今日は静かだ。何で静かって、友美がいないからだ。  
友美は今日、病欠で休みらしい。こんなにノビノビできる学園生活は久しぶりだ。  
おかげで今日は、体を大きく広げて寝ることができた。  
まあ、あまりに派手に寝たせいで廊下に立たされる羽目になったけどな。  
 
「では、今日の授業はここまでだ。号令!」  
 
秋山先生の合図と共に、号令係がお決まりの号令を掛ける。  
これで俺は自由だ。何者にも束縛されない自由な時間が来た。遊びまくる。  
そう思って鞄を取って帰ろうと思った瞬間、秋山先生に引き止められた。  
 
「おい北口、悪いが牧田の家にこのプリントを届けてやってくれないか?」  
「……はい?」  
 
なんで俺!?適任者は他にいるはずだろ!  
 
「なんで俺なんすか……?」  
「隣の席だし、仲がいいんだろ?頼んだぞ」  
「ちょ、ちょ、ちょい!!」  
 
俺が声を掛ける間もなく、秋山先生はスタスタと行ってしまった。  
……仲がいいだと?なんという勘違いをしてくれてんだよ、アキセン(秋山先生)……。  
そりゃ、最近は色々とごたごたがあるが……俺があいつと仲がいいなんて万分の一にもありえん……。  
 
「おい、明良。また呼び出されたのか?」  
「ちげーよ、馬鹿!友美の家にプリントを持っていけって言われたんだよ」  
 
俺が先生に何か言われてたら全部呼び出しかよ……。  
そんな愚痴を心の中で零しながら関根と話していると、ハイエナの如く聞きつけた山川も現れる。  
 
「おめーと友美、最近仲がよくね?」  
「まったくだ。イチャイチャするのはいいが、あまり俺達の前でしないでくれよ」  
「仲良くねえし、イチャイチャしてねーよ!!つーかテメーだろ、イチャイチャしてんのは!!」  
 
しかもこいつがイチャイチャしている女は美島毒子というドブス。  
野球界で言えば、マイケル中村に小笠原の長打力を付け加えた化け物の級のモンスターだ。  
あまりにもブサイクな面のため、目を見て話すことが出来ないほどである。  
もしこの世に、天下一・ブサイク・武道会というものがあったら間違いなく優勝候補だ。  
 
「仕方がないな。俺は毒子と一緒に帰ることにするぜ。それじゃあな!」  
「おうおう行け行け。いっちまえ」  
「んじゃ俺も帰るべ」  
 
ちなみに、山川は帰り道の方向が俺や関根と真逆なため、一緒に帰ることはあまりない。  
しかし、山川が一緒に関根と一緒に帰宅しない理由はもうひとつある。  
一度、帰り道で山川が毒子を"ブサイク"と言ってしまったからだ。  
もちろん、その後の展開はいうまでもない。山川は顔の形が変わるほどボコボコにされた。  
それを見た俺は、奴の前では毒子を馬鹿にしないように心がけている。  
 
「はぁ……めんどくせぇ……。どっかにテキトーに捨てちゃおうかな……?」  
 
そう呟きながら帰り道を進む。しかし、プリントを捨てたことが後でバレたら報復が待っているだろう。  
プリントを捨てた罰と称し、またパシリにされかねない。  
 
「結局、持って行くしかねえか。あーあ……だりぃ……」  
 
ブツブツと文句を言っていると、すれ違ったババァが俺に怪訝な目を向けてくる。  
ちょっと頭がアレな子だと思われたのだろうか?まあ、どうでもいいか……。  
しばし上の空になりながら数分道を歩くとやっと友身の家に着いた。  
ポストに入れてさっさと帰ろうともしたが、一応呼び鈴をならしてみることにする。  
 
ピンポーン♪というお決まりの音が鳴り響く。……しかし反応がない。  
もう一度押してみる。……やっぱり反応がない。  
寝てるのかと思いポストに入れて帰ろうと思ったが、ここで俺の心にちょっとした悪が芽生える。  
"何度も何度も鳴らして友美を起こしてやれ。ケケケ……。普段俺をいいように使ってる罰だ"という悪が。  
……それが俺の今日の運命を決定付ける行為だったことに、この時誰が気づいたであろうか。  
 
「おいゴルァ!明良様がプリントを持ってきてやったんだぞ、顔出せや!」  
 
ピンポ・ピンポ・ピンポ・ピンポ……とファミコンのAボタンを連打するように呼び鈴のボタンを連打する。  
しばらく鳴らしていると家のドアがガチャリと開き、同時に目覚まし時計が俺に向かって飛んできた。  
 
「さっきからやかましいのよ、このアホ馬鹿!人が寝てるってことぐらいわかるでしょ!?」  
 
目覚まし時計が顎にクリーンヒットし。しばし悶絶する。  
全然元気じゃねえかこいつ……。本当に病気なのか……?  
こんなことなら素直にポストに入れてさっさと帰るんだった……。  
 
「いってーな!ほんの茶目っ気だろうが!何も目覚まし投げることないだろ!!」  
「うっさい、この馬鹿!一体何の用なのよ?」  
「プリントを渡しに来たんだよ。ホレ!」  
 
俺は友美にプリントを渡す。ついでに俺に向かって飛んできた目覚まし時計も渡す。  
これで俺の任務は終わった。帰ろう。早くこの悪魔の館から脱出しよう。  
 
「ちょっと待ってよ、お腹すいたからなんか作っていって」  
「……ハァ〜〜〜ッ!?」  
 
何言ってんだコイツ!?と思ったのはこれで何回目だろうか……。  
俺に対するワガママや冒涜が最近どんどん進化しているような気がする。  
いわばサタンからデビルに進化するようなものだ……。  
 
「す、すざけんな!何で俺がそんなことしなきゃいけないんだよ!大体、そんなものは親に作ってもらえよ!」  
「お父さんとお母さんは私が風邪を引く前に旅行に行ったのよ……。明後日まで帰ってこないの」  
 
なるほど、どおりで家の中が静かなわけだ……。  
いや、だからと言って俺がコイツの飯を作る理由にはならんだろ!?  
 
「だ、だからといって何で俺が作らなきゃいけないんだよ!自分で作れ!!」  
「病人を無理やり起こしておいて逃げる気?いいわよ、あの事バラしてもいいなら」  
「がっ…がっ…!ぎ……ぎぎ……ぐ…げご……!!」  
 
あの事とは俺が以前、友美を脅す時に使った陵辱未遂のことだ。  
もちろん、俺はあの時脅すだけで陵辱しようだなんて微塵も思ってない。  
しかし、奴のYシャツまでを脱がしたのは事実。おれはこれを出されると何も反論できなくなってしまった……。  
我ながら情けない……。こんな弱みを握られるのならあんなことするんじゃなかった……。  
一時の感情で、ハプニングを起こすと後で後悔する。覚えのある人は注意するべきだ……。  
 
「そんじゃ、私は上の部屋で休んでるから、卵粥をお願いね〜。ヨ・ロ・シ・ク」  
「あーあ。わかったよ!さっさと部屋に行ってしまえ!」  
 
何がヨ・ロ・シ・クだ。俺はお前のお抱え料理人じゃねえんだぞ。  
何が悲しくて他人の家で料理などせにゃならんのだ……。  
 
「あ、ご飯は炊飯器の中に入ってるから」  
「はいはい!!」  
 
いっそ、釜ごと冷や飯を食わせたろか……。  
そう思いながら炊飯器から釜を取り出し、鍋の中に飯を入れていく。  
自分で言うのもなんだが、料理は結構得意な方だ。奴はそれをわかってて俺を使うから性質が悪い……。  
家庭科の調理実習で自慢げに料理を披露するんじゃなかった……。  
 
しばらく鍋で米を煮る。沸騰し始めたら少しだし汁や調味料を加える。  
ここで注意しなければいけないのは、味付けはほんの少しにしておくということだ。  
なぜなら、濃い味付けにしてしまうと、食べるのが嫌になってくるからだ。病人ならなお更だ。  
そしてある程度煮立ってから卵を入れる。そしたらすぐ火を消す。これぞ明良流、卵粥。  
 
「……って、何で俺は真面目に作ってんだ!?」  
 
し、しまった……。思わず真剣になって作ってしまった……。  
あんなデビル女にまともな粥など食わせるべきではないのに……。  
しかし、作ってしまったものはしょうがない。俺は丁重に粥が入った鍋を友美の部屋に持っていく。  
 
 
「ほらよ!俺の自慢の粥だ。まずいと抜かしたらぶっ飛ばすぞ!」  
「ん……。ご苦労さん」  
「それじゃ今度こそ帰るぞ……」  
 
そう言って帰ろうとすると再び友美に引き止められる。  
……今度は一体なんだ?まさか飲み物を買って来いとかレモネードを作れとか言ってくるんじゃないだろうな?  
 
「食べさせて」  
「……ハァ!?」  
 
食べさせてって何!?粥を食わせろってことか?  
そんぐらい自分で出来るだろ!いくらなんでもワガママすぎるぞこいつ!  
 
「粥くらい自分で食えよ!ワガママもいい加減にしろっての!」  
「……病気の時ぐらい、優しくしてくれたっていいでしょ」  
 
ぬ、ぬけぬけと良く抜かす……!  
俺がボロボロになってる時はゲラゲラ笑ってるだけの癖に……。  
こいつ本当に病気なのか……?真偽を確かめるためにも、調べる必要があるな……。  
 
「オメー、本当に病気なんだろな……?熱あんのか、熱!」  
 
そう言って友美の額に手を当てる。……たしかに熱い。しかも結構高い。  
こんな高熱の癖に、ここまで醜態をつけるこいつをある意味尊敬する……。  
 
「ちょ、ちょっと!勝手に触らないでよ!!」  
「う、うるせー!熱があるかどうか調べただけだろ!」  
 
しかし、本当に病気だとするとこのまま放っておくわけにもいけなくなってしまった。  
結構熱があるし、もし俺が放っておいたせいで病状が悪化したら気分も悪いしな……。  
 
「わかったよ!食わせりゃ良いんだろ、食わせりゃ!」  
「そうそう、病人は大事にしなきゃね〜」  
 
調子にいい奴だ……。そういうのなら毎回怪我をしている俺も大事にしろってんだ……。  
ま、友美のワガママに付き合ってる俺も俺だが……。  
とりあえず、お粥を器に移し。レンゲで友美の口へと運ぶ。  
 
「おい、口開けろよ」  
「……ふーふーしてよ。このままじゃ火傷しちゃうでしょ」  
 
……もはや文句言うのも疲れるので意のままに従う。  
病気なのをいいことに言いたい放題いいやがって……治ったら覚えてろよ……。  
お粥に息を吹きかけ、友美の口へと移す。  
 
「ムグムグ……ふぅん。なかなか美味しく出来てるじゃない。あんたにしては上出来ね」  
「へいへい、お褒めに預かり光栄です……」  
 
まともに聞いてたらムカツクだけなので適当に相槌を打とう……。  
俺は生意気な口を聞く友美に適当に相槌を打ちながらお粥を食わせる。  
 
 
お粥も食べ終わり、薬も飲み終わった。これで今度こそ解放されるだろう……。  
あとすることと言ったら寝ることぐらいだ。すなわち俺に用はなくなる。  
ムカついたが、これで解放されると思うとなんだか清々しい気分になる。  
 
「それじゃ俺は帰るぞ」  
「……待ってよ」  
 
2度あることは3度あるとはよく言ったものだ。これ以上、俺に一体何の用があるってんだよ……。  
まさか添い寝しろとか言うんじゃねえだろな……。ま、いくらなんでもそりゃねえか。  
 
「今度はなんだよ?」  
「熱で汗をかいて気持ちが悪いから、体を拭いていって……」  
「へいへい、わかったわかった……ってはぁぁぁぁぁいいいい!?」  
 
体を拭く!?こいつ自分が何を言ってるのかわかってんの!?  
"体を拭く=自分の裸体を見せる"という方程式が成り立つことがわからねえのか!?  
熱で頭がオープンリーチしてるんじゃねえの!?  
 
「お、お前大丈夫か?それどういう意味かわかってんの?頭沸いてるのか!?」  
「何その言い方、すっごいムカつくんだけど……」  
 
だ、だめだコイツ……。きっと熱で頭の線が2、3本切れているのだろう。  
そうじゃなけりゃ、この俺にそんなことを頼むわけがない……。  
 
「あ、あのなぁ!"体を拭く=自分の裸体を見せる"という方程式が成り立つんだぞ!わかってんの!?」  
「……何想像してんのよ、すけべ。ちゃんとブラしてるから平気よ」  
「平気じゃねーだろ!いくら下着つけてても俺は男なの!そう軽々しく見せるもんじゃねえだろ!!」  
 
まあ、脅しとはいえ友美を襲った俺が言える台詞でもないが……。  
しかし、一度あいつの下着を見たからといって……体を拭くのはまずいだろ。  
しかもこの状況、いくら友美でも奴は女。俺は男。そして俺達以外誰もいないのだ……。  
つまり、襲おうと思えばいつでも襲えるのだ。それ解ってんのか……?  
 
「あーもう……!あんたじゃなけりゃ頼んでないわよ!!いいから早く拭いてっ!!」  
 
バシッとタオルが飛んでくる。  
……俺だから、ねえ。つまりそれは……俺は男として見られてないってことなのだろうか??  
まあいい……。あいつがあそこまで言うならもう知らん……。どうなってもしらん……。俺は責任とらん……。  
タオルを水に浸し、水を適度に絞る。俺が水を絞ってる間に友美はパジャマを脱ぎ始める。  
……くそっ、何ドキドキしてんだよ俺!こーいう時は、手に公という時をかいて飲み込むと落ち着くんだ。  
俺は公という時を手に何度もかいて何度も飲み込んだ。飲み込みすぎてちょっとはきそうだ。  
 
「……何してんのよ。早く吹いてよ」  
「わ、わかってるよ!」  
 
くそ、なんでこいつはこんな平然としてんだ?  
もしかして、俺って本当に男として見られてない?それはそれで悲しいものがある……。  
まあいい、さっさと済ませてしまおう……。  
 
俺は友美の体をゴシゴシと拭いていく。  
友美の体を拭いてる間、俺の視線は常に天井に向かっていた。  
そうしないと俺のバットが万一にでも反応してしまいそうだからだ……。  
俺だって男だ。本能でそうなってしまう。反応しない最善手は奴の顔と体を見ないことだ。  
脳内で、一生懸命、毒子の顔を思い浮かべながら友美の体を拭く。  
しかし、天井に視線をそらしていたのがまずかった……。  
フニッという、感触がタオル越しから伝わる。……フニッ?何コレ……?  
 
「あっ… や…んっ… ぁ…あき…ら……」  
 
……嫌な予感がする。  
恐る恐る視線を友美の方に向けると、俺の手とタオルは友美の胸を……。  
 
「ふぎゃああああああ!!」  
 
や、やばい!ど、どうする!?どうやって言い訳しよう!?  
と、とりあえずワザとでないことを証明せんとえらい事になる!!  
 
「わ、悪い!わ、わざとじゃないんだよ!い、今の不可抗力……」  
「うん…わかってる……続けて……」  
 
意外にも素直に信じてくれた……。  
きっと熱で思考能力が低下しているせいだろう。助かった……。  
もう視線をそらすことはできない……。仕方ない、吹いてる間だけ耐えるんだ、バットよ……。  
 
そう思いながらゴシゴシと背中を拭き手を拭く。毒子を思い浮かべながら……。  
ゴシゴシと拭く……ゴシゴシと。ゴシゴシと……。毒子を思い浮かべながら……。  
……。………。耐えられるかぁー!!俺の脳内は毒子1%・友美99%で埋め尽くされてる。  
もはや毒子など焼け石に水だ……。そ、それに……。  
情けないことに俺のバットは神主打法のようになっていた。  
うう…しかも友美で反応するなんて……。どうにかバレないようにしよう……。  
そしてバレないように態勢を変えようとするとどうしても腰が引けた変な態勢になってしまう。  
 
「……何その格好」  
「え……?い、い、いや、これはちょっと訳があって……うわぁっ!?」  
 
あんな態勢をしていたものだから、思いっきりバランスを失い友美を巻き添えにして倒れこんでしまった……。  
今の状態は、まさに準備室でやらかした時と同じ状態であった。……親父、俺今、超ヤバイよ……。  
 
「……あ…あき…ら……」  
「あ、あの……これは……その……」  
 
しばしの沈黙。  
しかし、体を密着させているためお互いの心臓の鼓動は体越しによく聞こえてくる。  
俺の鼓動はもちろん……。友美の鼓動も高鳴っていた。  
やばい……。友美が物凄く愛しく感じる……。俺はおかしくなってしまったのだろうか……。  
俺は、理性や心理などを通り越し、"本能"という物で次の行動に移ってしまった……。  
 
「と…友美……」  
「あ…あき……んっ…んんっ……」  
 
気づくと俺は自分の唇を友美の唇に合わせていた……。  
やばいと解っていながらも、俺はこの行為をやめようとしなかった。  
人の心理や理性などは、人間の"本能"に勝ることはないと改めて知ることとなる。  
 
「友美……とも…み……」  
「んっ…んぅ…。はぁっ… あき…ら……んんっ……」  
 
俺はただ只管、友美の唇を貪った。  
時間にして1分程であるだろうが、俺には物凄く長い時間に感じる。  
俺の本能が、ようやく満足したのか、友美の唇を解放する。  
 
「んっ……。は…ぁ……」  
 
友美は虚ろ目で俺を見つめている。  
ようやく我に返った俺。とんでもないことをしてしまった……。  
 
「……ス、スマン!お、俺……。や、やっちゃいかんことを……」  
「なんでキスしたの……?」  
 
心臓がびくっとなった。絶交されると思った。  
友美とは、確かに毎日のように喧嘩しているが……絶交されるのは嫌だ。  
 
「そ……それは……」  
「……正直に言ってよ」  
 
どっちにしろ、もう逃げられない……。  
下手な言い訳するくらいなら、正直に話したほうがマシだろう……。  
 
「お、お前のことが……愛おしくなって……つい……」  
「……そうなの?」  
「う、うん……」  
 
正直、泣きたい。逃げ出したい。  
なんていわれるだろうか。もう変態とか痴漢とか獣とか言われても文句いえない……。  
ああ、俺の学園ライフも終わりだ……。さようなら、俺の青春……。  
 
「じゃあ、もう一回しよ……」  
「え……!?」  
 
返ってきたのは予想外の答え。  
もう一回しよ、ってのはつまり……キ、キスのことか?なんで……?  
 
「も、もう一回って……。キ、キスのことか?」  
「……そうっ…よ!何度も言わせないでよ……」  
 
これは……友美の本心なのだろうか。  
それとも……熱のせいで、頭が働いてないせいか……?  
……どっちでもいいか。もうこうなったら、流れに身を任せるしかない。  
 
「じゃあ……い、行くぞ……」  
「う…ん……。んんっ……」  
 
俺は再び、友美の唇を貪る。今度はもっと、強く、強引に……。  
強くすれば強くするほど、俺の欲求はどんどんと高まっていくばかり。  
俺は舌を突き出し、友美の舌を求める。  
 
「んんっ…!はぁっ…ふぅんっ…!ちゅ… んっ…んんっ……!」  
「はぁ…。とも…み…っ んっ……」  
 
俺の舌に反応するように、友美の舌が俺の舌に絡んでくる。  
もう、何も考えられない。俺はただ只管、友美を求める。  
ちゅるちゅると卑猥な音を立てながら唾液を絡ませ、お互いの舌を求め合う。  
ここまで激しいキスをしたのは生まれて初めてだ。……当たり前だが。  
 
「あき…らぁっ…。んんっ…んふぅ……んっ…んっ……」  
 
何分経っただろうか……。  
俺はようやく、友美の唇から舌と唇を引き離す。  
つつっ……と唾液の橋がお互いの舌を結び、プツっと切れる。  
 
「はぁっ…はぁっ……」  
「ふ…ぅ……」  
 
息が切れるほど夢中になってしまった……。  
友美は病人なのに……少し配慮が足りなかったのかもしれない。  
 
「わ、悪い……。お、お前病気なのに……あんなに求めちまった……」  
「窒息するかと思ったわよ、馬鹿……。でも、凄く嬉しい……」  
 
やっぱり、嘘はつけない。俺は何だかんだいっても友美が好きなんだ……。  
ただ、それを頭や心で拒否してたってだけで……。  
友美は……。友美は俺のことをどう思ってるのだろう……?  
こんなに激しいキスをした後ではあるけど、もしこれが病気のせいだとしたら……。  
 
「なぁ……、ひとつ聞いていいか?」  
「ん、なぁに……?」  
「お前、俺のことどう思ってる?」  
 
直球だが、これが一番手っ取り早い。  
回りくどい言い方なんてしてられない。これだけはハッキリさせておきたいのだ。  
 
「……馬鹿で、不器用で、女の理解がなくて、短気で、無神経で、すごく喧しい男」  
「……悪かったな」  
 
好きでもムカつくことにはかわらんぜ……。  
 
「……でも、大好き」  
 
そう言って顔を俯かせる友美。  
……ああ、なんだ。つまりは、俺と同じってわけか。  
 
「そ、そういうあんたはどうなのよ……」  
「……ワガママで乱暴で人使いが荒くて、男に理解がなくて、短気で、すごく喧しい女」  
「……う、うるさいわね!」  
 
そう言ってから、俺は一呼吸ついて本心を曝け出す。  
 
「……でも、大好きだ」  
 
そう言って俺はもう一度、友美にキスをした。  
告白よりキスを先にしたという。そんな不器用な告白の仕方だったけど。  
ようやく言い合えた本音。でもたぶん、学校に戻ったらいつも通りなのだろう。  
この素直な友美と、素直な俺を知るのは、俺達二人だけだ……。  
 
 
後日、今まで風邪を殆ど引いたことがない俺が風邪になる。  
その代わりに友美の風邪が嘘のように治ったらしい。  
……つまりうつされたのだ。今度は俺がいやというほどあいつにワガママいってやる……。  
まあ、あんだけ激しいキスをすれば当然かもしれん……ゴフゴフッ。  
 

Gポイントポイ活 Amazon Yahoo 楽天

無料ホームページ 楽天モバイル[UNLIMITが今なら1円] 海外格安航空券 海外旅行保険が無料!