「イヤァァァァァァァァッ!」  
薄暗い部屋に若い女性の悲鳴が響き渡る。  
部屋に灯る蝋燭の灯りは、性儀式の祭壇に飾られた燭台のような怪しげな光を放ち、  
背後から男に襲われるという凶行を淡々と照らし出していた。  
悲鳴は空しく部屋に響くだけで、彼女を助けようとするモノは誰一人として現れはしない。  
それもそのはず、男はこの屋敷の主であり、若い女性は男に仕えるメイドだからだ。  
主と言えば屋敷に絶対的な権力を持って君臨する王であり、彼に逆らう者などこの屋敷には一人も居ないのだ。  
男にとってメイドなど屋敷にある備品であり、所有物の一つに過ぎないからだ。  
 
「ご、御主人様ァァ……お許しくださッくゥゥっ!」  
哀れみを乞う女の声が再び部屋に響く。  
だが男はただ己の欲望のままに、メイド服の上から豊かな胸をまさぐり揉みしだく。  
女の口から漏れるのは快楽に震える甘い吐息ではなく、ただ苦痛に耐える押し殺した声が漏れるだけである……  
 
 
そもそも事の起こりは些細な事でしかなかった。  
メイドの美紀のスカートがいつもより短かかった……ただそれだけの事であった。  
いつもより早めに食堂の席についた俺は急ぎ夕食の配膳する彼女を見ていた。  
そんな中、彼女のミニスカートから時折こぼれる出る瑞々しく健康的な太股が私を挑発してきたのだ。  
日頃から押し殺していた劣情を刺激するのにそれは十分過ぎた。  
 
「ッ!! キャァァ」  
目の前に旨そうなエサがぶら下がっているのを見て、飢えた虎は我慢できるだろうか?  
ついに俺は目の前で配膳をする美紀を後から襲ったのだ。  
突然の出来事に初めは何が自分の身に起こったのか分からず、固まる彼女。  
だが俺が躰(からだ)をまさぐり始めた途端、彼女は鋭い悲鳴を上げたのだった。  
 
「御、御主さ……様、おやめぇ……」  
「ん? 美紀、お前から誘っておいて、おやめ下さいはないだろう」  
美紀は俺の理性に訴えるが、既にハイパーミニモーターを組み込んだミニ四駆並に暴走する俺がそんな言葉に耳を貸すわけがない。  
手を胸のあたりに持っていくと、メイド服越しのふくよかな感触を楽しみ為に揉みはじめる。  
確かな重さと鷲づかみにしても持て余すその大きさが彼女が持つふくよか胸を物語っていた。  
本来このような場合、女性の胸の形を気遣い崩さないようなソフトなタッチで扱うべき所であろうが、  
俺の目的は己の性的要求を満たす事だけであり甘いムードを作り出すことではない。  
柔らかさを貪るように、俺は両手に力を入れ彼女の乳を揉みしだく。  
 
「ダメェ……む……胸、が……くぅ、御主人さぁ、胸が……痛ひ……んんっくうぅぅぅぅ」  
強引に揉まれるにつれ、美紀の声が痛さのせいか次第に途切れ途切れになっていく。  
俺はそんな事は気にもせず、野暮ったい服の感触の奧にある柔らかさと、  
握っても離せばすぐに元通りになる胸の新触感を堪能していた。  
 
「いやああぁああ!!」  
美紀が鋭く叫び、仰け反った。  
気がつけば、感触を貪るあまりかなりの握力で彼女の胸を攻めていたのだった。  
 
「いや、いや、いやぁああああああっっっ」  
あまりの胸の痛さに我慢できなくなったのか、彼女が再び藻掻き始める。  
しかし藻掻いたところで所詮は女の力、後から羽交い締めしている男に叶うはずがない。  
それでも逃れようと必死に躰をくねらす彼女の躰を俺は強く引き寄せた。  
密着した躰が女性特有の丸みを帯びた柔らかい感触と微かに香る石鹸の清潔な香りが俺の興奮を煽る。  
特に彼女の臀部に押しつけた股間に伝わる柔らかさの中にも張りがある胸とは違う感触に、  
股間に潜む黒森の主は早くも半身を起こし始めていた。  
 
「んっ……くうっ、ひ、ひあぁぁああ」  
臀部に押しつけられ徐々に固くなりつつある危険因子に恐怖したのか、美紀の抵抗は激しさを増していく。  
だが自分が藻掻けば藻掻くほど、そのモノの興奮を煽っている事に彼女は気がついてはいなかった。  
藻掻く程に彼女の腰は、臀部の谷間に押しつけられた危険因子をその左右の柔らかい双丘で扱き上げるかの如く動かすのである。  
その様はさかりがつき、雄自身をねだる雌のそのものである。  
 
俺自身をねだるような腰の動き、そして胸の持つ柔らかさ、そして苦痛で途切れ途切れになる彼女の声……  
それらが俺の性的興奮を加速させていった。  
興奮は欲求となり、欲求は行動をエスカレートさせていき、更なる興奮の呼び水となっていく。  
 
「きゃぁああ!」  
悲鳴と共に美紀の胸元にあるボタンがブチブチとはじけ飛んだ。  
興奮ゲージがイエローゾーンの半ばを過ぎた俺には『服越し』という焦れったい感触には我慢が出来なくなっていた。  
俺は彼女の胸元まで手を持っていくと、強引にメイド服の中に強引に押し込んだのである。  
 
「ひっ……っん、ひひゃぁああ、……くぅん」  
手首がまるまる、美紀の中に沈んで行く。  
中はまるでぬるい温泉の様に温まり、ブラの布地の固い感触と生乳の柔らかさが並立している不思議な空間であった。  
俺はブラの感触づたいに指先を遊泳させ、辺りをまさぐりはじめた。  
 
「……んんっ……」  
指先にまとわりつく生暖かい空気はなかなか乙オブジイヤーである。  
辺りを指先でまさぐるうちに、双丘の谷間に布とは違う感触に俺は気付いた。  
生乳でも布地でもない、この無機質な固い感触……『濡れ場』なんぞというモンにはとんと縁のない(自分で言ってて空しくなるが)ので  
確証は持てないが、多分これが噂に伝え聞く『フロントホック』という奴である事は容易に想像が付く。  
俺は手探りで未知なる『ホック』と推測されるモノを外しにかかった。  
 
「……ひぅっ」  
指先がホック以外の場所を突いたり、誤爆する度に美紀は悩ましげに声を漏らす。  
がブラのホックなど生まれて此の方、本格的に見た事はない俺が本能とフォースのみを頼りに手探りにそれを外そうというのだ……  
一々吐息に構っている余裕などない悲しい現実がここにあった。かなり真剣。  
 
「ひにゃやぁっ」  
鼻息荒くホックのあたりをいじくり回しているうちに、彼女が突如と声を上げ、ホックが外れた事を俺に告げたのだった。  
瞬間、パチンという音と共にブラ生地の焦れったい固さが霧が晴れるかのように無くなり、生乳100lの感触がダイレクトに伝わってくる。  
こう……なんというか人肌温度のお湯が詰まった水ヨーヨー(大)という感じで、手触りは肌理(きめ)が細かいつきたての餅の様な『ムニッ』とした感触。  
『人類の幸せ』が詰まったそんな風な感触である。  
 
「んっ、くぅん……ひっ、ひぅぅう……ひゃああああああッッ」  
秘密のベールがとられ、露わになった美紀の胸を使い攻め立てていく。  
片方の手は服の上から、もう片方の手は服の中から直に生乳を揉みしだく。  
一粒で二度美味しいのはアーモンドグリコの専売であったが、これもこれでなかなか二度美味しいシチュである。  
同じ様に揉み攻め、その感触の違いを楽しむ事も出来るし別々責めて喘ぐ美紀の様子を見るのも一興。  
たまの中休みに、上気し桜色染まる彼女のうなじを舐め上げ反応を見るのも面白い。  
 
「ふぁ……んくふぅぅぅぅぅ……」  
先程まであれだけ抵抗していた美紀も、生乳を直に攻めらる今となっては艶ががった息をするのに精一杯な様で、今はまな板の上の鯉同然に躰を俺に預けていた。  
大人しくなった彼女の様子見ついでにふと胸元を覗き込んでみれば、服の上からでも分かるくらい自己主張をするポッチが目に付いた。  
 
「は、はひぃぃっ!」  
いつの間に実付いたのだろうか?  
乳房の先には未熟なサクランボが実りっており、俺は直に生乳を嬲る指先でコリコリと固くなった乳首を転がし始めた。  
指先で乳首を転がし、扱き、弾く度に美紀は綺麗な音色を奏で膝から力が抜けたかの様にガクガクと躰を震わした。  
 
『男に後から抵抗も出来ずに為すがままに悶える女……』  
そっちの趣味は無いが実際に目の前で起これば、満更でもない。  
サディステックな笑みを浮かべ俺は彼女を更に追い詰めていく。  
 
「んぅぅぅぅーーーーッ」  
『胸への攻撃はこれ以上は効果がない』とBDA(Bomb Damage Assessment)の観測班から報告を受けていた俺は  
別アプローチをかけるべく、服の上から胸をまさぐる手を美紀の下半身まで滑り下ろす。  
 
「ひうぁぁぁぁぁぁぁ゛ぁ゛ぁ゛」  
そして胸に気を取られて無防備都市宣言状態のスカートの中に手を電撃侵攻させたのだった。  
敵の虚を突いた作戦は見事成功し、手は強固な抵抗もなくスカートの中に攻め込んだ。  
侵攻旅団からもたらされる感触から柔らかく張りのある瑞々しい美紀の股肉は容易に想像は出来る。  
その感触を堪能しつつ、美紀が他人の介入を拒む禁忌な場所へと俺は手を這進めて行く。  
 
「い、ひひゃぁああっ!」  
禁忌な場所に近づくにつれ、美紀の声や腰がわなないた。  
それが撫でられる事から起こる性感か、それとも好きでも無い男から愛撫される事から起きる悪寒なのか判断はつかない。  
が、手が徐々に内股を遡上しかなり際疾い所まで迫る頃には、震えはピークに達し俺に身を預けなければ立てないまでになっていた。  
 
「うぅっ」  
呼吸は乱れ、目の前にある彼女の耳たぶは桜色を通り超し熟れたサクランボの様に真っ赤に染まる。  
そのサクランボを口に入れしゃぶればコリコリとした歯触りと、同時に彼女から直に香るなんとも言えない香りではなく、匂いが俺を酔わせた。  
先程の清楚な石鹸の香りでなく、こうなんというか゛雄の生殖本能を擽るような雌の匂い(フェロモン)である。  
腕の中で為す術もなくされるがままメイド、そしてそのメイドの柔らかい胸のと張りのある股肉の感触、恥部責められ乱れる呼吸に鼻腔を刺激する匂い。  
これらの五感を刺激する情報は余すことなく黒森の主に伝えられ、いきり立つ主は触手封じ(※1)を破らんが位の勢いで自身を完全直立させていた。    
※1 ブリーフを意味する古賀用語。 【類語】コスモプロテクター  
 
「ひにゃぁああぁ」  
手がとうとう禁忌の場所まで来た時、性感のうち震えるのみと見えた美紀も悪あがきを見せた。  
釣り上げられた魚が最後のあがきとばかりに、ビチビチと跳ねるあんな感じで声を上げ、大きく躰を仰け反らせたのだ。  
流石に耳元で叫ばれ続けるのは嫌なので、黙らせるために強引にキスで口を塞ぐ事を考えた俺だが下手をしたら舌を噛まれる可能性もあるので、  
代案として乳首を固くなった乳首を思いっきり強く捻り上げた。  
 
「ひぁあ゛ッッ!」  
美紀が再び強く鋭く叫び、ビクンと1回だけ大きく仰け反った。  
なぶるような愛撫で刺激に敏感になっている乳首を強く捻り上げられたのである。  
高ぶった性感で敏感になっている乳首に『痛み』という刺激は許容キャパを超えたらしく、  
くたっと糸が切れた操り人形のように美紀は脱力しその躰を俺に預けた。  
それが彼女の抵抗の最後であった。  
もはや腕の中にあるのは瞳の光が消え恍惚とした表情の為すがままの愛らしい生きた人形が一体あるのみ。  
 
「…………んっ」  
為すがままの美紀が小さく息をし、指先がついに彼女の禁忌にたどり着いた事を俺に教えた。  
指先にぬるりと冷たい感触が走り、軽くショーツ押せばグジュっとまだ漏出したばかりの暖かい蜜が滲み出してくる。  
 
「痛いのが好きなのかな? 二宮は」  
俺は多量に蜜が絡みついた指先を美紀の眼前にちらつかせた。  
指先の蜜は蝋燭の光を受け、スペサルタイトガーネットの様なオレンジ色の怪しい輝き放っていた。  
俺の言葉に彼女は幼い子が自分のしたことを否定する仕草にようにイヤイヤと小さく首を振ってみせる。  
しかし、乳首を弄られる度に漏れる彼女の甘い吐息が俺の問いを肯定していた。  
 
「んっ、くぅぅぅ……ひうっ、ん、んっんんん゛、くぅっ!」  
美紀の禁忌な所は弄られる程蜜を湛えはじめ、今では古代にあったとされる空中庭園の如く豊かな蜜を湛えていた。  
庭園の花園を指先で弄ればクチュクチュという湿った生音が室内に響き渡る。  
顔を真っ赤にし、無言でうつむく美紀は自身が晒す淫乱さを静かに耐えているように見える。  
だが、いくら自分が否定しようと自身が発する音は否定出来ない事実。  
そんな矛盾に満ちた美紀の姿は愉快なものであるが、同時に不快なモノもこの空間に存在していたのだ。  
……それは俺のパンツの中である。  
 
彼女の乳肉と蜜溢れる柔らかい花園の緩やかな感触に股間にある一振りの刀は大いに反応して、  
穂先から透明な丁子(ちょうじ)油を滴らせブリーフの中で粗相しっぱなしであった。  
当然、気持ちが悪い。  
刀となれば、剥き身の刀は鞘へ収めなければならない。  
俺は直に生乳を嬲っていた手を美紀から引き抜くと、鞘に収めるべくゆっくりとスボンのチャックを下ろした………………。  
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜  
…………、…………。  
……、……………………と思わず現実逃避したくなる悲惨な現実が俺に突き付けられていた。  
 
もうなにも言うまい。  
目の前の食卓に並べられた料理を見て全て(人生込み)を諦めた。  
食卓の上にはゴーヤーの炊き込みご飯を筆頭に、ゴーヤーのみそ汁、焼きゴーヤー、ゴーヤーと変な魚の煮込みや、緑が毒々しいゴーヤーシチュー  
苦瓜増量(当社比較120l)な野菜炒めにゴーヤーのワタをくり抜いてそこにすり下ろした苦瓜を詰めた意味不明なモノにゴーヤーのピクルス、ゴーヤーの一夜漬け、  
多分ゴーヤーが主成分なんだろうなぁ〜と思われる極緑の茶碗蒸しやゴーヤーの刺身、緑色のとぐろが毒気を放つゴーヤークリーム。  
果ては一見無害そうな見えるパンだけどガイガーカウンターを近づければ、苦瓜反応で針が振り切れるであろうと予想されるゴーヤージャムパンもどき  
(大きさから言って多分内蔵量は致死量)、そして麺の緑色が目に痛いゴーヤーうどんにゴーヤーそば。あとはオーソドックスにゴーヤーの天ぷら、ゴーヤー酒等々、  
地球上で考えられるだけ一杯のゴーヤーの料理が所狭しと並んでいた。  
まさに『緑の悪魔』!!  
   
「どうですか、御主人様ぁ♪」  
とにこやかな顔で更にゴーヤースパゲティを悪魔の宴に追加するのはゴーヤーメイドこと、メイドの二宮さんである。  
事の発端は>>409の書込だった……  
 
            『なんとかを唸らせるほどでそのレベルか』  
 
この一文が彼女のプライドを踏みにじり挑発したのだった。  
二宮さんがこの一文を読んでいる時、たまたま近くにいたのが……  
生まれて初めて俺は『ブチッ』というよく堪忍袋の緒が切れる際に使用される擬音の生音を聞いたのであった。  
あれって擬音じゃないんだ…… ハジメテシッタヨママン  
 
「ど、どうかしたんですか? 二宮さん」  
「フフフ、なんでもありませんよ御主人様。フフフフフフ……」  
あまりの音っぷりに、おののた俺は思わず声をかけたのだが、二宮さんは答えず笑みを固定したまま静かに席を立つとそのまま台所へ消えて行ったのであった。  
まるで魔女がこれから胎児の内蔵を使い若返りの秘薬を作るような怪しげな笑い声を発しながら……  
 
その日を境に二宮さんの『ゴーヤー料理克服特別強化訓練』が始まったのである。  
俺という被験体を使った『ごーやーによるごーやーの為のごーやーだけの料理』とゲティスバーグの歴史的な名演説級にごーやーまみれの食生活が幕開けである。  
朝、昼、晩は言うに及ばず、お十時におやつに夜食までおんりーゴーヤー。  
強化訓練は着実に実を結びはじめ、最近では「日本の夜明けも近いぜよ!」と言わんばかりに俺のウンコは緑がかり、生命の危機を感じている今日この頃であった。  
このまま行けば、ギネスブックに『死ぬまでゴーヤーしか食わなかった男』としてノミネートされる日も近いだろう。  
もしくは、痛いニュース+辺りに『【アナルにも】御主人様、ゴーヤー死WW【ゴーヤー】』とまぬけなスレで俺の死に様が晒されるとか、そんなの。  
その暁には間違いなく  
 
2 名前: オレオレ!オレだよ、名無しだよ!! 投稿日: 2006/08/04(金) 21:23:56 0  
 ボクのアナルにもゴーヤーが詰まっていますよ、御主人様WWWWWWWWWWWWWWWWW  
 
2あたりにコケにされるのは必定、株用語で言えば『想定の範囲内』である。  
 
元はといえば>>409の一言(一文)でこの緑の拷問が始まった訳であるから、刑事訴訟は無理にしても民事訴訟で慰謝料などを請求出来るのではないか?  
と考えた俺は屋敷の顧問弁護士に相談したのだが、これがまた鼻で笑うだけで『冗談はお前の存在だけにして下さる?』みたいな感じでまったく相手にすらしてくれない。  
糞、俺がしがない地方の次男坊だと思って馬鹿にしやがって! 大きくなったら覚えてろォ、死ね、労働階級の敵め! 『氏ね』じゃねーリアルに『死ね』だ!  
 
「どうかしましたか、ご主人様? シチューが冷めてしまいますよ」  
さりげなく回想兼階級闘争への新たな決意で現実逃避に走っていた俺を御丁寧にまたリアルワールドに引き摺り戻してくれる二宮さん。  
よくみれば「ほらお食べ」とばかりにシチューをすくったスプーン口先に差し出す『アーン』の構えではないか!  
二宮さん、俺に喰わせる気マンマンである。  
 
「あ〜〜ン♪」  
まるで赤ん坊に離乳食を食べさせるようとする若い母親の様に自らも口をアーンとする二宮さん。  
小首を傾げ、ボブカットの奧にクリっとした瞳を忍ばせ笑みを浮かべる彼女。  
今すぐマッパ自室にとって返してデジカメでその様子を撮影し、PCの壁紙にしたい衝動に駆られる位の可愛いさだ。  
これだけで3回……もとい3杯は軽くイけるね、ナニを。  
 
「ア……!?」  
思わずつられて『アーン』した途端、俺の口が半開き状態でフリーズしたのである。  
俺の体が冷静にそれ拒絶していたのであった。  
体は知っているのであった……微笑む天使がその手に持つのは、間違いなく緑の毒物なのであると。  
見た目とシチュの良さに騙され思わずパクついたら最後、スベスベマンジュガニを食ったよりも後悔するのは確実である。  
シロウトニモ、クロウトニモオススメデキナイ  
 
「どうしました? ほらアーン」  
硬直しなかなかアーンしない俺を見て、二宮さんはちょいと悲しげな表情をした。  
止めて下さい、そんな濡れた捨て子犬が哀れみを乞うようなそんな表情は……俺だってアーンしたいのです。  
でもスプーンの上でエメラルドのように緑色の光を鋭く放つ、ざく切りの苦瓜の欠片を見たら大体の地球上の生物(単・多細胞関わらず)は拒絶するでしょう。  
…………で、でも折角メイドさんが、それも二宮さんがアーンしてくれるのである。  
例え100l毒物だと分かっていても、   
 
  こ こ で ア ー ン し な け れ ば 、い つ ア ー ン を す る ん だ !  
 
「い、……いただきます」  
と開き直った俺は覚悟を決めたソクラテスのようにシチューを一気にあおる。  
 
……  
……、…………ぅべぇ……  
やっぱり本日もキますたぁよぉ〜口いっぱいに広がる工業用ゴムの味がぁ〜  
ほらホームセンターとかで売ってる安物のシュノーケルの口当ての部分を洗わずに、口に含んでしまいウエッとなるあんな風味。  
ミルキーはママの味だが、ゴーヤーのこの味は死の予感である。  
 
「ん? どうかしましたか 御主人様」  
「いや何でもないよ、何でも……」  
「たぁ〜〜〜んとお召し上がり下さいね アーン」  
数十秒かけて口の中の産廃をやっと処理すれば、既に目の前には二発(?)目のアーンを装填済みである。  
装填の速さはどっかの国産戦車の自動装填装置並かもしれない。  
確かに二宮さんのアーンは可愛いしアーンはしたいが、体がそれ以上のアーンを許さなかった。  
証拠にアコヤ貝のように固く閉じられる俺の口。  
そんな事には気がつかない彼女は再びアーンを俺に強要するのであった。  
人権侵害 (・A・)イクナイ!!  
 
「御主人様アーン」  
「ムー」  
「?、ほら御主人様アァーーーん!」  
「ムゥームゥー!」  
「アァーーーーーーーーーーーン!!」  
「ムゥーーーーーーーーーーーゥ!!」  
頑なに拒否する俺に頑なに料理を勧める二宮さん。  
『非核三原則を守れ! 米空母寄港反対!!』と言わんばかりに閉ざされたプロ市民チックな俺の口に対して、  
日米安全保障条約を盾に寄港する米第七艦隊所属空母並にアーンを強行する二宮さん。  
次第に辺りには『喰うか、喰わせるか』という意地と意地とのぶつかり合いみたいな殺伐とした吉野家的雰囲気が漂い始めるまでに……  
静かな攻防は着実に状況をベトナム化にしていた。  
 
だが、そんな不毛な膠着状況を打破するかのように突然食堂のドアが開け放たれたのであった! まさに天の助け。  
思わず拝むように天界から使わされた調停者をみれば、そこに居たのは当館事実上の支配者である秘書の小田桐さんである。  
小田桐さん。SAGA2で例えるなら俺が『しょうぐん』で小田桐さんが『おおごしょ』そんな感じなエライお方。  
んじゃ、ついでに言えば二宮さんはなんなのよ? といえば…………もしかしたら『はにわ』かも知れない。  
んまぁ詳細は次の機会があればということで。  
 
突然の乱入者に俺も二宮さんも何事かとドアを向いてしまう。  
そして、その次の瞬間小田桐さんが叫んだ!!  
 
「あーるぴぃーじぃー!!!」  
小田桐さんの言葉が終わるよりも早く、高速な黒いナンカかが窓ガラス割り食堂内に飛び込んで来たのであった!  
 
                                                            =おわり=  
 
そういえば、自らの国家や民族に固執する右翼系の若者が世界的に増えているという事実も、多少気になるところだが。  
 

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