21世紀も中盤に差し掛かろうかとしている現在、世間にはペットを買う習慣が浸透し  
ていた。  
 ここで云うペットというのはいわゆる犬や猫なんかの原種動物を飼うことじゃない。  
 動物とヒトの遺伝子を掛け合わせた生き物。いわゆるキメラって云う奴だ。  
 今世紀初頭に発生した新種の病原体ウィルスで人類の1/5が死滅するという、ペスト  
以来の非常事態が地球規模で起こった。この大災害に直面した人類の医療・生物科学は飛  
躍的な進歩を遂げた。当時の世論が医療と倫理の乖離を促し、純粋に技術の進歩のみが追  
求されたからだ。  
 ヒトクローン、擬似人体などなど、科学はついにそれまで禁忌とされていた神の領域に  
もずけずけと踏み込んでいったわけだ。そこからこのキメラも生み出された。  
 今ではこのキメラはペットと呼ばれて広く世間に浸透している。基本的に見た目はヒト  
とほとんど変わらない。ただ、耳がついてたり、しっぽがあったりと身体的特徴がついて  
いる。その他は知能も動物とほぼ同等。寿命も短い。  
 ペットが流行した背景は実利的な側面が極めて強い。ヒト型をしているので愛玩以外で  
の汎用性が高いのだ。従来の動物ペットと同じように愛でつつも、簡単な家事手伝いをさ  
せることが出来る。ヒトイヌなんて優秀な留守番にもなる。  
 これで動物嫌いの奥様も大喜び。  
 今や一家に一匹、ヒトペット。道を歩けばキメラに当たるのだ。  
 そして、このペットには、今のところ人権は適用されていない。  
 
 俺は暗い夜道を一人で歩いていた。  
 ごくごく平均的なプロレタリアートである俺は不毛なサービス残業を機械的にこなして、  
終電の一つ前の電車に飛び乗った。帰りはいつも深夜に近い。  
 最寄りの駅からの帰宅を急ぐ俺はいつも公園を横切る。弱々しい月明かりに照らされた  
遊具が並ぶ公園は、不気味にしいんと静まりかえっている。  
「ふう……」  
 ため息を声に出して心細さを打ち払い、ゆっくり足を進めた。通り慣れてはいるものの、  
ここを通るときはいつも何か不穏なことを想像してしまう。通り魔なんかが潜んでいるん  
じゃないかとか、痴漢が今にも飛び出してきそうとか……まあ、俺は男なわけだが。  
 そんな事を考えていると視界の隅で影が動いたような気がした。  
 背筋に鳥肌が広がる。  
 立ち止まって公園を見回したが動くものは何もない。それでも誰かに見られているよう  
な気味の悪さを感じて、俺は早足で進み始めた。三歩進んだところで、背後の植木が騒が  
しく揺れる音がした。  
 心臓がきゅうと縮み上がる。  
 俺は反射的に振り返った。植木の影は暗く、よく見えないが、明らかに何かが、誰かが  
いる。  
「だ、だ……」  
 誰だ?という言葉を出すより早く、植木からは黒い影が飛び出して、俺に向かって突進  
してきた。  
「うぎゃーーーー!」  
 俺は強烈なタックルをくらって押し倒されてしまった。  
 
 「ひいぃ」と情けない声を出して後ずさる俺に、しっかりとしがみついていたのは意外  
にも女の子だった。  
「あ、あれ?女の子……?」  
 その子は「ん〜」っと俺の胸に頬ずりをしている。  
「びっくりしたなあ、脅かさないでくれよ」  
 女の子が「にゃあ」と言うと豊かな黒髪からぴょこんと尖った耳が飛び出した。  
 その形は明らかにネコ科の動物の耳だった。  
「ありゃ? ヒトネコか?」  
 ネコ耳に指を触れると女の子はくすぐったそうに頭を振った。  
「本物だね。こんなとこで何してるんだい?」  
 俺は話しかけるように呟いてみた。ペットに人の言葉は分からない。  
 女の子の首には立派な革の首輪が付けられていた。  
「飼いネコだねえ。どこのコなんだい?」  
 女の子は「ぬぁ〜」っと鳴いてきょとんとしている。  
 首輪には白いプレートがぶら下がっていた。「飽きたのでリリースします。どなたか可  
愛がってあげてください」だとさ。  
「ひどいことする奴がいるなあ」  
 最近、都市部では捨てられるペットが急増していますと言っていたニュースを思い出し  
た。  
 首筋を撫でてやると女の子は気持ちよさそうに喉を鳴らした。  
「うへえ、ずいぶん体が冷えてるね」  
 風の冷たい季節だというのに女の子の服装はずいぶくと薄着だった。  
 女の子はもう一度、俺の胸に冷たくなった頬をすり寄せてくる。  
「可哀想にねえ……とりあえず、ウチに来るかい?」  
 女の子は一声「にゃあ」と鳴いた。  
 
 一人暮らしのアパートに俺はヒトネコを伴って帰宅した。  
 彼女には暖めたミルクを、俺には冷凍食品を手早く調理して、コタツに向かい合って食  
事を始めた。  
 彼女はマグカップのミルクをぺろぺろと舌を使って器用に舐める。残り少なくなるとち  
ゃんとカップを持って飲み干した。  
「器用なもんだねえ」  
 俺は感心しながら、自分も冷食のスパゲティーをパクつく。  
 なんとはなしにつけたテレビでは選挙のニュースが流れていた。しかめ面のおばちゃん  
がもっと女性に権利をとアジっている。  
「キミも言葉が喋れたら、自分たちの権利を主張するのかなあ」  
 そんなことを考えながらヒトネコに視線を戻すと、彼女は「ぬぁ〜」と鳴いて物欲しそ  
うに俺の皿を見つめていた。  
「ああ、とりあえずは俺の食べ物を寄越せと主張するわけだね」  
 俺がスパゲティーをフォークに絡めて「はい」と渡すと、ヒトネコはスパゲティーを指  
でつまんでつるつる食べた。食べ終わると指先を舐めながら、俺を「ん?」っと見つめ返  
してくる。  
「ふふふ、可愛いもんだねえ」  
 見つめているとなんだか微笑ましい気持ちになってくる。そんな魅力を持っていた。  
 だけども、当のヒトネコはお腹がいっぱいになったのか、俺を無視してコタツに潜り込  
む。  
「でもなあ……ウチで引き取るわけにはいかないしなあ」  
 ヒトネコが眠り始めたので、俺の言葉は独り言になってしまった。  
 まあ、起きてても分かんないんだけどさ。  
「悪いけど、明日は一緒に保健所に行こうな。なあに、キミだったら新しい飼い主が見つ  
かるさ」  
 彼女はコタツでくうくうと寝息を立てていた。  
 
 俺はコタツの電源を付けたままにして自分のベッドに入った。  
 なかなか寝付けない。一人に慣れた部屋に誰かいるというのはちょっと落ち着かない。  
 暗闇の中に、ヒトネコが身じろぎする気配が伝わってくる。  
 頭の中で俺は何度もヒトネコに問いかけていた。キミも大変だなあ。人の都合で生み出  
されてさ。飼い主の勝手で捨てられてさ。  
 そうこうしているとヒトネコがひときわ大きく動く気配がした。ぎいと俺の安ベッドが  
軋むとヒトネコが布団に滑り込んできた。  
「こらこら、こっちじゃなくてコタツで寝なよ」  
 俺が押し返すのも聞かずに彼女は「にゃぁ、にゃぁ」と甘えてくる。  
 「あっちの方が暖かいだろうにさあ」  
 さっぱり出て行く様子のないヒトネコに、仕方ないので頭を撫でてあげた。  
 毛並みの良い髪が微かに揺れる。意外に由緒正しい血統なのかもしれない。  
 ヒトネコのしなやかな躯がまとわりついてくる。  
「うへえ、すっかり懐かれちゃったな。……それでも明日には保健所なんだけどさあ」  
 彼女にしたらじゃれついてるつもりなのか、俺に一生懸命な頬ずりをくれる。すべすべ  
で柔らかなほっぺただった。  
 そのうちに俺の首筋をぺろぺろと舐め始めた。  
「うははっ、ちょ、くすぐったい……うはは、うはっ」  
 「んにゃあ」彼女はうれしそうに鳴くと、いきなり俺の上着をまくりあげた。  
「こ、こらっ、なにしてんだい、やめなさいって」  
 そんな抗議もお構いなしに、彼女は俺の素肌に舌を這わせた。  
 柔らかな唇が俺の胸に、お腹に吸い付いてくる。  
「あははっ……くすぐった……うははっ……ぉ……おふ……」  
 やがて俺の敏感な部分に辿り着くと、そこを執拗にねぶり始める。それは今までのじゃ  
れ合いとは少し違っていた。  
 いくら相手が人じゃないとはいっても、見た目は可愛い女の子だ。さすがに俺も妙な気  
分になってくる。そんな気配を察したのか、彼女はちらりと俺に目を向けると寝間着のズ  
ボンをゆっくりと下ろし始めた。  
 
 ペットというのは自然繁殖は規制されていて、生殖行為は行わない。通常は、だ。  
 それでも、彼女がこんな事をするというのは、前の飼い主にそういう”しつけ”をされ  
ていたということになる。  
 ペットを特別な愛玩動物とするのは一般的にはおおっぴらに出来ない飼い方だけども、  
暗黙のうちには広く浸透している。  
 だから俺にも大して驚きはしない。それでも初めて味わう、ヒトネコの舌技には驚嘆し  
た。  
 ざらついた舌が俺のものを舐めあげと、背筋にぞくりとしたものが駆け上がる。  
 先端に舌が絡み付くと、舐められるというよりそれでけで擦られているような激しい快  
感が与えられる。  
「くはぁ……うまいもんだね……」  
 ヒトネコは舌だけではなく口全体で俺のものに奉仕し始めた。  
 よく湿った唇でついばむようにゆっくりと愛撫する。  
 2、3度、先端に軽く口づけると一気に根本まで飲み込んだ。  
「うはぁっ」  
 思わず声を漏らしてしまうくらいのテクニックだった。  
 ヒトネコは両手で付け根をやさしく愛撫しながら、頭を動かす。  
 唇は激しく吸い付きながら俺のものを出したり飲み込んだりしている。時折、こちらを  
伺うように薄い灰色の瞳を向けてくので、「うん、気持ちいいよ」と頭を撫でてやるとう  
れしそうに微笑んだ。  
 そのうちに息が苦しくなったのか「んはぁ」と口を離すと、今度はそのままねっとりと  
舐めあげる。その姿がたまらなく艶めかしい。  
「やばいなあ、俺もちょっと収まりがつかなくなって来ちゃったよ」  
 俺は身体の奥からわき上がってくる衝動に促されて、ヒトネコを側に抱き寄せた。  
 
 ヒトネコは四つん這いの格好で、俺は下から彼女のブラウスのボタンを外した。  
 中からは小振りだけども形の良い胸があらわれる。  
「可愛いね」  
「にゃ?」  
 俺は桜色の突起に口を付ける。  
「んにゃぁ……」  
 舌先で転がすと芯が硬くなってくる。  
「にゃ……にゃぁ……」  
 ヒトネコが甘い溜め息を漏らす。俺は夢中でむしゃぶりつく。  
 綺麗にくびれたウエストに腕を回す。キメの細やかな肌が指先に心地よい。  
 そのまま短いスカートを脱がしにかかる。彼女はパステルカラーの可愛らしい下着を履  
いていた。滑らかなおしりを撫でる。  
「んにゃっ」  
 ヒトネコがくすぐったそうに身をよじる。  
 彼女の大事な部分に手を添えるとそこは熱く火照っている。微かに湿り気も感じられた。  
「気持ちいいのかい?」  
「にゃぁ……」  
 下着も脱がして、そっと指で触れる。そこにあるのは形も大きさも普通の女の子と変わ  
りはない。  
 指先で探っているとコリっとしたものに触れた。  
「んにゃはぁ!」  
 彼女がひときわ大きな声を上げる。  
「ここが感じるんだね」  
 俺はそこを重点的にこねる。ヒトネコの吐息が激しくなる。  
「んにゃ……ぁ……ふにゃ……」  
 独特なあえぎ声があげて、ヒトネコは身体を揺らした。彼女の中から溢れた液体が指を  
濡らす。  
 俺は彼女の中に指を入れる。蕩けそうな熱が俺の指を包み込む。  
「にゃ……にゃ……っっ!」  
 中で指を曲げると、ふるふるとヒトネコの身体が震える。弱い部分を見つけた俺は、二  
本の指でソコをかき回す。  
「ひにゃ!にゃっっ!!」  
 ヒトネコは夢を見てるような覚束ない表情で舌を突き出して乱れている。その卑猥な姿  
に自分の中に眠る荒々しい衝動が呼び起こされる。  
 犯したい。  
 俺はヒトネコを強引に引き寄せて力任せのキスをした。  
 ざらついた舌に俺の舌が絡め取られる。負けずに俺も彼女の口を吸う。  
 唇を離したとき、お互いの間には長い唾液の糸が残った。  
「なうぅ〜」  
 彼女は俺の下腹に手を伸ばして、一声、おねだりするような声で鳴いた。  
 
 俺は彼女の太物付け根に自分のものをあてがうと、一息に下から突き上げた。  
「ひにゃぁ!」  
 ヒトネコが甲高い声を上げる。  
 ゆっくりと引き抜くと、再び勢いよく突き上げる。奥まで届くと熱い肉の生々しい感触  
が俺を締め付ける。  
 彼女は身体を起こして俺の突き上げを何度も受け入れている。  
 尖った爪に掻かれて、俺の胸に赤い跡を残したが、その痛みさえも欲望を高ぶらせた。  
 もう二人の間に会話は必要なかった。そもそも通じないわけだし。  
 ただ、荒い息づかいと尾を引くあえぎ声だけが繰り返された。  
 きっと端から見たら獣の交尾そのものなんだろう。  
「ふう……はあ……」  
「ん……にゃあ……」  
 俺の息が上がり、動きが鈍くなると、代わりに彼女が腰を動かした。  
 彼女は俺の方の側に手をつくと、前屈みになって腰だけを揺する。。  
 それはこの細い体つきのどこにそんな力があるのかと思わせるほどの激しい挙動だ。  
 安ベッドが今にも壊れそうな軋みを響かせる。  
「にゃっ!……ひにゃぁぁ!」  
 俺の真正面に彼女の顔がある。それは苦しそうでいて、悦んでいるような、たまらなく  
淫靡な表情だった。  
 俺はもう絶頂が近い。  
「いくよ……!」  
 ようやくそれだけ言うと、再び自ら腰を動かした。彼女と俺の動きが合わさって長く深  
い注挿が繰り返される。  
「にゃああ!……にゃぁぁぁ!」  
 二人の体中がイクことだけに集中する。  
 今にもあふれ出しそうだった。  
「にゃっ……!にゃぁぁぁぁぁぁん!!」  
 彼女が吸った空気を全部吐き出すような声を上げ、身体を震わせたのとほとんど同時に、  
 俺も果てた。  
 彼女の中にありったけを吐き出して、その中を満たしていった。  
 
 俺が目覚めると、もうずいぶんと日差しが強くなっていた。  
 隣ではヒトネコが呑気に寝息を立てている。  
 しばらくすると俺の視線に気がついたのか、眠そうな目を開ける。  
「やあ、おはよう」  
 ヒトネコはにっこり笑って俺に抱きついてきた。  
 肌が触れあうと、昨夜の行為が思い出されて、俺はドキリとした。  
 保健所にと考えていたものの、肌を重ねた彼女とは離れがたい思いを抱いていた。  
「しばらくうちのコになるかい?」  
 彼女は「にゃ」と鳴いて、初めてあったときのように俺の胸に頬ずりしてくる。その無  
邪気な表情に、俺の心がちくりと痛んだ。  
 俺は欲望の為にキミを引き取ろうとしてるんだよ?キミはそれでいいのかい?  
 それでもヒトネコは幸せそうに笑っているのだった。  
「ああ……」  
 屈託のない笑顔になんとなく彼女の気持ちを見つけたような気がした。  
 きっと何も考えていないんだな。そもそもそんな知能はありはしない。  
 自分よりも上の暮らしを望んで妬むことも、下を見つめて同情することも知らないでい  
るんだろう。今あることを幸せだと思うから、笑っていられるんだ。  
 俺はその単純さをちょっとうらやましいと思った。  
 それならと、俺は思いきり可愛がって、幸せな今をたくさん与えてやろうと決めた。  
「じゃあ、まずは名前を考えなきゃなあ」  
 ヒトネコは「にゃおん」とうれしそうに鳴いた。  
 

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