みっちゃんは家の住み込みの使用人だった。
みっちゃんの両親も住み込みの使用人で、つまり使用人同士の子供だった。
一方、僕は家の主人の一人息子――つまり若旦那様だ。
全く立場が違う二人だったけど、歳が近かったからだろう、僕らは良く遊んだ。
みっちゃんの両親は少し困っていたようだったけど、僕の父さんは気にした様子
もなかった。
だから、僕とみっちゃんは広いお屋敷の中で自由に遊べた。
小さい頃、僕はおままごとが好きだったんだけど、みっちゃんはかけっこや木登り
が好きだった。家の中で遊びたいという僕を、お日様が気持ち良いから、という理由で
外に連れ出すのがみっちゃんだった。
勿論みっちゃんとは今でも仲が良い。
でも、僕達はもう大人と子供の中間くらいの年齢になってしまった。
今までのように、気兼ねなく話すようなことも、身分の違いから難しくなってしまった。
みっちゃんは僕を坊ちゃま、と呼び、敬語で話す。
少しだけ悲しい気持ちもしたが、仕方ないことだった。
ある日の夕方、みっちゃんが突然言ってきた。
「坊ちゃま、久しぶりに一緒にお風呂に入りませんか?」
僕は面食らった。
そりゃあ、子供の頃は一緒にお風呂に入るなんて良くあることだった。
でも、僕らはもう子供じゃない。
「うん、いいよ」
いつの間にかそう答えていて、自分でも驚いてしまった。
よかった、とみっちゃんは微笑んだ。
夕食が終わり、風呂場に行く。みっちゃんは風呂場の前で待っていた。
銭湯のようなうちの風呂だけど、流石に男湯と女湯には分かれていない。
十人くらいが入れる脱衣場に、二人で入る。心臓の鼓動が速く、大きくなってゆく。
僕は服を脱いだ。籠に脱いだ服を入れる。
みっちゃんが後ろから抱き付いてきたのはその時だった。
僕は上ずった声を上げる。
「み、みっちゃん……」
「どうかこの場だけでも、光治と呼んでください」