「え、ホントにやるの?」
「やるわ。決まりだから」
「22分?」
「22分」
ももと裕子はしばし無言で見つめ合う。裕子の目には同情の影も冗談の色も見受けられない。本気だ。ももは先に目をそらしてしまった。
女の子四人による「リアルウノ」。誰もいない放課後の音楽室で繰り広げられる修羅の道である。
まずは普通にウノをプレイし、終わったらトップの子が最下位の子の体を好きにできるという、スリルを味わいながら好奇心が満たせるゲームだ。
二位と三位の二人は、トップの子を手伝う。好きにできる時間は、最下位の人が最後に持っていた手札の数をそのまま点数に置き換える。
今日のももは最後に使われたドロー2でリバースと0を引かされ、22点に達した。ドロー2とリバースとスキップは20点、ワイルドとドロー4は50点の決めである。他は数字がそのまま点数になる。
今まで主に行われたのは、くすぐり。前回最後までドロー4を残した美香は笑いすぎて涙と鼻水でぐしゃぐしゃになりながら、少しだけおしっこももらしていたようだ。
最後の方は、押さえ付ける手を少し動かしただけでも「ひぁっ! あんっ」と過敏に反応していた。口は開きっぱなしになってよだれが垂れ、目は開いているのか閉じているのかよく分からなくなった。
あのときの美香は終わったあと手を離してもしばらく動くことも出来ずに、「ぁ………う……」とうめきながらうずくまっていた。
今日は、ゲームを始める前にその美香が
「男子が時々やってる電気あんま、あれやっちゃダメかな」
と言い出し、誰も断れなかった。特に前回トップだった早織は真っ先に
「う、うん。いいんじゃないかな」
と、前回の借りを返す機会を認めざるをえなかったのだ。ももと裕子も押さえ付けて恥ずかしい姿をじっくり見てしまった手前、何も言えなかった。ましてや
「もう、こんな危険な遊びはやめよう」
などとはとてもとても提案できなかったのである。
ももは床に寝かされた。いつもは一人が両手、もう一人が両足を押さえるのだが、今回は電気あんまという行為の性質上、
美香と早織が腕を一本ずつ床に押し付けることになる。ひと一人と腕一本ではどうがんばっても勝負にならない。背中も腰も腕もお尻も、ふわっとした絨毯の床に吸い込まれるようだ。
靴下でおおわれた右足がもものスカートの奥へゆっくりと進んでいき、壁にぶつかった。ももの表情がこわばる。女の子同士とは言え、
こんなところを足で触らせて良いのだろうか。裕子の土踏まずが股間に優しく当てがわれている。痛くされることはなさそうだ。
裕子が立ったまま見下ろして、小声で告げる。
「じゃあ、やるよ」
「……うん。」
ぶるぶるぶる
裕子の足がスカートの中で震動すると、ももは笑い出した。
「やっ、ひゃっ、ふひゃはははは! だめ、ゆうちゃんくすぐったい! やめて!」
今までにない感覚。くすぐられるのと似ているが、もっと体の芯をいじられるような違和感。
「まだ始まったばかりよ」
「むりむりむり! ひははひひゃは!」
予想外の大きなリアクションに戸惑いながらも、裕子は右足を動かし続ける。抱えられた両足首も押さえ付けられた両手首も動かしようがなく、ももは胴体をひねってじたばたする。
「だめぇ、ゆるして! あひぁ、ひゃひゃひゃひゃは!」
「許されない。あなたはリバースを引いたのよ」
裕子の冷酷なあんまが続く。
「あっ、もぅっ、ふっ…あぁ」
「意味のある言葉がなくなってきた」
「……っ!」
裕子の鋭い視線がももの顔を舐め回す。焦点はあごから胸へ下り、そして体をはい回る。下から見ると、今どこが見られているのかよく分かる。
「乳首が浮いてきたわ」
「いや、見、あぁあっ」
「喜んでるんでしょう? 笑いなさい」
「あっ、無理、はんっ!」
思わず視線をそらす。胸の先端はじんじんして熱い。掻きむしりたい。指で潰したり口で吸われたりしたらもやもやが晴れそうだ。ももは本能で上体を左右にひねって服の内側にこすりつける。
「あ……あっ」
下半身が勝手に動く。震える足に大事なところが食い込んでいく。
「んーっ、やあーっ!」
親指のつけねが、布越しに敏感なところをごりごりする。あそこがぬるぬるして、そのぬるぬるがパンツの中でべちゃべちゃに塗り広げられる。
「あっ、目っ、あ、はあ、っ……え?」
急に弱まった刺激に、ももは裕子の顔を見上げた。
「足、疲れてきた」
「えっと、座ってするといいみたいだよ」
「こう?」
もう少し向こうに座った方がいいとか早織がアドバイスし、裕子も足を止めて体勢を作り直す。
ももが見上げると、美香が真っ赤な顔でこっちを見つめていた。
「…………な、なに?」
「ううん。頑張って。後で感想聞かせて」
「みかちゃん……」
美香が、押さえていた右腕を離し、ももの顔の方を向いてまたがった。そして腰を動かしてキュロット越しに自分の股間を擦りつける。
「みかちゃん、何やってるの?」
「あのね、この間いっぱいくすぐられて気持良くて、こうすると似た感じなの」
「何か、あったかいよ……」
「うん。ももちゃん見てて変になったの」
美香とももの顔が見る見る赤く染まり、美香の首筋には汗が浮いてくる。吐息が荒くなり、美香にだけ自分の中の水音が聞こえる。
目を閉じた美香がラストスパートをかけようとした瞬間
「続けるわ」
裕子が断言して左足をスカートに差し込むのと同時に早織が左腕を押さえる。美香は慌てて腰の動きを止める。
「あと15分ね」
時計を見て足を震わせる裕子
「あっ、あーっ、だめ、あっ」
腕も足も動かせないももがじたばたする。腰をひねると余計に足が食い込む。
「いやっ、あっ、熱っ、あーっ!」
腕も少しだけ動く。右腕の上で美香が太股をきつく閉じる。美香の股間にも電気あんまの振動が伝わる。
「あっ……!」
美香が先に硬直し、ももの腕にがくがくと腰を押し付けて、へたり込んだ。
「あっ、だめーっ! やあーっ!」
ももも続けて果てる。びくんびくんと跳ね、動かなくなる。体の奥から何かが弾けて魂ごと上に持っていかれる。
「あっ……あ」
首が右側に倒れ、美香と向き合う形になった。ぼやけた視界の中、美香の顔の光が目にしみる。汗やよだれが濡れ光っている。
「あ、イッちゃったんだ」
「イッた?」
「うん。女の子はエッチなことをいっぱいされると、気持良くてこんな風にふにゃふにゃになるの」
上で、早織と裕子が喋っている。
「……それでも続けたらどうなるの?」
「さあ、よく知らないよ」
「あと8分ね」
裕子が足を持ち、右足を伸ばしてくる。
「あ、ゆ、ゆうちゃん」
「何?」
「許して、もういいの」
「ダメよ、あなたはリバースを引いたんだから」
「「あんっ!」」
ももと美香の悲鳴が上がる。
「裕子ちゃんも、ももちゃんと一緒に軽くイッてたよね?」
「……さあ?」
裕子は目をそらし、振動を与え続けた。