俺が通う高校のクラスはとにかく男女の中が悪い。  
事の発端は今ではもうよくわからない……が、とにかく仲が悪い。  
 
「女の癖にいちいち生意気なんだよテメーらは!」  
「そうだそうだ!」  
 
こう言いながら、先陣切って文句を言うのが男子軍団のトップを勤める、この俺、北口明良。  
こういっちゃなんだが、ルックスに関しては結構自信がある。  
しかし、この女子どもは俺にキャーキャー言うどころかギャーギャー言う始末。  
まったく、見る目がない。  
 
「男なら少しは女の子に譲ってやったらどうなの!?」  
「そうよそうよ!」  
 
そして女子軍団のトップを勤めるのが子生意気なクソ女、牧田友美だ。  
一見、結構可愛い女に見えるが、とにかく口が減らない女だ。  
見た目だけで騙されるなといういい例である。まさに魔女だ。  
 
この学校はもともと女子高だったため、女子の比率がとても高い。  
世の男共にとってはうらやましい限りだろう。  
だが、女子高だからと言ってよい女がいるとは限らない。  
顔が良くても性格が悪い女など五万といる。  
もっとも、性格が悪くて顔も悪い、デーモンも沢山いるが……。  
とにかく、そんな女と男とデーモンが混同したクラスで俺は戦ってきたのだ。  
 
時には、席の前後、窓側、廊下側を決めるために。  
時には、体育祭の種目を決めるために。  
時には、文化祭の出し物を決めるために。  
さらにさらに、清掃場所決めで争う……。  
まあ掘り返せばあるわあるわ……。  
自分でも下らないことでよくまあこれだけ争えると思う。  
でも今更引けない部分もあるのだ。もし何かあれば男子軍団に裏切り者呼ばわりされるし……。  
 
そして、そんな派閥争いが激化していく中、担任の秋山先生がとんでもない事を言ってきた。  
 
「お前ら、今回の席替えはクジで決めることにしたからな」  
 
クジ?今まで自由に席を決めていたのに今更なぜ!?  
そもそもクジなんかで決めたら女子が隣の席になるってことも……。  
 
「先生!なんで今回だけクジで決めるんですか!?」  
 
そう言って、先生に質問を投げかけたのはあの小生意気な友美。  
あいつも、男子と席が隣同士になるのは嫌なのだろう。  
 
「お前達はいつも男と女で固まるからな。たまには男と女で席を混ぜたほうがいいだろう」  
 
そう言って、クジをつくりはじめる秋山先生。  
まったく、余計な事をしてくれる……。  
大体、このクラスの男女の仲の悪さは先生だって知っているはずだ。  
もっとも、先生はこれを機に男女の仲が良くなれば……と思ってるんだろうけど。  
 
「先生!待ってくださいよ!俺は女子と席をくっつけるなんて嫌です!特に友美は嫌です!」  
「それはこっちの台詞よ!私だって明良と隣同士になるのは嫌です!」  
「「今までどおり、自由に決めさせて下さい!」」  
 
こういう意見だけ見事に一致する。しかもハモった。  
他の女子ならまだしも、万一、友美が隣になったらそれこそ毎日といわず毎時間喧嘩になるだろう。  
 
「だめだ、今回だけはクジで決める。もう作ってしまったしな」  
 
そう言って先生は完成したクジを箱の中に入れ、前から順番に配っていった。  
こういう時に限って俺の嫌な勘ってのは嫌がらせのように当たる。  
そして案の定、俺の嫌な予感は的中した。  
 
「おいコラ……なんで」  
「なんであんたが」  
「いや、待て。この先の台詞を言うのは俺だ! なんでテメーが俺の……」  
「なんでよりによってあんたが私の隣なのよ!」  
「テ、テメー!その台詞は俺が言うって約束だろうがっ」  
「そんな約束した覚えはないわよ!!」  
 
……俺と友美の席は見事に隣同士になってしまった。  
先生、何か仕込んだんじゃねえか…?と思えるくらい見事だ。  
しかもよりによって一番前……。これじゃあ授業中、堂々と居眠りすることすらままならん。  
 
「先生!なんとかしてくださいよ!」  
「このままじゃ私の学園ライフおしまいです!」  
「テメー、それは俺のセリフだボケ!黙ってろ!!」  
 
毎回こんな風に喧嘩になるだろうと思うと頭が痛くなってくる。  
周りの連中は面白おかしそうにそれを見ているだけ。  
あいつらぜってー楽しんでやがる……。  
 
「だめだ、2人のワガママだけで席を変えるなんてことはできないからな」  
 
俺と友美の訴えはその一言で片付けられてしまった。  
つまり、これから3年になるまでずっとこの席で過ごさなければならないのだ。  
そのうち円形脱毛症になるんじゃないか俺……?  
 
「いい!?この線から一ミリでもはみ出たらぶん殴るわよ!」  
「テメーこそ俺の領域に踏み入れたら投げっぱなしジャーマンするからな!」  
 
そういって離せるだけ机を離す俺と友美。  
まあいい、最前列でどうどうと居眠りこくのもアレだが、  
授業中、この俺は殆ど寝てるようなもの……。寝てれば何の問題もあるまい。  
……そう思ったのが間違いだった。  
 
 
1時限目は歴史。  
この授業は"催眠術師の斎藤先生"と言われる先生の授業だ。  
なぜ催眠術師と言われてるか。テンションが高いのか低いのかわからない声、  
人を当てたりせず、只管黒板に教科書の内容をずらーっと書き連ねる動作により  
その背中から睡魔の嵐が吹き荒れ、授業を受けている者の睡眠を促進するからだ。  
事実、この授業を受けてる最中は俺だけでなく、クラスの半数以上が眠っている。  
 
「えー、つまり1192年に源頼朝が征夷大将軍となり、鎌倉時代が〜……」  
 
ああ……このアクセントの無い声、そして黒板を叩くチョークの音。  
俺を闇の世界へと誘う……。いい感じに睡魔が……。  
そう思って闇の世界へ行く前に、何者かに本のようなもので思いっきり殴られた。しかも角で。  
 
「いってーな!何すんだよ!!」  
「あんたの腕が線からはみ出てるのよ、このタコ助!」  
 
殴った犯人はもちろん友美。  
確かに俺の腕は線からはみ出ていた。数ミリ程……。  
しかし、たかが数ミリはみ出したくらいで本の角で思いっきり殴るか?フツー……。  
言い争うのも面倒なので腕をはみ出そうとせず、今度はしっかりと寝ることにした。  
そうこうして眠りに付こうとしたらまた殴られた……。しかも角で。  
 
「いってーな!今度は何だよ!!」  
「足、はみ出てる。3ミリくらい」  
 
そう言われ、足元を見ると確かに3ミリくらいはみ出てる。  
迂闊だった……。腕ばかり気にしていて足が目に入っていなかった。足元がお留守だった……。  
いやいや、だからと言ってやっぱり角で殴るのはおかしいだろ。  
文句言いたいが、こっちの分が悪いので今回だけは我慢しよう……。  
足元、腕、体。どれも線からはみ出てない。今度こそ大丈夫だ。  
そう思って3度目の眠りに付く……。今度は何のアクションも来ない。  
助かった……そう思って俺の精神が闇の世界へ向かおうとした瞬間……。また殴られた。角で……。  
 
「そうやってパカパカパカパカと人の頭を殴るんじゃねーよ!パープリンになったらどーすんだよ!!」  
「もともと馬鹿なんだからこれ以上馬鹿になりようがないわよ」  
「うるせーよ!今度は何だよ!どこもはみ出てねーだろうが!」  
「あんたのイビキがうるさいのよ、寝るのは勝手だけど静かにしてよね!」  
「うるせーよ!んなことぐらいほっとけチクショー!」  
 
大声で言い争う俺たちの声で眠っていた奴らも目を覚ます。  
また喧嘩してるのかという眼差しで俺たちを見ている……。  
俺だって好きで喧嘩してるわけじゃねーっつの……。  
 
「北口君、牧田さん。廊下に立ってなさい……」  
「「あ……」」  
 
今は授業中だった……。  
クソ、何が悲しくてこの寒い時期に廊下に立たなきゃならんのだ……。  
それもこれも、全て友美が俺の頭をぶん殴るせいだ。角で。  
 
「お前のせいで怒られたじゃないか」  
「あんたのせいで怒られたのよ」  
「いーや、お前だ」  
「いーや、あんたよ」  
「お前だ」  
「あんたよ」  
 
ギリギリと歯を鳴らしながら睨み合う俺と友美。  
授業中じゃなかったら今頃取っ組み合いの喧嘩が始まっていたに違いない。  
今回は授業中というだけあって、この言い争いだけで留まったが……。  
 
そして、次の授業。また次の授業と過ぎていき午前中の授業が全て終了した。  
喧嘩といえる喧嘩は最初の授業の時だけで、他の授業の最中はお互い干渉せずにすんだ。  
午前中の授業が無事に終わってほっとするのも、つかの間。昼の戦いが始まる。  
 
今日は金曜日。金曜日と言えばこの学校では"金曜の特別焼きそばパン"というものが購買部で発売される。  
この焼きそばパンは限定20個の品で、昼休みが始まると同時にものの3分で全て売切れてしまう。  
それほど人気がある焼きそばパンなのだ。事実、俺もこの日だけは授業が終わったと同時に購買部へダッシュする。  
 
購買部にはすでに数名の生徒がいた。焼きそばパンはまだ残っている。  
俺はにんじんを前につけられたロバのように息を切らしながら猛ダッシュで購買部に向かう。  
またひとつ、またひとつと購入されていく焼きそばパン。  
どけ、愚民共がー!!それは俺の焼きそばパンがああああああ!  
2、3人の生徒を蹴り飛ばしたり、タックルで吹き飛ばしたりしながら焼きそばパンを手に取った。  
やった!勝った!最後の焼きそばパン!……と思ったが、別の手が俺の焼きそばパンを奪おうとする。  
その手の主は……奴だった……。  
 
「またお前か!これは俺が先に取ったんだよ!その手を離せ!」  
「私が先に掴んだのよ!だから私のよ!」  
「いーや、俺だ!」  
「いーや、私よ!」  
「俺だ!」  
「私よ!」  
 
ガンとして引かない俺と友美。  
たかが焼きそばパン、だがされど焼きそばパンだ!  
ここで引いたら男の名が廃るってもの。絶対にこのパンだけは死守せねば。  
 
「あ、あんな所にマラカスを持ったダルビッシュが!」  
「な、何!?どこどこ!?」  
 
友美が指差した先を見るが、鼻くそをほじくるピザが一匹いるだけで  
マラカスを持ったダルビッシュなんてどこにも居なかった。  
あれ?そもそもこの高校になぜダルビッシュ有が……?  
それ以前になぜマラカスなんて持ってるのだろうか。南国気分?……はっ!!  
 
「こんなところにいるわけないじゃん、バーカ!おばちゃん、これちょーだい」  
「はいはい、焼きそばパンね。150円よ」  
「し、しまったぁー!!」  
 
は、嵌められた……!お、俺を日ハムの大ファンだと知ってて姑息な手を使いやがる……!  
いや、その前にダルビッシュ有がこんな地方の高校に来るわけがない……馬鹿か俺は!?  
 
「き、きたねーぞ!インチキだ!チョンボだ!」  
「あんな嘘に引っかかるあんたが馬鹿なのよ。ま、せいぜい悔しがることね」  
「キー!ムカツクゥー!!」  
 
く、悔しい……!  
焼きそばパンを取られた悔しさもあるが何より馬鹿にされたのが悔しい!  
そして"マラカスを持ったダルビッシュ"なんて嘘に騙された自分が悔しい……!  
いるわけねーだろ…… そんなダルビッシュ……!  
俺は昼飯は泣く泣くアンパンとピザパンを買って食うことにした……。  
 
「ったく、姑息な手を使いやがって……がぁ、ムカツクゥー!!」  
「いや、それ騙されたお前もどうかと思うぞ」  
 
そう言って冷静なツッコミをする我が友その1。別名、関根直也。  
こいつとは小学校からの腐れ縁だ。彼女がいるためか、男と女の喧嘩にあまり口を挟んでこない。  
 
「つーか、おめー騙されすぎじゃね?」  
 
そして我が友その2。別名、山川昇。  
正直、こいつは話を聞いてるのか聞いてないのかわからない。  
いつも適当な相槌を打ってやがる。ま、その適当な相槌が俺にとっては心地よいこともあるんだが。  
 
「うるせーよ!お前だってマラカスを持ったダルビッシュ見てみたいだろ!」  
「常識的に考えてまずダルビッシュがマラカスを持つわけねーだろ」  
「おめー、アホなんじゃね?」  
 
こ、こいつら……。  
よってたかって人のことを馬鹿にしやがって……。  
そりゃ確かに騙された俺もどうかと思うが、マラカスを持ったダルビッシュなんていわれたら  
誰だって見たいに決まってるじゃないか……。  
これだからプロ野球をよくしらないお子様はこまるぜ……。  
 
「と、とにかく!あの女は気をつけろよ。奴は悪魔だ。いや、どちらかというと魔物に近い」  
「まーた始まったよ……」  
「聞けよ!いいか、女ってのはあんなキャシャな体で人間を2,3匹平気で生むんだぞ!?おかしいだろ!?」  
「……別にいいんじゃね?」  
「たくましい女もいるぞ」  
「それは女じゃなくてオークレディだ!」  
 
俺の話に二人はまったく興味を示さない。  
山川の奴なんか鼻くそまでほじってやがる。完全に馬鹿にしてやがる……。  
大体、人が飯食ってるときに鼻くそほじるか?フツー……。  
そう思ってたらどっから共なく空のペットボトルが飛んできた。  
 
「ぶっ!?……だれだ、俺に向かってペットボトル投げた奴ぁ!?お前か!!」  
「おれじゃねーよ!!」  
 
山川をにらむが必死に否定する。  
次に関根を見るが、手を横に振って否定する。するとペットボトルを投げた犯人は……。  
 
「誰が悪魔よ、え?聞こえてんのよ!」  
 
……友美しかいねーよ。  
 
「まーたお前か!つーかペットボトル投げんなよ!」  
「うるさいわね!馬鹿のくせに人を魔物扱いした罰よ!」  
「うるせーよ!この悪魔!魔物!こんじき夜叉!砂かけバ……バッハ!!」  
 
ペットボトルの次は辞書が飛んできた。  
クソ重い辞書を俺に狂いなく飛ばしてくるなんて……やっぱ魔物だ……。  
これ以上文句を言うと、今度はストーブが飛んできそうな勢いなのでやめておこう……。  
 
そうこうしている内に、昼休みが終わり、午後の授業へと移る。  
友美が投げた辞書のせいで午後は顎がが痛くて痛くてしかたなかった。  
よりによって顎にクリーンヒットだ。せめてもの救いは俺の息子にクリーンヒットしなかったことだ。  
普通なら眠たくて仕方がなくなる午後の授業だが、今日は顎が痛くて眠いどころじゃなかった。  
かと言って、保健室へ行くといってもどうせ仮病扱いされるのがオチだ。  
日ごろの行いと言うのはこういう肝心な場面でツケがくる。覚えがある人は注意するべきだ……。  
 
顎の痛みに耐えながら、なんとか今日のカリキュラムが全て終わる。  
 
「よっしゃー!けーるぞ直也」  
「ああ、どうせ今日も俺の家でタイツ大戦やっていくんだろ?」  
 
俺はちゃちゃっと帰り支度を済ますと、直也と一緒に昇降口まで向かった。  
昇降口まで向かうと、なにやら辺りが騒々しい。  
 
「げっ!ドシャ降りの雨じゃねーか!」  
「さっきまで嘘のように晴れてたのにな……。何で……?」  
 
そんなことは俺が聞きたい位だ。  
そーいえば、こいつと一緒に帰ろうとする時はよく雨が降っている。  
ひどい時は俺達が家に帰ったとたん嘘のように雨がやみ、明るい日差しがさした事がある。  
もしかして俺たちってすげー雨男なんじゃねーか?  
と思いふけっていると後ろから黄色い声が聞こえてくる。  
 
「直也くーん!傘もってない?一緒に帰ろうよ!私忘れちゃって。テヘッ♪」  
 
……この女は直也の彼女である、美島毒子。  
俺は今まで見てきた女の中で、これほどブサイクな女を見たことがない。  
ハッキリ言ってモンスター級だ。しかし直也はこの女と付き合っている。  
そこそこルックスがあるはずなのにこいつはあのオークレディと付き合っている。  
おそらく目に特殊なフィルターでも掛かっているのだろう。可哀相に。  
ちなみに、よくこいつらがラブラブで学校を歩いてるのを目撃することがある。  
その時はあまり目を合わせないようにしている。むろん吐きそうになるからだ。  
そして、彼女がブサイクと言う事でクラスの男子からもバッシングを受けていない。  
ある意味、こいつらはこの学校で一番幸せなんじゃねーか?  
 
「しょうがない奴だな。もう高校生なんだから折りたたみ傘くらい携帯しておけよ」  
「ごめんなさーい。テヘッ♪」  
 
……そして妙にぶりっ子してるのが一層ブサイクに輪をかけている。  
正直、たまに殴りたくなることがあるが、もし殴ったら直也にボコボコにされるだろう。  
俺は殴りたい衝動を必死に抑え、我が友に別れの挨拶を交わした。  
 
「お、俺は行くぜ。ふ、二人の邪魔しちゃ悪いしよ、じゃ、じゃあな!」  
「あ、ああ。悪いな明良。それじゃ気をつけろよ」  
 
ふー……。危ない危ない。  
もう少しで俺の拳はあのクリーチャーの顔面を捉えるところだった。  
学校にいても良いことなんてひとつもない。さっさと帰ろう……。  
折りたたみ傘を差し、ふと隣を見ると友美が居た。  
なんつータイミングで現れるんだ、この女は……。  
そしてこっちを見るなり、いきなり俺の傘の領域に踏み込んできた。  
 
「丁度良かった。私、傘忘れたのよね〜。入れていって」  
「ハァ!?」  
 
なんだこいつ!?  
いきなり俺の神聖なる傘の領域に踏み込んでおまけに"入れていって"だぁ!?  
 
「す、すざけんな!勝手に人の領域に踏み込むんじゃねー!大体その態度はなんだ!」  
「うるさいなぁ……。いいじゃん、減るもんじゃないし」  
「よくねーよ!つーか減るだろ!俺の傘の領域がよ!!」  
 
そう、もし一人分を保護する傘に二人が入ったらどうなるか。  
おそらく領域オーバーで肩やら腕やらの部分がはみ出るだろう。  
そしてそのはみ出た部分は濡れる。現に肩の部分はすでに濡れていた。  
 
「オメーのせいで左肩が濡れたじゃねーか!出てけよ!!」  
「うるさいなぁ、男なんだから小さいことで文句言わないでよ」  
 
ぐぐぐ……!こういう時だけ"女は弱いから男は守れ"見たいな言い方をしやがる……!  
これだから女は嫌いなんだよ!都合のいい時だけ女ということを利用しがって!  
そのくせ"女の癖に"とか文句いうと男女差別だのそんなのは関係ないだの……。  
 
「けっ!勝手なことばかり言いやがって。そーいう時だけ女を利用すんじゃねーよ!」  
「あんただって都合のいいときだけ男を利用するじゃない」  
「お、俺はいいんだよ!男ってもんはな……」  
「ほーら、また言った」  
 
うぐっ……。くそっ、本当にムカツク女だ……。  
これ以上話すとまた色々と突っ込まれそうだからやめておこう……。  
こうなりゃとっととこいつを家に送り届けて家に帰って寝よう。  
そして今日起きたことは全て忘れよう……。  
厄日と言うのはこういう日を言うんだろうな……。  
 
「……」  
「……」  
 
俺がだんまりを決め込んでから少し立つと、さっきの会話が嘘のような沈黙が流れる。  
まあ、俺にとってはこの方がありがたい。またいらんことでモメるのはごめんだ。  
 
「……」  
 
沈黙の空気が流れる中、俺はちらりと友美を見る。  
少し雨に濡れているせいか、いつもより色っぽく見えるのは……気のせいに決まってる。  
こいつも、あんな生意気な口をきかなければ結構可愛いのにな……。  
 
「……何ジロジロ見てるのよ、ヤラシイ目でさ」  
「バッ……バッカ!べ、別にみてねーよ!!」  
「絶対見てた、人のことをジロジロと!変態!」  
「うるせーよ!!」  
 
前 言 撤 回 ! !  
こいつはやっぱり悪魔だ!鬼武者だ!!  
 
「ほれっ!着いたぞ。お前なんかさっさと家の中に入っちまえ!」  
「おっと、ご苦労ご苦労」  
 
何がご苦労ご苦労だ。  
自分から強引に送らせたくせに……。  
 
「じゃあな、俺はもう帰るぜ」  
「あ、ちょっと待ってよ」  
「あん?まだ何か文句あるのかよ?」  
 
振り返ると友美は鞄をごそごそと漁っている。  
やばい、何かウェアポンを出すつもりか?  
まさか、昼のように辞書を投げてくるんじゃなかろうな……。  
 
「……何やってんの?」  
「い、いや、何か飛び道具が来るのかなって……」  
「あんたねえ……あたしをなんだと思ってるのよ」  
「悪魔。……ぎゃん!」  
 
そう言った途端、何か飛んできた。  
や、やっぱり飛び道具を使ったじゃねえか……。  
くそっ。一体何を投げやがったんだ?  
 
「いってーな!この暴力女!……って何コレ?」  
「昼に食べようと思ったけどあまったからあんたにあげようと思ったのよ!ふん!」  
 
よく見るとそれは昼に友美が勝った焼きそばパンだった。  
……奴なりの礼ってことか?だけど投げるか、フツー……?  
 
「ちっ……。言っておくが礼なんていわねーぞ!」  
「そんなもの期待してないわよ」  
 
少しつぶれた焼きそばパンを鞄に入れる。  
……まぁ、今日の見送りに関してはこの焼きそばパンで分けとしてやるか。  
 
「……明良」  
「あん?まだ何かあるのかよ?」  
「送ってくれて……あ、ありがとね」  
 
そう言って友美はそそくさと家の中に入っていく。  
……今更礼を言われたって遅いってんだ。  
自分勝手に見送らせておいて礼も何もあったもんじゃないってんだ。  
……ま、悪い気分はしないけどな。今日は厄日でもないかもしれん……。  
そう思ってしまう自分がいることが妙に悔しい……。  
 

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