「あれ、何やってんだお前ら二人で?」  
放課後教室の見回りをしていた教員の高木厚は、  
薄暗い教室内でうずくまる宮倉真紀とその傍らで心配そうに彼女を見つめる冬瀬奈菜と出会う。  
「宮倉……気分悪いのか?」  
「高木……せんせい?」  
「あ、先生、ちょうど良かった。マキちゃんがちょっと気分が悪くなって……  
先生、この子を保健室に連れてって」  
しかし、そんな親友の言葉に真紀は首を振ってよろよろと立ち上がる。  
「私大丈夫です、一人で帰れま……」  
しかし完全に立ち上がる前に、彼女は体を震わせてバランスを崩す。  
「おい……かなりやばそうじゃないか」  
倒れそうになった真紀の体を高木は支え、そのままお姫様抱っこで担ぎ上げた。  
「やだ……せんせい、恥ずかしい……」  
「馬鹿、恥ずかしがってる場合じゃないだろ、ほら、保健室まで連れてってやるから暴れない」  
「じゃ、先生、あたしはさき帰りますから、マキちゃんのことおねがいしますね」  
「おいおい、冬瀬、友達が大変なのに冷たいじゃないか。  
お前も一緒に保健室来いよ。友達が傍にいれば宮倉も少し気持ちが楽になると思うから」  
しかし奈菜はよろめきながら教室を出る。  
「おい、冬瀬!お前も体調悪いんじゃないか?」  
「大丈夫ですよ先生……あたしもマキちゃんも。マキちゃん、悪魔に取り憑かれただけですから」  
頬を染めながら奈菜は叫ぶと、そのまま廊下をよろめきながら走っていった。  
「悪魔……?何言ってるんだあいつ」  
視線を何の気なしに窓の外へ移した高木はぎょっとする。  
窓には真紀を担いだ高木と、その二人の前にもう一人実際にはいないはずの少女の姿が映っていた。  
「馬鹿な……なんだこいつは?」  
いないはずの少女がゆっくりと振り返る。窓を覗き込む高木と、少女の視線が合った。  
その顔は、高木に担がれている真紀と瓜二つの顔をしていた。  
少女は、高木に微笑みかけながら、真紀の太ももの付け根をまさぐっていた。  
「せんせいにも……あの子が見えるの?……」  
呻きながら、いや、喘ぎながら真紀は驚きの声を上げた。  
 
 
保健医が出払ってる保健室のベッドで横になった少女は、  
教師の逆を向きながらぽつぽつとしゃべり始めた。  
「先生、七不思議の『合わせ鏡の悪魔』って……知ってます?」  
「ああ、確か家庭科室の姿鏡と家庭科準備室の大鏡を合わせるとその中から悪魔が出てきて、  
願いをかなえる手助けをしてくれるんだっけ」  
「その代わりに……願いがかなわかった時は叶うまで悪魔の僕にされてしまうんです……」  
「それが本当だったとはなぁ……」  
信じがたい話ではあるが、あの窓に映ったもう一人の真紀―――おそらく悪魔―――  
を見た高木には信じるしかなかった。  
「1ヶ月前みんなで……本当かどうか試そうってことになって……やってみたら……  
いっぱい映ってる私の一人が……勝手に動き出して……  
まさか本当に悪魔が出るなんて……それに、願いは叶なわなかったし……」  
二人きりの保健室を、気まずい沈黙が支配する。  
真紀の願いが何なのか、高木は知っていた。  
そして、その願いがなぜ叶わなかったということも。  
沈黙は、  
「あ」  
という真紀の可愛らしい、しかしローティーンの少女らしからぬ艶のある喘ぎ声で破られる。  
不意に出してしまった声に耳まで真っ赤になる真紀。  
「大丈夫か?くそ、悪魔だかなんだか知らないけど、俺の生徒から離れやがれ!」  
真紀の体の上の空間で高木は手をぶんぶん振り回すが、  
少女の首筋に浮かぶ汗は一向に引かない。  
「だめです……こいつは……あ……悪魔は……鏡の中の世界にいるから……  
私達には……触れることも、止めることもできないんです…………」  
しばらくしてから高木は諦めてぜえぜえと呼吸を荒げながら真紀に提案する。  
「……そういや、俺のおふくろの、実家、神社だけどさ、今度お払い、してもらおうか?」  
その血筋のせいで、普通の人には見えない悪魔が見えたのかもしれない。  
「もう……嫌です。先生には、関わりたくない……今こうして二人きりでいるだけでも辛いのに……」  
「……だけど、このままだと大変じゃないか。今までずっとこんなことされてたんだろ?」  
「学校でここまでされたのは初めてです……家では、毎日ですけど……」  
「じゃあ、これからもっとひどい目に遭うかもしれないじゃないか。なんとかし」  
「お願いです、もう出て行ってくださいっ!私を今一番不幸にしているのは……  
悪魔より先生だから…………」  
教え子の言葉に、高木は全身に冷水を浴びたようなショックを受けた。  
 
「そうだな……少し、先生、無神経だったな……」  
それだけ何とか言葉にすると、立ち上がった。  
3週間ほど前、高木は真紀から好きですと告白された。  
衝撃、動揺、驚愕、混乱、そしてからかわれているのではないかという疑念。  
いろんな物に支配された高木は、思わず半笑いで  
「大人になってからな」  
と答えてしまった。  
少し冷静になれば、彼女がそんな冗談など言う子ではないとわかっただろうに。  
たとえそれが許されないことでも、真剣に断るべきだったのに。  
そんな高木の中途半端な反応が、思春期の少女の心をどれだけずたずたにしたかは、  
さっきの真紀の叫びを聞けば十分だった。  
「いやああぁぁっ!」  
しかし部屋を出ようとした高木の背後に、今までで一番大きな嬌声が響いた。  
「宮倉!大丈夫か!!」  
思わず振り向いた高木の目に、ベッドの上で四つん這いになりながら  
小さなお尻を高々と天井に向ける真紀の姿が目に入る。  
「やだっ、やだぁ、だめ、なかにいれちゃだめっ、こえがとまんないよぉ」  
(くそ、なんとかできないのか……)  
その時、高木は気づいた。自分なら彼女を悪魔から救うことができる。  
(いや、だめだ。そんなことは許されない。……だけど)  
「だめぇ、せんせい、ここにいちゃ、だめぇ」  
真紀が恥ずかしがるのもわかる。嬲られる姿を他人に、しかも好きな人に見られるなど、  
通常の神経の持ち主なら耐えられうるわけがない。  
しかしこんな有様の少女を放って置くことなど人として、教員としてできるわけがない。  
だがもし彼女を救うための方法を実行すれば……高木は職を、社会的な信頼を失ってしまうだろう。  
「だめぇ、せんせい、こんなとこにいたら、こんなとこみられたら、  
せんせいがごかいされちゃうよぉ」  
真紀の言葉に、またもや高木はショックを受ける。  
目の前の少女は、自らがひどい目に遭っている中でも、高木の事を気遣っている。  
彼女を守るべき自分は自身のことだけを心配して彼女をそのままにしているというのに。  
高木は俯けになっていた少女の体を仰向けにすると、  
びくびくと震えていたその唇にキスをした。  
 
顔と顔が離れた後、溶けるような声で真紀は呟く。  
「せんせぃ……?」  
まだ、自分の身に起こったことが信じられないような口調で。  
「前は……悪かった。俺は馬鹿だから……冗談だと思ったんだ。  
みや……真紀がそんなこという子じゃないって知ってたのに。  
だから、今のが、告白に対する本当の答えだ。好きだよ、真紀」  
真紀の目が、真っ赤になって潤む。しかし彼女は、ぶんぶんと頭を振って高木から目をそらす。  
「そんなの信じられない……」  
「なんで?」  
「だって……せんせい、大人の人じゃないと、だめなんでしょう?」  
「真紀は大人だよ。人に優しくできて、ひどい事されてる時にも俺を気遣ってくれた。  
お前は俺が会ってきた人の中でも、特に尊敬できる人間だ」  
そう言って高木は真紀の体をぎゅっと抱きしめる。  
対格差の大きい二人だから、真紀の体は高木に飲み込まれ覆われた。  
「せんせい……あん、……じゃあ、私を大人同士のやり方で愛してください……  
悪魔がする悪戯なんか、感じなくなるぐらい、いっぱいいっぱい愛して……」  
高木は背広を脱いでシーツの上に敷くと、その上に彼女を導いた。  
そしてそのままもう一度キスをして、ゆっくりと膨らみの少ない胸を揉む。  
「や……」  
そこは、高木の想像よりも肉が付いていて、服の上からでもわかるほど柔らかかった。  
「せんせい……」  
「人が来た時ごまかすために、着たままにしておく。大丈夫、着たままでもできるから。  
……でも、ここは脱いでおかないとな」  
高木はゆっくりとスカートをたくし上げ、くまのプリントがしてあるシミのついたショーツを脱がしてあげる。  
少女の大事な箇所が男の視線にさらされる。  
「せんせい……はずかしい…………ひあぁっ」  
突如、高木が触るまでもなく少女の入り口がくぱぁ、と拡がった。  
「……悪魔め、サービスのつもりか?」  
内部の健康な桜色の肉壁が丸見えになるほど、そこは広げられてしまった。  
「やだぁ…………おくまでみえちゃう…………」  
「真紀、痛くないのか?」  
「うん……まいばんまいばん、いろいろされてたから……ならされちゃった……」  
「じゃあ……いくぞ」  
あまりにも細くたおやかな腰を掴むと、咲き乱れた花びらの中へ己自身を高木は推し進めた。  
割れ目を開く悪魔の手助けもあってか、その挿入はたいした抵抗もなく容易に行われた。  
「ごめん…………せんせい、わたし……はじめてじゃなくて…………」  
本当にすまなさそうな真紀の口調に、高木の心と体がさらに昂ぶってくる。  
「別に……いいさ、初めてじゃなくても。それに男としては真紀の最初になれたから、俺は満足だよ。  
……動いてもいいかな」  
真紀は、こくりと頷いた。  
 
高木は、気を抜くと彼女の膣圧に屈しそうになるのを必死に抑えながら、  
細心の注意を払ってゆっくりと抽出を開始する。  
(きつい……というより、狭い……)  
だが、辛いのは自分よりも、腕の中で喘いでいる少女のほうだろう。  
悪魔に散々開発されているとはいえ、真紀と同じ体格の悪魔とは違い、  
大人の、しかも指よりはるかに太い肉棒を挿入されているのだ。  
「痛くないか……?」  
「はい……だいじょう……ぶです……」  
涙目のまま、真紀は答えた。  
と、いきなりその体に新たな刺激が加わる。  
「や、くすぐったいっ、あ、あ、やっ」  
「真紀……?」  
「あ、……あの、わたしいまわきをくすぐられて……」  
と、彼女の中の締め付けが少し緩む。  
「……もしかして、緊張してた?」  
「だって、すきなひとと……あんっ……ずっと、ずーとすきだったひとと…………  
や、ちくびすっちゃやぁーー」  
悪魔が真紀に愛撫を与えるたびに、彼女の体の硬さが取れていくのがわかる。  
それが、高木には少し気に入らない。  
一体この悪魔は今まで何百回、何百時間こうやって真紀を乱れさせていたのか。  
(まあ……真紀の負担が減るのなら、別にいいんだけどな)  
高木は悪魔の愛撫に負けないように、腰の動きを激しくしだした。  
子供だからと少し加減していた動きではなく、同じ年齢の女性にするような激しさで。  
「やだ……ああ、あつい、せんせいのあつくてはげしいよぉ……あ、  
ちくび、はさんじゃいやあああぁぁ」  
体を内から貫く剛直の激しさと、外から加わる緩やかでねちっこい悪魔の愛撫。  
その両方を受ける少女の体が、異なる快楽のサンドイッチで悶絶する。  
「ひっ……あ、あ、やだ、せんせい、そのかくどやだぁ、  
だめ、だめ、あ、そんなとこゆびいれちゃだめぇ、  
いやっ、せんせいのとゆびでなかがこすれちゃうよぉっっ」  
アナルとヴァギナを同時に攻められ、快楽を叩き込まれた雌の体が狂おしく跳ね回る。  
「真紀……そんなに暴れると、こすれて、おれ、でそうだ」  
「せんせい、わた、わたしも、わたしも、い、いっしょに、  
あっ、あぁっ、あああぁぁぁっっーー」  
少女の体がびくびくと痙攣すると、教師は低くうなり精を教え子の狭い胎内に解き放った。  
 
目の前で、少女の膣内から精液がじゅぶじゅぶと音を立てて流れ出て空中で消失する光景を呆然と眺める高木。  
「やだぁ……せんせいのせーえき……すわれてるよぉ……」  
そこでようやく、自分が少女を妊娠させようとしてしまったことに気づく。  
真紀を悪魔の悪戯から救いたくて、彼女への愛おしさが高まりすぎて、  
避妊という言葉が高木の頭からすっぽり抜け落ちてしまっていたのだ。  
悪魔は真紀が妊娠しないよう、彼女の胎内から精液を吸いだしているのだろう。  
「悪かったな……真紀」  
抱きしめて真紀の頭をなでていた高木はぎょっとする。  
吸い出された精液が消失せず、空中を移動して真紀の口元へ移動したのだ。  
そしてそれが、口移しで真紀の口内へと注がれる。  
「……せんせいの……にがくてくさくて……あったかい……」  
とろけるような声を出しながら、少女は何の抵抗の色も示さずごくりと嚥下した。  
その姿を見ただけで高木は自らの中で熱いものがたぎってくるのを感じ、  
さらに強い力で真紀を抱きしめた。  
と、いきなり保健室のドアが開く。  
(やばい!!)  
慌てて飛び起き真紀の体を布団で包み振り返るが、そこには誰もいなかった。  
と、空中に一瞬精液が浮かび、だらり床に垂れ落ちる。  
そして、くすくすと笑う女の声が聞こえた後、ドアは閉じ笑い声は遠ざかっていった。  
 
「結局、あれが悪魔だったんだろうな」  
「じゃあ、マキちゃんは、もう大丈夫ですね。  
あたしと違ってマキちゃん、悪魔にされるのいやがってたから、良かった……」  
1週間後の放課後、高木と冬瀬奈菜は二人教室で話し合っていた。  
「みたいだな。あれからはもう何もされてないって言ってるし」  
「えへへ、よかった……やぁん……」  
「……お前の傍には、まだいるんだよな、悪魔」  
「ええ……そうですよ……正確には、悪魔じゃないんですけど」  
「神社にお払いしに行ってみるか?」  
「いえ……いいです、あたしはこのまま……だってあたしの願いは、  
気持ちのいいエッチがしたい、ですから……ふふ……」  
「じゃあ、叶おうが叶うまいが関係ないじゃないか」  
「そうですよ……へへ、お得でしょう……?」  
やれやれ、と高木は首を振る。  
「授業中は喘ぐなよ。男子生徒に悪影響出るから、ていうかもう出てるみたいだから」  
授業中、頬を染めて体をくねらせる彼女は周囲の男子の視線を集め始めている。  
もっともそれすら、彼女の願いのひとつに他ならないんだろうが。  
 
「へへへへ……気を、つけます。……そんなことより、先生こそ気をつけたほうがいいんじゃないんですか?  
マキちゃんの左肩の赤いぽちぽち、心当たりあるでしょう……?」  
「え、あれ、見えてたのか?」  
くすくすと笑いながら奈菜は怪しく体を蠢かしながら答えた。  
「体育の着替えでちらっと……せんせい、大人なのに自制心ないんですね……もしかしてロリコン?」  
「ば、ばか、俺は別にロリコンじゃないぞ」  
「やっぱりせんせい、私のこと子供と思ってるんですね?」  
突如高木の後ろへ音もなく近づいていた真紀の声が響く。  
「やっぱり……せんせいがあたしにしてくれるとき……  
子供だなって思いながら無理してたんですね……あの時は大人だって言ってくれたのに……」  
「え……いや、そういうことじゃなくてだな、ただ、その発育してないのにそういうことしていいのかという」  
「やっぱり……せんせい、私が子供だから……好きじゃないんだ……  
あの時悪魔をだますため、嘘ついたんだ……」  
背を向けて泣き出しそうな声を上げる真紀に、高木は慌てて言い訳をする。  
「いや、ロリコンじゃないってのは、その、お前が大人だから、  
別に俺はお前のことが好きでもロリコンじゃないって意味なんだよ」  
「本当ですか……」  
疑わしい声を出す真紀に、滑稽なほどの必死さで高木は答える。  
「そうそうそう、だから、俺はちゃんとおまえに、その、欲情してるし、やりたいと思ってるし」  
突然満面の笑みを浮かべながらくるりと真紀は振り返る。  
「じゃあ、今夜もいっぱい私の言うこと聞いて、やりたい事い〜〜っぱいしてくださいね」  
「え……ああ……」  
後ろを向いていた時と振り返ったときの声色の違いに驚いて、呆けたように頷く高木。  
「じゃあ、今日も先生のうちで待ってますね。  
母さんがパート終わって帰ってくるの9時ですから、7時ぐらいには帰ってきてくださいね」  
嬉しそうに何度も頷き返すと、真紀は高木の腕をひっぱて教室の入り口まで引っ張っていった。  
嵌められたことに気づいた高木は助けを求めるように奈菜のほうを振り向くが、  
奈菜はにっこりと微笑んで  
「マキちゃんの悪魔はいなくなったけど……先生は小悪魔に憑かれちゃったね」  
などと茶化しながら教室から出て行く二人を見守るだけだった。  
 
 
終わり  
 
 

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