め上げてやる。ニィナはぐずりながら、
舌を使っては、俺の送り出す刺激に反応して止める、というのを繰り返していた。
数分経っただろうか、俺は自分の中のものがすぐそこまで昇ってきたのを感じ、
ニィナにラストスパートをかけた。より強く、速い速度で、ざらついた舌を
刺激に慣れない花肉にこすり付けていく。
「んぁっ、ぁっ、ふぁ」
ニィナはひくひくと体を震わせながら、子供みたいに声を上げる。それでも、
達するのは俺の方が先だった。
「んっ、っ」
俺の先端から、白いものが大量にほとばしった。それはニィナの口壁にぶつかり、
いくらか喉の奥へ滑り落ち、大半は地面に吐き出された。
げほげほと喉を押さえて、ニィナは目尻に涙を滲ませる。俺はおもむろに体を
起こすと、口の端に垂れた濁った液を、指で拭ってやった。
「あぁ、全部出しちまいやがって、勿体ないな。今度からはちゃんと飲むんだぞ」
「は……い……」
幾分疲れた瞳で俺を仰ぎ見ると、ニィナはそれでも従順に頷いた。俺は満足して
微笑み、ニィナを抱き寄せた。俺の膝の上に下ろすと、子供が用を足すときみたいに、
膝の下に手を挿し入れ、両側から大きく脚を開かせる。
「あっ、やぁっ、は、恥ずかしいですっ」
ニィナは叫んだ。恥部が惜しげもなく晒しだされ、俺の目の下で開いた貝の口が、
空気を吸っている。その下では黒色の尻尾が、感情の起伏に合わせてばたつく。
「さっきまで眼前のどアップで見られていたのに、今さら恥ずかしいことがあるか」
「で、でも、こんな格好、ぁっ」
俺はニィナを揶揄するように、二本の指をニィナの花弁に挿しこんだ。黒く柔かい毛を
掻き分けて、指の関節を折り曲げ、中に沈めてやる。
「ぁっ、ぁぁっ」
「俺に舐められてヒクヒクしてたくせに、澄ましたって駄目だ」
俺は指を中に入れたまま、激しく掻き乱した。俺の指の下で、柔かい花弁は
捲くれ上がり、いやらしい音を立て始める。上下に手を滑らせて花弁に
こすり付けてやると、ニィナは泣きながら身をよじらせた。尻尾が暴れるみたいに
ばたばたと律動する。
「うぁっ、ぁっ、ご主人様ぁっ」
「イきたいなら、イってもいいぞ」
「ぁ……イ……く……?」
途端にニィナは、ぼんやりした問いかける目で俺を見上げる。
本当に意味がわからないようだ。
くすりと笑うと、俺は指の先で、肉の鞘に守られたニィナの小さな豆を見つけ出し、
丁寧に苛めてやった。指の腹ですりつぶすように摘み上げると、華奢な肢体は
俺の膝の上でびくびくと喘ぐ。耳がぴーんと張るのに相対して、尻尾は地面の上で
跳ねるみたいによくうねる。
「ぁっ、ご主人様ぁっ、そ、それ、変ですぅっ」
「どうした? どう変なんだ?」
なおも手をいやらしく動かしながら、俺はそ知らぬ言い方で訊いた。
「はっ、はじめて……こんなの……ぁっ、んゃっ」
「お前が感じているのは、よく躍る尻尾を見てれば一目瞭然だ」
意地悪に言ってやる。そう言っている間にも、俺が指の間で強く豆を挟むのに
反応し、尻尾は勢いよく波打っている。
「っぁっ、み、見ないでっ……くださいっ……」
「見るなと言っても、目に入ってしまうだろ」
「自分でも、止められないっ……ぅぁっ……んですぅっ……」
ニィナは羞恥に顔を歪める。俺の目の下で、耳はぶんぶんとはためき、空を切った。
俺は、ニィナの花弁を掻き混ぜながら、もう片方の手でニィナの胸を掴み上げる
みたいにして揉みしだいた。
「はぁっ、ぁっ」
一段と高い嬌声を上げるニィナを見ていると、俺はまた自分のものが熱く屹立し、
硬さを増してくるのがわかった。俺は一方の手をニィナの膝下に戻すと、びくびくと
血管を浮き上がらせる男根をニィナの花弁に擦り付け、そのままこすり上げた。
「はあっ? あんっ、うぁぁっ、ふぁぁん」
ニィナが驚いたように大きく鳴いた。今までで一番顕著に反応し、俺の腕を
必死に振り解こうとした。が、俺はそれを残虐な気分になって見つめながら、
ニィナの脚に指を食い込ませ、ニィナの体を上下させて自分のものに押し当て続けた。
「やぁっ、やだぁっ、あ、あぁっ」
「どう嫌なんだ、ここが嬉しくって涙を流しているじゃないか」
「やあっ、やめてぇ、やめてください、ご主人さまぁっ」
ニィナは涙を流して懇願した。それでも俺の言ったとおり、ニィナの花びらからは、
大量の透明な蜜が溢れ出て、俺のものに絡みつき、それが余計に滑りをよくし
動きを加速させている。
「はぁっ、んぁっ、ぁぁっ」
「舐められるより、こすられるほうが好きなのか」
低い声で俺は、動きを緩めないまま、訊いた。
「あぁっ、やっぁ、だぁっ、こんなの、おかしく、んぁっ……なるっ……いや、です、
ご主人さまぁっ……」
空気を探し求めるように、ぱくぱくと口を開いて、ニィナはたどたどしく喘ぐ。
奥まで舌が入り込む繊細で細かい刺激とは違って、硬い棒が入り口に擦り付けられている
だけなのだが、その有無を言わせない強くて熱い感触が、初心な花弁を震わせ、
ニィナから正気を奪っている。
「正直な子だ……」
俺は呟いて、いっそう強く男根の腹をニィナの花弁に埋め、花びらを内側から擦り上げた。
はあっ、あぁん、とニィナは喉をびくつかせる。花びらは捲くれ上がっており、その周辺の
細い毛も巻き込まれてもみくちゃになっている。内部に当てられた男根は、容赦なく
下から突き上げるみたいにして、柔かい肉に擦り込まれていく。
花びらが捲れて露出した肉の豆が、ちょうど亀頭の切れ込みに当たって、えぐるような
快感が花弁を貫き、体中を痺れさせる。それにさんざん弄ばれながらも、ニィナは
なかなか達することはなかった。ただ目の芯を蕩けさせ、白みがかった風景を見つめる
ようにしてぼうっと口を開けている。
そうこうするうちに自分の方が到達しそうになり、俺はニィナの腰を少し浮かせると、
その花弁の真ん中に自分の先端をあてがって、中へずぶずぶと沈めていった。
「っ、っあっ? んぁぁっ」
ニィナは嫌がるみたいに腕をばたつかせたが、俺は取り合わなかった。ニィナは
涙を零しながら、背筋をぴんと張り、尻尾は固くなって動きをひそめている。ニィナの
花肉が押し分けられ、内部に硬いものが侵入する。その異物感に身を細かく震わせながら、
ニィナは耳をばたばた、ばたばたと二回ずつ何度も振り倒している。
俺は全部沈めようと思ったが、ニィナの華奢な花弁は、俺の全長の中間ほどまでしか
受け入れなかった。それでも半分入ったので、俺はニィナを両手で抱えて、その体を
上へ下へと滑らせた。ニィナの軽い肢体は、簡単に上下する。
「はっ、あっ、っぁあっ」
「……ニィナ、お前は今までご主人様に、されたことがなかったのか」
あまりに身を竦めて、痛みに耐える声を上げるニィナに俺は尋ねた。ニィナは、
きつく瞑った目の片方をこわごわと開くと、喘ぎ喘ぎこう言った。
「はっ、あ、ま、前の旦那様は、さっきまでご主人様がしてたようなことを、私に、
されました。で、でも、わたしはその次が、私が、ご主人様を受け入れるのに
小さすぎて、入らなかったんです」
ニィナの返事を受け、俺は納得した。
「成る程な、だから経験はあるが処女ってわけか」
「しょじょ?」
呂律の回らない舌つきで、ニィナはとろりと口に出す。俺はかすかに笑うと、
何でもない、と言った。
「はっ、ぁっ……あ、処女……はい、そう、っ、ですっ……」
体中を緊張させ、俺のものが中に入り込み、肉壁にこすり付く感触を懸命に
受け入れ続けるニィナは、少しして言葉の意味を思い出したのか、こう言った。
「……しかし、それにしてもその主人は、お前に他のことをちっとも教えなかったのか」
大きさに相違があり過ぎて受け入れられないとしても、なら余計に別のことに
力を入れそうなものである。
ニィナは口を開いて息を吸い込み、そこから舌を出したまま、答える。
「はっ、あ……わ、私は、やらされたけど、下手くそで、ちっとも覚えられない
ままでした……ちゃんと教えられる前に、奥様が、私が旦那様に抱かれているところを
見て、怒って、んぁっ、追い出され……ましたし……」
ようは見目麗しい猫が、主人に愛撫されるのが、たった数日間でも我慢できなかったと
いうことだろう。女性の飽くなき嫉妬心というものを感じ、俺は心の中でため息をついた。
目下の少女は、黒い相貌を苦しげに伏せて、体を強張らせたまま、俺の繰り出す動きに
耐え続けている。
それでも、俺が根気強くニィナの体を揺すり、腰を突き上げていると、だんだんと
中の滑りが良くなって来た。はっ、あぁっ、と、ニィナの漏らす吐息も、少しずつ
堂に入ったものに変わってきている。
「………小さいな、お前のここ」
俺は指摘した。ニィナは顔を紅くして俯く。
「ご、ごめんな……さ……」
「別にあやまることじゃない」
俺はひんやりとしたニィナの髪に顔を埋めると、その匂いをいっぱいに嗅いだ。
柔かくて甘い匂いがした。
空気を全面で浴びるみたいにして動く耳に、舌を挿しいれてみた。びくん、と
跳ね除けるように大きく振れたが、毛の生えた裏側から、じっくり舐めてやる。
窪んだ表側を、ざらついた舌で掻きまわすと、ニィナはうっとりと目を蕩けさせた。
下に垂れ下がった尻尾は、その先を俺の足首に巻きつけている。ふわふわした毛の
こすれる感触が、何とも言えず心地よかった。
「しっかし、その旦那様ってのは相当なデカマラだったんだな」
俺が呟くみたいに口に出すと、ニィナは否定の色合いを瞳に映した。
「はぁ、っ、あっ、ち、違います……」
そして、俺の腰の動きに全身をびくつかせながら、一生懸命に説明した。
「あ、だ、旦那様は……わ、私を、こんなに丁寧に、扱ってくれませんでした。あっ、
わ、私は、あの方には、こんなに、その、濡らしたり、出来ませんでしたし……それが
表に出て、あの人のものを、受け入れられなかったんだと思います。その、私は、
ご主人様だから……ご主人様の、ものだから、……んぁっ……こ、こうして、
受け入れてるんだと……ふぁっ、あっ、……思うんです……」
「………」
可愛い奴。俺はいっそう手に力を込めると、ニィナの体を引き下げるようにして、
自分のものを根っこまで突き入れた。
「あぁっ、ぁぁっ……ぁぁあ……」
ニィナは脚をばたつかせるみたいにして反応した。初めて、男のものをいっぱいに
受け入れ、びくびくと震え、尻尾は俺の足首から離れて宙を喘ぐ。
「今度は俺のものを全部呑み込めたじゃないか」
「……っ、はいっ……」
嬉しそうに、ニィナは喉から声を絞り出す。俺は誉めるように、
ニィナの耳を舐めてやった。
「はぁっ、あんっ」
ニィナはますます深く吐息を漏らし、体をくねらせた。
俺が自分の快楽を高めるよう、ニィナの中で自分のものを突き動かすと、ニィナは
びくびくと耳をはためかせる。尻尾は大きく揺れ、俺の膝の裏側から、ふくらはぎに
かけて巻きついた。その先端が撫でるみたいに肌を張って、毛玉が通っていくような
感覚に、俺はいっそう自分のものを猛らせた。
「うぁっ、ぁぁっ……」
ニィナは涙を零しながら、初めての痛みに耐えている。俺はこそげ落とすように、
ニィナの内部を掻きまわす。ただでさえ狭い道が、生まれて初めて受け入れる異物を
はね返すようにひくひくと収縮し、俺は温かい内部がきつく自分に絡みついてくるのに、
ますますニィナの体を揺する手を速める。
「あっ、あっ、ぁくっっ……」
苦痛を感じながらも、うっすらと悦楽を理解し始めているニィナに、俺はさらに
胸をしだいてやった。二本の指で乳首を転がし、先端をじっくりとこする。
「はっ、あぁっ」
「お前のここ、つんと立ってるぞ。石みたいに固くしこってる」
「はっ……嘘……」
「嘘じゃないさ」
にやりと俺は言う。そして、さらに奥までニィナをえぐっていると、不意に
ニィナの尻尾がぴこんと上に上がって、俺の背中の裏側を撫でた。
ほわほわした短毛が、頼りなく肌の上を滑っていく。股間の熱くて湿った、
ぬめった感触を感じているときに、同時にこうして触れられると、何と言うか。
これは、いい。なかなか癖になる気持ちよさだ。
俺は無意識に口の端を上へ釣り上げた。
「いいぞ、気持ちいい」
「はぁ、あぁんっ」
渦の真っ最中にいるニィナには聞こえないようで、尻尾はニィナの意思に関係なく、
別の生き物のようにますます強く俺の体に擦り付いて来る。俺がそれを後ろ手で強く
握ってやると、ニィナは感動したみたいに高い声を上げた。
「あ、あぁっ、な、なんか……来る……こわいっ……」
「怖いもんか。俺がついてるさ」
俺が手の中の尻尾を逃がさずに、しごくみたいに丹念に手を上下させると、ニィナは
ぴくぴくと脚を震わせ、限界を訴えた。俺は心得たように頷き、最後の追い込みで腰を
じっくりと、尚且つ強く動かす。
「あぁっ……ご主人様ぁっ……」
泳ぐように手の平を漂わせるニィナに、俺が指を絡めてやると、そのまま
強く握ってきた。ニィナは爪を食い込ますぐらい力を込め、自分の中に
昇り詰めてくるものを待った。やがて、俺を包み込む花弁が、さらに強く
ぎゅっと俺を締め付けた。
「は、あぁっ、あぁぁあんっっ」
ニィナは声を上げた。それを追いかけるようにして、俺も果てた。
ニィナの中に思い切り、欲望を吐き出す。それがばしばしと奥へ
ぶつかる感覚に、ニィナは喉を極限まで絞って、長く細い嬌声を上げ続けた。
「んっ、くっ」
俺から最後の一滴を搾り取るように、ニィナの内側は痙攣したみたいに俺を
長い間締め続ける。それに自分の濁りをすべて流しだすと、俺はニィナから
体を離した。岩の上に全身で仰向けに寝転がり、その上にニィナがぐったりと
横たわってきた。
初めての絶頂を知り、尻尾は熱く昂ぶった余韻を冷ますように、虚空の中を
ゆっくりと泳いでいる。長い睫毛を伏せて、俺の胸の硬さを感じるみたいに
目を閉じているニィナの頭上で、二つの耳が切っ先だけ、ぴくぴくと空を払っていた。
俺は腕を動かしてニィナの頭を優しく撫でると、その耳も指先でそっと
触れてやった。喜ぶみたいに、俺が触れるたび、ぱたぱたと早く揺れる。
中の窪みに指を入れて丁寧になで上げてやると、心地良さそうに尾が中空を回って、
恍惚とした表情になってニィナは俺の胸に顔を埋めている。
「ニィナ、なかなか良かったぞ。俺はお前が気に入った」
「ほんとですかぁ」
ニィナはうつぶせたまま顔を上げた。
「ああ、本当さ。お前がこれからも素直で俺の言うことを聞くなら、
ずっと可愛がってやろう」
「嬉しいです。私も、ご主人様のことが、好きになりましたから」
頬をほんのり赤らめて、ニィナは俺の胸に子供のように手を置いたまま、
そっと言った。
俺がその言葉に何か言う前に、ニィナは再び俺に頬をくっつけて、そのまま
静寂の眠りの中に落ちていった。
静かな寝息が、闇の中に流れては消えていく。ニィナの耳は呼吸に同調して
かすかに揺れ、尻尾はくるりと巻いて、俺の足の上に置かれてある。その繊細な
柔かい温かみをじっと感じていると、自然に口元が緩んできた。俺は壊れやすい
宝物を抱えるみたいにして、そっとニィナの背中に両腕を回すと、固い石の感触を
背中に感じつつ、瞼を下ろした。気温は少し肌寒いが、体温の高い猫と一緒なら、
心地よく眠れそうだ。
終わり