終わることのない陵辱の時間。  
少女の肉体と脳髄に、深く刻まれた快楽の爪痕は、姉妹の心と体を蝕んでいった。  
 
異形達が与える快楽に溺れ、さらなる快楽を求める。  
自らが糧と、玩具となることに悦びを感じているのか、矯声を上げ、欲望のままに、乱れていく。  
数時間、数日、どれほどの時が過ぎたのか、夜が明ける気配はない。  
天上に浮かぶ月は傾くことなく、彼女達を淡く照らしていた。  
隔絶された空間、常夜の領域で、二体の化け物と二人の少女の狂宴は、果てることなく続く。  
 
―――椅子に座る女に跨り、友香は矯声を上げて、腰を振りたくっていた。  
野太い肉棒を咥え込む膣腔からは、大量の愛液が溢れ出し、床を濡らしていく。  
 
恥部はいびつに広がり、秘唇は痛々しくめくれて、赤く腫れ上がっている。  
それでも彼女は、体内を抉る熱い快楽に溺れ、ただひたすらに腰を動かす。  
自身の汗と怪物達の体液で濡れた体は、月明かりに反射して、艶めかしく輝いていた。  
唇を舐める人外の長い舌を、自分の口に咥え舌を絡ませる。  
その動きはたどたどしくはあったが、女にはとても心地の良いものだった。  
 
友香の腰は上下に激しく動き、肉のぶつかる乾いた音と、粘液の擦れ合う湿った水音が周囲に響く。  
「あふっ、やっ、ひっ、また、くる! やぁ! きちゃうぅぅぅっ!!」  
全身をビクビクと痙攣させた後、崩れるように女の体に身を預ける。  
肩で荒々しく息をしながら、心地よい虚脱感に身を委ねていた。  
 
「あ……はぁ………」  
「どうしたの? 私はまだイッてないわよ」  
「あう、だ、も、だめ、やす、ませ、て」  
「じゃあ、やめる?」  
「ああっ、や、いや、やめちゃ、やあ、やめないでぇ、もっと……」  
上気し、潤んだ瞳で人外の存在を見上げる。  
その様を見下ろしながら、女は妖艶な笑みを浮かべ、口を開く。  
「なら、がんばりなさい」  
「ん……く、だめぇ、からだ、ち、ちから、はいん、ない、よぅ」  
か細く震える声で、自分の現状を女に訴える。  
それを聞いて、頭の後ろで組んでいた手を、香の腰に回し、思い切り突き上げた。  
「っうあああぁぁぁぁ! ひっ、や、あっ、はげし、だめぇ、おな、か、こわれっ、くあああ」  
カクンカクンと、骨組みを失った人形のように、上半身が揺れる。  
 
膣内のヒダが陰茎を絡め、陰茎の突起がヒダを引っ掻く。  
固く勃起した乳首を互いに擦り合わせ、甘美な刺激に身を震わせる。  
重なり合う互いの喘ぎ声が、二人の情欲をさらに掻き立てていく。  
 
髪を振り乱し、矯声を上げる友香の体を、胸元から首筋、耳から唇、肩から指先に、腿から足の指へと、  
舌が這い回る。  
まるで味わうように、ゆっくりとした動きで、紅く染まり、快楽に打ち震える体に、唾液の軌跡を描いていく。  
 
臀部の裂け目を舐め上げ、長い舌はそこにある、もう一つの体内への入り口に滑り込む。  
友香の体がビクリと跳ね上がり、小さく悲鳴を上げる。  
何度も犯されたアヌスは、ほとんど抵抗もなく、すんなりと野太い舌を受け入れた。  
尻穴を広げ、腸内を蠢く熱い異物に、涎を垂らして悶える。  
 
舌とイチモツに加えられる圧力が、さらなる快感を生み、突き上げる動きが激しさを増す。  
「あっく、あ、や、う、おなか、ひっ、あ、すご、ぃい、こすれ、てぇ、こんな、のぉ……ああ、やぁっ!  
こっこわれる、こわれちゃうぅぅ!!」  
狂ったように髪を振り乱し、叫び声を上げ、突き上げられる度に背を反らせる。  
 
腸内を掻き回していた舌が、尻穴から引き抜かれ、喘いでいる口に滑り込む。  
「んぶっ! んん、んむぅ、ふぅん、ぅん」  
友香の顔が苦悶に歪むが、それも一瞬のことだった。  
すぐに恍惚の表情を浮かべ、肉欲に身を任せる。  
 
ぬめった恥肉が、肉棒を絞めつけ、女を高みへと導いていく。  
「あ、ん、も、だめ、イ、クゥっ! ふああああぁぁぁぁぁーーーっ!!」  
肉茎を、友香の体が持ち上がるほど強く突き上げ、胎内の最奥で体液を解き放った。  
「うあああああぁぁぁぁーーーっ!! は、ひ、あ、や、また、や、まだ、ひうっ!」  
胎内で断続的にぶちまけられるその熱い感覚に、立て続けに絶頂を迎え、背を弓なりに仰け反らせ、そのまま  
床の上に崩れ落ちる。  
陰茎からの放出は続き、痙攣している友香の体に降り注いだ。  
「はぁはぁはぁ、あ、は…………あったかぁい、ん、ふ……」  
悦楽の余韻に浸りながら、悦に入った表情で、白濁をいとおしげに自らの体に塗りたくる。  
肩で息をしながら、女は薄く笑みを浮かべ、それを見下ろしていた。  
 
天を仰ぎ、息をついた女の背に、ゾクリと、寒気に似た感覚が走る。  
 
驚いて視線を落とすと、友香が粘液に濡れる肉棒に舌を這わせていた。  
「んむ、んぐ、はあ、もっと……あむ、んう」  
女は面食らったような顔をした後、額に手を当てて苦笑する。  
「……フフ、仕様のない子ねぇ」  
ニヤリと笑う口の端から、陰茎を舐める友香の体に舌を伸ばした―――  
 
―――佐弥香もまた、全身を覆う触手に喘いでいた。  
顔の近くにいた触手を自ら口に含み、その触手に佐弥香は舌を絡ませ、醜悪な器官に刺激を与える。  
味も何もないはずのそれを、酷く美味な物に感じているのか、吐き出される粘液を飲み込んでいく。  
下腹部に入り込んだ、数本の触手の動きに合わせて、淫らに腰を動かし、体に体液を降り掛けられる度に、  
華奢な体を震わせ、法悦に酔いしれた。  
 
胎内で暴れる四本の触手が、腹部の形状をいびつに変容させる。  
「はぐ、く、ん、ああ、や、だ、め、また、ひっ、あ、んあああぁぁぁぁーーー!!」  
仰け反る体に、方々の触手から乳白色の粘液が放たれ、褐色の肌を白く穢していく。  
それが、体中の穴という穴から分泌された体液と混ざり合い、淫猥な音を奏でていた。  
 
膣内に挿入された触手は、胎内に粘液を放っては抜かれ、また新たな触手が入り込み、体液を放つ。  
絶え間なく与え続けられる快感に、その身を震わせ、歓喜の涙を流す。  
幾度も絶頂を迎えているにも関わらず、佐弥香の体は快楽を求める。  
タガが外れ、異形達に劣らぬほどの貪欲さを見せるその姿は、少女のそれとは程遠い、異形の快楽に溺れ、  
異質な悦楽の虜となった、一匹の牝の姿であった。  
 
二本の触手が胸にある、二つの突起に吸い付く。  
「ひぁうっ! い、いいよぉ……もっと、もっとすってぇぇぇぇぇーーー!」  
体を仰け反らせ、体をビクビクと痙攣させる。  
秘部から溢れ出る淫液と、怪物が放った体液でベトベトになった内股を伝い、胸に貼り付いている触手より  
一回り大きいほぼ同型の触手が、小さなもう一つの穴へと近づく。  
「ひぁっ!? や、そこちが、そっち、は、おし」  
佐弥香の言葉を待たずに、触手はその小さな入り口を抉じ開けるようにして、体内に侵入し始めた。  
「あ! う、ぐ……ふ、ぅ、くあっ、ひっ! あが、か、あぐ、くぅぅぅ………」  
臀部から走る、排泄の感覚とは違う別な感覚に、唇を噛みしめ、眉間に皺を寄せる。  
 
触手が直腸に達したところで、先端の口のような部分が開き、腹の中を吸引し始めた。  
「いぎっ! ひあっ!? や、なにこ、やああああぁぁぁぁぁ、おなか、おなかがぁぁぁぁーーー!!」  
腸内に存在する排泄物を吸い込みながら、奥へと進んでいく。  
体の中を吸われると言う、経験したことのない感覚に、少女は狂ったように叫び声を上げる。  
怪物達によって高ぶらされた性感は、こんなことさえも快感として脳に伝えてしまう。  
 
腸内の全てを吸い尽くし、触手が引き抜かれる。  
すぼまりでしかなかったそこは、だらしなく広がり、ヒクついていた。  
「は……ん、はぁはぁ、や、もっと、もっと、おしり、してぇ」  
初めて尻穴を犯されたばかりにも関わらず、淫らに腰をくねらせ、異形にさらなる陵辱を求める。  
 
緋眼に映るその姿を楽しげに見つめた後、異形は一際太い触手を尻に近づけ、一気にアナルを刺し貫いた。  
「っくああぁぁぁぁーーー! はひっ、ひぃ、あは、はいって、きたぁ、すご、きもちいい、おしり、  
きもちいいよぉぉぉ」  
待ち望んでいた尻穴を犯される歓びに、佐弥香は悲鳴を上げる。  
太い触手を呑み込んだ肛門からは、僅かばかり出血が見られるが、痛みは感じていない。  
排泄器官からもたらされる快感が、彼女の感覚を支配していた。  
 
内壁を擦りながら、空っぽになった腸内を、醜悪な触手が満たしていく。  
腸壁が収縮し、触手の動きをはっきりと伝える。  
「んあ、はひっ、おしり、あふ、もっと、ふあ、く、んぅ」  
上気した目で怪物を見下ろし、体をくねらせ、さらなる刺激を乞う。  
それに呼応するかのように、佐弥香のアナルに向かって、先細りした三本の触手が近づく。  
「あ、そんな、や、だめ、そんなにいっぱ、い、はいんないよぅ」  
言葉とは裏腹に、その顔には期待の色が浮かんでいる。  
菊門を抉じ開けるように、一本ずつゆっくりと、佐弥香の腸内に侵入していく。  
「あぎっ! く……ふひ! か、はぁ……やあ、ひろがっ、くひっ! きも、ちぃ、ひっ」  
体を小刻みに震わせ、下腹部から体内に入り込む、触手の感触に喘いだ。  
 
腸内で蠢く四本に加え、さらにもう一本が、肛門を押し広げ、強引に体内に入り込む。  
「いっ! う……あぐ、い、いた、ぎぅ、い、た、あ、や、さけ、る、さけちゃうよぉぉぉっ!!」  
いっぱいになっていた尻穴に、さらに五本目が加わった為、佐弥香の口から悲鳴が上がる。  
 
それを聞いてか、それとも別の意図があってか、少女を犯していた全ての触手が、その動きを止めた。  
 
途端に、佐弥香の下半身がモゾモゾと動き始める。  
「ああ、や、して、おしり、いたいの、いたいのしてぇ……いたいのがいいのぉ!!」  
眼下の異形を見下ろし、さらなる肛虐を望む。  
その言葉を聞き、触手が一斉に動き、佐弥香への陵辱を再開する。  
身を仰け反らせ、体の奥底から込み上げる、痛みと言う名の快感に、獣じみた悲鳴を上げた。  
 
ただのすぼまりだったそこは、無惨に広がり、腸液を垂れ流して触手を咥え込んでいる。  
腸の形が浮き彫りになった腹を、イボのついた触手がなぞり、そのまま佐弥香の秘部へと入り込む。  
「がっ! ぎあ……あ………かはっ、はあ、う、く、ぎひっ」  
前と後ろ、合わせて十本の触手が、少女の体内を掻き回す。  
さすがに苦しいのか、佐弥香の顔が歪むが、それも、一分と保たず悦に入った表情へと変わる。  
「ふあ、あは、すご、いっぱい……おしりも、あそこも、こ、こんな、の、ひぅっ!」  
仰け反る裸身に幾つもの触手が這い回り、少女をさらなる悦楽の淵に堕としていく。  
 
触手が内腿を伝いながら、すでに埋め尽くされた佐弥香の秘所に入り込もうとする。  
「んあ、や、だめ、も、いっぱい、これ、いじょう、あそこ、さけちゃうよぉ」  
さすがに無理と判断したのか、侵入しようとしていた触手が引っ込み、そこに極細の触手が近づく。  
それに気付いた佐弥香の顔が、期待と不安の混じったような、切なげな表情を浮かべる。  
伸びる細い触手は、五本の触手によって広がり、歪んでしまった少女の女性器には侵入せず、その上にある、  
充血して肥大した肉芽に巻き付き、強く絞め上げた。  
言葉にならない悲鳴を上げ、佐弥香の体が跳ねる。  
過敏になり過ぎた体は、激痛に近いはずの刺激すらも、快感として受け取ってしまう。  
途切れそうになる意識は、断続的に与えられる刺激によって、何度も呼び戻され、その肉体に刻んでいく。  
肉体と精神を侵蝕する、人の身には余りあるほどの、強烈な快感を。  
 
クリトリスに巻き付いた触手とは別の、細い紐状の触手が、その部分に伸びていく。  
「ひっ!? や、あ、ち、ちがっ、そんなとこ、だめ、そこはだめぇぇぇーーーっ!!」  
 
手足をばたつかせ、著しく拒絶反応を示す。  
無理もない、伸びた触手は、彼女の尿道口を小突いているのだから。  
 
抗う少女の事などお構いなしに、触手は小さな排泄器官へと侵入する。  
「いぎっ! あ? や、だ、あぐ、ぅあ、だめ、ひっ、やぁっ、そんな、やう、でるぅっ! おしっこ、  
でちゃう、でちゃうよぉぉぉーーー!!」  
叫び声と共に、佐弥香の股間から黄色い水が、勢いよく吹き出し、異形の上に降り注いだ。  
 
佐弥香の上半身に巻き付いた触手が離れ、そのまま異形に身を預けるように崩れ落ちた。  
「はぁ、はぁ、はぁ………ぁは、いっぱいかかっちゃったね」  
微笑みを浮かべ、異形の体の上にぶちまけた自分の尿水を、嬉しそうに舌で舐める。  
 
自らの体を這う、温かい舌の感触が心地良いのか、異形は触手の動きを止め、しばしの間、少女の行う愛撫を  
味わっていた―――  
 
 
――――「んあ、やぁ、っく、ふあん」  
喘ぐ少女の肉体に伸びる触手が、不意に別の手に掴まれる。  
『ギュル?』  
「え?」  
「お取り込み中悪いんだけど、私達も交ぜてくれないかしら?」  
触手を掴んで佇む人外の女が、微笑みながら異形を見下ろしていた。  
 
女を見つめている佐弥香の体を、妹の友香が後ろからそっと抱きすくめる。  
「おねぇちゃん」  
「ん……あ? 友、香?」  
唐突な二人の登場に、佐弥香はおろか怪物までもが唖然として、その動きをピタリと止めていた。  
止まったままの佐弥香の乳房を、友香の手が下から揉み上げる。  
「んっ、は、あ、や、友香……」  
「おねぇちゃんのおっぱい、やわらかい」  
指で姉の乳首を弄びながら、体に付着した白色の体液を舐め、それを姉の口に直接口で流し込む。  
 
「んむ、ん、ふぅ……」  
今まで受けていた叩きつける荒波のような、強烈な刺激とは異なる、弱々しいさざ波のような感触に、  
佐弥香の口から熱い吐息が漏れる。  
「んむぅ、んん、ぅうん、ふぅ」  
「ん、んむ、んはぁ、はあ、ん、んふぅ」  
二人の絡み合う舌が、ピチャピチャと淫靡な音を奏で、荒くなり始めた吐息が交錯し始めた。  
 
妹の愛撫にその身を震わせ、熱い吐息を吐く佐弥香を見ながら、女は触手に口付けをする。  
「まあ、そう言うことよ、久しぶりにこう言った趣向もね、アンタも好きでしょ?  
あ、私が相手なのは嫌だとか言わないでよ」  
 
異形の眼が少女達から女に移り、ニヤリと歪んだ後、動きの止まっていた触手群が一斉に動き出す。  
「フフ、そうそう、楽しまなくちゃ……」  
愉悦に満ちた笑みを浮かべ、女は触手に舌を這わせた。  
 
 
少女達の裸体に無数の触手が絡みつく。  
白濁に汚れた褐色の肌と、白い柔肌に巻き付くいびつな緑の触手。  
「ふああああっ! あっく、いぃ、ああ、もっと、おなかかきまわしてぇぇぇ!!」  
「んくぅっ、あ、ふ、かい、おしりだめぇ、もっと、ひっ、や、うああああっ!!」  
体液を撒き散らし、醜いそれの動きに合わせ、歓喜の涙と、法悦の涎を垂れ流し、快感に身悶える。  
姉妹はどちらからともなく、互いの胸の突起を擦りつけ合う。  
姉は妹の、妹は姉の、お互いに感じる部分を、快感を得られる場所を刺激していく。  
 
おぞましい触手の海の中で、肉欲に溺れ、堕ちていく姉妹。  
化け物たちに犯され、抗うでもなく、壊れるでもなく、ましてや死ぬ訳でもない。  
彼女達は受け入れたのだ、人外のそれを、自らを糧として差し出す事を。  
異常な状況下に於いては、それこそが正常であるかのように。  
乳白色の粘液にまみれた、サクラ色に上気した二つの裸体、その肉体を弄ぶ異形の化け物の姿は、まさに  
異常と言える光景だろう。  
だが、狂気を孕んだその光景も、窓から射し込む淡い月明かりの下では、どこか美しくもあった。  
 
佐弥香は妹の体を抱きしめ、唇を重ねる。  
自分達の受けている快感を、少しでも共有しようとするかのように、互いに舌を絡ませ合う。  
触手の先端から吐き出される液体は、姉妹の裸身を白く染め、さらに彼女達を高ぶらせる。  
「んむ、ん……んっ! ふあっ! あう、ひっ、や、く、る、もう、あたし、おねぇ、ちゃ、  
あたしっ、またっ………ひくっ!!」  
「うあっ、ま、って、友香、わたしも、いっ、しょにぃ、あ、い、ああっ! だめぇぇ!!」  
ガクガクと四肢を痙攣させ、二人はほぼ同時に絶頂を迎えた。  
 
 
人外の女の体にも、無数の触手が巻き付く。  
豊満な乳房を根本から縛り上げ、よりその大きさが強調される。  
迫り出してしているその先端に触手が貼り付き、乳首を強く吸い上げる。  
「んっ! く、はぁぁ……んぁ、いい、もっと、つよ、く、すってぇぇぇ……」  
小刻みに体を震わせ、女は潤んだ瞳を異形に向けて、触手に胸を擦り付ける。  
 
女の体がビクンと戦慄く。  
固くいきり立った女のイチモツに巻き付いた触手が、上下に動き、肉棒を刺激し始めていた。  
触手がしごく度に、肉幹がビクビクと脈打ち、女は熱い吐息を漏らす。  
少女の瑞々しい肌とはまた別な、熟れた女の肉体の感触を味わうように、触手が全身に擦り付けられる。  
喘ぐ女の胸の谷間に、一本の触手が滑り込む。  
「う、あ、はぅ、ん? フフ、んふぅ、はあ……」  
その触手を妖艶な眼差しで見つめ、自ら胸を寄せて触手を挟み込んだ。  
あの二人では味わえない、張り詰めた弾力のある柔らかい肉の感触に、異形は目を細めさらに触手の動きを  
加速させていく。  
 
「んあ、く、は、い、ひ、あ、んっ! も、だめ、イキそ、あ、でる、でちゃうぅぅぅぅ!!」  
涎を垂らし、ピクピクと体を引き攣らせ、絶頂へと昇り始める。  
陰茎に巻き付いた触手の締め付けがさらに強くなり、動きも速さも増していく。  
「はぅ、ん、くひっ! イッ、あ、イッちゃううううぅぅぅぅーーー!!」  
背を弓なりに反り返らせ、陰茎から勢いよく白濁液が吐き出される。  
それとほぼ同時に、体中に擦り付けられていた無数の触手からも、体液が放たれた。  
降り注ぐ体液が、紅潮し、震える体を白く染めていく。  
胸に挟まれた触手から飛び散った白濁は、恍惚の表情を浮かべる女の顔に飛び散る。  
全身に掛かる生温かい粘液の感触に、女は立て続けに絶頂を迎えた。  
 
崩れ落ちそうになる体を、触手が抱え上げる。  
呼吸を荒げ、まだ物足りないと言った表情で、緋眼の異形を見つめる。  
それに応えるように、再び触手が動き出す。  
放出を終えても萎えることなく、そそり立ったままの肉棒の先端に、触手が近づく。  
その触手の先がぱっくりと裂け、肉幹を呑み込もうとし始めた。  
「あ、ちょっ、だ、だめっ、それは……ひぅっ!」  
身を捩り、その触手から逃れようとするが、絡み付く別の触手のせいで、逃れることは出来ない。  
 
触手の口が自分より大きな女の陰茎を、ゆっくりと、まるで蛇のように呑み込んでいく。  
「くひぅ! ふあ、はひっ! う、く、これ、だめって、いっ、たのにぃぃぃぃ」  
腰を引き、体をくの字に折り曲げ、涎を垂れ流す口から、抗議めいた言葉を絞り出す。  
異形はそんなことなど意に介さずに、触手を動かし続ける。  
 
吸引しながら咥え込んだ肉幹をしごき立て、胸に尻や背中、二の腕や脇腹にまで触手を擦り付け、全身に  
刺激を与えていく。  
「うあ、ひくっ! だ、めぇ、また、イクゥゥゥーーー!!」  
ビクンと背を仰け反らせ、膝がガクガクと震える。  
肉棒を咥えた触手が収縮し、吐き出された体液を飲み込んでいく。  
「あ……く……ふ、あ、ひ、やぅ、しぼられ、てるぅ、い、あ、ひ、また……っ!」  
肉棒を吸われる快感に、女は四肢を痙攣させ、続け様に絶頂へと達した。  
 
白濁液にまみれた陰茎が、触手から解放される。  
小刻みに震える体を触手に預け、全身を包む虚脱感に浸っていた。  
不意に、女の体がビクリと強ばる。  
見れば、二人の少女が肉棒に舌を這わせていた。  
触手と繋がったままの姿で、姉は先端を、妹は根本の部分に、その小さな舌で刺激を与える。  
「ん……んむ、はぁ……あむ、んぅ……はぁ、む」  
「ぅむ、ん……ん、んぐ、むぅ、はぁ……」  
ピチャピチャと卑猥な音をさせながら、固く勃起した肉幹を舐め回す。  
「あ、はぅ、ん、ふぅ……いい、んっく、もっと、あぅ、ん」  
イチモツを這う二つの温かな舌の感触に、女は眉間に皺を寄せ、嗚咽を漏らした。  
 
熱の籠もった女の視線が、少女達の股間に群がる無数の触手に向けられる。  
「ねぇ……私にも、ちょうだい……」  
そう言って尻を突き出すように異形に向け、愛液で濡れた陰部を指で広げる。  
それに反応するように、イボ状の突起のある大きめの触手が、女の濡れそぼった花弁を押し広げて、体内に  
侵入していく。  
「ぅあっ! は、はひっ、はいってくるぅ、すごい、い、ふあっ、ああああああぁぁぁぁーーー!!」  
肉棒を這う舌の感触と膣内を抉られる快感に、女は悲鳴に近い声を上げ、その先端から体液を放出する。  
撒き散らされる白濁が少女達に降り注ぎ、二人はその熱い粘液を浴びながら、恍惚の表情を浮かべていた。  
 
互いの体に付着した怪物達の体液を舐め合う姉妹と、絶頂の余韻に浸り四肢を痙攣させている女の体が、  
宙へと持ち上げられる。  
未だに起立したままの女の怒張の上に、佐弥香の腰をゆっくりと下ろす。  
「ひぅ、あ、は、すご、ふといのが、なかにぃ、きひっ!」  
「あ、んあ、ぎゅうって、しめつけてくるぅ、い、いい、きもちいいっ!」  
「ああっ! ふあぁ! いま、なか、で、ひっ、ぐりゅってぇ」  
 
女の脈打つ肉棒が、佐弥香の子宮を突き上げ、尻穴に入り込んだ触手は腸内で動き回る。  
少女の絡みつく肉ヒダが、女の陰茎を締め付け、膣内を貫く触手の突起が肉壁を掻き出す。  
両の穴に挿し込まれた沢山の触手が、友香の腸を膨張させ、子宮の中を満たしていく。  
おぞましい緑の触手に肉体を蹂躙され、彼女達は歓喜に満ちた悲鳴を上げる。  
淫らに、妖艶に、一心不乱に快楽を貪り、悦楽に酔いしれた。  
 
いつ果てるともなく続く淫虐の宴。  
与え、与えられる、終わりなき連環を、それしか知らぬかのように求め続ける。  
体中の穴と言う穴から体液を垂れ流しながら、その身を震わせて快感を味わう。  
底なしの食欲と肉欲は、満たされることなく、三人の肉体を蹂躙し続けた。  
狂死してもおかしくはないほどの快感を味わい、それでもなお、彼女達は化け物の触手を求める。  
触手の先端から放たれる粘液で、体を白く染め、何度も絶頂を迎えて、それに溺れていく。  
 
女の放つ熱い体液が子宮の奥に当たる、その度に佐弥香は四肢を痙攣させ、昇り詰める。  
腸内を蠢く触手の動きに喉を反らせ、体内を満たしていく異形達の熱いほとばしりを感じ、恍惚とした表情  
を浮かべていた。  
 
絡み付くように絞め上げる少女の感触に、女は幾度となく少女の中に体液を解き放つ。  
膣内を満たす触手の快感に嬌声を上げ、さらなる快楽をせがむように、舌を触手に巻き付け、しごき立てる。  
子宮と腸を幾つもの触手が掻き回し、体の内と外に浴びせかけられる温かな粘液が、友香を高みへと誘う。  
両手で触手をしごき、口に咥え、自らの欲望の赴くままに、貪欲にそれを求める。  
 
「ふあぁぁっ! ひ、あ、や、ま、またイク、イクッ! イッちゃううううぅぅぅぅーーーっ!!」  
「っあぁ! 私も、イクッ! うあ、でちゃう、でるっ! くあああああぁぁぁぁっ!!」  
「あぎっ! やあっ! あたしも、くるっ! おっきいのが、だめぇ! きちゃううううううぅぅぅぅーーー!!」  
一斉に降り注ぐ白濁液を浴びながら、三人は全身を痙攣させ、同時に高みへと達した。  
 
「はあはあはあ……は? あがっ!? が、かっ、はっ、ぎひ、き、いぎあ、が……」  
うなだれていた友香の体が、突如として反り返り、ピクピクと震えだす。  
「う、ぶえ、げ、ぐ、おぶぇぇぇっ!!」  
大きく開いた口から、胃液と共に、一本の触手が飛び出した。  
「友香……?」  
「あ〜あ」  
突然の事態に、佐弥香はただ目の前の光景を見つめて妹の名を呟き、女はどこか呆れたように溜息をこぼす。  
肛門に入り込んだ触手が、腸管を通り、口から出たのだ。  
引き攣っている友香の体が持ち上がり、体の中を通る触手は、蛇のように蠢いている。  
 
佐弥香の視線は、串刺しにされた妹から、緑色の化け物に移る。  
赤い眼はもう一方の少女に向けられ、弧のように歪む。  
それと同じように、佐弥香の口元にも薄く、笑みが浮かぶ。  
そのまま、友香の口から突き出している触手を、口に咥え込んだ。  
「ん、んむ……んぐっ! ぐぶっ! ぐごっ、んぐぅ、ぅぶぇ、んむぅぅぅっ!!」  
口に含んだ触手が、喉を通り、友香とは逆の動きで体内を通る。  
ガクガクと痙攣する体を通り、腸液と共に、肛門から触手が姿を現す。  
想像を絶する刺激に、二人の眼球が反転し、白目を剥く。  
「……うわ、フフ、凄いわね」  
姉妹を繋ぐ触手を見ながら、女はクスリと笑う。  
 
佐弥香の尻穴から突き出した触手が女の太腿を伝い、形のよい臀部に近づく。  
 
ビクリと女の体が震える。  
「ち、ちょっと、私は嫌よ、だめだって、お尻はだめ……」  
身を捩り、触手の侵入を拒むが、巻き付く触手が体を固定してそれもままならない。  
「ひぁっ! く、は、ぁは、だ、だめぇ、おしりは、ひん! だめぇぇぇぇぇっ!!」  
すぼまりを押し広げ、一気に女の腸内に侵入し、体内を掻き回す。  
腸壁を擦りながら、ゆっくりと体内を進んでいく。  
「か、はひ、はいってく、おくに……っくあ! ぅげ、あ、ぉご、あが、ぐぶぅぅぅぅーーー!!」  
ガクガクと四肢を戦慄かせ、大きく仰け反るのと同時に、口から胃液にまみれた触手が飛び出した。  
 
三つの裸体を繋げる触手は絶えず律動を続け、それぞれの肉体を弄ぶ触手の動きも激しさを増していく。  
 
友香の膣口を埋める触手の群は、各々が独立した動きで少女の肉体を蹂躙し続けた。  
尖った胸の突起を引っ張り、充血した肉芽にも巻き付き刺激を与える。  
思考が飛ぶほどの強烈な刺激に何度も果て、股間からは白濁混じりの尿液をダラダラと垂れ流していた。  
見開いた目は、同じような姿の姉に向けられたまま、動くことはなかった。  
 
佐弥香の体内を動き回る触手がもたらす快感に、彼女の思考が断続的に途切れる。  
女の陰茎から吐き出される、熱い体液をその身の内に浴び、四肢を引き攣らせて、幾度となく昇り詰めた。  
勃起した乳首に吸い付く触手が与える刺激に、身を震わせ、歓喜の涙を流す。  
目はあらぬ方向を向いて、その表情は悦楽に酔いしれた、恍惚のそれであった。  
 
絞め付ける肉壷の快感に、膣内を抉られる感触に、体内を行き来する触手の快楽に、女の意識が遠退く。  
いびつに膨らんだ腹を撫でるように、触手が這い回る。  
豊満な乳房は幾重にも巻き付いた触手によって、その形をいびつに変えていた。  
体中の穴という穴から体液を垂れ流し、その快感を享受し、全身を戦慄かせる。  
 
止まらぬ絶頂の波の中、触手が震え、その先端から次々と濁った体液を放出し始めた。  
それとほぼ同時に、三人は背を反り返らせ、今までで一番大きな絶頂を迎える。  
声にならない叫びを上げ、痙攣している彼女たちの体に、白色の粘液が降り注ぐ。  
それと同じように、彼女等の意識もまた、白く薄れ、塗り潰されていった――――  
 
 
――――女は溜息をついて、自らを淡く照らす月を見上げていた。  
その傍らに、緋眼の異形が音も無く近づく。  
「……まったく、死ぬかと思ったわ、やり過ぎよ」  
異形を一瞥すると、再び月に眼を向ける。  
『ギュル、ギュルルルル』  
「う、うるさいわね……まあ、確かに良かったけど……」  
『ギュルルル』  
「なら問題ないって、あんたねぇ……まぁ、私も悪のりが過ぎたわ」  
『ギュルルルルル』  
「次からは気を付ける……か、何度目かしらね、それ聞くの」  
女は嘆息混じりにそう言うと、床に倒れ伏している二人の少女に視線を向ける。  
 
「取り敢えずは二人確保ね」  
『ギュルルル』  
「ええ、一旦戻すわ。時間の流れが違うと言っても、これ以上拘束すると時間のズレが大きくなるからね」  
『ギュル、ギュル』  
「次ねぇ……記憶を封じて精神を再構築するのって、結構疲れるのよ」  
溜息をつきながら、女は肩をすくめる。  
『ギュルル、ギュル』  
「分かってる、私等が生きる為には必要だしね」  
憂いとも、悲壮ともつかない表情を浮かべ、天を仰ぐ。  
異形はスッと眼を細め、そんな女を見つめる。  
「まぁ、面白いからいいけどね」  
女はクスクスと楽しげに笑いながら、ゆっくりとした足取りで姉妹の元に向かって、歩き出した―――  
 
―――床の軋む音を頭の片隅で聞き、ふと、佐弥香は目を開ける。  
 
若干の疼きと、心地良い虚脱感はあるが、疲弊しきった体は指一本も、動かすことができない。  
何があったのかを思い出すことすらも、酷く億劫になっていた。  
頭を動かし、少し離れた場所で眠っている、妹の姿を確認して息をついた。  
 
傍らに人が立つ気配を感じ、そちらに視線を向ける。  
「気が付いたみたいね」  
その声を耳にした途端、佐弥香の体の疼きが強さを増す。  
「フフフ、欲しい? でももう今日はおしまい」  
女はそう言って身を屈め、佐弥香の頭を優しく撫でる。  
「安心して、私が呼ぶまで記憶は封じておくから、存分に日常生活を楽しみなさい」  
女はクスクスと、まるでからかうように笑っているが、月の逆光のせいでその表情までは伺えない。  
「そうそう、今度はあなたの彼も招待して上げるわ、きっと楽しいわよ」  
女のせせら笑う声を聞き、それに答えるように佐弥香も笑顔を作る。  
 
もっとも、今は頭もろくに働いていない状態である為、女の言葉を理解はしていない。  
 
単に条件反射的に、笑い返しているだけだった。  
 
女の双眸が赤く輝き、佐弥香の意識が遠退き始める。  
強烈な睡魔に襲われたような、抗い難い眠気に近い感覚。  
 
暗転していく視界の中に最後に映ったのは、月を背に緋色に輝く双眸と、その向こうで妖しく煌めく赤い光  
だった――――  
 
 
――――夕日の射し込む教室に、一人の少女が佇んでいた。  
「あれ?」  
何かを疑問に思い、周囲を見回すが、変わったところは見受けられない。  
 
どこにも妙なところはない。そこにあるのは彼女がよく知る、いつも通りの景色だ。  
だが、何か心に引っ掛かりを感じる。何かを忘れているような、奇妙な欠落感。  
それが何なのかも分からず、少女は首をひねっていた。  
 
「お姉ちゃん、まだ〜?」  
佐弥香の後ろでドアが開き、妹の友香が顔を出す。  
「あっ! う、うん、ちょっと待って」  
睨んでくる妹の顔を見て、佐弥香は慌てて自分の机からノートを取り出し、教室を後にした。  
 
「ごめんごめん」  
「も〜、何やってんのよぉ〜」  
眉間に皺を寄せる妹の顔、それを見る佐弥香の頭に何かがよぎる。  
「まったく、しっかりしてよね、部活が休みだからって、あ〜あ、こんなんじゃ斎木先輩も大変よね」  
皮肉を込めた友香の言葉にも、考え込むように腕を組んで、佐弥香は首を傾げていた。  
「お姉ちゃん? 聞いてる?」  
「へ? あ、うん……ねぇ、前にもこんなことなかった?」  
「……うん、いっぱいあったよ」  
おどけた感じで肩をすくめ、意地の悪い笑みを浮かべる。  
そんな友香の反応に怒るでもなく、佐弥香は沈黙したまま、腕を組んで考え込んでいた。  
 
姉の様子がいつもと違うことを感じたのか、友香の表情が曇り始める。  
「お姉ちゃん、どうかしたの?」  
妹の不安そうな声に、ハッと顔を上げ、言葉を返す。  
「ああ、たぶん気のせいね、なぁに? 心配した?」  
「べ、別にそんなのしてないもん」  
ニヤニヤと笑っている姉の反応に、友香は怒ってそっぽを向く。  
だが、佐弥香の様子がいつも通りに戻った為か、その表情からは安堵の色が伺えた。  
「ひょっとして、からかってる?」  
「ち、違うって、ホントにそう思ったんだから」  
訝しむような顔で見つめてくる妹に、先ほどから感じている奇妙な既視感を説明する。  
 
「……ただの気のせいでしょ」  
「やっぱりそう思う?」  
「そうだよ、変に気にし過ぎだって」  
 
姉の言ってることを笑い飛ばす友香を見て、佐弥香も釣られて笑い出す。  
「そうね、気にし過ぎよね……」  
そう言いつつも、妙な引っ掛かりは、未だに消えてはいなかった。  
 
「さて、お姉さま」  
「な、何よいきなり」  
「姉を心配するかわいい妹に、ご褒美があってもいいと思うんだ」  
「かわいいは余計。でもご褒美って、あんたね……」  
と、ここで言葉を切り、再び何かを考え込むように、下を向く。  
「ねぇ……やっぱりこれと似たようなこと、なかった?」  
姉の言葉に、友香はやれやれと言った感じで首を振り、佐弥香の顔を見据えた。  
「最近はない。まぁ、今後増えたらいいなぁ、とは思ってるけど?」  
「増やしてたまるもんですか……」  
ちらりと窓の外を見た佐弥香の視線が止まり、何かをじっと凝視している。  
「どうしたのお姉ちゃん?」  
「…………何でもない、旧校舎の窓に赤い光が見えた気がしたんだけど、ただの夕日の反射だったわ」  
「ふ〜ん、じゃあ何かおいしいものでいいや」  
姉の言葉に特には興味を示さず、極々自然に、友香は自分の希望を姉に告げ、その反応を待つ。  
 
「ちょっと待ちなさい、わたしは承諾した覚えはないわよ」  
一瞬の間の後、佐弥香は眉を吊り上げ、友香を睨みつけた。  
その視線に臆することなく、友香は姉を見返す。  
「忘れ物したって言うから、こんな時間まで待ってたんだよ、それぐらいいいと思うんだけど?」  
「う、だ、だけど……分かったわよ、分かりました、おごらせてもらいます」  
「うんうん、優しい姉を持ってあたしは幸せだよ」  
満面の笑みを浮かべる友香とは対照的に、佐弥香はガクッと肩を落としていた。  
 
「何にしようかな〜」  
声を弾ませて、軽い足取りで廊下を歩く友香とは違って、その後ろを重い足取り歩く佐弥香。  
「はぁ〜、いらぬ散財だわ」  
姉の溜息混じりの嘆きを聞いて、友香は後ろを振り返り、にっこりと微笑む。  
「な、何よ……まだ何かあるの?」  
「え? 別に〜、ただ斎木先輩も呼ぼうかなぁって、思っただけ」  
妹の一言に、佐弥香の表情が引き攣る。  
「ちょっと、何でそうなるのよ」  
「だってその方がお姉ちゃんも嬉しいでしょ?」  
「べ、別にそんなこと……」  
「それに、あたしの義理のお兄ちゃんになるかもしれない人だし」  
「い、いきなり何言ってんのよ! こら! 待ちなさい!」  
 
顔を真っ赤にして追い掛けてくる佐弥香を、からかうように笑いながら、友香は廊下を走っていく。  
 
夕暮れの廊下に、二人の笑い声が響き渡る。  
何も変わらぬ、いつも通りの平穏な日常。  
この時はすでに、佐弥香の心に引っ掛かっていた既視感や違和感は、すべて消え去っていた。  
 
不意に、二人を呼び止める声が響く。  
振り返るとそこには、眼鏡をかけた長髪の女性が、腕を組んで立っていた。  
「もうとっくに下校時間は過ぎてるわよ、早く帰りなさい。後、廊下を走らない」  
「は、はぁい」  
「すいません」  
眉間に皺を寄せる女性の顔を見て、二人は畏縮して肩を狭める。  
「姉が忘れ物をしたのでそれに付き合ってたんです、先生からも何か言ってやってくださいよ」  
「ちょっと何よ、確かに忘れ物をしたのは悪かったけど……」  
「はいはい、ケンカしない。さっきも言った通り、下校時間はとうに過ぎてるから早く帰宅しなさい」  
言い争いを始めそうな姉妹を、女教師が制して、帰宅を促す。  
二人は渋々と言った感じで、それに従う。  
「それじゃあ先生、さようなら」  
「はい、さようなら。寄り道せずにまっすぐ帰宅しなさいよ」  
「はぁい」  
廊下の向こうに消えていく二人を眺めながら、女教師は肩の力を抜き、息をついた。  
 
ふと、窓の外に目を向ける。  
必然的に、学校の敷地内の片隅に建つ、古びた木造の建物が視界に入ってしまう。  
一体いつになったら取り壊すのだろうか、などと考えながら、旧校舎を眺めていた。  
その目が、旧校舎の窓に赤い光が存在するのを見つけだす。  
眼鏡をかけ直し、その光を凝視する。夕闇に紛れた異質な光を、微動だにせず、魅入られたかのように。  
 
「まさか先生に会うなんて思わなかったね」  
「うん、ちょっとびっくりした」  
校庭を歩きながら、二人は他愛ない会話を続けていた。  
「……じゃあ駅前のクレープ屋さんで手を打つよ。あ〜あ、先輩も呼びたかったなぁ」  
「まだ言うか、呼ばなくていいの」  
げんなりとした感じの姉の姿を見て、友香はクスクスと笑う。  
 
不意に、友香が後ろを振り返り、旧校舎の方を指差して、姉に尋ねる。  
。  
「あれ、先生じゃないかな?」  
「どれよ?」  
その指を追っていくと、旧校舎に向かって歩く人影を発見をした。  
「ホントだ、どうしたんだろ?」  
「さあ? 何か用事でもあるんじゃない? それより早くしないとお店が閉まっちゃうよ」  
 
「そんなに急がなくても……」  
ふぅ、と溜息をついて、走り出す妹の後を追う。  
途中、ちらりと背後を振り返る。  
 
教師の姿は見えず、古びた建物がその片隅に、ひっそりと佇んでいるだけだった。  
ゾクリと、悪寒に似た寒気が背筋に走る。  
何かに急かされるように、夜の帳が降り始めた校庭を駆け出した―――  
 
 
―――背後で床の軋む音がして、女は振り返る。  
そこに、眼鏡をかけた長髪の女性が立っていた。  
 
網に掛かった獲物を見て、女はニヤリと笑う。  
その後に、招くように手を動かして、女教師を導く。  
近くの教室のドアが独りでに開き、ふらふらとそこに向かって歩きだした。  
女教師が教室の中、闇の向こうに消えたのを見計らって、女もその後に続く。  
 
その途中、女は振り返り、二人並んで学校を後にする影を窓越しに見て、小さく笑う。  
「またね、お二人さん」  
沈みかけた夕日に照らされた静寂の中、小さくそう呟いて、闇の中に消えていく。  
 
そして、教室のドアが静かに閉じられた――――  
 
 

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