むくり、と。彼は起き上がる。
彼はとある理由で一人暮らしをしているため、家事も一人でこなさねばならなかった。
あくびをしながら自室のドアをあけると、良い匂いと人の気配が台所から感じられた。
「あいつらか・・・。」
彼は頭をかきながら苦笑し、服を着替えてから台所に向かった。
「よう、おはようさん。」
「あ、おはよう!って何よそのだらしない態度は・・・。起きぬけなのは分かるけど、もうちょっとしゃっきりしなさいよね。」
「まぁそういうな姉よ。こんな彼も素敵ではないか。」
台所で食事の用意をしているのは、彼の幼馴染の双子の少女であった。
姉は黒髪を見事なポニーテールにまとめており、快活な印象を与える美少女であった。
対して妹は、同じく美しい黒髪を、こちらはストレートにおろしている。知的でクールな印象だ。
もっとも、彼に対しては好意を素直にぶつけすぎる所があった。
「しかし、お前ら今日はどうしたんだ?特に朝食の用意を頼んだ記憶は無いんだが・・・。」
「お母さんがね?おかずが余ったから持って行けって。ついでに朝ご飯の用意もしてやりなさいってね。」
「うむ、まぁそれはあくまで口実で、私も姉も一秒でも早く君に逢いたかっただけなのだがな。」
「!!な、何言ってんのよ妹!!あ、あくまで幼馴染の腐れ縁として心配しているだけでそんな・・・!」
「そんなに照れるな姉よ。私を見習ってもう少し素直になれ。今時ツンデレは流行らんぞ?」
こんないつものやりとりを見て、彼は思わず苦笑していたのだが、ふと真顔になった。
「なんか・・・いつも悪いな。本当にすまな・・・・むぐ。」
そのまま喋ろうとしたのだが、姉妹二人から口に人差し指を当てられては喋れない。
二人は彼の目をじttぽ見つめてくる。彼はまた苦笑し、表情で「分かった」と告げる。
二人が人差し指を離した後、彼は笑みを浮かべて言った。
「二人とも・・・本当に有難うな。すごく感謝してる。」
その言葉を聞いて二人はとびっきりの笑顔を浮かべた。
「まったく・・・。あんたの世話を焼けるのは私と妹ぐらいなんだから、ちゃんと感謝してよね?」
「こちらこそ有難うだ君よ。あらためて惚れ直したぞ!」
この3人がドタバタしつつも楽しい日常を織り成していくのだが、それは別の機会に語ろう。