時刻は11時時前、心地良い倦怠感に包まれながらふたりはカラオケボックスを出た。冷たい夜風が頬を撫でた。鈴奈が天馬の脇に密着する。  
「寒いね、天ちゃん」  
「うん。どっかで熱いシャワー浴びたくなるね」  
赤や黄色の毒々しいネオンが瞳に反射した。あやゆる色彩の波が交錯する。天馬が鈴奈の首筋に鼻を近づけた。汗の匂いが仄かに漂っていた。  
暗がりに差し掛かるとB−BOY系ファッションに身を固めたガキが四人、路上に座っていた。ひとりが、うろんげな眼を天馬と鈴奈に向ける。  
どいつもこいつも金と女には縁が無さそうなツラをしていた。無視して通り過ぎようとすると四人が一斉に立ち上がった。  
「そこの君達ぃ、俺達と遊ばないかい」  
ブラックのバンダナの上からイエローキャップを被ったガキが、ヘラヘラ笑いながらからんできた。面倒なことになりそうだ。  
天馬は舌打ちし、鈴奈に目配せする。黙って鈴奈が天馬の後ろに回り、三歩ほど下がった。  
「お姉ちゃん、あんまし怖がらなくてもいいぜ。俺達ってこう見えても優しいからさぁ」  
一重瞼をしたニキビ面のデブが興奮気味に息を荒げながら、脂肪たっぷりの突き出た三段腹を波打たせた。  
四人の息遣いが変わるのがはっきりとわかった。ガキどもには、眼の前のふたりがとびっきり上等な獲物として映っているのだろう。  
「しかし、ふたりともすげえ綺麗だなぁ。まるで天使みてえだ。おめえらはどっちがいい。俺は後ろの女にするぜ」  
「えへへ。じゃあ俺、男っぽい格好してる目の前の奴がいい。かっこいいし、マンコの具合もよさそうだ」  
残りのふたりは、突っ込めるならどちらでもいいとデブに言った。眼が血走っている。よっぽど溜まっているのだろう。  
股間を押さえながら、舌を出してイエローキャップが喘いでみせる。ジーンズの上からペニスが激しく隆起していた。  
今にもジッパーを突き抜けて飛び出してきそうだ。  
(うえぇ、こいつら絶対脳みそにウジ湧いてるよ。なんで僕のことまで女に見えるのかねえ……しかしデカイな。羨ましい)  
イエローキャップのペニスに天馬は自らの肉体的コンプレックスを刺激された。  
天馬のペニスも決して小さくはないが、だからと言って大きくもなかった。日本男子の平均的サイズだ。  
流麗で理想的な形をしてはいるが長さはせいぜい十四センチ程度だ。女達はそれを美しい形状だと褒めるが、大きさを褒められた記憶はなかった。  
十四センチは卑下するほどでもないが自慢できるサイズでもないのだ。対するイエローキャップのペニスのデカさは眼を見張るものがあった。  
二十センチはあるだろう。確実に天馬の持ち物より二回り、いや三回りは大きい。天馬は夜空に向かって瞠目した。  
(神よ。何故あなたはチンコの大きさを平等にお作りにならなかったのか……)  
もう一度、イエローキャップの股間に視線を戻す。やはりでかい。  
天馬の視線に何を勘違いしたのかイエローキャップが得意げに鎌首をもたげたペニスを誇示する。  
「えへへ、俺のでかいっしょ。自慢の息子だぜぇ」  
ジッパーを引き下ろし、イエローキャップが勃起するペニスを取り出した。赤黒い亀頭に太い血管に覆われてゴツゴツした表面が禍々しい。  
鈴奈が顔をしかめた。あまりにも気持ちが悪かったのだ。年頃の少女にはグロすぎる一物だった。  
(天ちゃんの綺麗なピンク色のおちんちんとは似ても似つかないよ……うう、変なもの見せられちゃった……)  
天馬は違っていた。その大きさに圧倒され、男のプライドを打ち砕かれていた。天馬のペニスが日本刀ならば、イエローキャップのそれは戦斧だ。  
もし打ち合えば折れるのは日本刀だ。天馬は思い巡らした。このまま己の刀を抜くべきかどうかを。  
 
そんな天馬の様子を見ていた鈴奈が肘で背中を小突く。ハッと正気に戻る天馬。もはや迷いは無かった。  
(ここで見せなければ……男ではないッッ!)  
勢い良くデニムのズボンを脱いだ。刹那、その場にいた全員があまりの衝撃に間の抜けたダッチワイフのように口を広げて立ち尽くした。  
男装の美少女だと思い込んでいた相手の股間には見慣れたモノがぶらさがっていたからだ。  
「お、男……信じられねえ」  
特にイエローキャップのショックは峻烈を極めた。あんまりな出来事に両手で頭を押さえつけ、血を吐くような思いで叫ぶ。  
「お、俺は男に欲情しちまったのかぁぁぁッッ!」  
イエローキャップはこの時、自らの人生に置いて大きな十字架を背負う羽目になったのだ。見えない茨の冠が、イエローキャップのこめかみに食い込む。  
「残念だったね」  
イエローキャップの狼狽に天馬は溜飲を下げた。その表情はどこか勝ち誇っている。そしてすぐに天馬は虚しさを覚えた。  
こんなことをしたところでペニスの大きさは変わらないからだ。ズボンを穿きなおす。  
時間が経つにつれて四人が冷静さを取り戻した。周囲に四人の怒気がはらんだ。イエローキャップが吼えた。  
「てめえぇッッ、SATUGAIすんぞッッ!」  
「貴様に僕がSATUGAIできるかな」  
あやまたずに天馬の蹴りが飛んだ。靴の先には作業ブーツ同様に鉄板が仕込まれていた。天馬の前蹴りがイエローキャップのストマックにめり込んだ。  
胃袋を破裂させる鉄板靴の威力──イエローキャップは胃液と赤茶色の粘液をぶちまけながら昏倒した。三人が眼を剥く。  
そのまま手前にいるデブの頬をジャックナイフで切り裂いた。頬肉がめくれ上がり、黄白色のブツブツした脂肪が露出した。鮮血が吹いた。  
血の飛沫が天馬の手の甲を赤く濡らした。暴力に酔いしれながら残りのふたりをどうやって料理してやろうか、天馬は考えた。  
「お友達やられちゃったね。君達はどうするの。仲間の仇討ちたい?それとも逃げたい?逃げたいなら逃げてもいいよ」  
天馬にはどっちでもよかった。逃げるならあえて追いはしない。かかってくるならナイフの餌食にするまでだ。  
ふたりの顔が見る見るうちに青白く褪色していく。唇が紫色に変わり、額に汗がにじみ出る。勝負はすでに決まっていた。  
残りのふたりが無言で踵を返し、恐怖に駆られて逃げ出す。こうなると哀れなのはイエローキャップとデブだ。  
頬を押さえながら、地面にうずくまって喚くデブを尻目に天馬と鈴奈もその場から離れた。どこかで粘つくデブの血を洗い落としたい。  
天馬はデブの血臭を嗅ぎながら円山町のラブホテルを目指した。明が影に隠れてこちらの様子を覗っていたとも知らずに。  
              *  *  *  *  *  *  *  *  *  *  
 
広いジャグジーバスの湯に浸かりながら、天馬が鈴奈の腰にそっと手を回した。浴槽の基底部に設置されたライトがふたりの裸身を照らしつける。  
「広いお風呂ってやっぱり気持ちいいね、天ちゃん」  
「うん、なんか落ち着くよね」  
リラックスしながら鈴奈を優しく抱き止めてキスをする。バスの湯が溢れるのもかまわずにふたりは官能の渦に身を任せた。  
「んん……ッ」  
悦楽に揺らぎながら、鈴奈が小さく声をあげて身体を震わせる。小豆ほどの小さい乳首を親指と人差し指で軽く挟んだ。コリコリと揉みしだく。  
鈴奈の美乳が桜色にほんのりと染まった。眉根を寄せて天馬が鈴奈の恥骨をペニスの先端でつつく。続いてクリトリスにも先端を当てた。  
鈴口でクリトリスを呑み込むように愛撫する。亀頭がクリトリスにフェラチオをしているようだ。鈴口はカウパーが分泌し、適度に滑っている。  
「天ちゃん……それすごく気持ちいい……」  
「もっと……もっと感じてよ……鈴奈……」  
僅かに鈴奈の裸体が跳ねた。硬く充血していくクリトリスを亀頭が吐き出した。背筋をブリッジ状に反り返らせ、鈴奈が蚊の鳴くような細い声で喘ぐ。  
ラビアにもペニスを擦りつけ、天馬は鈴奈の腰を落とした。女芯に屹立したペニスが挿入される。  
「あぁぁん……やぁ……ッ」  
滑り込んだ雁首が膣を出入りする度にふたりの全身に悦びが走った。汗が天馬の背中をヌラヌラと濡れ輝かせる。  
「あぁ……ッッ……ああぁ……ッッ!」  
鈴奈の呻きが大きくなっていった。浅く刺しながら徐々に奥へとペニスを打ち込む。痺れるような快感に、若い性は歓喜した。  
リズミカルなピストン運動は速さを増していった。鈴奈の唇から甘く熱いため息がこぼれ出る。ふたりは夢中になりながら互いの舌と唾液を貪った。  
天馬が鈴奈の乳房を力強く握った。痛みに鈴奈が表情を曇らせた。それでも法悦に溺れる鈴奈にとって、痛みですら快感へと変わる。  
強烈なエクスタシーのスパークが鈴奈の内部で飛び交い、ペニスをギッチリと締めた。強い射精感覚──天馬は樹液を迸らせた。  
「ぬふぅ」  
天馬と鈴奈はその日も同時に達した。  
「じゃあこのまま二回戦いってみようか」  
 

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