鈴奈の黒い瞳が潤んだ。両眼を閉じた。長い睫を飾った瞼が、羞恥に痙攣した。天馬が鈴奈の瞼と頬を舐めた──皮膚が敏感に反応した。  
「鈴奈……」  
包皮を剥かずに鈴奈のピンクパールを鈍色に光るピアスで撫で摩った。上下に動きながら、微細にテンポよくクリトリスを刺激する。  
鈴奈が鋭く反応した。熱く柔らかい肉とは対照的な冷たく硬質な感触が、鈴奈の女芯に一味違った喜悦を与えた。充血していくクリトリス。  
「ひゃうぅん……ッ」  
鈴奈が声をあげた。ペニスの先で円を書きながら、天馬は仰向けになった鈴奈の双腿を押し広げ、きつい膣口にペニスを埋没させていった。  
鈴奈の花弁内部の構造は、素晴らしく緻密で官能的であり、淫らだった。めくるめく快美感がふたりの五感を駆け回る。  
極上の名器だ。内部の細やかな襞がペニスを優しく包み、表面を揉みしだいた。熱く滾る蜜液がふたりの毛むらを濡れそぼらせる。  
「ああ……鈴奈、鈴奈……ッ」  
腰を激しく前後に揺すりながら、天馬は喉仏を小刻みに蠢かせた。鈴奈の裸体の上で天馬は踊った。踊り続けた。  
「天ちゃん……ッ」  
天馬の裸体に汗が滲み出た。額に浮き出た珠の汗が鈴奈の頬に落ちる。鈴奈の色白の相貌──細く美しい眉根がつらそうにたわむ。  
蜜液が天馬の陰嚢までヌメらせ、熱く粘りつく狭隘な隋道がペニスをきつく食いしめた。表面が焼け爛れてしまいそうだ。  
喜悦に鈴奈が頤をのけぞらせ、喘ぐ。ザーメンと愛液が混ざり、むあッとするような熱気を放つ。雄と雌の強い性臭が室内に溢れた。  
頭のてっぺんまで串刺しにされるような感覚が鈴奈を襲った。天馬がリズミカルに鈴奈の花弁を突き上げる。  
エクスタシーの津波が押し寄せた。甲高い嬌声をあげて、天馬にしがみつく。鈴奈の甘い匂いが天馬の鼻腔を刺激し、内なるエロスを昂ぶらせた。  
「ああッ、天ちゃん、あたしッ……もう……ッ」  
汗を飛び散らせながら飢えた獣のように、ふたりは性の快楽と互いの生肉を貪った。追い詰めた。追い詰められた。  
ふたりは獲物であり、同時に狩人だった。血がざわめいた。激しさを増す動き。ペニスが火柱と化した。  
「んん……いいよ、いっても。僕も、もういきそうだよッ」  
狂奔する法悦の稲妻が、ふたりの背筋を貫いた。尿道に走る鋭い痛み──天馬は強烈なストロークを膣壁に叩き込んだ。  
脈動するペニス──白い礫が炸裂した。収縮する花弁にザーメンを放射させていく。  
「ああぁぁ……っ」  
鈴奈が嗚咽に声帯を震わせた。熱い液体が内部を満たしていく感覚──裸身を跳ね上げながら、鈴奈はハイレベルのオーガズムを極めた。  
5  
「もう学校、完全に遅刻だよ」  
熱いシャワーを浴びながら、鈴奈が咎めるように言った。天馬の身体をお湯で濡らし、ボディーソープを含ませたスポンジで胸と脇腹を優しく洗ってやる。  
汗でべとついた肌に熱いお湯の刺激が心地よかった。排水溝に吸い込まれる水の音が鼓膜を小さく揺さぶった。  
「学校なんてゆっくりいけばいいじゃん」  
悪びれた様子もなく、天馬は答える。身体を洗われて気持ちがいいのか、眼を細めて水滴の浮かぶ天井を眺めていた。幼い我が子を洗う母親の気分だ。  
「天ちゃん、お尻洗うから後ろ向いてね」  
 
スポンジをタイルに置き、天馬の身体を反転させた。しなやかで美しい臀部だ。白磁のように滑らかな尻──割れ目を掌でくつひろげる。  
指先にめり込む尻肉の感触に鈴奈の胸が躍る。清楚なすぼまりが見えた。襞が少なく、形も小さく整っている。色素の薄いアヌスは紅サンゴ色だった。  
そっと鼻先を近づけ、匂いを嗅いだ。体臭に混じったアヌス独特の生々しい香り──不意に、その部分を舐め清めてやりたくなる。  
(ふふ、天ちゃんの匂い……可愛い……)  
他人の体臭、汚れは絶望的に不愉快な代物でも、愛しい相手のものであれば、それは興奮の起爆剤になる。鈴奈の温厚そうな二重瞼が優しい光を湛えた。  
「……鈴奈。あのさ、あんまりそこ見られると……恥ずかしいんだけど……」  
天馬の声に鈴奈がハッと我に返る。恥ずかしそうにうつむく天馬の横顔に、鈴奈の母性本能がくすぐられた。鈴奈は逡巡した。逡巡は一瞬だった。  
小さなアヌスに、鈴奈は唇を押し付けた。唇で表面を甘く吸いながら、舌を這わせる。天馬がビクッと身体を硬直させた。  
「え、ちょっとッ、鈴奈何やってんだよッ!」  
生温かい肉片がアヌスを動き回る感触に驚きの声を発しながら、天馬は鈴奈の頭部を押さえつけた。それでも鈴奈は舐め続ける。  
「き、汚いから舐めないでよッ」  
「汚いなら天ちゃんのお尻、あたしが舐めて綺麗にしてあげるよ……ううん、汚いなんて思わない……だって大好きな天ちゃんのお尻だもん」  
性的なニュアンスは感じられなかった。母猫が仔猫にしてやる行為に近い。肉襞が舌でめくりあげられた。  
肛門粘膜を鋭い快感が貫く。鈴奈の舌が内部でクルクルと回転するたびに、下腹部がジーンと熱くなった。  
「くうぅッ……あ……ッ」  
男にしては清澄すぎる艶っぽい喘ぎが、天馬の声帯から発せられた。  
数分ほどアヌスを舐め回し、鈴奈がやっとストップする。アヌス舐めは初めての経験ではない。他の女達から何度もされたことがある。  
それでも鈴奈に舐められるのとでは恥ずかしさの度合いが違った。羞恥が快感を上回ってしまい、素直に楽しめない。  
「どうだった、天ちゃん?」  
優しい笑みを湛えながら、鈴奈が天馬の上気した横顔を眺めながら尋ねた。鈴奈の屈託のない大きな瞳が少しばかり憎らしくなる。  
「鈴奈……」  
天馬が素早く鈴奈の背後に回り、腰を両手で鷲づかみにした。お返しをしてやるつもりだった。ぐいっと尻を突き出させ、天馬がしゃがむ。  
「次は僕の番だよね?」  
「あ、あたしは自分で洗うからいいよッ」  
「駄目だよ。僕がどれだけ恥ずかしかったか、鈴奈にも教えてあげるよ」  
麗臀の谷間を左右に広げられ、鈴奈が腰を振って抵抗する。天馬が鼻を鳴らして匂いを嗅いでいるのが、鈴奈にもはっきりとわかった。  
「これが鈴奈のお尻の匂いか。なんかすごくエッチな匂いだね」  
鈴奈の薄桃色のアヌスは、とても排泄器官とは思えぬほどに美しかった。ふっくらとした肉の蕾に、天馬は興奮気味に生唾を呑んだ。  
排泄器官を覗き込まれ、匂いを嗅がれるのは思春期の少女にはつらい。特に今日は朝、トイレを済ませてきたばかりだった。  
鈴奈の眦に羞恥の涙が浮かんだ。小粒の涙が一滴、頬を伝って落ちた。  
「鈴奈のお尻の匂い嗅いでたら……なんかまたチンコ立ってきたよ」  
たっぷりと秘めやかな香りを堪能し、天馬がわざと乱暴にアヌスにむしゃぶりつく。アヌスに舌を潜り込ませ、直腸内部を荒っぽく掻き回した。  
「あ……ああッ、天ちゃん、もっと優しく舐めて……ッ」  
 
鈴奈の長い髪が振り乱れた。悦楽の余燼が蘇る。恥かしい反面、それでも嬉しかった。  
天馬が自分の汚い部分まで愛しんでくれる幸せ──鈴奈は心からそれを実感した。  
天馬の執拗なアヌリングス──含羞とアクメに晒されながら鈴奈は悩ましく、熱い吐息を漏らしていった。  
              *  *  *  *  *  *  *  *  *  *  
結局、家を出たのは午前十時を過ぎてからだった。整然と並んだ机と椅子。シャープペンシルのカチカチと鳴る耳障りな音。むかついた。  
かったるい授業──途中でエスが切れてトイレで一発キメた。さっさと早退したかった。鈴奈が駄目だと言ったので我慢した。  
授業が終わって学校を出ると、その足で鈴奈と一緒に繁華街に買い物に出かけた。私服なので着替える必要もない。  
途中で寄った宝石店でティファニーのオープンハートネックレスとお揃いのピアスを買い、鈴奈にプレゼントした。お互いの耳にピアスをつけてやる。  
「ありがとう」  
和んだ表情の鈴奈が何度も天馬の頬にキスをした。予想外の喜び様に天馬は呆気に囚われたが、それでも嬉しい。ふたりは仲睦まじかった。  
鈴奈が死ねば天馬は生きていけないだろう。それは鈴奈も同じだ。いつも寄り添いながらふたりは生きてきたのだ。  
鈴奈が指先の天馬の掌に触れた──天馬が優しく握りしめた。穏やかな時間がふたりを包み込み、流れていった。  
6  
明の腹部に拳がめり込んだ。逆流する胃液。胃袋がめくれあがる激痛──拳が何度も腹部を打ち抜いた。痛みに脈拍が上昇した。  
食道を灼く胃液をかろうじて飲み込み、明は奥歯を食いしめた。じっとりと汗ばむ額、耐えるしかなかった。  
繰り返される屈辱──どす冥い殺意が明の胸裏を満たす。金本の耳をつんざく怒号、延々といたぶるようにストマックに叩きつけられる拳。  
「この腐れボケェェがぁぁッ!!!」  
憤怒に顔面を赤銅色に染めた金本が、怒鳴りちらしながら明のドテッ腹を殴りつづけていた。強張る首筋の筋肉──脂汗がぬめついた。  
「ふざけんじゃねえぞぉぉッッ、誰がテメエらのケツ持ちしてやってんだよぉぉぉッ!!ああぁッ!?」  
醜貌をさらに歪ませながら、金本が明の顔面に唾を吐き捨てた。肩で息をする度に、金本の吐き気を催す野良犬の糞のような口臭が明の鼻腔を襲った。  
「ず、ずいばぜん……れ、れもあいづら人数づれでぎてぇ……」  
明が痛みに呻吟しながら、濁音混じりに金本に向かって説明した。苦痛に腹部を押さえ、うめく明の横顔──金本の容赦ない拳が飛んだ。  
顎に当たった。唇が切れた。脳が振動した。一瞬、目の前が暗転した。鉄錆の味が口の中に広がっていった。  
「ふざけんじゃねえぞ、この半グレ(不良)がぁッ、俺たちゃヤクザなんだよぉ!テメエらガキと違って喧嘩に負けましたじゃなぁ!  
明日からオマンマが食えねえんだよぉッ!いいかっ、一週間待ってやるから『フール』の頭潰してこいやぁッッ!」  
髪の毛を引っつかみ、何度も揺さぶりながら明の耳元で金本がわめく。唾が頬に飛んだ。鼓膜がキンキンと痛んだ。こめかみが震えた。  
関節が軋み、明はあえいだ。  
「わ、わがりまじだぁ……」  
「わかりゃいいんだよ。いいか、どんな手使ってでもケジメは取って来いよ。なんなら天馬にでも頼んだらどうだ。  
おまえなんかよりゃよっぽど使えるぜ。親父も兄貴達もあいつのことは高く買ってるからぜ」  
(金本……その天馬に泣き入れたヤクザはどこのどいつだよ……この腐れ豚が……)  
金本が引っ掴んだ明の髪の毛を離してやる。むせながら何度も明がかぶりをふった。かぶりをふりながら──明の眼は憎悪に燃え立っていた。  
 

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