「へへっ、すぐキモチよくなるからよ・・・」  
 ゲリラの男たちはまだ年端もいかない輝美を取り囲んで下劣な言葉を吐いた。  
 遠くで蝉の鳴く声が聞こえていた。彼女は香ばしい土の匂いがむせ返る地面に押し付けられていた。  
 おびえる輝美の両腕を二人の男が押さえつける。力の違いは歴然としていて逃げ出すことなど出来はしなかった。  
無骨な指が襟を捉えそのままぐいっと引き下ろされる。薄手のシャツは音を立てて縦一文字に引き裂けてしまう。まだ薄い胸が晴天の日光に曝された。  
 輝美は恐怖の余り声も出ず、涙を浮かべて喉を震わせていた。  
太陽は無慈悲に照り輝いている。  
 スカートの中で無遠慮に突っ込まれた手が下着にかかる。輝美が足をくねらせて抵抗する。前にかがんでいたヒゲの男は彼女に平手打ちを食らわせた。  
その乾いた音と衝撃に全ての力が奪われてしまう。  
 下着が引きちぎるように脱がされ、捲り上げられたスカートに彼女の秘部が露になる。夏の暖気と陽の光に熱せられることが奇妙な気分を促す。  
細い産毛のような恥毛がまばらに生えたそこは下賎な男たちの劣情をよりいっそう煽った様子だった。  
 無骨な指先で触ったらダメな部分を弾かれ、輝美はびくりと震えた。  
「俺たちも鬼じゃあないからよお」  
 ヒゲ男はポケットから一粒の白い錠剤を取り出した。そしてそれを輝美の股間のラインに繰り返し擦り付けるようにする。  
「な、なに、な・・・」  
 それは麻薬だった。  
「な、なあぁああ?!」  
 最初その意図が分からなかった輝美にもだんだん理解できてきた。徐々にソコが痺れるようになってきてだんだんと何かむずがゆいようなおかしな感覚が広がってくる。  
「もったいなくねえか?」  
 輝美の腕を押さえつけているスキンヘッドの男が呟く。ヒゲはしたり顔で答える。  
「痛がって暴れられるよりよっぽどいいぜ? どんな顔するか見てみたいだろ? どうせ記念すべき開通式なんだからよ」  
 そんな会話の間にも錠剤は秘部の皮の内側に押し込まれる。ヒゲは輝美の秘唇を両側から指で摘むようにしながら揺すぶっている。  
 輝美は股間の微かな異物感だけでなく何か強烈なものが広がってくるのを感じていた。何か切ないものがこみ上げてくる。  
うだるような暑さと興奮状態で体温の上がった身体に染みわたってくるかのようだった。  
むしろ快感で危険な気配に鼓動が高まる。徐々に体中がざわざわしてきて落ち着かなくなってくる。微細な神経が侵されて朦朧となってくる。  
背筋から熱が広がっていくようでその額には小さな汗の玉が浮き出していた。  
「へえ、何か感じちゃってるみたいだぜ」  
「そうだな、えらいうっとりしてる」  
「やっぱ、小さくても女は女だな」  
 
 どこか遠くで声が聞こえていた。羞恥ということを理解できないほど幼くはなかったがそのときの輝美にそんなことを考えている余裕などありはしない。  
「ぅっ、ふぅうう・・・」  
 半開きになった口からくぐもったような声が漏れたがそんなことは気にならなかった。どこか霞んだ視界の中でその奇妙な快楽に身を委ねていく。  
「ゥッ! う、あ!」  
 突如乳首に電流が走り、まだ固いホットケーキのような乳房全体にこそばゆい感覚が広がっていく。  
「ミルク出るか?」  
「出ねーよ」  
「でもえらい顔してるよな。真っ赤になってるぜ」  
「ああ、乳首ビンビンだ」  
 そこを舌先で転がされ、乳房全体が啜られる。輝美は疼く胸から本当に何かを啜りだされているような錯覚に見舞われる。そして下腹部がやたら疼いて仕方がなく自分から腰を小さく振ってしまう。  
「あぁぁ〜〜〜んぅぅぅ〜〜〜ァァ〜〜〜」  
そこからは薬の粒子で白く濁った得体のしれない、妙に生臭さを感じさせる液体が滴っている。その雫は肉裂のラインに沿って垂れていた。  
毒された愛液に浸された薄ピンクの肛門はヒクヒクと弛緩と収縮を繰り返している。男たちの影の隙間から当たる陽の光さえ責め嬲るような触感を与える。  
「あぁああ〜〜〜あ〜〜あ〜あ〜〜〜?」  
 輝美の喉から漏れる声はもはや嬌声としか言いようがない。揺らぐ意識を反映した喉は呆けたような長たらしい音ですすり泣くかのようだ。  
「ほぉ〜あ〜あ〜、ぉ〜あああぁぁ〜〜〜」  
甲高くも揺れるように抑揚した艶かしい音。糸を引くような生々しい声が迸っている。彼女の定まらない視線は完全に宙を浮遊し、時折あらぬ方向にさえ流れるのだった。  
忌まわしい薬はすでに秘部を完全に侵食し全身に回りつつあった。  
「とォ〜けるぅ〜とォぉ〜けぇ〜るぅ〜よぉぉ〜、あぁ〜〜ああぁ〜〜〜とぉ〜けぇ〜るぅぅ〜〜〜〜」  
思考そのものが言葉になったが自分がそれを口にしている自覚さえも曖昧だった。実感があるのはただ男たちの腕が触れることと狂い立つような身体の感覚。  
陵辱的な太陽が淫猥に強烈な光で視姦していることを思う。  
「みぃてェるよぉ・・・おひさァマァがぁみてるぅよぉぉ・・・」  
完全に呆けたような顔で身悶えている輝美。突如、下腹部に引き攣るような感覚がこみ上げてくる。  
「んなぁ〜〜ぃぞう・・・がァァ!!」  
内臓がヘンだ。しかしその疼きは一気に圧力を上げ激しい痙攣にまでなってしまう。彼女は激しく身を捻った。  
「ぐ、ぐぅぁあううぅ・・・・」  
 うめくように叫び、大きく反らしたお腹が蠢く。汗に濡れた首筋は大きく左右に触れていた。そして唇の端から流れた涎が顎を伝って首にまで流れていた。  
「もうそろそろじゃねえか?」  
「ああそうだな。なんだ、こいつ欲しがってんじゃないか」  
「きっと生まれつきの淫乱女だよ」  
 
 遠くで笑い声が聞こえた気がする。ヒゲがのしかかってくる。無骨な両手で捉えられた輝美の腰は強引に引き寄せられ、そして・・・  
「あ! アアぁぁあああ〜〜〜?!」  
 肉を掻き分けて貫入してくる。太くて太くて固くて熱いものが押し入ってくる。容赦なしに押し広げてくるのだ。  
「裂ァけるゥ!!!」  
 このときばかりは輝美も声を甲高く絞って叫んだ。しかし拒絶の言葉を吐く暇だになくその先端が一気に子宮を突き上げ輝美は喉を反らした。  
 強烈に輝くギラギラとした太陽と目が合った。それは暴力的な眼差しで生贄でも見るかのように輝美を見ていた。温かいはずのお日さまは畜生的な光を放射して満足げに頷いたかのようでさえある。  
 彼女の口が何かを乞うように再びパクパクと動いたが言葉にはならなかった。その顎元へと涙が伝う。  
 激しい痛みは確かにあった。しかし熱せられた呪わしい快楽が感覚を狂わせている。もはやまともな思考力は残っていなかった。  
頭の中がグチャグチャになり異様な疼くような狂った快感の中で膝をもじもじと動かすのが精一杯だった。  
 激しい前後運動が始まる。抜けかけては差し込まれ突っ込まれては引き出される。抉るかのようにして捏ね回される。  
「う、ぅあ、あ、ア、あ、ああアァ、あ・・・」  
呂律の回らない声を上げ、無意識に腕をバタつかせて状態をくねらせる。しかし彼女の下半身はがっちりと押さえ込まれて情け容赦ないピストン運動に組み込まれていた。  
輝美は顔を真っ赤にしかめて喘ぐように切れ切れの言葉を吐く。そのときには視界が妙に暗くなっていた。  
「死ぬ、しィぬぅ、しぃぃぃぬうぅぅ!」  
 ザクザクと打ち込まれる男根は輝美の脆い部分を一方的にときほぐしていく。すでにぐしょぐしょで筋肉の弛みきっていたそこは酷くはしたない水音を立てる。  
「ひィっぱぁたら・・・ゃぁ、ゃあゃぁよぉ、あ〜ゃぁ〜〜〜」  
突き込まれるたび汁にぬめった股間が広がるのを感じ、引き出されるときには内臓までが引きずり出されるような気がした。妙に喉の渇いたような感覚。  
もがく腕はしっかりと押さえ込まれて逃れることは許されない。  
その目からは涙が伝い落ちていた。そしてその目はもう何も見てはいない。ただ翳った視界の中でさっきの無慈悲な陽の円だけが浮かび上がってくる。  
「みぃなぁいでぇぇ〜〜〜〜〜〜〜」  
 彼女の麻痺した目は何も見てはいない。ただ脳裏に映った幻影の白い太陽に乞うかのように訴えた。  
「あ、ぃや、ぁあぁ、あ〜んんぅ〜・・・い〜〜やぁぁ・・・」  
 そのとき突如引き抜かれ、次の瞬間に顔から胸にかけて何か熱いものが飛び散った。  
 引き抜かれてなお輝美はヒクヒクと痙攣している。その虚ろな目はどこかずっと遠くを見ているかのようだった。  
「コイツは上玉だぜ!」  
 ヒゲが悦に入ったように叫ぶ。そしてそのヒゲ面を華奢な脚の間に押し込んで麻薬の混じった愛液をむしゃぶり始める。  
「ほら、イイだろう? イイって言えよ、なあ!」  
 時折口を離して完全に狂った目で叫ぶヒゲ。輝美はその汗ばんだ胸を大きく起伏させて麻痺した眼を見開いている。その顎もまた大きく開きッぱなしになり金魚のように浅い切れ切れの呼吸を繰り返していた。  
「お〜い、感じてますかあ〜」  
「返事できねえくらいキちゃってるなんて、さすが生来の痴女だな!」  
 押さえつけている二人の男が楽しげに言う。  
 
「お〜い、感じてる〜?」  
 再びヒゲが叫ぶように揶揄し、輝美の熱を帯びて歪んだ頬をペチペチ叩いた。  
 そんな会話が輝美の耳には断片的に聞こえてくる。耳鳴りと混じって断片的な単語が認識される。  
 彼女は思わず、その言葉に返事をしなくてはいけないというふうに思った。きっと舌の責め苦を免れた間だけ中途半端に理性が戻ったに違いなかった。そして彼女は切れ切れの声で応じてしまう。  
「かァ、かぁ〜んじぃテる! カンぅジぃ〜テるぅのおぉぉぉ!」  
そのとき輝美は自分の発した言葉の意味を理解していなかったと言ってよい。むしろ鸚鵡返しに近かっただろう。彼女はもう自分が何をされているのか分からなかった。  
 しかし男たちはどっと笑って囃し立てる。  
(空ガ、火照ッテル・・・)  
 狂った感覚の中でふと視界に映る振動する「空」を認識する。紫と橙色の入り混じったようなやたらと扇情的な色合いをしていた。  
「キモチイイですかァ!」  
 耳元でそんな音が聞こえる。彼女はその音を反復して発声した。  
「き、キぃもちいイぃですかぁ・・・」  
 半ば精神と乖離した体がそんな言葉を口走った。相変わらす快感は激しかったが過度の絶頂で少し気持ち悪くさえなっていた。そして視界が揺れ、身体に激しい痙攣が走る。  
目があらぬ方向に回転し真っ暗になる。輝美の口の端からとめどなく白く濁った涎が流れ落ちる。彼女はそのまま泡を吹いて気を遣った。  
 
*  
 急に輝美は我に返る。真っ暗だった。  
(そうだ、ここ、オーガノンのコックピット・・・)  
 身体中がジンジンとする。これは快楽。止めようもない快楽の波。自分の中に割り込んだゼリー状のものが肉を押し広げて激しく暴れまわり外性器もまた揉みしだかれているようだった。  
(あ、暴れてる、わたしのナカで、暴れてる・・・)  
 首筋を何かが伝うような感じがした。乳房もまたゼリーベルトに苛まれている。  
(うァ? だめ、きちゃう・・・)  
 輝美は目を潤ませる。しかしそのとき、あのゲリラたちの顔が脳裏をよぎる。そして自分を責め嬲った太陽の光の感触もまた甦ってくる。それが一瞬の精神の沈着をもたらした。  
 こみ上げてきた感情は底知れぬ屈辱感だった。  
 あのとき、初めてだった。それは誰か、もっと大事な相手とでなければならないはずのものだった。もっと、もっと幸せな経験でなければならなかったはずだった。  
それを得体の知れない連中に奪われた。よりにもよって父さんや優しかった隣人を手にかけた連中に! ただ犯されただけでなく、陵辱の限りを尽くされたのだ。  
そして薬のせいとはいえ快楽に溺れて屈辱的な台詞を何度も何度も口走りながら何回も何回も絶頂の狂態を曝した。  
 そしてお日さまさえもが自分を裏切り、一緒になって自分を陵辱したのだ。  
 
「ふざけんじゃない・・・」  
 輝美は小さな噛み殺すような声で呟いた。溢れた涙が頬を伝って顎にまで流れていく。  
 しかし意思とは関係なく身体中が快感に震え精神を侵食しようとする。そして迫ってくるもの。とどめようもなく遠慮会釈なしに近づいてくるオルガズム。  
輝美は紅潮した顔で歯を食いしばった。  
「ぐ!」  
 それは脳髄が痺れるような衝撃だった。視界が揺れる。全身の細胞が泣き叫んでいる。脊柱を走る電撃に心臓が止まるかとさえ感じたほどだ。  
 しかし彼女は耐えた。  
 意識が飛びそうになる中で全身と顎に力を込めて。剥きだされた歯がギリリと音を立てる。その拳は操縦桿を握りつぶそうとでもするほどに握り締めていた。そして涙はもう止まっていた。  
 次の瞬間だった。目の前に青く光るホログラムディスプレイが映し出されたのは。  
《操縦者確認―パイロットデータを更新します》  
《外部パワーリンク確立中》  
 そのとき輝美の目の前に奇怪な幻影が浮かび上がる。まるで巨大な蠅のような青いホログラム。六枚の羽を振動させて羽音さえ立てている。その前足を擦り合わせて輝美の顔を覗き込んでいる。  
 輝美は我が目を疑った。  
「わ、わぁ!・・・ァ、ァ!」  
 驚愕の余り、改めてイッてしまう。もっとも断続的な小さな絶頂感は先ほどから続いていたからそのせいとばかりはいえなかったかもしれない。  
ついでに言えばその瞬間の彼女の意思はそれを半ば無視していた。  
とにかく輝美は心身の乖離の中で目の前に現れた幻影の驚きと不快感に顔をしかめていた。青く光る複眼の一つ一つにその顔がぼんやりと映っている。  
 奇怪な蠅が前足を伸ばし輝美の乳房をつつく。その硬質なざらりとした肌触りに輝美は身を固くした。どのみちこの狭いコックピットの中で逃れる術はない。  
 しかしせめてその足を払いのけるくらいのことは出来るだろうと考えたがすぐにゾッとする。身体が動かなかったからだ。まるで金縛りにあったかのように指一本として動かすことが出来ない。  
 そうこうするうちに蠅の幻影はその顔を輝美の乳房に近づけその乳首を舐め始める。  
(い、いや、こ、こんなのって・・・)  
 その舌使いは余りにも繊細で敏感になった彼女の肉体にはあまりに過剰な刺激だった。  
 そしてそれ以上に驚異だったのはだんだんと乳が張ってきたことだ。輝美はゼリー状の異物が入っている膣をヒクつかせながらその感覚に耐えていた。  
(う、くぅぅ!)  
 乳首が焼けるように熱い。そしてクリトリスもまた爛れた感覚を示していた。  
(ひっ・・・!)  
 輝美は声にならない悲鳴を上げた。熱いものが自分の乳房から噴出したからだ。それは甘たるい香りを放つ母乳だった。  
それはいきり立った乳頭から白い滴となって滲み出し乳房を搾る蠅の足の動きに合わせてあとからあとからあふれ出してくるのだった。  
 
(うそでしょ!)  
 蠅は一心不乱に輝美の乳房をしゃぶっている。二本の前足で柔らかい双方の肉を寄せ乳首を無理に合わせて滴るミルクをしゃぶっている。  
(げ、幻覚? やっぱり幻覚なの?)  
輝美がそう思ったのも無理はない。彼女の乳房は現実ならそんな風に寄せることが出来るほどのボリュームはないはずだったからだ。  
 しかしそのとき頭の中でしわがれた声が聞こえた。  
『いいや、真実さ。もう一つの世界における真実さ』  
 その声に彼女は動転してしまう。どうやら蠅が喋っているらしかった。脳裏に昔本で読んだ悪魔、蠅の王のことがよぎった。  
『お前の乳は甘いのう』  
 蠅は一心に輝美のありえない分泌物をしゃぶっている。前足で大きく張った乳房を左右から絞り、じゅるりと音を立てて吸い取った。  
 輝美は微かに顔をしかめて蠅の怪物を睨む。それが精一杯の動作だった。  
『怒っても垂れてきとるわ・・・』  
 幻影の蠅は繊毛の生えた口で限界まで勃起した乳頭を嘗め回している。  
 そのとき輝美は違和感に身を震わせる。お尻の下で、お腹の上で何か細かいものがもぞもぞと這い回っている。そして視線を下げてゾッとする。  
 輝美は無数の蛆虫の中に身を浸していた。それは幻影の蠅と違って本物のように見えた。グロテスクに身をくねらせながら体中を這い回っている。  
 悲鳴を上げることさえできなかった。身体が相変わらず動かないからだ。  
(ひッ! ぅ、ぅあ!)  
 彼女が胸の中で悲鳴を上げたのは止むを得ないことだ。股を浸した蛆が陰唇の隙間から侵入してくる。それは皮の裏側で這い回り、染み出した彼女の汁を舐めているのだろうか。  
陰核にまでもそれは這っていった。  
(く、くぅぁぁぁああ・・・)  
そして事もあろうに開口部から彼女の胎内にまで潜り込んでくる。  
(んぁア?! だ、だめ、そこは、そこだけは絶対ダメ、だァめ・・・)  
 肉襞の筒にまで入り込んだ蛆虫が蠢きながら這い上がってくる。尿道や肛門にもじりじり進入を開始していた。救いようもなくむず痒いような感覚が身体の奥底にまで入り込んでくる。  
(ほォぁアぁぁ〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜)  
 蛆虫は子宮にまで達し、卵管を伝って本当に体の中にまで入り込んでしまった。輝美の動かぬ身体のうちでその瞳だけが彼女の精神状態を示している。  
(し、心臓が、しんぞうがァ・・・)  
 心臓を嘗め回されているような感覚。尿意を催したが尿道は蟲で埋まっている。そのもどかしさがさらに彼女を高ぶらせていく。  
その下腹の筋肉はヒクヒクと震えている。  
(な、なんでこんなことに・・・)  
 
 巨大な蠅が母乳を啜り蛆が胎内で踊り狂っている。蠅と蛆が共謀して彼女の肉体を玩んでいた。もはや絶頂ですらない感覚。快感を通り越した無感覚があった。  
突然、彼女は言葉を発した。  
「なに、コレ?」  
その声は侮蔑的で挑戦的でさえある。極度の異常に感情が裏返ってしまったらしい。狂ったように揺れる目は妖艶を通り越して悪魔的な輝きさえ帯びていた。  
 輝美の気配の変化に蠅の舌が一瞬動きを止める。そのとき彼女の左腕は蠅の背中に回された。そして右手は蠅の生殖器を鷲掴みにしている。  
その繊細な指が硬質で繊毛の生えた器官を握り締め、その先端をひっかける。彼女の白い指はざらざらする甲皮を一気に剥き上げてしまった。そのまま露になって脈打つ蠅の肉を手先に愛撫した。  
「固くしなさいよ」  
 輝美は誘惑的な笑みを浮かべた。そのままグロテスクでじゅくじゅくする先端を自分の愛液と蛆に塗れた秘裂に押し当てる。彼女の目は生えの複眼を覗き込んでいた。  
「ほぉら、ヰかせてアゲル」  
 輝美は天上の歌い女のような声で常軌を逸して誘惑的な響きで囁く。そしてハエの背に回した左腕を一気に引き寄せた。  
 蠅の器官は彼女の体内に引きずり込まれる。  
「ィィ!!」  
 短く鋭い歓喜の叫びを上げる輝美。彼女の形の良い胸は蠅の腹に押し当てられて柔らかく潰れていた。  
「あ〜〜こォれぃぃ、これェぃぃいょ、ぅごいてる、びぃくびくシぃテル・・・」  
 彼女は上気した面持ちで蠅に口づけした。そして粘液に塗れた蠅の口元に舌を絡めてむしゃぶる。彼女の中で無理に剥かれた蠅の生殖器がビクビクともがきまわっている。  
「ねぇえ、あッたかぁいぃ? わたしのなぁか・・・なンとかぃってみなさいよォ・・・」  
 輝美は両腕で下から蠅にしがみつく。そして何度も何度も腰をせり出すようにして蠅の生殖器を舐り上げた。淫液と潰れた蛆に塗れてどろどろになった秘裂が魔物のように蠅を弄り玩んだ。  
 耐え切れなくなった蠅が必死になって腰を振り始める。「蠅の王」の尊厳もかなぐり捨てて彼女の肉体に溺れていた。  
彼女は匂いまでさっきと違ってしまったようでオスを狂わせる芳香を惜しみ気もなく垂れ流している。  
「ぅぁあ〜〜〜きもちぃぃよぉ〜〜〜はえちんぽぉぃいいぅょおぉぉ〜〜〜〜」  
 彼女は自分も腰を回すようにして蠅ののたうつソレを貪った。狂った交合は忙しなく繰り広げられる。  
「ァ〜〜だぁしなさぃ〜〜〜ぜぇんぶだぁしてぇ〜〜〜〜〜〜〜〜〜」  
 輝美は恍惚の極みで淫魔の如き嬌声を発した。悶える蠅を汗まみれの腕で抱きしめて輝美は腰を早める。蠅はもうピストンする余裕さえなく彼女の上に身をもたせかけている。  
「ぁ〜〜〜〜ぃ〜〜こぉれぃい〜〜〜〜」  
ただの男なら声だけで果ててしまうほどに甘美な声だった。輝美の肉襞は断続的に蠅のモノを締め上げている。  
「しィぼりトったゲルからぁ〜〜〜〜〜だぁしちゃぃなさイぃぃ〜〜〜〜〜〜〜」  
 
 ついに耐え切れなくなった蠅が漏らしてしまう。その動きに合わせて輝美の膣が痙攣する。引き締まった肛門は入りかけの蛆虫を引きちぎった。  
「はぁぁああぁあ〜〜〜〜〜〜〜」  
 戦慄を覚えるほどの「艶」を全身から滲ませて彼女は腕に思い切り力を込める。それに連動した膣肉が内側に向かって打ち震え吐き出された白濁を啜りこんでいく。  
 それでも収まりきらなかった体液は結合部分から流れ出し彼女の股をぐちょぐちょにしてしまう。それは脚を伝って脹脛まで流れていく。  
「もぉ〜まぁだぁ〜〜〜ィっパイでぇてるぅ〜〜〜〜〜だぁしすぎだぁよぉ〜〜〜〜」  
 輝美は目を炯々と光らせて蠅の複眼に頬擦りした。その華奢な肩は悩ましげに震えて満面に悦楽の表情を浮かべていた。  
蠅は彼女の腕の中でぐったりとしてしまっている。しかしまだその器官は震えのたうって精液を吐き続けていた。二人(?)の足元には白濁の水溜りさえできている。  
「だぁ〜しすぎぃ〜〜〜」  
 輝美は終わりのない射精を体内に味わいながら蠅に再びキスをした。その頭の中で再びしゃがれた声が聞こえてくる。どこか上気した満足げな響きを帯びていた。  
『数百年ぶりの悦楽だ』  
 そして最後の言葉にはひどく厳かな詠嘆のような感情が篭っていた。  
『汝ならば我らの呪い、解けるやも知れぬ』  
 刹那、時間が静止したように感じられた。  
 次の瞬間、蠅の王はかき消すように消えてしまう。蛆虫の群れも消えてゼリー状のシートに戻っていた。そして輝美は再びコックピットの闇の中に取り残された。  
 ようやく彼女は我に返り自分がどうしようもなく熱くなっていることを改めて悟る。ゼリーシートに包まれた股間は自分の愛液で洪水状態だった。  
(何だったの、今の・・・)  
 しかしそんなことを考えている余裕はなかった。下腹部の裂け目がある種の拷問のような状態になっていたからだ。彼女は操縦桿を握り締めて額に汗を浮かべながら起動の完了を待った。  
《精神系調整完了》  
《起動完了まであと7秒》  
 絶頂の連続は未だに止まらない。むしろ頻度が増し、予兆さえも耐え難いものになってきていた。自分でもバギナが痙攣し子宮が踊っていることが分かる。  
ゼリー状のベルトの中で乳房の芯にまで届くようなものが渦巻いている。  
 そのときコックピットの中が急に明るくなった。このオレンジの光はあの地下室を照らしていたのと同じもの。輝美は目の前に立っているカトリーヌの姿を認めた。  
周囲を見渡せばコックピットの装甲が透けて外部の様子が丸見えになっている。  
《ランスロット・起動しました》  
 ホログラムのディスプレイにはそんな文字が躍っていた。  
 安心したその瞬間だった。  
 とてつもなく強烈な疼きが股間から背筋を駆け上がってくる。完全な不意打ちだった。  
「あ、ああああ、ぁぁぁぁ・・・」  
 輝美は気の抜けたような悲鳴を上げる。  
 青銅の色に輝くオーガノンはその鎧の奥で赤い目を炯々と光らせて薄暗い地下室に蹲っていた。  
『耐え難い異常な経験を乗り越えたとき、人は単なる人間以上のものとなる』  
 外部から全てをモニターで見物していた三宮は男根を屹立させたまま、一人でそう呟いた。  
 彼の持論によれば人の定義は二種類ある。一つは単なる社会的生物としての人間。そしてもう一つは限界的状況に直面して一線を越える際に現れる神的な存在者。  
この半ば風化した世界ではその境界は脆い。オーガノンはその一つの現れに過ぎないのだ。  
『実にいい時代になったものだ・・・』  
 青白いモニターに映し出された輝美を眺めながら三宮は肩を震わせて笑った。  
 

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