「はぁ・・・」
今日何度目とも分からない溜め息を吐きながら数人しかいない教室を見回す
俺の名前は高梨一樹、普通のどこにでもいる学生だ
そんな普通の学生が何が悲しくて放課後に学校に残こらにゃならんのか。
理由は簡単、俺が生徒会の副委員長だからだ
「まったく・・・こんなことなら副委員長なんかなるんじゃなかった」
「はいはい。愚痴はいいから手を動かそうか?」
がっくりと肩を落とす俺に机を挟んだ向こう側から声がかかる
そう、こいつのせいで俺はこんな所にいるんだ・・・中島瑞樹。成績優秀、容姿端麗、スポーツ万能。
俺を生徒会に引きずり込んだ張本人、俺の幼馴染かつこの学校の会長様だ
「うっせぇ、元はといえばお前のせいだろうがっ!」
「え?私が何をしたっていうのかな?」
「お前が先生から仕事を安請け合いしなきゃ、今頃、俺は康弘達とゲーセン行ってたんだそれを大事な用事とかいって呼び止めやがって・・・」
康弘っていうのは俺の親友というわけでもないが割りと仲のいい友達だった。
「あれぇ〜?もしかして期待しちゃったかなぁ??」
「誰がするか馬鹿かお前!?」
「誰か馬鹿よっ!?」
「先輩達は相変わらずですね・・・」
そんな俺たちのやり取りを眺めていたもう一人の少女が口を挟んでくる
苦笑と微笑の中間のような困った笑顔で書記の高島小夜がそんな言葉を投げかけてくる
なぜか俺と(かなり)瑞樹になついてくれているいい後輩だった。綺麗というより可愛いの似合うタイプだ
「うっ・・・うっせぇ!行って友達と騒ぐのが面白いんだよっ!」
あいつらは「美人生徒会長に可愛い書記。。。明日コロス!!」とかいってやがったがこれの何処に楽しめる要素があるんだまったく
「いいじゃない。ゲームセンターなんてどうせお金を無駄に使うだけでしょ?それに特にやるゲームもないくせに」
「・・・別にないわけじゃねぇよ」
くすくす可笑しそうに笑いながら反論してくる瑞樹に俺は言葉に詰まる
いつもいつもあくまで正論で楽しそうに俺を追い詰めてくるこいつは相当性質が悪いと思う
「それじゃ、私といるのは楽しくないんだね・・・」
少し涙目で上目遣いにこちらを見上げてくる瑞樹
学園のアイドルからそんな視線を受けて動揺しないほうが男として間違ってるだろう
「なっ!?別にそういってるんじゃなくて・・・」
「・・・・・・ふふ・・・あははははっ。何その顔」
「・・・またか。またなんだな」
「さぁて?ま、一樹が私に勝とうなんて甘いのよ」
「高梨先輩が中島先輩に勝てる日なんて来ませんよ。私にすら勝てないのに」
はぁぁぁと深い溜め息をつきながら俺は敗北感でいっぱいになる
いつもいつも引っかかるこの芝居、いい加減、自分の馬鹿さ加減に頭が痛くなる
「ていうか小夜!いまなんつった!?」
「あなたでは私に勝てません。と申し上げましたが?」
「小夜ちゃんに勝てないようじゃ私には一万年かかっても届かないわよ」
二人して馬鹿にしやがって。コノヤロウ・・・コイツラ完全に舐めてやがるな
「ハッ!俺が本気を出せばお前等なんか簡単に組み伏せて犯してやるさっ!!!」
「さいてーですね高梨先輩」
「うわー・・・女の子に犯すとか使う人って・・・」
美少女二人の物凄く冷たい目線が突き刺さる
「見るな。そんな目で俺を見るんじゃないぃぃぃ!?」
「さてと、小夜ちゃん、変態は放っておいてはやく帰りましょ」
「そうですね一緒にいると何されるか分かりません」
そういうと二人はカバンを持ちコートを着込み始める
「あれ・・・?お二人さんー・・・・?私も一緒に帰りたいなぁ・・・とか」
「それじゃぁねー」
「お疲れ様でした先輩♪」
そういって、無常にも閉まる扉。ふふ・・・いいんだもう俺なんか俺なんか・・・
心で盛大に泣きながらとっとと片付けて帰ろう。
そう思いコートを羽織り10分ほどかかってようやく片付けも終わり校門まで歩いていくといきなり学生鞄が横手から飛んできた
「ぶべらっ!?」
油断していた為まともに喰らい吹っ飛ぶ俺。
「まったく、遅い!」
「うわぁー・・・まともに入ってましたよ今」
「え?嘘?」
「いきなり何すんじゃてめぇえええええ!!!!」
「なんだ、ピンピンしてるじゃない。問題なし」
「謝れやぁぁぁぁ!!!??」
「あはは・・・まぁ、生きてるから大丈夫ですよ」
「そんな問題ちゃうわぁぁぁ!!!」
楽しくも騒がしい生活の中でこれからどう動いていくのか楽しみであり不安なそんな日々だった。
それは、とある日の出来事だ
「・・・で?どういう事か説明してもらおうかしら一樹?」
「ですね。高梨先輩どうなんですか?」
「誤解だっ!?俺に非はない!」
拝啓、皆様いかかがおすごしでしょうか?
ここは●●学園の生徒会室、そこに俺こと(自称)美男子、高梨一樹は困り果てていた
目の前には背後に悪鬼でもつけているかのような気迫で迫ってくる少女が二人
「連れないなぁ・・・一樹君と私の仲じゃない?」
「馬鹿ッ!?綾ねぇ!誤解を招く言い方をするなっ!?」
「ほほぉ〜・・・一体、いつからそんな関係なんでしょうかね!?」
「是非、詳しくお聞かせ願えますか?高梨先輩?」
二人がにっこり笑って一斉にこちらを振り返り詰め寄ってくる
いや目が笑ってないぞ二人とも!?
「だから誤解だって言ってる!?」
事は今から今朝のことになる・・・・・・
それはなんの変哲もない、いつもどおりの朝
俺はいつもどおりに起き、いつもどおりに顔を洗い、いつもどおり朝飯を食べる
「うむ・・・今日の朝飯は味噌汁にご飯に魚か・・・俺にふさわしい朝飯だ」
「アホなこと言ってないでとっとと食べなさい!瑞樹ちゃん来ちゃうわよ!?」
「へいへい〜」
ここまではいつもの日常だった
「あ、そういえば今日、綾ちゃんうちに来るからね」
「・・・・・」
沈黙
いや思考が凍ったと言ったほうがいい
「・・・・・・・・・・・・・・・・・はい??」
「だから綾ちゃんがうちに来るって言ったの」
「へーそうなんだー・・・・・・・・・・・ん?綾ちゃんってあの綾ねぇかっ!?」
「そうそう。あの綾ちゃん♪」
高坂綾、俺の幼い頃によく遊びと称した地獄に叩き込んでくれた人だ。
親戚の家の近くにすんでいて俺が親戚の家に遊びに行くたびにあの手この手で虐めて・・・もとい可愛がってもらった
いや、この話はまたの機会にしよう・・・・思い出したくもない・・・・
「なんで綾ねぇがくるんだよっ!?」
「こっちに引っ越す事になったらしいのよ高坂さん家」
「・・・・・マジ?」
「マ・ジ♪」
「・・・・・マジなのか」
また地獄が始まるのかと思いながら俺は楽しみなような怖いような複雑な心境で家を出る。
と丁度、瑞樹が呼び鈴を鳴らすところだった
「あれ?珍しい・・・いつもは鳴らしても出てこないのに・・・」
「・・・・・よぅ」
適当に挨拶しつつとっとと学校への道を歩き出す俺達
普段は適当に喋りながら行くんだが綾ねぇが来ると思うと対抗策を考える事だけで一杯だった
しばらく進むと不振に思ったのか瑞樹が声をかけてきた
「・・・・・どしたの?ふられた?」
「誰がフられるか!俺はこれでも千の女にこくはk・・・・」
「なんだ元気じゃない。心配して損した」
「最後まで言わせろよ!?」
「そうそう。その調子だよ♪一樹が落ち込むのはらしくないな〜」
そういって嬉しそうに微笑む瑞樹は本当に俺のことを心配してくれていたみたいだ
普段からこれくらい素直に笑ってくれるといいんだがと苦笑をもらしつつ頷く
「何よ?」
「いや、お前・・・」
「だから何よ?気持ち悪い」
「・・・一言余計だよなぁほんとに」
「それが私なの」
ふふんと得意気に胸を張る瑞樹
らしいというかなんというか・・・恵まれてるな俺
「・・・まぁ、ありがとな。・・・・胸はないけど」
「・・・・・・・」
「ぶっ!?何すんだ!?」
「うっさい」
こいつ思いっきり鞄の角で殴りやがった
すぐに暴力に訴えるのはどうかと思うぞ女の子として・・・・・
「せっかく人が感謝してるってのに・・・」
「一言余計よ馬鹿。素直に感謝すればいいものを・・・」
「そうですよ。余計です」
「まったく・・・どっちもどっちだろうに」
「ん?」
いつの間にかすぐ後ろに小夜と信人が可笑しそうに笑いながら立っていた
新神信人。生徒会の会計にして俺の親友というか中学から瑞樹や俺とずっと一緒に過ごしている悪友だ
「・・・お前等どっから見てたんだよ?」
「えーと・・・どこらへんでしたっけ?新神先輩」
「確か、『一樹が落ち込むのはらしくないな〜』くらいからだな」
「ほとんど全部じゃねぇか・・・」
「いやいや、相変わらずの夫婦漫才だなうらやましい限りだよ」
あははーと笑いながら信人は俺と瑞樹を交互に眺めうんうんと勝手に納得している
いや、俺としてはそこで納得されても困るんだが
「誰が夫婦漫才よっ!」
「あの・・・眺めてるとそうにしか見えませんよ?」
「うっ・・・小夜ちゃんまで・・・」
「いい夫婦になれそうだな俺達」
「・・・・調子に乗るなっ!」
「っと!?当たらんよ!」
「あーいう所が夫婦漫才って言われてるのに気付いてないんでしょうか・・・・?」
「まぁ、それがあいつらだから。ほらそろそろ行かないと遅刻するぞ」
苦笑しつつ楽しそうに眺めしっかり歯止めをかけてくれるのが信人のいつもの役回りだ
俺と瑞樹はしぶしぶ了承し4人で学校に向かって走り出す
俺は朝の出来事なんか吹っ飛んでいたというか忘れていた