「あのねあのね、ケッコンするとずっといっしょにいられるんだって」  
 確か最初に言ったのは歩弓だったと、中間望(なかま のぞむ)は記憶する。  
「だからお兄ちゃん、おーきくなったらケッコンしようね」  
「いいよ。じゃ、歩弓がおっきくなったらな」  
「うん!」  
 こうして幼い望の頭の中には『ケッコン→一緒にいられる』という情報がイ  
ンプットされた。  
「ケッコン?」  
「したら、いっしょにいられるんだって」  
「ふーん……じゃ、い、いちおー、あたしと、しとく?」  
「そだな」  
 こんな会話を、望は澄とも交わした。  
 ……それからさして時間の経っていないある昼間。  
 くいっと、裾を引っ張られた。  
「…………」  
 振り返ると、そこには佳苗が何か言いたげにしていた。  
「佳苗もしたいのか?」  
「……ん」  
「よし、分かった。じゃあ、佳苗もおっきくなったら僕とケッコンな」  
「ん」  
 
 
「……んん」  
 目を覚まし、真っ先に目に入るのは自室の天井。  
 横を見ると、ショートカットの少女が望に身を寄せて眠っていた。時々小学  
生にも間違われる未発達な身体の熱が、布越しにも伝わって来る。  
「……すー」  
 静かな寝息だ。  
 もっとも彼女、片倉佳苗(かたくら かなえ)は起きてても物静かだが。  
「思えば、とんでもない約束だったよなぁ……」  
 その髪を望がもてあそんでいると、布団がもぞりと盛り上がった。  
「ほんでもらい約束……って?」  
 そこから、くぐもった声が響いた。  
「……昔の夢だよ。ご飯は出来てんの?」  
 下半身の粘膜に愛撫される感覚に身を委ねながら、望は尋ねる。  
「準備は出来へるよ……ん……ふぐ食へる?」  
 布団は持ち上がっては下がり、また持ち上がる。そのたびに望の朝勃ちした  
モノが、吸引され、根元の辺りをリング状のものが往復する。  
 腰の辺りからせり上がってくるものをこらえながら、望は布団をつかんだ。  
「この状態で止められるのは、どう考えても生殺しだろ……」  
「そだね……んんっ……一回出さないと駄目だよね」  
「暑くないか、お前?」  
 
 呆れながら布団を剥ぐと、メイド服姿の小柄な少女が望の下半身に顔を埋め  
ていた。妹分の小野坂歩弓(おのさか ふゆみ)だ。  
「ふはぁ……暑かったよ」  
 歩弓が大きく顔を上げると、ツインテールとそれを結ったリボンもつられて  
揺れた。顔を離しても、手は肉棒を離さない。唾液でぬめった竿が、細い指で  
扱かれる。  
「だったら布団取れば良かったのに」  
「そしたらお兄ちゃんが寒いでしょ……わたしは我慢出来るもん……あ、もう  
出そう?」  
 手の感触で察したらしい歩弓が、再び身体を屈めた。  
「ん、もうちょい……だけど」  
 舌先の感触に、望の腰が小さく跳ねる。  
「分かった、ゆっくりするね」  
 歩弓はそう言うと、指で作ったリングを根元で上下させながら竿を舐め始め  
た。  
「ああ……ってカナ、目が醒めたか」  
 隣で動く気配に、望は顔を向けた。  
「ん……」  
 寝ぼけ眼を小さな手でこすりながら、佳苗が望を見た。  
 ジッと見る。  
 
「歩弓」  
 望は、自分が動かない理由を簡潔に説明した。  
「ん」  
 小さく頷くと、佳苗も望に擦り寄り始める。  
「カナもしたいって?」  
 望は佳苗にキスしながら、パジャマのボタンを外した。  
「ん……っ」  
 佳苗は身体を望に密着させると、Tシャツの肩口を握り締める。  
「カナ姉ちゃん、腰少し上げて」  
「ん……んぅ……んく……んん……っ」  
 歩弓に言われるまま佳苗が腰を上げると、ショーツをズボンごとずり下ろさ  
れた。  
「カナ姉ちゃんも気持ちよくするね……」  
「ふぁ……」  
 望に口内を嬲られていた佳苗が、驚きの声を上げる。  
「じゃ、俺は上を担当」  
 その佳苗の胸に、望は手を滑り込ませた。微かな膨らみの先端が、手の中で  
転がる。  
「っ……ゃぁ……っ」  
 指先で弄ると、佳苗は小さく声を上げる。その一方で、下半身からも音が漏  
れ始めていた。  
 
「二人掛かり〜」  
 歩弓の指先にも、蜜が絡み始めていた。佳苗の秘処は無毛で、ほとんど一本  
の筋のようなそこに歩弓は指を往復させる。抽送を繰り返しつつ中指で小さな  
肉芽を刺激すると、佳苗の腰が何度も痙攣を繰り返した。  
「いや、この時間だと、三人掛かりになるかも」  
 望の言葉とほぼ同時に、部屋の扉が開いた。立っていたのはセーラー服姿の  
勝気そうな少女だ。  
「……朝っぱらから元気ね、三人とも」  
 ため息と一緒に、ポニーテールまでうなだれたように見える。  
「よう、澄。おはようさん」  
 兵頭澄(ひょうどうすみ)は、顔を赤らめながらそっぽを向いた。  
「朝の挨拶ってのは、寝そべったまま言うもんじゃないわよ……ま、その状況  
で起きろって方が無理でしょうけど」  
「ん……澄姉ちゃんは、どうするの?」  
 望の下半身に顔を埋めていた歩弓が振り返った。  
「し、下で待ってるわよ。こんなのに参加できる訳がないじゃない」  
 澄は踵を返し、部屋を出て行こうとする。  
「ぅん……ん……分かった。お兄ちゃん、ここ……どうかな?」  
 それには構わず、歩弓は望の袋を吸い、左手の指先を会陰部に滑り込ませる。  
唾液で濡れた指はスムーズにそこを滑り、望を刺激していた。菊座に触れると、  
望の腰が大きく跳ね上がった。  
 
「ちょっ、ふ、歩弓、そんな知識どこから仕入れてきた……!?」  
「でも、いいらしいよ……お兄ちゃんの、すごく元気になってきたし……」  
 指先の刺激を続けながら、歩弓は先端から根元まで舌先を滑らせる。先走り  
の液が珠となって溢れてくるのを、吸い上げた。  
 ノブに手を掛けていた澄の身体が硬直する。  
「そ、そりゃそうだけど……んぅっ!?」  
 抗論しようとする望の口が、佳苗に塞がれた。  
「っ……ん……んん……っ……!」  
 トロンとした目つきで、無我夢中で彼に唇を押し付ける。その下では、歩弓  
の指が二本に増えて彼女の胎内を掻き回していた。  
 澄は再び振り返ると、勢いよくベッドに乗って歩弓の隣に座り込んだ。  
「……あたしも、する」  
 真っ赤な顔のまま、澄が宣言した。  
「んっ……下で待ってるんじゃなかったのか?」  
「う、うるさいわね。とにかくするのっ!」  
「はぁ……じゃ、澄姉ちゃんは……こっちだね」  
 息も荒いまま、歩弓は少し脇にどいて澄に場所を譲る。  
「……あのね歩弓、気が利き過ぎるのも考え物だと思うんだけど」  
「しないの?」  
「するわよ……けど。制服に掛けないでよ?」  
 
 言いながら、やや躊躇いがちに澄の手が望のモノを握った。  
 それは保障出来ないなあと、望は思う。  
「大丈夫だよ、澄姉ちゃん。全部飲んじゃえば、汚れない」  
 再び下方、望の袋の皺を舐めながら、歩弓が言った。  
「何か微妙にズレてるような気がするんだけど……大体、歩弓は汚れたって着  
替えれば済むじゃない」  
「んー、でもやっぱり汚れ落とすの大変だし……澄姉ちゃんは上お願いね」  
「う、うん……じゃ、じゃあ、するわよ……」  
 澄は、慎重に肉棒へ顔を寄せた。  
「噛むなよ」  
「まだ根に持ってる……大丈夫だって」  
 舌先が先端に触れる。鈴口に浮かんだ先走りの液を、眉をしかめながら舐め  
取ると、亀頭部全体を舐め始める。  
「うん、澄姉ちゃん、練習したもんね……痛っ」  
 後頭部をはたかれ、歩弓の顔が望の股間に押し付けられた。  
「よ、余計な事を言わない……とにかく、大丈夫なんだから」  
「…………」  
 胸を弄られながら、佳苗が望を凝視した。  
「ああ、そうだな」  
「……相変わらず、不思議なコミュニケーションが成立してる」  
 
 それで意味が通じてしまうのが、澄には不思議でならないらしい。  
「いや、リビングのバナナが減ってた理由についてちょっと話をしてたんだが」  
「噛むわよ」  
 言いながら、澄は雁の部分に歯を立てた。  
「澄姉ちゃん」  
「冗談よ」  
「今軽く歯が立ったのも冗談だったのか……うわっ」  
 亀頭部全体を粘膜が包み込んだ。その中で、澄の舌がナメクジのように這い  
回った。  
「ふふん……いいみたいね。って言っても、もう出そうだけど」  
「澄姉ちゃん」  
 傘が張ってきたのを悟ったのか、歩弓が声を掛ける。  
「あ、あたし? ん……わ、分かった。やってみる」  
 喉奥に当たらないように気を付けつつ、澄は望の肉棒を飲み込んでいく。  
「カナ姉ちゃんも、いいみたいだね」  
 指を深くまで挿入し、佳苗の具合を確かめる歩弓。絶頂が近いのか、締りが  
徐々に強くなってきていた。  
「っ……ぁ……ぅんっ……!」  
 後ろから指を激しく出し入れされ、佳苗は熱い息を吐きながら望のTシャツ  
を握り締める。  
 
「ああ、気持ちよさそうな顔……いやいや」  
「〜〜〜〜〜!」  
 真っ赤になった佳苗は顔を伏せ、望の胸に押し付けた。  
「お兄ちゃん、腰少し上げて」  
「こうか?」  
 言われるまま小さく腰を上げると、歩弓はそこに顔を割り込ませ舌を伸ばし  
た。  
「ん……」  
「う、わ……」  
 会陰部から菊座までを舌で舐められ、望が驚いた声を出した。  
「……?」  
 それを変に思った佳苗が顔を上げる。  
「い、いや、何でもな……っ……くっ……!」  
 しかし、望はそれどころではない。歩弓に加え、澄が頭を上下に動かし、彼  
のモノを強く吸引し始めていた。尿道を直接吸い上げられるような感覚に、望  
は危うく精を放ちそうになるのを何とかこらえる。  
「んっ、ぅくっ、んんっ、んぅ……んむ、んく……んう……っ!」  
 口の中で処理しきれないのか、口の端から唾液がこぼれ落ちる。それでも、  
澄は頭を動かすのをやめようとしない。  
「んぅ……澄姉ちゃん、気をつけてね」  
 
 言い、歩弓は尖らせた舌を望の後ろの穴に潜り込ませた。一緒に、佳苗の膣  
内に指を捻りながら突き入れ、肉芽も撫で上げる。  
「っ……!」  
「っっっ!!」  
 限界だった。  
 望は身体を反らせながら澄の口の中で精を迸らせ、佳苗は彼にしがみついた  
まま絶頂を迎えた。  
「んんっ! ん……うぅっ……んぐ、んくっ……!」  
 口の中で爆ぜた液体を、澄は懸命に飲み下す。しかし、処理し切れなかった  
分がこぼれ、その白い雫は竿を伝っていく。  
「あ……もったいない」  
 それを下にいた歩弓が舐め取っていく。  
 その間も望は腰を震わせ、断続的な射精を続けていた。ようやくそれが終わ  
ると、澄はゆっくりと頭を引き上げた。  
 喉に絡みついた粘液を、最後にゴクリと飲み下し、顔をしかめる。  
「は、ぁ……はー……はー……ん、やっぱり変な味だわ、これ……歩弓、よく  
こんなの舐められるわね」  
「そう? 平気だよ、お兄ちゃんの…んっ……だもん」  
 歩弓はまだ精液で汚れた望の肉棒を、自身の舌で清めていた。言葉通り、特  
に嫌そうな素振りは見せていない。  
 
「そういうもんかなぁ……で、ご飯?」  
「うん。あ、わたし、火入れてくるから、澄姉ちゃんは二人の後始末よろしく  
ねっ」  
 歩弓はベッドから降りると、パタパタと部屋から出て行った。  
 ペタンとベッドに座ったままの澄は、どうしていいか分からない。  
「ちょ、ちょっと後始末って」  
「よろしく」  
 身体を起こした望は、自分のズボンを指差した。  
「握りつぶすわよ!? それぐらい、自分でしなさいよ!」  
「…………」  
 静かな目で、佳苗が澄を見た。特に威圧されている訳ではないが、いつもの  
如く澄は気圧されてしまう。  
「な、何……?」  
 しかし佳苗は無言で望のズボンに手を伸ばした。  
「『じゃ、自分がする』ってさ。いや、自分で何とかするよ」  
 望は佳苗の頭を撫でながら、ティッシュを手に取った。  
「ん」  
 佳苗はそれを受け取る。  
 二人の呼吸に、澄は憮然とした表情を作った。  
「……なんで、この子が相手だと、そーなるのよ」  
 
「むしろ逆だろ。お前が相手だから、あーなるんだよ。って、そんな事話して  
る場合じゃないな。佳苗、早く着替えないと遅れるぞ」  
「ん……」  
 何か言いたげな佳苗に、望はポンと手を打った。  
「ああ、シャワーか。歩弓の事だから多分、風呂も沸いてると思う」  
「ん」  
 頷くと、佳苗は部屋を出て行った。  
 そして残されたのは、望と澄。  
「つー訳で着替えるわけだが」  
「?」  
 だから、どうしたとよく分かっていない澄に、望はいやらしい笑みを浮かべ  
た。  
「えっち」  
 澄の顔が、一気に真っ赤になった。  
「ふ・ざ・け・る・な!」  
 出た拳を、望はあっさりと受け止めた。  
「はっはっは、エロいなー、澄は」  
「歩弓を手伝ってくる!」  
 その手を振り解くと、澄は乱暴にベッドを飛び降りた。  
「あいよー」  
 その背を見送りながら、望は軽く手を振った。  
 
 
「思うに」  
 早坂勇(はやさか いさみ)はガシガシとトースターを齧りながら、望を始  
めとする四人を眺め回した。黒髪を後ろで細い尻尾のように束ねた、中性的な  
印象の女の子だ……が、食べっぷりはそこらの育ち盛りの男の子を凌駕する勢  
いだった。  
「朝、早すぎるよね、みんな。何で?」  
 ウインナーとオムレツを同時に頬張りながら、不思議そうな顔をする。  
「え、えっと、それはー……あ痛ぁっ!?」  
 何するのよ、と澄は望を睨んだが、彼はまったく意に介さなかった。テーブ  
ルの下、澄の蹴りを自分の足で応酬する。  
「習慣だよ。人間健康の秘訣には早寝早起きが一番だからな。宿題だって、眠  
くなる夜より早朝の方が効率がいいんだぞ? ……動じるな」  
「そ、そんな事言われたって……」  
 弁慶の泣き所をやられ、澄がテーブルに突っ伏した。  
「でも、確かに早起きするに越した事はないわ。遅刻者が出ないのは、風紀委  
員としても大いに助かるしね」  
 紅茶の匂いを楽しんでから、佐伯万知恵(さえき まちえ)はティーカップ  
に口付けた。ショートボブで銀縁眼鏡を掛けた、いかにも優等生風の少女だ。  
「約一名を除いてな」  
「……起こすの大変なんだよね、ノノ姉ちゃん」  
 
 まだメイド服のままの歩弓がため息をついた。  
「歩弓、だからいつも言ってるじゃない。あんなのは、水ぶっ掛けたら起きる  
んだって」  
「そんな事したら、後始末が大変だよ、イサミ姉ちゃん……もう行くの、二人  
とも?」  
「ええ、今日は当番だから。歩弓、ご馳走様」  
「ボクも朝練あるからね。じゃっ、行って来まーすっ!」  
 静かに席を立った万知恵とは対照的に、勇は勢いよくキッチンを出て行った。  
「あ、そうだ、歩弓を除く三名」  
 それに難しい顔をしてから、ふと思い出したように万知恵が振り返った。  
「あん?」  
「進路指導の用紙、回収今日だから忘れないように。特に望クン。また前みた  
いに不真面目な事書いたら駄目よ?」  
「俺はいたって真面目だったんだけどな」  
「将来の目標が『世界征服』なのは、真面目とは言わないの」  
「分かった。じゃあ、どっかの王様にしとこう」  
「……先生に即効却下されるんだから、もう少し無難な選択肢を出しときなさ  
い。あと、乃々子忘れないように、お願いね。それじゃ、行って来ます」  
 今度こそ、万知恵は出て行った。  
「行ってらー……しょうがない、表向きはまともな事書いとくか」  
 
「……裏じゃ王様なのね、あんた」  
 コーヒーを啜りながら、澄は引きつった笑みを浮かべた。  
「お兄ちゃんは本気だよ」  
「ん」  
 歩弓の言葉に、黙々と朝食を食べていた佳苗が頷いた。  
「何せ、ひーふーみーよー……覚えているだけで九人いるからなぁ。うち、何  
人かが忘れてたとしても、最低でも四人だろ?」  
 望は、この場に残った三人を見回し、苦笑した。あともう一人、神社に住ん  
でいる幼馴染を入れて四人となる。  
「言った責任は取らなきゃなぁ」  

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