ピンポーン
「は〜い」
コタツでみかんを食べながら、ぼけらっとゲームをしてた俺は、気だるそうに答え、玄関を開ける。
そこには、隣の家の娘がこぼれんばかりの笑顔を見せ、佇んでいた。…えっと、名前は何てったっけか。
「あ、こんばんは! これ、少ないけど福のお裾分け!」
「え? あ、ああ。今日は節分か。どうもありがとう」
真っ白な歯を見せながら、隣の娘は小さな袋を俺に差し出す。
手にとって中身を確認した俺は、日付を思い出しながら礼を言った。…まあいっか。名前なんて。
そういや最近、日付に関係無い生活送っているからなあ……。何とかしなきゃな。
などと考えている俺に、指をピシリと突きつけながら彼女は言った。
「いい、必ずちゃんと撒くんだよ? で、そのあとは自分の年の数だけ食べるの!」
「ん、分かったよ。どうもありがとさん」
やれやれ。学校だかテレビだか知らないが、いかにも『さっき聞きました』って感じだな。
だが、自信満面な笑みを浮かべる彼女の顔を見ていると、何故かこちらも笑みを返したくなってしまう。
念のために言っておくが、俺はロリコンでは無い。ただ…何て言うか、不思議とそんな気分になるんだよ。
残念だな……あと何年か経てば、母親に負けないくらいの美人になるだろうに。
かと言って、今から手懐けておくってのも……って、さすがにそれはマズイか。
「?? いい、ちゃんと撒いてね? それじゃ、おやすみなさ〜い!」
「あ、ああ。お、おやすみっ」
ふと我に返ると、女の子は怪訝そうな顔をして俺を見上げていた。
が、俺と視線が合うと例の笑顔を見せ、手を振りながら自分の家へと戻っていった。
ああしてると、一見平和な家庭に見えるんだが…ねえ。
とりあえず俺は軽く首を振り、そんなことを考えながら、扉を閉めた。
「ふ〜う…そろそろ……寝るとすっか」
ゲームが一区切りついた俺は、パソコンの電源を落としてそのままゴロリと横になった。
…すると、ドスンバタンという振動が、隣の部屋からかすかに伝わってくる。
「やれやれ……ちょっと前までは静かだったのになあ………」
思わず溜め息がこぼれる。そう、何をしているのかは知らないが、ほぼ毎日ドタバタ聞こえてくるのだ。
そもそも、隣の部屋はいわゆる「いわくつきの物件」てことで、長いこと入居者はいなかったのだ。
で、去年久々に若い兄ちゃんが入ってきたのだが、すぐあとに娘と奥さんらしい二人がやってきて、
それ以来、こんな調子だったりするんだ。にしても……よく飽きねえなあ………。
まさか怪しい宗教に染まっていて、毎日除霊の儀式をしている……は、無いか。
宗教に嵌っていたら、豆持ってくる前に妙な教典とか変な壺とか持ってくる…よな。
そこまで考えてふと床の上を見る。そこには、さっき娘が持ってきた豆の袋が転がっている。
別に豆まきの趣味は無いし、一人でするのも寂しい……もとい、馬鹿らしいからなあ。
……でもま、せっかく貰った貴重な食べ物なんだ。明日の昼食にでもするか。
しっかし……よく考えりゃあ、あの娘って兄ちゃんの子どもにしては、かなり大きいな。
だとすると…ふうむ。ああ見えて昔は結構遊んでたのか……いや、それは無いな。
大方、子連れのシングルマザーに上手く引っ掛けられたんだろう。
でも、あんな美人なら引っ掛けられても問題無し、かも知れないな。
やはりあの娘を今から手懐け……いや、だからそれは犯罪だ。
いくらなんでも、ゲームと現実の世界を混同させるわけにはいかない。シャレにならん。
……などと彼女もなく、まともな職にもありつけず、日がな一日ゲームばかりしていて、
引っ掛けられる可能性の可の字も無い俺が、そんなこと考えてても虚しいだけ、だよな……。
そんなことを考えているうち、いつの間にやら俺はいつの間にか夢の世界に直行していた。
「こらこら、部屋の電気も消さずに眠るなよ。勿体無いだろ」
「…うん? 誰だあ?」
不意に何者かに揺り起こされた。俺はその声に、起き上がりながらぼうっとした頭で答える。
「まったく……戸締りくらいしておけよ。さもないと、こういうのが入ってくるんだぞ」
再び声がする。この声は…女の人か……ちょっと待てよ。俺って確か一人暮らし、だろ? ということは……。
「ど、どろぼ……む、むがぐうっ!? …い…いぎ……」
「五月蝿いな。近所迷惑だろう?」
思わず叫ぼうとしたが、背後からいきなり右腕と口元を押さえ込まれた。
右腕を捻り上げられ、あまりの痛さに思わず悲鳴が漏れる。
「なあ、大声を出さないって約束出来るか? だったら手を離してやるが、どうだ?」
「……………」
耳元での囁きに無言で何度も頷きながら、肯定の意を示す。…痛い、離してくれえ……。
「よし。さてと……ゆっくりとこちらを向きな」
涙目の俺は、言われるがままにゆっくりと向き直った。そこには見たことも無い女性がいた。
やや吊りあがった目が印象的なその顔は、かなりの美形ではあるのだが、
くちびるを歪め、皮肉っぽそうな笑みを浮かべている。
だが、それ以上に俺が目を引いたのは、その出で立ちだった。
浅黒い肌とは対照的に、光り輝くアクセサリーの数々と、その手には巨大な羽根付き扇子。
着ている服はふた昔前に流行った、今は亡きジュリ○ナ東京まんまなボディコンで、
しかもその柄は、ひと昔前に流行った豹柄……ではなく、何故かトラ柄。随分と派手な泥棒だ。
「! 〜〜〜〜〜〜!!!!」
彼女は突然、俺の口を塞いだかと思うと、思い切り俺の足を踏んづけてきた。
不意に襲い掛かる激痛に悲鳴をあげようとしたが、塞がれた口では当然のことながら声は出せない。
「悪かったな。ふた昔前で」
凄みを利かせた声で毒づく彼女。どうやら心の中だけでなく、無意識のうちに口にしていたようだった。
「悪くない」と言おうとしたが、声を出せない俺は必死に首を振った。
「………ったく…仕方ねえだろ……一回りでコロコロ流行が変わるほうが変なんだっての……」
「……はあ?」
「何でもねえよ! 黙ってろ!」
言いたいことが伝わったのか、俺の口から手を離しブツブツ何事かつぶやく彼女。
よく聞き取れずに反射的に聞き返したが、あっさりと一喝されてしまう。うう…怖え……。
「まあいいや。とりあえず、本懐を遂げさせてもらうとするかな」
「は? あ…あの? ど、どういうことでしょうか?」
しばらくじっとしていたが、気を取り直したように顔をあげてこちらを見据える。
う……まさか…居直り強盗殺人か……?
「どうもこうもない。こういうことさ」
「うわ! ちょ、ちょっと!」
言うや否や、彼女は俺をあっという間に組み伏せる。俺は抗議の声をあげるのが精一杯だった。
「さて……と。ん……んんっ………」
彼女は俺の両手を押さえたまま馬乗りになり、舌なめずりをしたかと思うといきなりくちびるを奪ってきた。
突然のことに、頭の回転が止まっている俺の口の中に、柔らかい物が入り込んでくる。
それが彼女の舌だということに気がつくのには、少し時間が掛かった。
「ん? んんっ……あまり乗り気じゃなさそうだな。だったらさっさと済ませてしまうぞ」
舌を抜いて上半身を起こしながら、おもむろに俺の服をめくりあげる彼女。その声はかなり不機嫌そうだ。
「あ…あのう……出来れば…あなたが何者で、何故こうなっているのか、説明して欲しいのですが…」
「はあん? 説明だあ? そんなことが言える立場だと思ってるのかあ?」
思い切って、自由になった左手を軽く上げながら彼女に問いかけた。
「え、あ、あの…す、すいません」
「まあいいや。ワタシは貴代子……人間からは鬼と言われている存在だ」
「……………………。お…鬼ぃ!?」
怖いので、素直に謝る。そんな俺を見て、肩をすくめながら彼女は言った。
しばらくの間、時間が止まったような気がする。が、我に返った俺は声を限りにして叫ぼうとして――
「!? ぐわぐぐっ!!」
「声がでかいんだっての。今度叫んだら首へし折るぞ」
再び彼女――貴代子に口を塞がれていた。いや、口を塞ぐなんて生易しいものではない。
どちらかというと、下顎部を押さえつけている、という表現が正しいかもしれない。
しかも、指に力が入っているおかげで、顎がギシギシ悲鳴をあげている。
俺は必死に、抵抗の意思が無いことを目でアピールした。
何せ、さっきみたいに顔を動かそうとしても、ピクリとも動かなかったのだから。
「フン。……それでな、何でこんなことをしているのかと言うと、人間の生き肝を食すため、さ」
「い……生き…肝……?」
顎から手を離しながらつぶやく貴代子。俺は叫びたい衝動を必死に堪え、かすれ声で質問した。
「そう……生き肝…力を蓄えるために、な………」
うっとりとした表情で、俺の左胸を指でつつつっと撫で上げる。
思わず背筋に冷たいものが走り、全身をビクンと震わせてしまう。
「……ふふっ、暖かい鼓動を感じるぞ。いいねえ……久しぶりだよ、この感触………」
「はあ…うっ……」
指で胸を撫で上げながら、伸びた爪先でちょんちょんと頂を突っついてくる。
そんな、軽い痛みを伴う微妙な刺激に抗えずに、くぐもった悲鳴がこぼれてしまう。
「で、せっかくワタシのエサになってくれるんだ。
その礼として、最期にイイ気分を味あわせてやろうと思ったんだが……」
「だ……だが…?」
貴代子はそこまで言って、一旦言葉を切った。沈黙が怖くて声が漏れ出す。…嫌な予感はするのだが。
「………本人が乗り気じゃないのなら、もう頂こうかと思ってな」
「わ、わわ! ま、待って!」
優しく左胸を撫で回していた右手の動きが突然止まり、そのまま左胸を鷲掴みにしながら言う。
とっさに俺は左手で貴代子の二の腕を掴みながら、小声で叫んだ。
「……どうした? 命乞いなんかしたって無駄だぞ。何せ自分が悪いんだから、な……」
「…………。そ…そうでなくて、さ、最期にイイ気分ってのを…味あわせて欲しいな、と思ってさ」
鼻で笑いながら、右手に力を込めてきた貴代子に対し、痛みに顔をしかめながら何とか説得を試みた。
本当は「助けて」と言おうとしたのだが、先に「無駄だ」とか言われたので口からでまかせ、
先延ばしにすることで、その間に助かる手段を見つけ出そうと考えを変えた。
鬼なのかどうかの真偽はともかく、彼女の力は本当に強い。
力任せに何かしようとしても、簡単に押さえ込まれるのがオチだろう。
「……………ふうん?」
「…え……えっと…その……」
と、顔を目の前まで近づけながら、貴代子は鼻を鳴らす。まずい、考えが読まれてしまったか?
「……あのなあ。子どものころ、教えられなかったか?」
「は?」
呆れ顔でため息をつく貴代子。意味が分からずに、思わず聞き返してしまう。
「相手に物事を頼むときは、どうすればいいのか、をさ」
「あ……あの…お、お願い…します……」
俺の鼻を軽く摘まみながら、ゆっくりと言った。まるで、悪ガキを諭すような口調で。
「ああん? 何をだ? …これは教え直しか、お仕置きが必要、かな?」
「その…さっき言ってた、イイ気分を……味あわせてください……」
ほんの少しだけ眉をひそめながら、摘まんだ鼻をツンと引っ張りあげる。
貴代子の言葉の意味を想像し、悪寒が走りながらもどうにか言った。
もっとも、鼻を摘まれてるおかげで、変な声になってしまっていたが。
「ふふん、そっかそっか。ま、せいぜい楽しんでくれやな。ん……んんんっ……」
納得したのかどうかよく分からない、微妙な笑みを浮かべた貴代子は、再び俺のくちびるを奪ってきた。
「ふん…ん……んんっ…」
くちびるの隙間から、何か柔らかいものが潜り込んでくる感触。
――そう、さっきと同じく舌だ――はしばらく俺の歯茎周辺をまさぐり続けていたかと思うと、
ぴったりと閉じ合わせていた歯と歯の隙間を突っついてくる。まるでドアをコンコンとノックするかのように。
すると俺の口は、まさにノックされたドアの如く、半ば無意識のうちに開いていた。
「んんっふっ………ふうんっ……」
貴代子の甘い声とともに、彼女の舌が俺の舌に触れた。
その瞬間、彼女の舌は目当てのものを見つけたとばかりに、動きが活発化する。
俺は自分の口中を、意思とは関係ない何かが這い回る感覚に、
違和感と同時に奇妙な快感を覚え、彼女の舌のなすがままになっていた。
「くふ……んっ……。何だ、こういうのに慣れてはいないのか? 随分とおとなしいな」
「……ん…あ………」
半ば意識が途切れている俺に、貴代子が戸惑い気味に顔をあげて問い掛ける。
俺は呆けたような表情で、意味を成してない単語を口走るのが精一杯だった。
「まあいいや、時間はたっぷりある。楽しませてもらうぞ。ゆっくりと、な……」
「はあ……うっ……」
悠然とした笑みを浮かべたかと思うと、貴代子は舌を伸ばして俺の胸をチロリと舐め上げた。
その途端、言いようのない刺激が全身を駆け巡り、思わず声が漏れ出た。
「ん。ここまで反応が早いと嬉しいぞ。こちらとしてもやりがいがある。んふっ…んっ」
「ああ! あうっ!」
舌を離し、満足そうな笑みを浮かべたかと思うと、今度は胸の頂に吸いついてきた。
先ほどよりも強い刺激に四肢がビクンと反応し、あえぎ声が漏れる。
そんな俺の姿を見た貴代子は、満足そうに俺の胸を蹂躙し続けた。
「ああう……はあ……あ…っ……」
あれからどれくらい経過したのか、貴代子はひたすらに俺の胸をなぶり続けている。
片方の胸に、ちゅぱちゅぱと音を立てて吸いついたり、
舌で頂を転がしたりしながら、もう片方の胸の頂を親指と人差し指で挟み込んで
軽く揉みあげたかと思うと、突然5本の指でさわさわと撫で上げたり――。
助かる手段を考えるという当初の目的はどこへやら、理性を失ったままひたすらあえいでいた。
「ん……。胸が感じるのか。もっと、もっと気持ちよくなりたいか?」
「……ひや…あ………」
貴代子の問い掛けにもまともな返事を出せず、ただ顔をガクガクと動かすだけだった。
虚ろなその目は、すぐ前にいる貴代子が見えていたのかどうか、それすらも怪しい。
「まったく……まあいいや、本懐を遂げる前に狂ったりするなよ」
「………あ?」
呆れ顔で貴代子はゆっくりと体を起こした。快感が途切れた俺は、無意識のうちに天井に手を伸ばす。
「あ〜わ〜て〜る〜な。ちゃんと気持ちよくさせてやるからよ」
「あぐうっ!?」
俺の手を優しく握り返し、貴代子は俺の下腹部にそっと顔を埋めた。
突然のことに、下半身が痙攣したように震え、同時に叫び声をあげてしまう。
「叫ぶな、と言ったはずなのにな。まあいいや、今回だけは見逃してやるよ」
言うや否や、口を使って器用にズボンのファスナーを下ろしていく。
すると、隙間からテントを張ったトランクスが姿を現した。
「…う〜ん。まだ触れてもいないのにこの状態か。本当に胸が弱いんだな」
「あ……ああっ……」
握っていた手をそっと離したかと思うと、ツンツンと胸の頂をつつきながら貴代子は言った。
だが俺には声は聞こえておらず、ただ胸からの刺激に敏感に反応するだけだった。
「さてさて、御開帳といくか」
「いや…あ………」
舌なめずりをしながらズボンのベルトを緩め、裾に手を掛けた。
弱々しく手を伸ばし、軽く首を振りながら口からは拒絶の言葉が漏れ出す。
「おいおい、手前で腰浮かしといて、嫌も何もないだろ」
心底呆れた、という声。その指摘の通り、俺は自分でも気がつかないうちに、自ら腰を浮かしていた。
「何だかな。続けたいのか止めたいのか分からないんじゃ、どうにもならない。これで止めとくか」
「え!? …あ……!」
首を振り、ため息をつく貴代子に、俺は必死に手を伸ばしていた。
「そ…その……つ、続けて…くださ…い……」
顔を目の前まで近づけ、俺の手を優しく握り返しながら、貴代子が言った。
俺はぼうっとした頭の中、どうにか口を開いた。が――
「ふうむ。そっか…どうしよっかな〜?」
「ええっ! そ…そんな……!」
手を振り払い、ぱっと上半身を起こしたかと思うと、顔を横に向けてつぶやく貴代子。
言いようのない不安に襲われた俺は、貴代子が目だけはじっとこちらを見つめていたのにも気づかず、
ただ手を伸ばしながらぽそりとつぶやいた。
「んん〜? いいのか〜? ホントにいいのか〜? 知らないぞ〜♪」
「え……あ…は、はい……」
待ってましたと言わんばかりに顔をこちらに向けながら、貴代子は嬉しそうに言った。
一抹の不安が脳裏をよぎった――ような気がしたが、口からは肯定の言葉が漏れ出ていた。
「ようしっ。それじゃ……」
舌なめずりをしながら、貴代子が再び俺のズボンの裾に手を掛け、ゆっくりと引きおろし……
「あ。ちょっと待てよ」
「は……ああっ!?」
始めたところでピタリと手を止め、顔をあげながら何かを思い出したかのようにつぶやく。
俺は、丁度これからモノが顔を出すという所だったため、黒々としたヘアだけが姿を現しているという、
かなり間抜けな、男としては屈辱的な格好を、貴代子の前に晒す羽目になっていた。
羞恥のあまり、反射的に声をあげ、思わずズボンをたくし上げようとする。
が、貴代子が押さえているズボンはピクリとも動かなかった。
「……っと。何を続けるのか、聞いてないな。なあ、アンタはワタシにこれから何を続けて欲しいんだい?」
「え…あ……えっと…そのう………イ…イイ気分を……味あわせて……」
貴代子がゆっくりと俺に尋ねてきた。俺がズボンに手を掛けた瞬間、ぞっとするような冷たい笑みを浮かべて。
一瞬、今現在の状況を忘れていた俺は、必死に状況を思い出しながら、声を絞り出して答えた。が、
「なんだあ? 聞こえないぞ? 男ならはっきりと喋ろよな。ま、男じゃないってのなら、別だがな」
ズボンに手を押さえたまま上半身を俺にもたれかかせ、耳元でつぶやく貴代子。
にやりと笑うその顔は、まるで悪魔のそれを思い浮かばせた。……って、鬼だったか。
「イ…イイ気分を、味あわせてくださいっ!」
「何だ、やれば出来るじゃないか。結構結構」
目を瞑りながら声を大にして哀願する俺を見て、満足そうに笑いながら再びズボンをゆっくりと引きおろし始めた。
「ふふふっ。ちょっと皮かむりだが、それなりなモノを持っているな。
……もっとも、ズボンを脱がされている本人の姿は、男と言うより幼児、だがな」
「あ…ああっ……」
ズボンという縛めを解かれたモノが、ピンと天井を向く。
それを見た貴代子は嬉しそうに微笑み、多少嘲りの感情が交じった声で言う。
一方の俺は、そんな貴代子に反論することも出来ずに、ただ羞恥にまみれた声を漏らすしかなかった。
だが、貴代子は俺を追い込むように、さらに追い討ちの言葉を口にする。
「しかし……こんな状況でもビンビンになるなんてな。アンタ、マゾの気でもあるのか?」
「はあうっ! ……い、いやっ……そんな……」
モノの先端をピンと指で弾きながらひとこと。
俺はモノから伝わる刺激に身を捩じらせながら、弱々しく首を振ってどうにか否定した。
「ふうん。じゃあさ、ここからどんどん汁が溢れているのはどうしてだ?
たとえ胸が弱かったとしても、もう胸には触っていないんだから、これ以上は溢れないはずだろ?」
「ああっ……そ、それ……は…」
首を傾げながらも、俺のズボンを剥ぎ取った貴代子は、さらに容赦なく問い掛けてくる。
何と答えて言いか分からなくなった俺は、ただひたすら弱々しく首を振り続けていた。
「おーい、それは、どうしたんだあ? やっぱり、こうして、やったほうが、興奮、するのかあ?」
「い…いや…あっ! ああっ! ぐっ! いぎっ!」
俺の返事に業を煮やしたのか、貴代子の言葉が途切れ途切れになり、同時にモノから痛みがほとばしる。
貴代子が途切れ途切れの言葉と同時に、モノの先端を指で弾き出したから、だ。
それもさっきみたいに、優しく軽く、ではなくかなりの力を込めて。
モノから脳髄に響き渡る激痛に、無意識のうちに四肢を引きつらせながら悲鳴を漏らしてしまう。
さらにじわりと目頭が熱くなり、自然と涙がこぼれ落ちる。
「どうしたどうしたあ? 泣くほど気持ち良かったのかあ?」
「ああっ! い…いやっ! や…止めて!」
妖しい笑みを浮かべた貴代子は、指で作った輪をモノの前にかざし、心底嬉しそうな声で俺に笑いかける。
思わず貴代子の腕を両手で掴んだ俺は、涙声で叫んでいた。
「止めて……だあ?」
俺の叫び声を耳にした、貴代子の腕がビクンと膨れあがり、俺の両手を弾く。
さらに眉毛をピクリと動かしながら、ゆっくりと顔をあげひとこと。その声は、まるで地の底から響くようだ。
その顔は怒りの表情に歪み、口元からは人間では持ちえるはずがない、長い牙が見える。
「い…いや、その……もう少し…優しくして…ください……お願い、します…」
「何だ、やれば出来るじゃないか。そうそう、さっき言っただろ?
相手に物事を頼むときは、どうすればいいか、ってな?」
瞬間、背筋に冷たいものが走った俺は、死を覚悟しつつ、全身をガクガク震わせながら懇願した。
すると今までの怒りの表情はどこへやら。貴代子は笑みさえ浮かべ、俺の頬に手を添えながら諭すように言う。
一気に安堵感に包まれた俺は、何も言えずにただひたすら、首をカクカク上下に動かしていた。
「………まあいいや。とりあえず、横になれや」
「う…うん……」
微妙な表情を浮かべた貴代子の命令に、俺は素直に頷いてゆっくりとあおむけになった。
それを見た貴代子は、俺の足首を掴んで両足をゆっくりと外側に広げていく。
何をされるのか、期待半分恐怖半分の俺は、貴代子の為すがままになっていた。
「よいしょ……っと。じゃ、ここの所、手で押さえてろよ」
「えっ? で…でも……こんな…格好……」
やがて足が一杯に開かれ、いわゆるM字開脚の格好になった俺に向かって貴代子が言う。
ふと顔を横に向けた瞬間、テレビに映りこんだ自らの姿が見えた。
――一糸纏わぬ姿で、ボディコン姿の女性に、両足を大きく開かされている姿を――
その瞬間、羞恥心が蘇ってきた俺は、顔を真っ赤に染めて思わず口ごもった。
「でもも何もない。別に私は構わないぞ。これで終わりにして、アンタの生き肝を貰うだけだから、な」
「お…お願い……。せ…せめて……電気…消して……」
肩をすくめながら、貴代子が言う。その声には、感情が何一つとして篭ってはいない。
先刻、怒りの声を耳にした時とは、また違う意味で背筋が冷たくなった俺は、弱々しい声で口走った。
次の瞬間、沈黙があたりを覆い、俺と貴代子はしばしの間、見つめあっていた。
「ぷっははっ! 初めての女の子じゃあるまいし、今さら何言ってる?
大体、この部屋にはワタシとアンタしかいないんだ。照れることも無いだろうに」
沈黙を破ったのは、貴代子の大きな笑い声。俺は羞恥で真っ赤に染まったまま、彼女の声を聞いていた。
「それに、な。ココはこんなに張り切ってるんだ。意外と嬉しいんじゃないのかあ?」
「はああっ!」
笑いすぎで涙がこぼれている貴代子は、半分呆れたように呟きながら、軽くモノの先端を指でピンと弾く。
さっきまでの痛みが伴う弾き方とは違って、最初にそうしたように、優しく、軽く――
そんな微妙な刺激にこらえられずに、口からは吐息が漏れ出していた。
「ふふっ、どうやら図星のようだな。大丈夫だって。優しくしてやるからよ」
言うや否や、貴代子は俺の手を掴み上げ、M字型になっている俺の膝の裏に引っ掛けた。
「さって。しっかり掴んでいろよ〜」
「!!」
俺は襲い来る快感に、上半身とつま先をよじらせ、声にならない叫び声をあげていた。
何故なら、貴代子は俺に優しく声を掛けたかと思うと、突然俺の袋を口に含んだから、だ。
「おーい、暴れるのはいいが、手を離してワタシの頭ぶつなよー」
「あ…ああ…あっ……は…はい……あ…ああっ! ああ…っ……!」
呆れたような声をあげながら、貴代子が言う。まるで、俺の袋を飴玉のように頬張りながら。
貴代子の口の中で転がされる度に、袋は俺の脳髄に快感を送り込んでくる。
その快感にブルブルと打ち震え、あえぎ声を漏らしながら、俺は貴代子の声にほぼ反射的に答えていた。
「はあぐっ! ああっ! くううっ!」
貴代子が右手を俺の胸まで伸ばし、左手は蟻の門渡りを優しくなぞり始める。
3ヶ所から同時に感じる快感に、俺はくぐもった悲鳴をあげ続けるしかなかった。
「おいおい、大丈夫か? ケツの穴がヒクヒクしているぞ。もし漏らしたりしたら、速攻でぶっ殺すからな」
「ひゃ……ひゃい………はう…あうっ!……」
言いながら、貴代子は俺のすぼまりを指でちょんちょんと突っつく。
俺は頭をガクガクと縦に動かしながらも、快感の連続のあまり、涙が止まらなかった。
「はあ…はあ……あ…あああっ……ああっ!!」
「ふふふっ、可愛い声で鳴いてるな。さて……と」
俺の喘ぎ声に満足そうな笑みを浮かべ、貴代子は顔をあげた。
舌をペロリと伸ばし、モノを根元から先端までつつつっとなぞられ、俺はひときわ大きな声を漏らす。
「あ…ああっ……気持ちイイ………」
さらに優しく包み込む感触がモノから伝わり、思わず声がうわずってしまう。
貴代子が、右手で軽くモノを握り締めてきたのだ。
「そうか、そうなのか。じゃ、これからもっと気持ちよくさせてやるよ」
「ああ…ああっ……イイ…イイ……」
笑みを浮かべたままの貴美子は、俺の言葉を受けて、ゆっくりと右手を上下に動かし始める。
全身を駆け巡るような快感に、俺はピクピクと体を震わせながら悶えていた。
快感の発信源ともなっているモノは、先端から透明な液体を次々と溢れさせている。
溢れた液体はモノを伝い落ち、貴代子の手を汚しながら、にちゃにちゃと音を立てていた。
「さて……ここまで固くなったのなら………」
モノをしごきながら、貴代子が独り言をつぶやいた。
今までの満足そうな笑みとは違う笑みを浮かべ、軽く口を開く。
右手は相変わらずモノをしごいたまま、左手でモノの先端を押さえ、顔を近づける……。
次の瞬間、訪れるであろう新たな快感を想像し、期待感に身震いしながら、じっと貴代子を見つめた。
「あぐ!? ぐ…ぎい…い……痛い! やめてえっ!」
しかし、期待した快感とは全然違う感触が俺を襲い、思わず叫び声をあげてしまう。
貴代子は、モノを優しく咥えるのではなく、自分の牙を俺の鈴口に潜り込ませたのだ。
俺は思わず膝から両手を離し、貴代子の頭を引き剥がそうと両手を伸ばした。が、
「ん? 何だ初めてだったのか? だったら下手に暴れないほうがいいぞ。
かえって痛い目に遭うのはアンタなんだからよ」
「で…でも……あ! あが! い!」
あっさりと貴代子に両手首を掴まれてしまう。さらに貴代子は牙を潜り込ませたまま、ひとことつぶやく。
貴代子の怪力に俺は為す術も無く、腕組みをするような姿勢に腕を固定されてしまう。
あまりの痛さの前に、俺は必死に腰を引こうとしながら、子どものように泣き叫んでいた。
「ぎ……い…」
俺の声にならない悲鳴に委細構わず、貴代子はずぶずぶと牙を潜り込ませていく。
まるで、メリメリという音が体の内部から伝わるようだった。
体を動かそうにも両手を固定されている今では、どうすることも出来ない。
また、動かせたところで貴代子には腕力ではとても敵わないことを十分理解していた。
だから俺は悲鳴をあげ、身をよじらせることくらいしか出来なかった。
「ふ…ん……。これ…で、根元までずっぽり入ったぞ」
「あ……あ…ぬ…抜いて…抜いて…お……お願い……」
貴代子が俺のほうを見やりながらつぶやいた。興奮しているのか、恍惚とした表情を浮かべて。
俺は泣きじゃくりながら、貴代子に懇願した。
「何言ってる? まだまだ、これからじゃないか」
「が! あ! ぎいい! いっ!!」
だが貴代子は、止めるどころかゆっくりと顔を上下に動かし始める。
モノから押し寄せる激痛に、俺は再び泣き叫びながら身をよじらせていた。
「あ…ああ……あ…」
あれからどのくらい経っただろうか。モノから伝わる刺激に、少しずつ変化が見られてきた。
最初に感じた激痛が少しずつ薄れ、代わりにくすぐったいような、もどかしい感触が現れていたのだ。
「どうしたどうした? 何だか声が変わってきたぞ?」
そんな俺の変化を貴代子が見逃すはずも無く、俺の顔を見据えながら問い掛けてきた。
当然顔は動かしたまま、少し小馬鹿にしたような口調で。
「は…あ………ああっ!」
「おーい、答えになってないぞー。……もしかして、感じてきてるのかー?」
じわじわと腰のあたりが熱くなるのを感じながら、貴代子の問いに答えるでもなく声が漏れる。
俺の答えになってない答えにツッコミを入れながら、そっとモノを握ってゆっくりとしごき始めた。
途端に抗いがたい快感が俺を襲う。俺は返事の変わりに叫び声をあげていた。
「ふふふっ。分かりやすいな、アンタ。さて、そろそろイッちゃったほうがいいか?」
「あ! ああ! あ! ああっ!! ああああっ!!」
貴代子は顔を上気させながら笑みを浮かべながら、モノをしごくピッチを早め、牙を抜いた。
その直後、まるで牙が栓だったかのごとく、モノから精液を激しく噴き出させながら、俺は絶頂に達していた。
「ふふっ…若いな……こんなにたくさん出るんだから、な」
「あ……え…」
口の中で俺の絶頂を受け止めた貴代子が、ポツリとひとこと。
俺は何と言っていいのか分からず、口ごもってしまう。
「しかも……すぐに次にいけそうだし、な」
「あ…ああっ!」
モノを優しくしごき続けながら、貴代子は言葉を続ける。
達した直後で敏感になっていたせいか、少しの刺激で再び固さを取り戻していた。